[インデックス 17851] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ライブラリ encoding/xml
パッケージ内のドキュメントコメントの修正に関するものです。具体的には、XML要素の文字データ(chardata)を処理する際の構造体タグの記述が誤っていたのを訂正しています。
コミット
commit 2e984c2180ae6ae2b1cc678ca9f5b4d6b0fc3747
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date: Tue Oct 29 17:11:25 2013 -0400
encoding/xml: fix doc comment
The tag is ",chardata" not "chardata".
Fixes #6631.
R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/19300046
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/2e984c2180ae6ae2b1cc678ca9f5b4d6b0fc3747
元コミット内容
encoding/xml: fix doc comment
The tag is ",chardata" not "chardata".
Fixes #6631.
R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/19300046
変更の背景
このコミットは、Go言語の encoding/xml
パッケージのドキュメントコメントにおける誤記を修正するために行われました。具体的には、XML要素の文字データ(chardata)をGoの構造体にアンマーシャルする際に使用するタグの記述が不正確でした。
encoding/xml
パッケージでは、XMLデータをGoの構造体にマッピングする際に、構造体フィールドのタグを使用してXML要素や属性を対応付けます。文字データ(XML要素の開始タグと終了タグの間に含まれるテキストコンテンツ)を構造体フィールドに格納する場合、特定のタグを使用します。このドキュメントコメントでは、そのタグが「"chardata"」と誤って記載されていましたが、実際には「",chardata"」が正しい形式でした。
この誤記は、ユーザーがドキュメントを読んで encoding/xml
パッケージを使用する際に混乱を招く可能性がありました。特に、XMLの文字データを構造体にバインドしようとした際に、ドキュメント通りのタグを使用しても期待通りに動作しないという問題が発生する可能性がありました。コミットメッセージに Fixes #6631
とあることから、この問題はGoのIssueトラッカーで報告され、修正が必要と判断されたことが伺えます。
前提知識の解説
Go言語の encoding/xml
パッケージ
encoding/xml
パッケージは、Go言語でXMLデータをエンコード(Goの構造体からXMLへ)およびデコード(XMLからGoの構造体へ)するための機能を提供します。これは、Webサービスとの連携、設定ファイルの読み書き、データ交換など、XML形式のデータを扱う多くのアプリケーションで利用されます。
XMLの構造と文字データ(Character Data: chardata)
XMLドキュメントは、要素、属性、テキスト(文字データ)、コメント、処理命令などから構成されます。
- 要素:
<tag>内容</tag>
のように、開始タグと終了タグで囲まれた構造。 - 属性: 要素の開始タグ内に
name="value"
の形式で記述される追加情報。 - 文字データ(chardata): 要素の開始タグと終了タグの間に含まれる純粋なテキストコンテンツ。例えば、
<book>Go Programming</book>
の場合、「Go Programming」が文字データです。
Go構造体タグ
Go言語では、構造体のフィールドに「タグ」と呼ばれる文字列を付与することができます。このタグは、リフレクションAPIを通じて実行時にアクセス可能であり、主にデータエンコーディング/デコーディング(JSON、XMLなど)やORM(Object-Relational Mapping)ライブラリなどで、構造体フィールドと外部データ形式の間のマッピングを定義するために使用されます。
encoding/xml
パッケージの場合、構造体タグは以下の形式でXML要素や属性とのマッピングを指示します。
type MyStruct struct {
Field1 string `xml:"element_name"` // XML要素名にマッピング
Field2 string `xml:"attr,attr_name"` // XML属性にマッピング
Field3 string `xml:",chardata"` // XML要素の文字データにマッピング
Field4 string `xml:"-"` // このフィールドはXMLに含めない
}
ここで重要なのは、xml:",chardata"
というタグです。これは、その構造体フィールドが、親XML要素の開始タグと終了タグの間に含まれる文字データ(テキストコンテンツ)を格納するために使用されることを encoding/xml
パッケージに指示します。カンマの前の空文字列は、要素名が指定されていないことを意味し、カンマの後の chardata
が特別な指示子となります。
技術的詳細
このコミットの技術的詳細は、Go言語の encoding/xml
パッケージがXMLの文字データをGoの構造体フィールドにアンマーシャルする際の内部的な動作と、そのドキュメント化の正確性に関わっています。
encoding/xml
パッケージの Unmarshal
関数は、XMLストリームを読み込み、指定されたGo構造体のフィールドにデータをマッピングします。このマッピングは、構造体フィールドに付与された xml
タグによって制御されます。
XML要素の文字データを取得するためのメカニズムは、特定のタグ ",chardata"
を使用することによって実現されます。このタグがフィールドに存在する場合、Unmarshal
関数は現在のXML要素の開始タグと終了タグの間のすべての文字データをそのフィールドに蓄積します。このフィールドは []byte
または string
型である必要があります。
元のドキュメントコメントでは、このタグが誤って tag "chardata"
と記述されていました。これは、Goの構造体タグの一般的な構文(key:"value"
または key:"name,option"
)から逸脱しており、特にオプションを示すためのカンマが欠落していました。
この修正は、単なるタイポの修正以上の意味を持ちます。正確なドキュメントは、開発者がライブラリを正しく使用するための唯一の情報源となることが多いため、このような誤記は開発者の生産性を著しく低下させる可能性があります。特に、encoding/xml
のようなデータシリアライゼーション/デシリアライゼーションライブラリでは、タグのわずかな違いが期待通りの動作をしない原因となるため、ドキュメントの正確性は極めて重要です。
この修正は、src/pkg/encoding/xml/read.go
ファイル内のコメントブロックに対して行われました。これは、コードの動作自体を変更するものではなく、その動作を説明するドキュメントの正確性を向上させるものです。
コアとなるコードの変更箇所
変更は src/pkg/encoding/xml/read.go
ファイルの1箇所のみです。
--- a/src/pkg/encoding/xml/read.go
+++ b/src/pkg/encoding/xml/read.go
@@ -53,7 +53,7 @@ import (
// Unmarshal records the attribute value in that field.
//
// * If the XML element contains character data, that data is
-// accumulated in the first struct field that has tag "chardata".
+// accumulated in the first struct field that has tag ",chardata".
// The struct field may have type []byte or string.
// If there is no such field, the character data is discarded.
//
コアとなるコードの解説
変更された行は、encoding/xml
パッケージの Unmarshal
関数の動作を説明するドキュメントコメントの一部です。
元の行:
// accumulated in the first struct field that has tag "chardata".
修正後の行:
// accumulated in the first struct field that has tag ",chardata".
この変更は、"chardata"
という文字列の前にカンマを追加しただけです。このカンマは、Goの構造体タグの構文において、フィールド名が省略され、その後にオプションが続くことを示します。encoding/xml
パッケージでは、xml:"name,option"
の形式でタグを解釈し、name
が空の場合は要素名に依存せず、option
が特別な意味を持つことを示します。この場合、chardata
はそのフィールドがXML要素の文字データを保持することを示す特別なオプションです。
この修正により、encoding/xml
パッケージのドキュメントが、実際のタグの動作と一致するようになり、開発者がXMLの文字データをGoの構造体に正しくマッピングする方法を理解する上で非常に役立ちます。
関連リンク
- Go Issue #6631: https://github.com/golang/go/issues/6631
- Go CL 19300046: https://golang.org/cl/19300046 (Goのコードレビューシステムにおける変更リスト)
参考にした情報源リンク
- Go言語
encoding/xml
パッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/encoding/xml (現在の最新ドキュメント) - Go言語の構造体タグに関する一般的な情報 (例:
json
タグ): https://go.dev/blog/json (JSONに関するブログ記事だが、タグの概念は共通) - XMLの文字データに関する一般的な情報: https://www.w3.org/TR/xml/#charsets (W3C XML勧告)
- Go言語のIssueトラッカー: https://github.com/golang/go/issues
- Go言語のコードレビューシステム (Gerrit): https://go-review.googlesource.com/
- Go言語のコミット履歴: https://github.com/golang/go/commits/master
- Web検索: "Go encoding/xml chardata tag", "Go issue 6631"