[インデックス 17934] ファイルの概要
このコミットは、Goプロジェクトのバージョン管理システムの設定ファイルである.hgignore
を更新し、liblink/anames?.c
というパターンに一致するファイルを無視するように変更しています。これは、Mercurialリポジトリにおいて、特定の生成ファイルがバージョン管理下に誤って含まれることを防ぐための修正です。
コミット
commit dba4d11e0809547296e051ce58eb04ab10e549da
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date: Mon Dec 9 18:40:54 2013 -0500
.hgignore: ignore liblink/anames?.c
R=golang-dev, minux.ma, iant
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/36300045
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/dba4d11e0809547296e051ce58eb04ab10e549da
元コミット内容
このコミットの元々の内容は、Mercurialリポジトリの無視リストである.hgignore
ファイルにliblink/anames?.c
というエントリを追加することです。これにより、liblink
ディレクトリ配下にあるanames
で始まり、その後に任意の1文字が続き、.c
で終わるファイル(例: anames0.c
, anames1.c
など)がバージョン管理の対象から除外されます。
特筆すべきは、このコミットのdiffにマージコンフリクトマーカー(<<<<<<< local
, =======
, >>>>>>> other
)が含まれている点です。これは、このコミット自体が、src/liblink/anames?.c
の無視設定に関して発生したマージコンフリクトを解決した結果であることを示唆しています。つまり、異なるブランチで同じ行に異なる変更が加えられ、それを統合する際に手動で解決された痕跡です。最終的に、src/liblink/anames?.c
が.hgignore
に追加されています。
変更の背景
Goプロジェクトは、当初Mercurialを主要なバージョン管理システムとして使用していました。.hgignore
ファイルは、Mercurialが追跡すべきではないファイルやディレクトリを指定するために用いられます。これには、ビルドによって生成される一時ファイル、コンパイル済みバイナリ、ログファイルなどが含まれます。
liblink/anames?.c
のようなファイルは、Goコンパイラやリンカのビルドプロセス中に生成される可能性のある中間ファイルや派生ファイルであると考えられます。これらのファイルはソースコードではなく、ビルド環境やツールチェーンのバージョンによって内容が変わりうるため、バージョン管理システムで追跡する必要はありません。むしろ、追跡するとリポジトリの肥大化や、異なる環境でのビルドの不整合を引き起こす可能性があります。
このコミットは、おそらく開発者がビルドプロセス中にこれらのファイルが生成され、Mercurialによって「未追跡の変更」として認識されることに気づいたため、それらを明示的に無視リストに追加することで、クリーンな作業ツリーを維持し、開発ワークフローを改善することを目的としています。マージコンフリクトの解決という側面は、複数の開発者が同時に.hgignore
を更新しようとしたか、あるいはブランチ統合の過程で同様の無視ルールが異なる方法で追加されようとしたことを示しています。
前提知識の解説
Mercurialと.hgignore
- Mercurial: Gitと同様の分散型バージョン管理システム(DVCS)です。Goプロジェクトは初期にMercurialを使用していましたが、後にGitに移行しました。
- .hgignore: Mercurialリポジトリのルートディレクトリに配置される設定ファイルで、Mercurialが無視すべきファイルやディレクトリのパターンを記述します。これはGitにおける
.gitignore
に相当します。パターンは正規表現やシェルグロブ形式で記述できます。
Goのビルドシステムとliblink
- Goのビルドプロセス: Goのソースコードから実行可能ファイルを生成するプロセスは、Goツールチェーン(コンパイラ、リンカなど)によって行われます。このプロセスでは、中間ファイルや一時ファイルが生成されることがあります。
- liblink: Goのツールチェーンの一部であり、リンカに関連するライブラリやコードを指します。Goのリンカは、コンパイルされたオブジェクトファイルを結合して実行可能ファイルを生成する役割を担います。
- anames?.c: この命名パターンは、C言語のソースファイルであり、Goのリンカ(
liblink
)の内部で利用される、何らかの「名前」に関するデータや定義を生成するコード、あるいはその生成されたファイル自体である可能性が高いです。例えば、Goの内部的なシンボル名や型名をC言語のコードとして表現し、リンカが利用できるようにするための自動生成ファイルなどが考えられます。?
は単一の任意の文字にマッチするグロブパターンであり、anames0.c
,anames1.c
といった複数のバリアントが存在することを示唆しています。
マージコンフリクトマーカー
- マージコンフリクト: バージョン管理システムにおいて、同じファイルの同じ箇所を複数のブランチで異なる方法で変更し、それらを統合(マージ)しようとした際に発生する競合状態です。システムはどちらの変更を採用すべきか自動的に判断できないため、開発者による手動での解決が必要になります。
- コンフリクトマーカー: マージコンフリクトが発生した際、バージョン管理システムは競合する部分を特殊なマーカーで囲んでファイルに書き込みます。
<<<<<<< HEAD
または<<<<<<< local
: 現在のブランチ(またはマージ元)の変更の開始。=======
: 競合する変更の区切り。>>>>>>> branch_name
または>>>>>>> other
: マージしようとしているブランチ(またはマージ先)の変更の終了。 このコミットのdiffに含まれるこれらのマーカーは、このコミットがまさにその手動解決の結果であることを示しています。
技術的詳細
このコミットは、Mercurialの無視パターンに関するものです。.hgignore
ファイルは、Mercurialがリポジトリの状態をスキャンする際に、特定のファイルやディレクトリを無視するためのルールを定義します。これにより、開発者はビルド成果物、一時ファイル、IDEの設定ファイルなど、バージョン管理下に置くべきではないファイルを誤ってコミットするのを防ぐことができます。
このコミットで追加されたsrc/liblink/anames?.c
というパターンは、Goのソースツリー内のsrc/liblink
ディレクトリに存在する、anames
で始まり、その後に任意の1文字が続き、.c
で終わるすべてのファイルを無視することを意味します。
Mercurialの無視パターンは、通常、以下のいずれかの形式で記述されます。
- glob: シェルで使われるワイルドカード(
*
,?
,[]
など)を使用します。このコミットで使用されているanames?.c
はglobパターンです。 - regexp: 正規表現を使用します。
この変更は、Goのビルドシステムがliblink
のコンパイル過程でこれらの.c
ファイルを生成しており、それらがソースコードの一部ではないため、バージョン管理から除外する必要があるという認識に基づいています。これにより、開発者の作業ディレクトリがクリーンに保たれ、不必要なファイルの変更がhg status
などのコマンドで表示されなくなり、開発体験が向上します。
また、diffに含まれるマージコンフリクトマーカーは、このコミットが単なる追加ではなく、既存の.hgignore
に対する複数の変更が競合した結果として、src/liblink/anames?.c
の無視ルールが最終的に採用されたことを示しています。これは、Goプロジェクトの活発な開発と、複数の開発者が同時にリポジトリの構成ファイルを更新していた状況を反映しています。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/.hgignore
+++ b/.hgignore
@@ -33,7 +33,10 @@ misc/goplay/goplay
misc/osx/*.pkg
misc/osx/*.dmg
src/cmd/?a/y.output
+<<<<<<< local
+=======
src/liblink/anames?.c
+>>>>>>> other
src/cmd/cc/y.output
src/cmd/cgo/zdefaultcc.go
src/cmd/dist/dist.dSYM
@@ -41,6 +44,7 @@ src/cmd/gc/mkbuiltin1
src/cmd/gc/opnames.h
src/cmd/gc/y.output
src/cmd/go/zdefaultcc.go
+src/liblink/anames?.c
src/pkg/go/doc/headscan
src/pkg/runtime/goc2c
src/pkg/runtime/mkversion
コアとなるコードの解説
変更は.hgignore
ファイルに対して行われています。
-
マージコンフリクトの解決: 元の
.hgignore
の33行目付近に、src/cmd/?a/y.output
というエントリがありました。このコミットでは、その直後にマージコンフリクトマーカー(<<<<<<< local
,=======
,>>>>>>> other
)が存在し、その間にsrc/liblink/anames?.c
という行が挿入されています。これは、異なるブランチで.hgignore
の同じ箇所に異なる変更が加えられ、その競合を手動で解決した結果、src/liblink/anames?.c
が最終的に採用されたことを示しています。 -
src/liblink/anames?.c
の追加: 最終的に、ファイルの末尾近く、src/cmd/go/zdefaultcc.go
の後に、src/liblink/anames?.c
という行が追加されています。これは、src/liblink/anames0.c
,src/liblink/anames1.c
などのファイルがMercurialによって無視されるようにするためのルールです。
この変更は、Goのビルドプロセスによって生成される可能性のある中間ファイルが、バージョン管理システムによって誤って追跡されるのを防ぐためのものです。これにより、リポジトリのクリーンさが保たれ、開発者の作業環境が整理されます。
関連リンク
- Mercurial 公式サイト: https://www.mercurial-scm.org/
- Mercurial .hgignore ドキュメント: https://www.mercurial-scm.org/wiki/.hgignore
- Go プロジェクトの初期のバージョン管理に関する議論(MercurialからGitへの移行など)は、Goのメーリングリストやデザインドキュメントで確認できる場合があります。
参考にした情報源リンク
- GoプロジェクトのGitHubリポジトリ: https://github.com/golang/go
- Goのコードレビューシステム (Gerrit) の変更リスト (CL): https://golang.org/cl/36300045 (コミットメッセージに記載されているリンク)
- Mercurialのドキュメントやコミュニティリソース。
- Goのビルドシステムやツールチェーンに関する一般的な知識。
- バージョン管理システムにおけるマージコンフリクトの概念。