[インデックス 18004] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ライブラリであるstrings
パッケージ内のIndexAny
関数に対して、新しい使用例を追加するものです。具体的には、src/pkg/strings/example_test.go
ファイルにExampleIndexAny
という関数が追加され、IndexAny
関数の動作を分かりやすく示すコードスニペットが提供されています。
コミット
commit 4e23b693145790382bd8ed3f3e6634a5c527a9f6
Author: Daniel Lidén <daniel.liden.87@gmail.com>
Date: Mon Dec 16 10:50:56 2013 -0800
strings: Add example function for IndexAny
R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/42310044
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/4e23b693145790382bd8ed3f3e6634a5c527a9f6
元コミット内容
strings: Add example function for IndexAny
R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/42310044
変更の背景
Go言語の標準ライブラリでは、各関数の使い方を明確にするために、_test.go
ファイル内にExample
関数を記述する慣習があります。これらのExample
関数は、Goのドキュメンテーションツール(go doc
やpkg.go.dev)によって自動的に抽出され、関数の説明とともに表示されます。これにより、開発者は関数の具体的な使用例を簡単に参照でき、ライブラリの理解と利用が促進されます。
strings.IndexAny
関数は、文字列内に指定された文字セットのいずれかの文字が最初に現れるインデックスを返す便利な関数ですが、このコミット以前には公式な使用例が提供されていませんでした。このコミットは、その不足を補い、IndexAny
関数の挙動をより直感的に理解できるようにするために、具体的な例を追加することを目的としています。
前提知識の解説
Go言語のstrings
パッケージ
strings
パッケージは、Go言語の標準ライブラリの一部であり、UTF-8でエンコードされた文字列を操作するための多くのユーティリティ関数を提供します。文字列の検索、置換、分割、結合など、様々な一般的な文字列操作が可能です。
strings.IndexAny
関数
strings.IndexAny(s, chars string) int
は、文字列s
内で、chars
に含まれる任意のUnicodeコードポイントが最初に現れるインデックスを返します。s
内にchars
の文字が一つも含まれていない場合は-1
を返します。
例:
strings.IndexAny("apple", "aeiou")
は0
を返します('a'が最初の母音)。strings.IndexAny("banana", "xyz")
は-1
を返します('x', 'y', 'z'は含まれない)。
Go言語のExample
関数
Go言語では、テストファイル(_test.go
で終わるファイル)内にExample
というプレフィックスを持つ関数を定義することで、その関数の使用例を記述できます。これらの関数は、通常のテスト関数とは異なり、go test
コマンドで実行される際に、その出力がコメントとして記述されたOutput:
行と一致するかどうかが検証されます。この仕組みにより、ドキュメンテーションとして提供される例が常に正しく、最新のコードベースと同期していることが保証されます。
Example
関数は、以下のような特徴を持ちます。
- 関数名は
Example
で始まり、その後に例を示す対象の関数名やパッケージ名が続くことが多いです(例:ExampleIndexAny
,ExamplePackageName
)。 fmt.Println
などを用いて標準出力に何かを出力し、その期待される出力を// Output:
コメントの後に記述します。go doc
コマンドやpkg.go.devで、関数のドキュメンテーションの一部として表示されます。
技術的詳細
このコミットは、Go言語のドキュメンテーションとテストの仕組みを効果的に利用しています。example_test.go
ファイルは、Goのテストフレームワークの一部であり、go test
コマンドによって実行されます。このファイルにExampleIndexAny
関数を追加することで、以下の利点が得られます。
- ドキュメンテーションの強化:
go doc strings.IndexAny
を実行したり、pkg.go.devでstrings.IndexAny
のドキュメントを参照した際に、この新しい例が表示されるようになります。これにより、開発者は関数の使い方をより迅速に理解できます。 - コードの健全性の保証:
Example
関数は、その出力が// Output:
コメントと一致するかどうかをgo test
時に検証します。これにより、将来的にIndexAny
関数の挙動が変更された場合でも、この例が古くなったり誤った情報を提供したりすることがなくなります。もし関数の挙動が変われば、テストが失敗し、例の更新が必要であることが示されます。 - 学習リソースの提供: 新しいGo開発者や
strings
パッケージに不慣れな開発者にとって、具体的なコード例は非常に価値のある学習リソースとなります。
追加された例は、IndexAny
関数の典型的な使用シナリオをカバーしています。
fmt.Println(strings.IndexAny("chicken", "aeiouy"))
:文字列"chicken"内で、母音(a, e, i, o, u, y)のいずれかが最初に現れるインデックスを検索します。この場合、'i'がインデックス2に存在するため、2
が出力されます。fmt.Println(strings.IndexAny("crwth", "aeiouy"))
:文字列"crwth"内で、母音のいずれかが最初に現れるインデックスを検索します。この文字列には母音が含まれていないため、-1
が出力されます。
これらの例は、IndexAny
関数が文字を見つけた場合と見つけられなかった場合の両方のケースを明確に示しており、関数の完全な理解を助けます。
コアとなるコードの変更箇所
変更はsrc/pkg/strings/example_test.go
ファイルにのみ行われています。
--- a/src/pkg/strings/example_test.go
+++ b/src/pkg/strings/example_test.go
@@ -79,6 +79,14 @@ func ExampleIndexFunc() {
// -1
}
+func ExampleIndexAny() {\n+\tfmt.Println(strings.IndexAny(\"chicken\", \"aeiouy\"))\n+\tfmt.Println(strings.IndexAny(\"crwth\", \"aeiouy\"))\n+\t// Output:\n+\t// 2\n+\t// -1\n+}\n+\n func ExampleIndexRune() {
fmt.Println(strings.IndexRune("chicken", 'k'))
fmt.Println(strings.IndexRune("chicken", 'd'))
コアとなるコードの解説
追加されたコードは、ExampleIndexAny
という名前のGo関数です。
func ExampleIndexAny() {
fmt.Println(strings.IndexAny("chicken", "aeiouy"))
fmt.Println(strings.IndexAny("crwth", "aeiouy"))
// Output:
// 2
// -1
}
func ExampleIndexAny()
: これはGoのテストパッケージにおけるExample
関数として認識されるための命名規則に従っています。fmt.Println(strings.IndexAny("chicken", "aeiouy"))
:strings.IndexAny
関数を呼び出し、文字列"chicken"内で"aeiouy"(母音)のいずれかの文字が最初に現れるインデックスを検索します。結果は標準出力に出力されます。この場合、'i'がインデックス2に存在するため、2
が出力されます。fmt.Println(strings.IndexAny("crwth", "aeiouy"))
: 同様にstrings.IndexAny
関数を呼び出し、文字列"crwth"内で"aeiouy"のいずれかの文字が最初に現れるインデックスを検索します。この文字列には母音が含まれていないため、-1
が出力されます。// Output:
: このコメント行は、Example
関数の実行によって期待される標準出力の内容を示します。go test
コマンドは、このコメントの後の行と実際の出力を比較し、一致しない場合はテストを失敗させます。これにより、例が常に正確であることが保証されます。
このシンプルな追加により、strings.IndexAny
関数のドキュメンテーションが大幅に改善され、その機能と期待される挙動が明確に示されるようになりました。
関連リンク
- Go言語
strings
パッケージのドキュメンテーション: https://pkg.go.dev/strings strings.IndexAny
関数のドキュメンテーション: https://pkg.go.dev/strings#IndexAny- Go言語の
Example
関数に関する公式ドキュメント(go doc testing
を参照): https://pkg.go.dev/testing#hdr-Examples
参考にした情報源リンク
- GitHub上のコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/4e23b693145790382bd8ed3f3e6634a5c527a9f6
- Go CL (Code Review) ページ: https://golang.org/cl/42310044
- Go言語の公式ドキュメンテーション (pkg.go.dev)
- Go言語のテストに関する情報 (go.dev/doc/code.html#Testing)