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[インデックス 18132] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリ reflect パッケージにおける DeepEqual 関数のテストケース追加に関するものです。具体的には、[][]int 型(int のスライスを要素とするスライス)の比較において、要素が異なる場合に DeepEqual が正しく false を返すことを確認するためのテストが追加されています。

コミット

commit 96ee10fb71771590f95cef7c478ddca3665d4b22
Author: Shawn Smith <shawn.p.smith@gmail.com>
Date:   Mon Dec 30 11:39:47 2013 -0800

    reflect: add DeepEqual slice of slice inequality test
    
    R=golang-codereviews, bradfitz
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/46510043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/96ee10fb71771590f95cef7c478ddca3665d4b22

元コミット内容

--- a/src/pkg/reflect/all_test.go
+++ b/src/pkg/reflect/all_test.go
@@ -678,6 +678,7 @@ var deepEqualTests = []DeepEqualTest{
 	{1, nil, false},
 	{fn1, fn3, false},
 	{fn3, fn3, false},
+	{[][]int{[]int{1}}, [][]int{[]int{2}}, false},
 
 	// Nil vs empty: not the same.
 	{[]int{}, []int(nil), false},

変更の背景

reflect.DeepEqual は、Go言語において2つの値が「深く」等しいかどうかを判定するための重要な関数です。この「深く」という概念は、ポインタの指す先や、スライス、マップ、構造体などの複合型の内容まで再帰的に比較することを意味します。

このコミットが追加された背景には、DeepEqual が多次元スライス(この場合は [][]int)のような複雑なデータ構造を正しく比較できることを保証する必要があったと考えられます。特に、スライス内の要素がさらにスライスである場合、その内部のスライスまで正しく比較が行われるかどうかの検証は重要です。

既存のテストスイートでは、[][]int のような「スライスのスライス」における不等価性のケースが十分にカバーされていなかった可能性があります。このテストの追加は、DeepEqual の堅牢性を高め、将来的なリグレッションを防ぐための品質保証の一環として行われました。

前提知識の解説

Go言語の reflect パッケージ

reflect パッケージは、Go言語のランタイムリフレクション機能を提供します。リフレクションとは、プログラムの実行中にその構造(型、フィールド、メソッドなど)を検査したり、操作したりする能力のことです。

  • reflect.Value: Goのあらゆる値を抽象的に表現する型です。これを通じて、値の型情報や、その値自体にアクセスできます。
  • reflect.Type: Goの型情報を抽象的に表現する型です。
  • reflect.DeepEqual(a1, a2 interface{}) bool: この関数は、2つの引数 a1a2 が「深く」等しいかどうかを再帰的に判定します。
    • プリミティブ型(int, string, bool など)は値が等しいか比較されます。
    • 構造体は、すべてのエクスポートされたフィールドが深く等しいか比較されます。
    • スライスは、長さが等しく、かつすべての要素が深く等しいか比較されます。
    • マップは、キーと値のペアが深く等しいか比較されます。
    • ポインタは、指す値が深く等しいか比較されます。
    • 関数、チャネル、マップ、スライス、インターフェースの nil 値は、それぞれが nil である場合に等しいとされます。

Go言語のスライス

Go言語のスライスは、配列のセグメントを参照するデータ構造です。スライスは、長さ(len)と容量(cap)を持ちます。スライスは参照型であり、基になる配列を共有できます。

  • 多次元スライス: [][]int のように、スライスの要素がさらにスライスである構造を多次元スライスと呼びます。これは、例えば行列のようなデータを表現するのに使われます。[][]int{[]int{1}, []int{2}} の場合、外側のスライスは2つの要素(それぞれ []int{1}[]int{2})を持ちます。

技術的詳細

reflect.DeepEqual は、内部的に様々な型の比較ロジックを持っています。スライスの比較においては、まず両方のスライスの長さが等しいかを確認し、その後、各要素を再帰的に DeepEqual を用いて比較します。

このコミットで追加されたテストケース DeepEqualTest{[][]int{[]int{1}}, [][]int{[]int{2}}, false} は、以下のシナリオを検証しています。

  1. 比較対象:
    • a1: [][]int{[]int{1}}
    • a2: [][]int{[]int{2}}
  2. 期待される結果: false (不等価)

DeepEqual はこのテストケースで以下のように動作します。

  • まず、外側のスライス [][]int{[]int{1}}[][]int{[]int{2}} の長さを比較します。どちらも長さは1です。
  • 次に、それぞれのスライスの最初の要素を比較します。これは []int{1}[]int{2} です。
  • DeepEqual はこれらの内部スライスを比較します。
    • []int{1}[]int{2} の長さはどちらも1です。
    • 各要素を比較します。12 を比較します。
    • 12 は等しくないため、DeepEqual はこの時点で false を返します。

このテストケースは、DeepEqual が多次元スライスの深部まで正しく比較し、わずかな違いでも不等価と判断できることを保証します。これは、特に複雑なデータ構造を扱うアプリケーションにおいて、データの整合性を確認する上で非常に重要です。

コアとなるコードの変更箇所

変更は src/pkg/reflect/all_test.go ファイルの deepEqualTests 変数に1行追加されただけです。

--- a/src/pkg/reflect/all_test.go
+++ b/src/pkg/reflect/all_test.go
@@ -678,6 +678,7 @@ var deepEqualTests = []DeepEqualTest{
 	{1, nil, false},
 	{fn1, fn3, false},
 	{fn3, fn3, false},
+	{[][]int{[]int{1}}, [][]int{[]int{2}}, false},
 
 	// Nil vs empty: not the same.
 	{[]int{}, []int(nil), false},

コアとなるコードの解説

deepEqualTests は、DeepEqual 関数の様々な挙動をテストするための構造体のスライスです。各要素は DeepEqualTest 型であり、通常は以下のフィールドを持ちます。

  • a1 interface{}: 比較対象の1つ目の値
  • a2 interface{}: 比較対象の2つ目の値
  • eq bool: a1a2 が深く等しい場合に true、そうでない場合に false

追加された行は、この deepEqualTests スライスに新しいテストケースを追加しています。

{[][]int{[]int{1}}, [][]int{[]int{2}}, false},

このテストケースは、以下のことを意味します。

  • a1[][]int{[]int{1}} という int のスライスを要素に持つスライスです。
  • a2[][]int{[]int{2}} という int のスライスを要素に持つスライスです。
  • 期待される結果は false です。なぜなら、[]int{1}[]int{2} は等しくないからです。

このシンプルな追加により、reflect.DeepEqual が多次元スライス内の要素の不一致を正確に検出できることが保証されます。これは、DeepEqual の再帰的な比較ロジックが期待通りに機能していることを確認するために不可欠です。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント
  • Go言語のソースコード(src/pkg/reflect/all_test.go
  • Go言語のコミット履歴
  • reflect.DeepEqual の動作に関する一般的なGo言語の知識
  • Go言語のスライスに関する一般的なGo言語の知識
  • GitHubのコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/96ee10fb71771590f95cef7c478ddca3665d4b22
  • Go CL 46510043: https://golang.org/cl/46510043 (これは古いGo CLのURL形式であり、現在はGitHubのコミットページにリダイレクトされるか、対応するGo CLのレビューページにリンクされます。)