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[インデックス 178] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の初期開発段階におけるifおよびswitch文の文法変更を反映するために、テストケースを更新したものです。特に、以前は文法的に問題があったり、予期せぬ挙動を示していたテストファイルが修正され、test/bugsディレクトリからtest/fixedbugsディレクトリへ移動されています。これにより、Go言語の文法がより堅牢になり、コンパイラが意図した通りに動作するようになったことが示唆されます。

コミット

commit 9a58c9c52ac5dd160cb77e3a5c74922c9f88eb17
Author: Rob Pike <r@golang.org>
Date:   Mon Jun 16 12:16:11 2008 -0700

    update more tests to reflect tweaked grammar for if, switch
    
    SVN=122916

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/9a58c9c52ac5dd160cb77e3a5c74922c9f88eb17

元コミット内容

このコミットの元々の内容は、ifおよびswitch文の文法が調整されたことに伴い、既存のテストケースを更新することです。具体的には、以前の文法ではエラーとなっていた、または誤った挙動を示していたテストが、新しい文法に合わせて修正され、正しく動作するように変更されています。これにより、コンパイラの挙動とテストの期待値が一致するようになります。

変更の背景

Go言語は2007年から開発が始まり、2009年に一般公開されました。このコミットが行われた2008年6月は、Go言語がまだ活発に設計・開発されている非常に初期の段階でした。この時期には、言語の文法やセマンティクスが頻繁に変更されることが一般的でした。

このコミットの背景には、if文とswitch文の文法に関する設計上の決定と、それに対応するコンパイラの実装の変更があったと考えられます。初期のGo言語では、これらの制御構造の構文が現在とは異なっていた可能性があり、開発の過程でより簡潔で一貫性のある、あるいは特定の設計思想に合致する形に調整されたと推測されます。

特に、switch文の空のブロックやセミコロンの扱いに関する変更は、言語の初期設計における試行錯誤の一部であり、より堅牢なエラーハンドリングや明確な構文規則を確立するためのものであったと見られます。test/bugsからtest/fixedbugsへのファイルの移動は、これらの文法変更が実際にバグを修正し、言語の安定性を向上させたことを示しています。

前提知識の解説

Go言語の初期開発

Go言語は、GoogleでRob Pike、Ken Thompson、Robert Griesemerによって設計されました。彼らはC++のような既存の言語の複雑さやコンパイル時間の長さに不満を抱き、よりシンプルで効率的なシステムプログラミング言語を目指しました。初期のGoは、現在のGoとは異なる文法や機能を持っており、開発が進むにつれて多くの変更が加えられました。このコミットは、その進化の過程の一部を示しています。

if文とswitch文の文法

Go言語のif文とswitch文は、他の多くのC系言語とは異なる特徴を持っています。

  • if: 条件式の括弧が不要であること、初期化ステートメントを記述できることなどが特徴です。
  • switch: break文がデフォルトで不要であること(フォールスルーしない)、複数の式をカンマで区切って指定できること、型スイッチや式なしスイッチなど多様な形式があることが特徴です。

このコミットが行われた時期には、これらの文法の詳細がまだ固まっておらず、特に空のswitchブロックや、セミコロンの配置に関する規則が調整されていた可能性があります。

test/bugstest/fixedbugsディレクトリ

Go言語のソースコードリポジトリには、言語のテストスイートが含まれています。

  • test/bugs: 過去に発見されたバグを再現するためのテストケースが置かれるディレクトリです。これらのテストは、バグが修正されるまでは失敗することが期待されます。
  • test/fixedbugs: バグが修正された後に、その修正が維持されていることを確認するためのテストケースが置かれるディレクトリです。これらのテストは、常に成功することが期待されます。

このコミットでファイルがtest/bugsからtest/fixedbugsへ移動されたことは、関連する文法上の問題が解決され、テストが成功するようになったことを意味します。

golden.outファイル

golden.outファイルは、Go言語のテストスイートにおいて、特定のテストの期待される出力("golden" output)を記録するファイルです。テストが実行されると、その出力がgolden.outの内容と比較され、一致しない場合はテストが失敗します。このファイルが更新されたということは、文法変更によって一部のテストの期待される出力が変わったことを示しています。

技術的詳細

このコミットの技術的詳細は、Go言語のコンパイラがifおよびswitch文をどのようにパースし、意味解析するかという点に集約されます。

if文とswitch文の文法調整

コミットメッセージにある「tweaked grammar for if, switch」は、これらの制御構造のBNF(バッカス・ナウア記法)またはそれに準ずる形式で定義された文法規則が変更されたことを意味します。

具体的な変更内容はコミットログからは読み取れませんが、test/bugs/bug003.goの変更から推測できます。元のコードはswitch ; {}となっており、コメントには「// compiles; should be an error (should be simplevardecl before ;)」とあります。これは、セミコロンの後に変数の宣言が期待されるにもかかわらず、空のブロックが続いているため、文法的に不正であるべきだがコンパイルが通ってしまっていた、という状況を示しています。

変更後のコードはswitch ; { case true: return; default: return }となっています。これは、セミコロンの後にcaseラベルとステートメントが続く、より完全なswitch文の形式です。この変更は、コンパイラがswitch文の構造、特にセミコロンの後の部分をより厳密にチェックするようになったことを示唆しています。

初期のGo言語では、ifswitchの条件式に初期化ステートメントを置くことが可能でしたが、その構文の厳密さや、セミコロンの扱い(特にswitch文のヘッダ部分)について、設計上の調整が行われたと考えられます。これにより、曖昧な構文が排除され、コンパイラがより明確なエラーメッセージを出力できるようになりました。

test/bugs/bug006.goの変更

test/bugs/bug006.goからは、/* ... */で囲まれたコメントブロックが削除されています。このコメントは、iotaと定数式に関する複数のエラーメッセージを列挙しており、bug6.go:4: illegal combination of literals 0 0bug6.go:4: expression must be a constantといったエラーが示されています。このコメントの削除は、これらのエラーがもはや発生しない、つまりiotaと定数式の扱いに関するバグが修正されたか、または文法変更によってこれらのケースが正しく処理されるようになったことを意味します。

golden.outの更新

golden.outの変更は、テストの出力が新しい文法とコンパイラの挙動に合わせて調整されたことを明確に示しています。特に、bugs/bug001.goからbug004.goまでのエントリが削除され、代わりにfixedbugs/bug001.goからfixedbugs/bug004.goまでのエントリが追加されています。これは、これらのテストがもはやバグを再現するものではなく、修正された挙動を検証するテストとして機能するようになったことを示しています。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットでは、Go言語のテストスイート内のファイルが変更されています。Go言語のコンパイラやランタイムのコアコード自体への直接的な変更は含まれていませんが、これらのテストの変更は、コンパイラのパースおよび意味解析ロジックの変更を反映したものです。

変更されたファイルは以下の通りです。

  • test/bugs/bug006.go: 削除された行は、以前のiotaと定数式に関するバグのコメントです。

    --- a/test/bugs/bug006.go
    +++ b/test/bugs/bug006.go
    @@ -16,17 +16,3 @@ func main() int {
     	if g != 4.5 { print " fail\n"; return 1; }
     	return 0;
     }
    -/*
    -should 4.5 * iota be ok? perhaps, perhaps not. but (all!) error msgs are bad:
    -bug6.go:4: illegal combination of literals 0 0
    -bug6.go:4: expression must be a constant
    -bug6.go:4: expression must be a constant
    -bug6.go:4: expression must be a constant
    -bug6.go:4: expression must be a constant
    -bug6.go:4: expression must be a constant
    -bug6.go:4: expression must be a constant
    -bug6.go:4: expression must be a constant
    -bug6.go:4: expression must be a constant
    -bug6.go:4: expression must be a constant
    -bug6.go:4: fatal error: too many errors
    -*/
    
  • test/{bugs => fixedbugs}/bug001.go: ファイル名のみ変更。

  • test/{bugs => fixedbugs}/bug002.go: ファイル名のみ変更。

  • test/{bugs => fixedbugs}/bug003.go: ファイル名変更と内容変更。switch文の空のブロックが修正されています。

    --- a/test/bugs/bug003.go
    +++ b/test/fixedbugs/bug003.go
    @@ -7,9 +7,8 @@
     package main
     
     func main() {
    -	switch ; {}  // compiles; should be an error (should be simplevardecl before ;)
    +	switch ; { case true: return; default: return }
     }
     /*
    -bug003.go:6: switch statement must have case labels
     bug003.go:6: fatal error: walkswitch: not case EMPTY
     */
    

    元のコメント// compiles; should be an error (should be simplevardecl before ;)は、このswitch文がコンパイルできてしまうが、本来はエラーであるべきだったことを示しています。変更後のコードは、switch文が有効なcaseラベルを持つように修正されています。また、元のエラーメッセージbug003.go:6: switch statement must have case labelsが削除されていることから、このエラーがもはや適切ではないか、別の方法で処理されるようになったことがわかります。

  • test/{bugs => fixedbugs}/bug004.go: ファイル名のみ変更。

  • test/golden.out: テストの期待される出力が更新されています。

    --- a/test/golden.out
    +++ b/test/golden.out
    @@ -114,19 +114,6 @@ abcxyz-abcxyz-abcxyz-abcxyz-abcxyz-abcxyz-abcxyz
     
     =========== ken/strvar.go
     
    -=========== bugs/bug001.go
    -BUG: known to succeed incorrectly
    -
    -=========== bugs/bug002.go
    -BUG: known to succeed incorrectly
    -
    -=========== bugs/bug003.go
    -bugs/bug003.go:6: switch statement must have case labels
    -BUG: fatal error
    -
    -=========== bugs/bug004.go
    -BUG: known to succeed incorrectly
    -
     =========== bugs/bug006.go
     zero
      fail
    @@ -240,6 +227,14 @@ BUG: known to fail incorrectly
     
     =========== fixedbugs/bug000.go
     
    +=========== fixedbugs/bug001.go
    +
    +=========== fixedbugs/bug002.go
    +
    +=========== fixedbugs/bug003.go
    +
    +=========== fixedbugs/bug004.go
    +
     =========== fixedbugs/bug005.go
     
     =========== fixedbugs/bug007.go
    

    bugs/bug001.goからbug004.goまでのエントリが削除され、それらが「BUG: known to succeed incorrectly」や「BUG: fatal error」としてマークされていた記述がなくなっています。代わりに、fixedbugs/bug001.goからfixedbugs/bug004.goまでのエントリが追加されており、これらにはバグに関する注釈がありません。これは、これらのテストが修正され、期待通りに動作するようになったことを示しています。

コアとなるコードの解説

このコミット自体は、Go言語のコンパイラやランタイムの「コアとなるコード」を直接変更するものではありません。しかし、テストコードの変更は、Goコンパイラのフロントエンド(字句解析、構文解析、意味解析)におけるif文とswitch文の処理ロジックが変更されたことを強く示唆しています。

具体的には、以下の点が変更されたと推測されます。

  1. switch文の構文解析の厳密化: test/bugs/bug003.goの変更から、コンパイラがswitch文のヘッダ部分(セミコロンの後)の構文をより厳密にチェックするようになったことがわかります。以前はswitch ; {}のような不正な構文がコンパイルできてしまっていたが、新しい文法ではこれがエラーとして扱われるか、あるいはより明確なcaseラベルの存在を要求するようになったと考えられます。
  2. iotaと定数式の評価の改善: test/bugs/bug006.goのコメント削除は、iotaキーワードと定数式の組み合わせに関するコンパイラのバグが修正されたことを示唆しています。これにより、コンパイラがこれらの式を正しく評価し、適切なエラーメッセージを生成できるようになりました。
  3. エラーメッセージの改善: 削除されたコメントやgolden.outの変更から、コンパイラが生成するエラーメッセージがより正確で分かりやすいものに改善された可能性があります。これは、開発者が文法エラーを特定しやすくなるために非常に重要です。

これらの変更は、Go言語の初期段階における言語設計の成熟度を高め、コンパイラの堅牢性と正確性を向上させるための重要なステップでした。

関連リンク

  • Go言語の公式ドキュメント: https://go.dev/doc/
  • Go言語の仕様: https://go.dev/ref/spec (このコミット時点の仕様は現在のものとは異なりますが、言語設計の原則を理解するのに役立ちます)
  • Go言語の初期のコミット履歴を辿ることで、文法変更の具体的な内容をさらに深く掘り下げることができます。

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式リポジトリ (GitHub): https://github.com/golang/go
  • Go言語の歴史に関する記事やドキュメント (例: "The Evolution of Go" by Robert Griesemer, Rob Pike, Ken Thompson)
  • Go言語の初期のメーリングリストやデザインドキュメント(もし公開されていれば)
  • Go言語のコンパイラに関する技術文書(例: "Go Compiler Internals")I have provided the detailed explanation as requested. I will now output it.