[インデックス 17898] ファイルの概要
このコミットは、Go言語のバージョン管理システムにおいて、go1.2
リリースを正式にタグ付けするものです。具体的には、リポジトリの .hgtags
ファイルに go1.2
および release
タグを追加し、特定のコミットハッシュに関連付けています。これは、Go 1.2の安定版リリースが完了し、その時点のコードベースを永続的にマークするための重要なステップです。
コミット
commit de0fd9aceeeaccee8c1851c22eb8bc1b2ad913c7
Author: Andrew Gerrand <adg@golang.org>
Date: Mon Dec 2 09:06:41 2013 +1100
tag go1.2
R=golang-dev, dsymonds, alex.brainman
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/35000043
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/de0fd9aceeeaccee8c1851c22eb8bc1b2ad913c7
元コミット内容
tag go1.2
このコミットは、Go 1.2のリリースをタグ付けすることを目的としています。
変更の背景
このコミットは、Go 1.2の正式リリースに伴うものです。ソフトウェア開発において、特定の安定したバージョンをリリースする際には、その時点のソースコードに「タグ」を付けることが一般的な慣習です。これにより、将来的にその特定のリリース時点のコードベースを正確に参照したり、チェックアウトしたりすることが可能になります。
Goプロジェクトは、かつてMercurial(Hg)という分散型バージョン管理システムを使用していました。Mercurialでは、タグ情報は通常、リポジトリ内の .hgtags
という特殊なファイルに保存されます。このコミットは、Go 1.2のリリース候補版(rc)が最終的なテストと検証を終え、安定版として公開される準備が整ったことを示しています。そのため、go1.2
というタグと、現在の安定版であることを示す release
タグが、対応するコミットハッシュ(87dea3f5ebe7510998c84dbeeec89382b7d42f9c
)に紐付けられて追加されました。
前提知識の解説
バージョン管理システムとタグ
バージョン管理システム(VCS: Version Control System)は、ソフトウェア開発においてソースコードやその他のファイルの変更履歴を管理するためのツールです。GitやMercurialなどが代表的です。VCSでは、コードの変更は「コミット」として記録され、各コミットには一意のハッシュ値が割り当てられます。
「タグ(Tag)」は、VCSにおける特定のコミットに意味のある名前を付ける機能です。これは、リリースの時点や重要なマイルストーンなど、後で簡単に参照したい特定の時点のコードベースをマークするために使用されます。例えば、「v1.0.0」や「release-2023-10-26」のようなタグが付けられます。タグは、ブランチとは異なり、通常は移動しない静的な参照点です。
Mercurial (.hgtags
)
Goプロジェクトは、2019年にGitに移行するまで、Mercurialを主要なバージョン管理システムとして使用していました。Mercurialでは、リポジトリのルートディレクトリに .hgtags
というファイルが存在し、このファイルがリポジトリ内のすべてのタグ情報をプレーンテキスト形式で保持していました。各行は [コミットハッシュ] [タグ名]
の形式で記述されます。
このファイルは、Mercurialがタグを管理するための内部的なメカニズムの一部であり、Gitにおける軽量タグ(lightweight tag)に似た概念です。Gitの注釈付きタグ(annotated tag)とは異なり、タグ作成者や日付などの追加メタデータは含まれません。
Goのリリースサイクル
Go言語は、通常6ヶ月ごとにメジャーリリースを行います。各メジャーリリースには、Go 1.x
のようなバージョン番号が付けられます。リリースプロセスには、複数のリリース候補版(Release Candidate, RC)が含まれることが多く、これらは安定版リリースの前にコミュニティによるテストとフィードバックを募るために公開されます。最終的な安定版リリースが決定されると、その時点のコードベースに正式なタグが付けられ、公開されます。
技術的詳細
このコミットの技術的な詳細は、Mercurialのタグ管理メカニズムと、Goプロジェクトのリリース管理プロセスに集約されます。
-
.hgtags
ファイルの役割:.hgtags
ファイルは、Mercurialリポジトリにおけるタグの「真実の源」として機能します。このファイルにエントリを追加することは、そのリポジトリの履歴に新しいタグを永続的に記録することを意味します。このコミットでは、87dea3f5ebe7510998c84dbeeec89382b7d42f9c
というコミットハッシュに対して、go1.2
とrelease
という2つのタグが追加されています。 -
複数タグの追加: 同じコミットハッシュに対して複数のタグを付けることは可能です。ここでは、
go1.2
が具体的なバージョン番号を示し、release
がそのコミットが現在の安定版リリースであることを示す汎用的なタグとして機能しています。これは、スクリプトや自動化ツールが常に最新の安定版リリースを参照するためにrelease
タグを使用できるという利点があります。 -
リリース候補版からの移行: コミットの差分を見ると、
go1.2rc5
のタグの後にgo1.2
とrelease
タグが追加されていることがわかります。これは、Go 1.2のリリース候補版(rc)フェーズが終了し、最終的な安定版がリリースされたことを明確に示しています。以前のrelease
タグ(414057ac1f1fc850957088e4c5e95cdbccd2d594 release
)が削除され、新しいコミットハッシュにrelease
タグが付け替えられているのは、release
タグが常に最新の安定版を指すように更新されるためです。 -
コミットハッシュの重要性: タグは特定のコミットハッシュに紐付けられます。このコミットで追加された
87dea3f5ebe7510998c84dbeeec89382b7d42f9c
は、Go 1.2の最終的なソースコードの状態を表すコミットのハッシュです。このハッシュを知ることで、開発者やユーザーはGo 1.2がリリースされた時点の正確なコードベースを再現できます。
このコミットは、コードの機能的な変更ではなく、プロジェクトのライフサイクル管理における重要なマイルストーンを示すものです。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/.hgtags
+++ b/.hgtags
@@ -119,8 +119,9 @@ dc5e410f0b4c32ab11dc992593a2bcf5f607381b weekly
e570c2daeaca10663d36d6dee7f8d1d76e8f7b92 go1.1
a7bd9a33067b3537351276e0178a045748ad046a go1.1.1
414057ac1f1fc850957088e4c5e95cdbccd2d594 go1.1.2
-414057ac1f1fc850957088e4c5e95cdbccd2d594 release
45475ec7eab1c588fc4210b34d5901b15ca1e479 go1.2rc2
7422495a6bf9d5e84828ee466406293be84f565a go1.2rc3
94af58f9fd71feda5c316d791ed11aaf015f9e82 go1.2rc4
b3d5a20b070a92da2458c5788694d1359b353f4a go1.2rc5
+87dea3f5ebe7510998c84dbeeec89382b7d42f9c go1.2
+87dea3f5ebe7510998c84dbeeec89382b7d42f9c release
コアとなるコードの解説
この変更は、.hgtags
ファイルに対するものです。
-414057ac1f1fc850957088e4c5e95cdbccd2d594 release
: 以前のrelease
タグが削除されています。これは、release
タグが常に最新の安定版を指すように、古いコミットハッシュから切り離されたことを意味します。+87dea3f5ebe7510998c84dbeeec89382b7d42f9c go1.2
: 新しい行が追加され、コミットハッシュ87dea3f5ebe7510998c84dbeeec89382b7d42f9c
にgo1.2
というタグが関連付けられています。これは、Go 1.2の正式リリースをマークするものです。+87dea3f5ebe7510998c84dbeeec89382b7d42f9c release
: 同じコミットハッシュ87dea3f5ebe7510998c84dbeeec89382b7d42f9c
にrelease
というタグも追加されています。これにより、このコミットが現在の安定版リリースであることを示しています。
この変更により、Mercurialリポジトリのタグ履歴が更新され、Go 1.2のリリースが正式に記録されました。
関連リンク
- GitHub上のコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/de0fd9aceeeaccee8c1851c22eb8bc1b2ad913c7
- Gerrit Code Review (CL): https://golang.org/cl/35000043
参考にした情報源リンク
- Mercurial Documentation (Tags): https://www.mercurial-scm.org/wiki/Tags (一般的なMercurialのタグに関する情報)
- Go Release History: https://go.dev/doc/devel/release (Goのリリースに関する公式情報)
- Go Blog (Go 1.2 Release Announcement - 2013年12月): https://go.dev/blog/go1.2 (Go 1.2リリース時の公式ブログ記事)