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[インデックス 17999] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリにおけるAPI変更を追跡するためのファイルである api/next.txt を更新するものです。具体的には、image パッケージに RGB および RGB48 という新しい画像型とその関連メソッド、そして image/color パッケージに RGB および RGB48 という新しい色型が追加されることをAPIとして公開するために、その定義を api/next.txt に追記しています。

api/next.txt は、Go言語の次期リリースで導入される予定のAPI変更を記録する目的で使用されます。これにより、開発者は将来のAPI変更を事前に把握し、互換性の問題に備えることができます。

コミット

commit a8c54a8e9a781282c5ffc0e1ad2078b15fa32a44
Author: Brad Fitzpatrick <bradfitz@golang.org>
Date:   Mon Dec 16 09:57:41 2013 -0800

    api: update next.txt
    
    R=golang-dev, minux.ma
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/42860043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/a8c54a8e9a781282c5ffc0e1ad2078b15fa32a44

元コミット内容

このコミットの元の内容は、「api: update next.txt」という簡潔なものです。これは、Go言語のAPI定義を記録する api/next.txt ファイルを更新したことを示しています。コミットメッセージには、レビュー担当者(R=golang-dev, minux.ma)とCC(CC=golang-dev)、そして関連するGo Code Reviewのリンク(https://golang.org/cl/42860043)が含まれています。

変更の背景

この変更の背景には、Go言語の画像処理ライブラリである image パッケージと image/color パッケージの機能拡張があります。既存の image パッケージには RGBARGBA64 といったアルファチャンネルを含む画像型が存在しましたが、アルファチャンネルを持たない純粋なRGB形式の画像を効率的に扱うための型が不足していました。

image.RGB および image.RGB48 の導入は、アルファチャンネルが不要な画像データ(例: JPEG画像)を扱う際に、メモリ効率と処理性能を向上させることを目的としています。これにより、開発者はより多様な画像フォーマットや処理要件に対応できるようになります。

api/next.txt は、Go言語のAPI互換性を維持するための重要なメカニズムです。新しいAPIが導入される際、まずこのファイルにそのAPIのシグネチャが追記されます。これにより、GoチームはAPIの安定性を確保しつつ、将来のリリースで導入される変更をコミュニティに透明に伝えることができます。このコミットは、まさにそのプロセスの一環として、新しい画像関連の型とメソッドがGoの公式APIとして追加されることを宣言しています。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下のGo言語の画像処理に関する基本的な概念と、GoのAPI管理に関する知識が必要です。

Go言語の image パッケージと image/color パッケージ

  • image パッケージ: Go言語の標準ライブラリの一部で、2次元画像を表現し、操作するための基本的な機能を提供します。画像は image.Image インターフェースを実装する型として表現され、ピクセルへのアクセス、バウンディングボックスの取得、カラーモデルの取得などの共通操作が定義されています。
  • image/color パッケージ: 色の表現と変換に関する機能を提供します。color.Color インターフェースは、任意の色を表現するための共通のインターフェースであり、RGBA() メソッドを通じて色をRGBA値として取得できます。また、color.Model インターフェースは、色の変換モデルを定義します。

画像の表現

画像は通常、ピクセルの集合として表現されます。各ピクセルは色情報を持っており、その色の表現方法には様々なカラーモデルがあります。

  • RGB (Red, Green, Blue): 光の三原色(赤、緑、青)の組み合わせで色を表現する最も一般的なカラーモデルです。各成分は通常0から255の範囲の整数で表現され、24ビット(各8ビット)で1ピクセルを表します。
  • RGB48: 各成分を16ビット(合計48ビット)で表現するRGBカラーモデルです。より広い色深度を持ち、より滑らかなグラデーションや高精度な色表現が可能です。
  • アルファチャンネル: 色情報に加えて、透明度(不透明度)を表す成分です。アルファチャンネルを持つ画像は、背景と合成する際に透明度を考慮した描画が可能です。

Rectangle

image.Rectangle 型は、画像の領域を定義するために使用されます。これは、画像のバウンディングボックスやサブイメージの領域を指定する際に利用されます。MinMax という2つの image.Point 構造体で構成され、それぞれ矩形の左上と右下の座標を表します。

api/next.txt の役割

Go言語のプロジェクトでは、APIの互換性を非常に重視しています。api/next.txt ファイルは、Goの次期リリースで導入される予定の新しいAPIや変更されるAPIのリストを記録するために使用されます。このファイルは、Goのビルドプロセスの一部としてチェックされ、APIの変更が意図されたものであることを確認します。これにより、Goの安定性と後方互換性が保証されます。開発者はこのファイルを監視することで、将来のGoバージョンで利用可能になる新しい機能や、既存のコードに影響を与える可能性のある変更を事前に知ることができます。

技術的詳細

このコミットによって api/next.txt に追加されたエントリは、Goの image および image/color パッケージに導入される新しい型とメソッドの詳細を示しています。

image パッケージの新しい型とメソッド

  • type RGB struct:
    • Pix []uint8: 画像のピクセルデータを格納するバイトスライスです。各ピクセルはR, G, Bの順で3バイト(uint8)で表現されます。
    • Rect Rectangle: 画像のバウンディングボックス(矩形領域)を表します。
    • Stride int: 画像の各行のバイト数を表します。これにより、Pix スライス内で特定のピクセル行の開始位置を計算できます。
  • type RGB48 struct:
    • Pix []uint8: 画像のピクセルデータを格納するバイトスライスです。各ピクセルはR, G, Bの順で6バイト(uint16 が2バイトなので、各成分が2バイト)で表現されます。
    • Rect Rectangle: 画像のバウンディングボックスを表します。
    • Stride int: 画像の各行のバイト数を表します。
  • func NewRGB(Rectangle) *RGB: 指定された矩形領域を持つ新しい RGB 画像を生成し、そのポインタを返します。
  • func NewRGB48(Rectangle) *RGB48: 指定された矩形領域を持つ新しい RGB48 画像を生成し、そのポインタを返します。
  • method (*RGB) At(int, int) color.Color: 指定された座標のピクセルの色を color.Color インターフェースとして返します。
  • method (*RGB) Bounds() Rectangle: 画像のバウンディングボックスを返します。
  • method (*RGB) ColorModel() color.Model: 画像のカラーモデルを返します。RGB 型の場合は color.RGBModel を返します。
  • method (*RGB) Opaque() bool: 画像が完全に不透明であるかどうかを返します。RGB 型はアルファチャンネルを持たないため、常に true を返します。
  • method (*RGB) PixOffset(int, int) int: 指定された座標のピクセルが Pix スライス内で開始するオフセットを返します。
  • method (*RGB) Set(int, int, color.Color): 指定された座標のピクセルの色を color.Color インターフェースで設定します。
  • method (*RGB) SetRGB(int, int, color.RGB): 指定された座標のピクセルの色を color.RGB 型で設定します。これは Set メソッドよりも効率的です。
  • method (*RGB) SubImage(Rectangle) Image: 指定された矩形領域のサブイメージを返します。
  • method (*RGB48) At(int, int) color.Color: RGB と同様に、指定された座標のピクセルの色を color.Color インターフェースとして返します。
  • method (*RGB48) Bounds() Rectangle: RGB と同様に、画像のバウンディングボックスを返します。
  • method (*RGB48) ColorModel() color.Model: RGB と同様に、画像のカラーモデルを返します。RGB48 型の場合は color.RGB48Model を返します。
  • method (*RGB48) Opaque() bool: RGB と同様に、画像が完全に不透明であるかどうかを返します。常に true を返します。
  • method (*RGB48) PixOffset(int, int) int: RGB と同様に、指定された座標のピクセルのオフセットを返します。
  • method (*RGB48) Set(int, int, color.Color): RGB と同様に、指定された座標のピクセルの色を color.Color インターフェースで設定します。
  • method (*RGB48) SetRGB48(int, int, color.RGB48): 指定された座標のピクセルの色を color.RGB48 型で設定します。
  • method (*RGB48) SubImage(Rectangle) Image: RGB と同様に、指定された矩形領域のサブイメージを返します。

image/color パッケージの新しい型と変数

  • type RGB struct:
    • R uint8: 赤成分(0-255)
    • G uint8: 緑成分(0-255)
    • B uint8: 青成分(0-255)
  • type RGB48 struct:
    • R uint16: 赤成分(0-65535)
    • G uint16: 緑成分(0-65535)
    • B uint16: 青成分(0-65535)
  • method (RGB) RGBA() (uint32, uint32, uint32, uint32): color.Color インターフェースのメソッドを実装し、RGB値をRGBA値として返します。アルファ値は常に最大値(不透明)となります。
  • method (RGB48) RGBA() (uint32, uint32, uint32, uint32): RGB と同様に、RGB48値をRGBA値として返します。
  • var RGB48Model Model: RGB48 型の色を扱うための color.Model インスタンスです。
  • var RGBModel Model: RGB 型の色を扱うための color.Model インスタンスです。

これらの追加により、Goの画像処理ライブラリは、アルファチャンネルを持たないRGBおよびRGB48形式の画像をネイティブにサポートし、より効率的な画像操作が可能になります。特に、SetRGBSetRGB48 のような専用のセッターメソッドは、color.Color インターフェースを介した汎用的な Set メソッドよりも型安全でパフォーマンスが向上する可能性があります。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットにおけるコアとなるコードの変更は、api/next.txt ファイルへの追記のみです。

--- a/api/next.txt
+++ b/api/next.txt
@@ -0,0 +1,38 @@
+pkg image, func NewRGB(Rectangle) *RGB
+pkg image, func NewRGB48(Rectangle) *RGB48
+pkg image, method (*RGB) At(int, int) color.Color
+pkg image, method (*RGB) Bounds() Rectangle
+pkg image, method (*RGB) ColorModel() color.Model
+pkg image, method (*RGB) Opaque() bool
+pkg image, method (*RGB) PixOffset(int, int) int
+pkg image, method (*RGB) Set(int, int, color.Color)
+pkg image, method (*RGB) SetRGB(int, int, color.RGB)
+pkg image, method (*RGB) SubImage(Rectangle) Image
+pkg image, method (*RGB48) At(int, int) color.Color
+pkg image, method (*RGB48) Bounds() Rectangle
+pkg image, method (*RGB48) ColorModel() color.Model
+pkg image, method (*RGB48) Opaque() bool
+pkg image, method (*RGB48) PixOffset(int, int) int
+pkg image, method (*RGB48) Set(int, int, color.Color)
+pkg image, method (*RGB48) SetRGB48(int, int, color.RGB48)
+pkg image, method (*RGB48) SubImage(Rectangle) Image
+pkg image, type RGB struct
+pkg image, type RGB struct, Pix []uint8
+pkg image, type RGB struct, Rect Rectangle
+pkg image, type RGB struct, Stride int
+pkg image, type RGB48 struct
+pkg image, type RGB48 struct, Pix []uint8
+pkg image, type RGB48 struct, Rect Rectangle
+pkg image, type RGB48 struct, Stride int
+pkg image/color, method (RGB) RGBA() (uint32, uint32, uint32, uint32)
+pkg image/color, method (RGB48) RGBA() (uint32, uint32, uint32, uint32)
+pkg image/color, type RGB struct
+pkg image/color, type RGB struct, B uint8
+pkg image/color, type RGB struct, G uint8
+pkg image/color, type RGB struct, R uint8
+pkg image/color, type RGB48 struct
+pkg image/color, type RGB48 struct, B uint16
+pkg image/color, type RGB48 struct, G uint16
+pkg image/color, type RGB48 struct, R uint16
+pkg image/color, var RGB48Model Model
+pkg image/color, var RGBModel Model

コアとなるコードの解説

追加された各行は、GoのAPI定義のフォーマットに従っています。

  • pkg <パッケージ名>, <要素の種類> <要素名>

例えば、pkg image, func NewRGB(Rectangle) *RGB は、image パッケージに NewRGB という関数が追加され、その引数が Rectangle 型で、戻り値が *RGB 型であることを示しています。

同様に、pkg image, type RGB struct, Pix []uint8 は、image パッケージの RGB 構造体に Pix という []uint8 型のフィールドがあることを示しています。

これらのエントリは、GoのAPIチェッカーによって解析され、実際のコードベースのAPI定義と照合されます。これにより、意図しないAPIの変更や削除が防止され、GoのAPI互換性が維持されます。このコミットは、image および image/color パッケージに新しい画像および色関連の型とメソッドが追加され、これらがGoの公式APIの一部となることを明確に宣言しています。

関連リンク

参考にした情報源リンク