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[インデックス 17979] ファイルの概要

このコミットは、Goプロジェクトのバージョン管理システムであるMercurial (hg) における無視ファイル .hgignore から、マージコンフリクトマーカーに関連するエントリを削除するものです。これにより、Mercurialが一時的に生成するマージマーカーファイルを誤ってバージョン管理対象として認識しないようにし、クリーンなリポジトリ状態を維持することを目的としています。

コミット

  • コミットハッシュ: 1e6996ff2e4360db0b6f87f11688d7b23831be06
  • 作者: Ian Lance Taylor iant@golang.org
  • コミット日時: 2013年12月12日 木曜日 17:25:02 -0800
  • コミットメッセージ: .hgignore: remove merge markers

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/1e6996ff2e4360db0b6f87f11688d7b23831be06

元コミット内容

.hgignore: remove merge markers

R=golang-dev, dsymonds
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/40720049

変更の背景

この変更の背景には、Mercurial (hg) というバージョン管理システムにおけるマージ操作の挙動と、.hgignore ファイルの役割が深く関わっています。

Goプロジェクトは、かつてGitに移行する前はMercurialを使用していました。Mercurialでブランチをマージする際、コンフリクト(競合)が発生すると、Mercurialはコンフリクトを解決するために一時的なマーカーをファイル内に挿入します。これらのマーカーは、Gitにおける<<<<<<<, =======, >>>>>>> と同様に、コンフリクトしているコードの異なるバージョンを示すものです。

以前の.hgignoreファイルには、これらのマージマーカー自体を無視するためのエントリが含まれていました。具体的には、<<<<<<< local=======>>>>>>> other といった文字列が、ファイルパスの一部として解釈され、無視されるべきパターンとして記述されていました。

しかし、これらのエントリは、Mercurialが実際に生成するマージコンフリクトマーカーの形式とは異なり、誤解を招くか、あるいは不要なものであった可能性があります。バージョン管理システムは、通常、マージコンフリクトが発生した際に、ユーザーが手動で解決するためにファイルの内容を一時的に変更します。この一時的な変更は、通常、バージョン管理の対象外とされるべきです。

このコミットは、おそらく以下のいずれかの理由でこれらのエントリが不要になった、または誤っていたために削除されたと考えられます。

  1. Mercurialの挙動の理解の深化: Mercurialがマージコンフリクトをどのように扱うかについて、より正確な理解が得られた結果、これらのパターンが実際に生成されるマージマーカーとは異なることが判明した。
  2. Mercurialのバージョンの変化: Mercurialの新しいバージョンで、マージマーカーの生成方法や、それらを無視するための推奨される方法が変更された。
  3. 不要なエントリのクリーンアップ: 単純に、これらのエントリが機能的に意味をなさず、.hgignoreファイルを不必要に複雑にしていたため、クリーンアップの一環として削除された。

この変更は、リポジトリのクリーンさを保ち、開発者がマージコンフリクトを解決する際に、バージョン管理システムが意図しないファイルを追跡しようとしないようにするための、細かながらも重要な改善です。

前提知識の解説

Mercurial (hg)

Mercurialは、Gitと同様に分散型バージョン管理システム(DVCS)の一つです。DVCSでは、各開発者がリポジトリの完全なコピーを持ち、オフラインでの作業や、中央サーバーに依存しないブランチング・マージが可能です。Goプロジェクトは、初期にはMercurialを使用していましたが、後にGitに移行しました。

.hgignore ファイル

.hgignoreファイルは、Mercurialリポジトリにおいて、バージョン管理の対象から除外するファイルやディレクトリのパターンを定義するための設定ファイルです。Gitにおける.gitignoreファイルと全く同じ目的を持ちます。ビルド生成物、一時ファイル、ログファイル、IDEの設定ファイルなど、リポジトリに含めるべきではないファイルを指定するために使用されます。

.hgignoreファイルは、通常、リポジトリのルートディレクトリに配置され、そのファイルに記述されたパターンに一致するファイルやディレクトリは、hg statusなどのコマンドで「未追跡」として表示されず、hg addコマンドで誤って追加されることもありません。

パターンは、シェルグロブ(*, ?, []など)や正規表現で記述できます。

マージコンフリクトマーカー

バージョン管理システムにおいて、複数の開発者が同じファイルの同じ部分を同時に変更し、それらの変更を統合(マージ)しようとした際に、システムが自動的に変更を結合できない状況を「マージコンフリクト」と呼びます。

マージコンフリクトが発生すると、バージョン管理システムはコンフリクトしているファイルに特殊な「マージマーカー」を挿入します。これらのマーカーは、コンフリクトしている各バージョンのコードブロックを区切り、開発者が手動でコンフリクトを解決できるようにします。

一般的なマージマーカーの形式は以下の通りです(Gitの場合):

<<<<<<< HEAD
// 現在のブランチの変更
=======
// マージ対象のブランチの変更
>>>>>>> feature-branch
  • <<<<<<< HEAD: 現在のブランチ(HEAD)の変更の開始を示します。
  • =======: 異なるバージョンの区切りを示します。
  • >>>>>>> feature-branch: マージ対象のブランチ(例: feature-branch)の変更の終了を示します。

Mercurialでも同様のマーカーが使用されますが、その形式はシステムや設定によって若干異なる場合があります。このコミットで削除されたパターンは、Mercurialが生成するマージマーカーの一部、またはそれに関連する一時的なファイル名パターンを指していたと考えられます。

具体的に削除されたパターンは以下の通りです。

<<<<<<< local
=======
>>>>>>> other

これらは、Mercurialがマージコンフリクト時にファイル内に挿入するマーカーの典型的な形式です。localは現在の作業コピーのバージョンを、otherはマージ対象の変更を指します。これらのマーカー自体がファイル名として存在することは通常ありませんが、Mercurialがマージ処理中に一時的に生成するファイル名にこれらの文字列が含まれる可能性があったか、あるいは過去のMercurialのバージョンでそのような一時ファイルが生成されていた可能性が考えられます。

技術的詳細

このコミットの技術的詳細は、.hgignoreファイルから特定のマージマーカーパターンを削除することに集約されます。

削除された行は以下の3行です。

--- a/.hgignore
+++ b/.hgignore
@@ -33,10 +33,7 @@ misc/goplay/goplay
 misc/osx/*.pkg
 misc/osx/*.dmg
 src/cmd/?a/y.output
-<<<<<<< local
-=======\
 src/liblink/anames?.c
->>>>>>> other
 src/cmd/cc/y.output
 src/cmd/cgo/zdefaultcc.go
 src/cmd/dist/dist.dSYM

これらの行は、Mercurialがマージコンフリクトを解決する際にファイル内に挿入するマーカーの文字列そのものです。

  • <<<<<<< local
  • =======
  • >>>>>>> other

これらの文字列が.hgignoreファイルに記述されていたということは、Mercurialがこれらの文字列を含むファイル名を一時的に生成し、それを無視したかった、あるいは、これらの文字列がファイルの内容ではなく、ファイル名の一部として誤って解釈されることを防ぎたかった、という意図があったと推測されます。

しかし、通常、マージマーカーはファイルの内容に挿入されるものであり、ファイル名として使用されることは稀です。もしMercurialがマージ中に一時的なファイルを作成し、そのファイル名にこれらのマーカーが含まれることがあったとしても、それは非常に特殊なケースです。

この変更は、これらのパターンが.hgignoreにおいて不要である、あるいは誤解を招く記述であったという判断に基づいていると考えられます。例えば、Mercurialの新しいバージョンでは、マージコンフリクトの処理方法が改善され、このような一時ファイルが生成されなくなった、または、これらのパターンが実際に無視すべきファイルに一致しないことが判明した、といった理由が考えられます。

結果として、このコミットは.hgignoreファイルをより正確で、かつ必要なパターンのみを含むように整理するものです。これにより、Mercurialが不要なファイルを追跡しようとするのを防ぎ、リポジトリの健全性を維持します。

コアとなるコードの変更箇所

変更されたファイルは .hgignore のみです。

diff --git a/.hgignore b/.hgignore
index 69141f86a6..b615b8d975 100644
--- a/.hgignore
+++ b/.hgignore
@@ -33,10 +33,7 @@ misc/goplay/goplay
 misc/osx/*.pkg
 misc/osx/*.dmg
 src/cmd/?a/y.output
-<<<<<<< local
-=======\
 src/liblink/anames?.c
->>>>>>> other
 src/cmd/cc/y.output
 src/cmd/cgo/zdefaultcc.go
 src/cmd/dist/dist.dSYM

コアとなるコードの解説

上記のdiffが示すように、.hgignoreファイルから以下の3行が削除されました。

  1. -<<<<<<< local
  2. -=======
  3. ->>>>>>> other

これらの行は、Mercurialがマージコンフリクト時にファイル内に挿入するマーカーの文字列そのものです。.hgignoreファイルは、バージョン管理システムが無視すべきファイルやディレクトリのパターンを定義するために使用されます。

これらの行が削除されたということは、以下のいずれかの理由が考えられます。

  • 不要なパターンの削除: これらのパターンが、実際にMercurialが生成する一時ファイルやマージコンフリクトマーカーを含むファイル名に一致せず、.hgignoreファイルに存在する必要がなかった。
  • Mercurialの挙動の変化: Mercurialのバージョンアップにより、マージコンフリクトの処理方法が変更され、これらのパターンがもはや関連性がなくなった。例えば、以前はこれらの文字列を含む一時ファイルが生成されていたが、新しいバージョンでは生成されなくなった、など。
  • 誤解の修正: これらのパターンが、ファイル名ではなくファイルの内容に挿入されるマージマーカーを指しているという誤解があったため、修正された。.hgignoreはファイル名を無視するためのものであり、ファイルの内容を無視するためのものではありません。

この変更は、.hgignoreファイルをより正確で効率的なものにし、Mercurialが不要なファイルを誤って追跡しようとするのを防ぐための、クリーンアップ作業の一環と見なすことができます。これにより、リポジトリの管理がよりスムーズになります。

関連リンク

参考にした情報源リンク