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[インデックス 17774] ファイルの概要

このコミットは、Goランタイムのガベージコレクション(GC)に関連するデバッグメッセージの修正に関するものです。具体的には、runtime·markfreed 関数内で出力されるエラーメッセージのプレフィックスが誤っていたのを修正しています。

コミット

commit 139cc96a5718f59867e1a4295a29c46bc38a9a29
Author: Keith Randall <khr@golang.org>
Date:   Wed Oct 9 13:28:47 2013 -0700

    runtime: markfreed's error reports should be prefixed with "markfreed", not "markallocated".
    
    R=golang-dev, iant
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/14441055

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/139cc96a5718f59867e1a4295a29c46bc38a9a29

元コミット内容

runtime: markfreed's error reports should be prefixed with "markfreed", not "markallocated".

R=golang-dev, iant
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/14441055

変更の背景

このコミットは、Goランタイムのガベージコレクション(GC)メカニズムにおけるデバッグ出力の誤りを修正することを目的としています。runtime·markfreed 関数は、メモリが解放されたことをマークする役割を担っていますが、その内部で発生するエラーメッセージやデバッグ出力のプレフィックスが、誤って「markallocated」となっていました。これは、コードの意図とメッセージの内容が一致しないという、純粋なデバッグ上の不整合です。

このような不整合は、開発者がランタイムの動作をデバッグする際に混乱を招く可能性があります。例えば、markfreed 関数内で「markallocated: bad pointer」というエラーメッセージが表示された場合、開発者は「markallocated」という処理で問題が発生したと誤解し、問題の特定に時間を要するかもしれません。このコミットは、このような混乱を避け、デバッグの効率を向上させるために行われました。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、Go言語のランタイムとガベージコレクションの基本的な概念を理解しておく必要があります。

Goランタイム (Go Runtime)

Goランタイムは、Goプログラムの実行を管理するシステムです。これには、スケジューラ(ゴルーチンの管理)、メモリ管理(アロケータとガベージコレクタ)、チャネルの実装、システムコールインターフェースなどが含まれます。Goプログラムは、OS上で直接実行されるのではなく、このランタイム上で動作します。ランタイムはC言語とGo言語で記述されており、特にパフォーマンスが要求される部分やOSとのインタラクションが必要な部分はC言語(またはアセンブリ)で実装されています。

ガベージコレクション (Garbage Collection, GC)

ガベージコレクションは、プログラムが動的に確保したメモリ領域のうち、もはやどの部分からも参照されなくなった(到達不能になった)メモリ領域を自動的に解放し、再利用可能にするプロセスです。Go言語は、自動メモリ管理を採用しており、開発者が手動でメモリを解放する必要がありません。GoのGCは、並行(concurrent)かつ低遅延(low-latency)なマーク&スイープ(Mark-and-Sweep)方式をベースにしています。

GoのGCの主要なフェーズは以下の通りです。

  1. マークフェーズ (Mark Phase):

    • GCの開始時に、プログラムの実行が一時的に停止(Stop-the-World, STW)され、ルート(グローバル変数、スタック、レジスタなど)から到達可能なすべてのオブジェクトをマークします。
    • GoのGCは、このSTWフェーズを極力短くするために、並行マーク(Concurrent Mark)を採用しています。これは、ほとんどのマーク処理がアプリケーションの実行と並行して行われることを意味します。
    • マークビット(mark bit)と呼ばれるフラグが、各オブジェクトに割り当てられ、到達可能なオブジェクトは「マーク済み」として設定されます。
  2. マークターミネーションフェーズ (Mark Termination Phase):

    • 並行マークフェーズの終了後、再度短いSTWが発生し、マーク処理の最終調整が行われます。
  3. スイープフェーズ (Sweep Phase):

    • マークされなかった(到達不能な)オブジェクトが占めるメモリ領域を解放し、フリーリストに戻します。このフェーズも、アプリケーションの実行と並行して行われることが多いです(Concurrent Sweep)。

markallocatedmarkfreed

Goのランタイム内部では、メモリの割り当て(allocation)と解放(freeing)を追跡するために、様々な関数やデータ構造が使用されます。

  • markallocated: この名前から推測されるように、メモリが割り当てられた際に、その領域が使用中であることをマークするような処理に関連する可能性があります。GoのGCでは、新しいオブジェクトがヒープに割り当てられる際に、そのオブジェクトがGCによって認識されるようにマークされることがあります。
  • markfreed: この関数は、メモリが解放されたことをマークする処理に関連します。GCのスイープフェーズや、特定のメモリ解放処理において、メモリ領域がフリーになったことをランタイムに通知するために使用されます。この関数は、解放されたメモリ領域が正しく管理されているか、あるいは二重解放などの不正な操作が行われていないかをチェックする役割も担うことがあります。

このコミットは、markfreed 関数内で、本来「解放された」メモリに関するデバッグメッセージが出力されるべき場所で、誤って「割り当てられた」メモリに関するメッセージのプレフィックスが使われていたという、命名の不整合を修正するものです。

技術的詳細

このコミットは、Goランタイムのメモリ管理、特にガベージコレクションのデバッグ出力に関するものです。src/pkg/runtime/mgc0.c は、Goランタイムのガベージコレクタのコア部分を実装しているC言語のソースファイルです。

GoのGCは、ヒープ上のオブジェクトを追跡し、不要になったものを回収します。このプロセスでは、メモリの割り当てと解放が頻繁に行われます。ランタイムは、これらの操作の健全性を保つために、様々なチェックを行います。

runtime·markfreed 関数は、特定のメモリ領域が解放されたことをランタイムに通知し、その状態を更新する役割を担っています。この関数は、解放されたポインタが有効な範囲内にあるか、あるいは既に解放されたメモリを再度解放しようとしていないかなど、メモリの整合性に関する基本的なチェックを行うことがあります。

コミット前のコードでは、runtime·markfreed 関数内で、デバッグ出力(runtime·printf)やエラーメッセージ(runtime·throw)のプレフィックスとして、誤って「markallocated」という文字列が使用されていました。

具体的には、以下の2箇所が修正されています。

  1. デバッグ出力のプレフィックス:

    if(0)
    	runtime·printf("markallocated %p+%p\\n", v, n);
    

    この行は、if(0) のため通常は実行されませんが、コンパイル時にデバッグフラグが有効になった場合などに、markfreed 関数が呼び出されたことを示すデバッグメッセージを出力するために存在します。しかし、プレフィックスが「markallocated」となっていました。

  2. エラーメッセージのプレフィックス:

    if((byte*)v+n > (byte*)runtime·mheap.arena_used || (byte*)v < runtime·mheap.arena_start)
    	runtime·throw("markallocated: bad pointer");
    

    この行は、v で示されるポインタと n で示されるサイズが、Goランタイムのヒープ領域(runtime·mheap.arena_start から runtime·mheap.arena_used の範囲)外を指している場合にエラーをスローします。これは、解放しようとしているメモリ領域が不正であることを示す重要なエラーですが、ここでもプレフィックスが「markallocated」となっていました。

この修正は、機能的な変更ではなく、デバッグメッセージの正確性を向上させるためのものです。これにより、開発者がランタイムの内部動作を追跡したり、メモリ関連の問題を診断したりする際に、より正確な情報が得られるようになります。

コアとなるコードの変更箇所

変更は src/pkg/runtime/mgc0.c ファイルの以下の部分です。

--- a/src/pkg/runtime/mgc0.c
+++ b/src/pkg/runtime/mgc0.c
@@ -2363,10 +2363,10 @@ runtime·markfreed(void *v, uintptr n)
 	uintptr *b, obits, bits, off, shift;
 
 	if(0)
-		runtime·printf("markallocated %p+%p\\n", v, n);
+		runtime·printf("markfreed %p+%p\\n", v, n);
 
 	if((byte*)v+n > (byte*)runtime·mheap.arena_used || (byte*)v < runtime·mheap.arena_start)
-		runtime·throw("markallocated: bad pointer");
+		runtime·throw("markfreed: bad pointer");
 
 	off = (uintptr*)v - (uintptr*)runtime·mheap.arena_start;  // word offset
 	b = (uintptr*)runtime·mheap.arena_start - off/wordsPerBitmapWord - 1;

コアとなるコードの解説

このコミットは、runtime·markfreed 関数内の2つの文字列リテラルを修正しています。

  1. runtime·printf の修正:

    -		runtime·printf("markallocated %p+%p\\n", v, n);
    +		runtime·printf("markfreed %p+%p\\n", v, n);
    

    この行は、デバッグ目的で markfreed 関数が呼び出された際に、解放されるメモリのアドレス (v) とサイズ (n) を出力するためのものです。元のコードでは、メッセージのプレフィックスが「markallocated」となっていましたが、これは markfreed 関数の目的(メモリの解放をマークする)と矛盾していました。修正後は「markfreed」となり、関数の意図とメッセージが一致するようになりました。if(0) のため、この行は通常は実行されませんが、デバッグビルドなどで条件が変更された場合に正しいメッセージが出力されるようになります。

  2. runtime·throw の修正:

    -		runtime·throw("markallocated: bad pointer");
    +		runtime·throw("markfreed: bad pointer");
    

    この行は、runtime·markfreed 関数に渡されたポインタ v とサイズ n が、Goランタイムの管理するヒープ領域(runtime·mheap.arena_start から runtime·mheap.arena_used の範囲)外を指している場合に、致命的なエラーをスローするためのものです。これは、不正なメモリ操作(例えば、既に解放されたメモリを再度解放しようとする、あるいはGoランタイムが管理していないメモリを解放しようとする)を検出するための重要なチェックです。元のエラーメッセージ「markallocated: bad pointer」は、このエラーが「メモリの割り当て」に関連しているかのような誤解を与える可能性がありました。修正後は「markfreed: bad pointer」となり、エラーが「メモリの解放」処理中に発生した不正なポインタに関連していることが明確になります。

これらの変更は、Goランタイムのデバッグ可能性とエラーメッセージの正確性を向上させるための、シンプルながらも重要な修正です。

関連リンク

  • Go言語の公式リポジトリ: https://github.com/golang/go
  • Goのガベージコレクションに関するドキュメント(古い情報も含まれる可能性あり):

参考にした情報源リンク

[インデックス 17774] ファイルの概要

このコミットは、Goランタイムのガベージコレクション(GC)に関連するデバッグメッセージの修正に関するものです。具体的には、runtime·markfreed 関数内で出力されるエラーメッセージのプレフィックスが誤っていたのを修正しています。

コミット

commit 139cc96a5718f59867e1a4295a29c46bc38a9a29
Author: Keith Randall <khr@golang.org>
Date:   Wed Oct 9 13:28:47 2013 -0700

    runtime: markfreed's error reports should be prefixed with "markfreed", not "markallocated".
    
    R=golang-dev, iant
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/14441055

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/139cc96a5718f59867e1a4295a29c46bc38a9a29

元コミット内容

runtime: markfreed's error reports should be prefixed with "markfreed", not "markallocated".

R=golang-dev, iant
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/14441055

変更の背景

このコミットは、Goランタイムのガベージコレクション(GC)メカニズムにおけるデバッグ出力の誤りを修正することを目的としています。runtime·markfreed 関数は、メモリが解放されたことをマークする役割を担っていますが、その内部で発生するエラーメッセージやデバッグ出力のプレフィックスが、誤って「markallocated」となっていました。これは、コードの意図とメッセージの内容が一致しないという、純粋なデバッグ上の不整合です。

このような不整合は、開発者がランタイムの動作をデバッグする際に混乱を招く可能性があります。例えば、markfreed 関数内で「markallocated: bad pointer」というエラーメッセージが表示された場合、開発者は「markallocated」という処理で問題が発生したと誤解し、問題の特定に時間を要するかもしれません。このコミットは、このような混乱を避け、デバッグの効率を向上させるために行われました。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、Go言語のランタイムとガベージコレクションの基本的な概念を理解しておく必要があります。

Goランタイム (Go Runtime)

Goランタイムは、Goプログラムの実行を管理するシステムです。これには、スケジューラ(ゴルーチンの管理)、メモリ管理(アロケータとガベージコレクタ)、チャネルの実装、システムコールインターフェースなどが含まれます。Goプログラムは、OS上で直接実行されるのではなく、このランタイム上で動作します。ランタイムはC言語とGo言語で記述されており、特にパフォーマンスが要求される部分やOSとのインタラクションが必要な部分はC言語(またはアセンブリ)で実装されています。

ガベージコレクション (Garbage Collection, GC)

ガベージコレクションは、プログラムが動的に確保したメモリ領域のうち、もはやどの部分からも参照されなくなった(到達不能になった)メモリ領域を自動的に解放し、再利用可能にするプロセスです。Go言語は、自動メモリ管理を採用しており、開発者が手動でメモリを解放する必要がありません。GoのGCは、並行(concurrent)かつ低遅延(low-latency)なマーク&スイープ(Mark-and-Sweep)方式をベースにしています。

GoのGCの主要なフェーズは以下の通りです。

  1. Concurrent, Tri-color Mark-and-Sweep: GoのGCは、並行(concurrent)、非世代別(non-generational)、非圧縮(non-compacting)のコレクタであり、トライカラーマーク&スイープアルゴリズムを使用します。

    • Concurrent: GCはアプリケーションコード(ゴルーチン)と並行して実行され、「Stop-the-World」(STW)ポーズを最小限に抑えます。STWポーズは通常、ミリ秒単位で非常に短いです。
    • Non-generational: 他の言語とは異なり、Goはすべてのオブジェクトを均一に扱い、その寿命に基づいて「若い」世代または「古い」世代に分類しません。
    • Non-compacting: GoのGCはメモリ内のオブジェクトを再配置しません。これにより、オブジェクトの移動と参照の更新に伴うオーバーヘッドが回避されます。
    • Mark-and-Sweep: このアルゴリズムは主に2つのフェーズで動作します。
      • Mark Phase: GCは、「ルート」(グローバル変数、スタックなど)から開始し、オブジェクトグラフを走査して、到達可能な(ライブな)すべてのオブジェクトを識別し、それらをライブとしてマークします。このフェーズはほとんど並行して実行されます。
      • Sweep Phase: GCはヒープをスキャンし、到達可能としてマークされなかったオブジェクト(デッドオブジェクト)からメモリを回収します。このフェーズも並行して実行されます。
    • Tri-color Abstraction: オブジェクトは、マーキングフェーズ中の到達可能性を追跡するために、3つの色(白、灰色、黒)に分類されます。白いオブジェクトは最初に収集対象と見なされ、灰色のオブジェクトは到達可能ですがまだスキャンされておらず、黒いオブジェクトは到達可能でスキャン済みです。
    • Write Barriers: 並行マークフェーズ中に一貫性を維持するために、Goはライトバリアを使用します。このメカニズムにより、オブジェクト参照への変更が追跡され、正しく処理され、ライブオブジェクトの時期尚早な回収が防止されます。
  2. Memory Allocation: Goのランタイムはヒープサイズを管理し、より多くのメモリが必要な場合はヒープを増やします。その後、GCはアクセスできないオブジェクトを識別して破棄することで、ヒープメモリを解放します。

  3. GOGC Environment Variable: GOGC 環境変数を使用すると、GCのCPU使用率とメモリオーバーヘッドのトレードオフを調整できます。GOGC の値が高いほど、GCの実行頻度は低くなりますが、より多くのメモリを使用します。その逆も同様です。

  4. Escape Analysis: Goのコンパイラはエスケープ解析を使用して、変数をヒープではなくスタックに割り当てることができるかどうかを判断します(スタックは関数が終了すると自動的に解放されます)。これにより、メモリ管理がさらに最適化されます。

markallocatedmarkfreed

Goのランタイム内部では、メモリの割り当て(allocation)と解放(freeing)を追跡するために、様々な関数やデータ構造が使用されます。

  • markallocated: この名前から推測されるように、メモリが割り当てられた際に、その領域が使用中であることをマークするような処理に関連する可能性があります。GoのGCでは、新しいオブジェクトがヒープに割り当てられる際に、そのオブジェクトがGCによって認識されるようにマークされることがあります。
  • markfreed: この関数は、メモリが解放されたことをマークする処理に関連します。GCのスイープフェーズや、特定のメモリ解放処理において、メモリ領域がフリーになったことをランタイムに通知するために使用されます。この関数は、解放されたメモリ領域が正しく管理されているか、あるいは二重解放などの不正な操作が行われていないかをチェックする役割も担うことがあります。

このコミットは、markfreed 関数内で、本来「解放された」メモリに関するデバッグメッセージが出力されるべき場所で、誤って「割り当てられた」メモリに関するメッセージのプレフィックスが使われていたという、命名の不整合を修正するものです。

技術的詳細

このコミットは、Goランタイムのメモリ管理、特にガベージコレクションのデバッグ出力に関するものです。src/pkg/runtime/mgc0.c は、Goランタイムのガベージコレクタのコア部分を実装しているC言語のソースファイルです。

GoのGCは、ヒープ上のオブジェクトを追跡し、不要になったものを回収します。このプロセスでは、メモリの割り当てと解放が頻繁に行われます。ランタイムは、これらの操作の健全性を保つために、様々なチェックを行います。

runtime·markfreed 関数は、特定のメモリ領域が解放されたことをランタイムに通知し、その状態を更新する役割を担っています。この関数は、解放されたポインタが有効な範囲内にあるか、あるいは既に解放されたメモリを再度解放しようとしていないかなど、メモリの整合性に関する基本的なチェックを行うことがあります。

コミット前のコードでは、runtime·markfreed 関数内で、デバッグ出力(runtime·printf)やエラーメッセージ(runtime·throw)のプレフィックスとして、誤って「markallocated」という文字列が使用されていました。

具体的には、以下の2箇所が修正されています。

  1. デバッグ出力のプレフィックス:

    if(0)
    	runtime·printf("markallocated %p+%p\\n", v, n);
    

    この行は、if(0) のため通常は実行されませんが、コンパイル時にデバッグフラグが有効になった場合などに、markfreed 関数が呼び出されたことを示すデバッグメッセージを出力するために存在します。しかし、プレフィックスが「markallocated」となっていました。

  2. エラーメッセージのプレフィックス:

    if((byte*)v+n > (byte*)runtime·mheap.arena_used || (byte*)v < runtime·mheap.arena_start)
    	runtime·throw("markallocated: bad pointer");
    

    この行は、v で示されるポインタと n で示されるサイズが、Goランタイムのヒープ領域(runtime·mheap.arena_start から runtime·mheap.arena_used の範囲)外を指している場合にエラーをスローします。これは、解放しようとしているメモリ領域が不正であることを示す重要なエラーですが、ここでもプレフィックスが「markallocated」となっていました。

この修正は、機能的な変更ではなく、デバッグメッセージの正確性を向上させるためのものです。これにより、開発者がランタイムの内部動作を追跡したり、メモリ関連の問題を診断したりする際に、より正確な情報が得られるようになります。

コアとなるコードの変更箇所

変更は src/pkg/runtime/mgc0.c ファイルの以下の部分です。

--- a/src/pkg/runtime/mgc0.c
+++ b/src/pkg/runtime/mgc0.c
@@ -2363,10 +2363,10 @@ runtime·markfreed(void *v, uintptr n)
 	uintptr *b, obits, bits, off, shift;
 
 	if(0)
-		runtime·printf("markallocated %p+%p\\n", v, n);
+		runtime·printf("markfreed %p+%p\\n", v, n);
 
 	if((byte*)v+n > (byte*)runtime·mheap.arena_used || (byte*)v < runtime·mheap.arena_start)
-		runtime·throw("markallocated: bad pointer");
+		runtime·throw("markfreed: bad pointer");
 
 	off = (uintptr*)v - (uintptr*)runtime·mheap.arena_start;  // word offset
 	b = (uintptr*)runtime·mheap.arena_start - off/wordsPerBitmapWord - 1;

コアとなるコードの解説

このコミットは、runtime·markfreed 関数内の2つの文字列リテラルを修正しています。

  1. runtime·printf の修正:

    -		runtime·printf("markallocated %p+%p\\n", v, n);
    +		runtime·printf("markfreed %p+%p\\n", v, n);
    

    この行は、デバッグ目的で markfreed 関数が呼び出された際に、解放されるメモリのアドレス (v) とサイズ (n) を出力するためのものです。元のコードでは、メッセージのプレフィックスが「markallocated」となっていましたが、これは markfreed 関数の目的(メモリの解放をマークする)と矛盾していました。修正後は「markfreed」となり、関数の意図とメッセージが一致するようになりました。if(0) のため、この行は通常は実行されませんが、デバッグビルドなどで条件が変更された場合に正しいメッセージが出力されるようになります。

  2. runtime·throw の修正:

    -		runtime·throw("markallocated: bad pointer");
    +		runtime·throw("markfreed: bad pointer");
    

    この行は、runtime·markfreed 関数に渡されたポインタ v とサイズ n が、Goランタイムの管理するヒープ領域(runtime·mheap.arena_start から runtime·mheap.arena_used の範囲)外を指している場合に、致命的なエラーをスローするためのものです。これは、不正なメモリ操作(例えば、既に解放されたメモリを再度解放しようとする、あるいはGoランタイムが管理していないメモリを解放しようとする)を検出するための重要なチェックです。元のエラーメッセージ「markallocated: bad pointer」は、このエラーが「メモリの割り当て」に関連しているかのような誤解を与える可能性がありました。修正後は「markfreed: bad pointer」となり、エラーが「メモリの解放」処理中に発生した不正なポインタに関連していることが明確になります。

これらの変更は、Goランタイムのデバッグ可能性とエラーメッセージの正確性を向上させるための、シンプルながらも重要な修正です。

関連リンク

  • Go言語の公式リポジトリ: https://github.com/golang/go
  • Goのガベージコレクションに関するドキュメント(古い情報も含まれる可能性あり):

参考にした情報源リンク