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[インデックス 18048] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリ encoding/ascii85 パッケージ内のテストファイル ascii85_test.go に、Encode 関数の空文字列入力に対するテストケースを追加するものです。

コミット

encoding/ascii85 パッケージの Encode 関数が、入力が空文字列の場合に正しく動作することを確認するためのテストケースが追加されました。具体的には、src/pkg/encoding/ascii85/ascii85_test.go ファイルに、入力 (src) と期待される出力 (enc) の両方が空文字列である新しい testpair が追加されています。

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/9d1832f2274708a8da6846126e2118b002cc6d8d

元コミット内容

commit 9d1832f2274708a8da6846126e2118b002cc6d8d
Author: Shawn Smith <shawn.p.smith@gmail.com>
Date:   Wed Dec 18 08:33:59 2013 -0800

    encoding/ascii85: add empty string case for Encode test
    
    R=golang-dev, bradfitz
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/36830046
---
 src/pkg/encoding/ascii85/ascii85_test.go | 5 +++++
 1 file changed, 5 insertions(+)

diff --git a/src/pkg/encoding/ascii85/ascii85_test.go b/src/pkg/encoding/ascii85/ascii85_test.go
index 42cf7e80e1..dc1134dccd 100644
--- a/src/pkg/encoding/ascii85/ascii85_test.go
+++ b/src/pkg/encoding/ascii85/ascii85_test.go
@@ -16,6 +16,11 @@ type testpair struct {
 }
 
 var pairs = []testpair{
+	// Encode returns 0 when len(src) is 0
+	{
+		"",
+		"",
+	},
 	// Wikipedia example
 	{
 		"Man is distinguished, not only by his reason, but by this singular passion from " +

変更の背景

ソフトウェア開発において、関数のエッジケース(境界条件)をテストすることは非常に重要です。特に、入力が空である場合や、最小限のデータである場合など、通常とは異なる入力に対する関数の挙動は、予期せぬバグの原因となることがあります。

このコミットの背景には、encoding/ascii85 パッケージの Encode 関数が空の入力バイトスライスを受け取った際に、期待通りに動作するかどうかを明示的に確認する必要があったことが考えられます。既存のテストスイートでは、おそらく空文字列のケースが網羅されていなかったため、このテストケースが追加されました。これにより、将来的なコード変更やリファクタリングによって、このエッジケースの挙動が意図せず変更されることを防ぎ、関数の堅牢性を高めることが目的です。

前提知識の解説

ASCII85 エンコーディング

ASCII85(またはBase85)は、バイナリデータをASCII文字列に変換するためのエンコーディング方式の一つです。主に、バイナリデータをテキストベースのプロトコル(例: 電子メール、PostScript、PDF)で安全に転送するために使用されます。

基本的な原理は以下の通りです。

  1. 4バイトのバイナリデータを5文字のASCII文字列に変換: ASCII85は、4バイト(32ビット)のバイナリデータを、85進数として解釈し、それぞれが0から84までの値を持つ5つの文字に変換します。これにより、効率的なエンコーディングが可能です。
  2. 文字セット: 使用される文字は、通常 ! から u までの85種類のASCII文字です。
  3. パディング: 入力データが4バイトの倍数でない場合、末尾にゼロバイトがパディングされます。エンコードされた文字列の末尾には、パディングされたバイト数を示す特別な文字が追加されることがあります(Goの encoding/ascii85 パッケージでは、パディングは内部的に処理され、出力文字列の長さで調整されます)。
  4. 特殊なケース:
    • ゼロの連続: 4バイトすべてがゼロの場合、z という1文字にエンコードされることがあります。これは圧縮効果をもたらします。
    • 空の入力: 空の入力バイトスライスが与えられた場合、通常は空の出力文字列が期待されます。

Go言語のテスト

Go言語では、テストは非常に重要な開発プラクティスです。テストファイルは通常、テスト対象のソースファイルと同じディレクトリに _test.go というサフィックスを付けて配置されます。

  • testing パッケージ: Goの標準ライブラリには testing パッケージが含まれており、これを使用してユニットテスト、ベンチマークテスト、およびサンプルコードを作成できます。
  • TestXxx 関数: テスト関数は Test で始まり、その後に続く名前の最初の文字が大文字である必要があります(例: TestEncode)。これらの関数は *testing.T 型の引数を取ります。
  • go test コマンド: go test コマンドを実行することで、プロジェクト内のテストが自動的に発見され、実行されます。
  • テーブルドリブンテスト: 複数の入力と期待される出力のペアを定義し、ループでそれらをテストする「テーブルドリブンテスト」は、Go言語でよく用いられるテストパターンです。このコミットで追加された testpair 構造体と pairs スライスは、このテーブルドリブンテストの典型的な例です。

技術的詳細

このコミットは、encoding/ascii85 パッケージの ascii85_test.go ファイルに、testpair 型の新しい要素を追加しています。

testpair 構造体は、ASCII85エンコーディングのテストケースを定義するために使用されます。

type testpair struct {
	in  string // 入力文字列
	out string // 期待される出力文字列
}

既存の pairs スライスに、以下の新しい testpair が追加されました。

	// Encode returns 0 when len(src) is 0
	{
		"", // 入力: 空文字列
		"", // 期待される出力: 空文字列
	},

このテストケースは、Encode 関数に空のバイトスライス(Goの文字列はバイトスライスとして扱われる)が入力された場合に、空のバイトスライスが返されることを検証します。これは、関数の仕様として自然な挙動であり、多くのエンコーディング/デコーディング関数で期待されるエッジケースの処理です。

コメント // Encode returns 0 when len(src) is 0 は、このテストケースの意図を明確に示しています。ここで 0 は、エンコードされたバイト数または書き込まれたバイト数を指している可能性があります。Encode 関数のシグネチャによっては、書き込まれたバイト数を返す場合があるため、空入力に対しては 0 が返されることを期待していると解釈できます。

コアとなるコードの変更箇所

変更は src/pkg/encoding/ascii85/ascii85_test.go ファイルにのみ行われています。

--- a/src/pkg/encoding/ascii85/ascii85_test.go
+++ b/src/pkg/encoding/ascii85/ascii85_test.go
@@ -16,6 +16,11 @@ type testpair struct {
 }
 
 var pairs = []testpair{
+	// Encode returns 0 when len(src) is 0
+	{
+		"",
+		"",
+	},
 	// Wikipedia example
 	{
 		"Man is distinguished, not only by his reason, but by this singular passion from " +

具体的には、var pairs = []testpair{...} の定義内に、新しい testpair リテラルが追加されています。

コアとなるコードの解説

このコミットは、Go言語のテストフレームワークとテーブルドリブンテストの原則に基づいています。

  1. testpair 構造体: testpair 構造体は、テストの入力 (in) と期待される出力 (out) をカプセル化します。これにより、複数のテストケースを簡潔に定義できます。
  2. pairs スライス: pairs スライスは testpair の配列であり、Encode 関数に対して実行されるすべてのテストケースを保持します。
  3. 新しいテストケース: 追加された {"", ""} は、入力が空文字列の場合に、Encode 関数が空文字列を返すことを期待するテストケースです。これは、関数の堅牢性を保証するために不可欠なエッジケースのテストです。
  4. コメントの重要性: // Encode returns 0 when len(src) is 0 というコメントは、この特定のテストケースが何を検証しているのかを明確に示しており、コードの可読性と保守性を向上させます。

この変更自体は非常に小さいですが、ソフトウェアの品質保証において、エッジケースのテストがどれほど重要であるかを示しています。空の入力に対する正しい挙動は、ライブラリを使用する他のプログラムが予期せぬエラーに遭遇するのを防ぎます。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント
  • ASCII85エンコーディングに関する一般的な情報源 (例: Wikipedia)
  • Go言語のテストに関する一般的なプラクティスとパターン