[インデックス 18147] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ライブラリ os パッケージにおける File.Readdir および File.Readdirnames メソッドのテストカバレッジを改善するものです。具体的には、*os.File レシーバが nil の場合にこれらのメソッドがどのように振る舞うかを検証する新しいテストケースが追加されました。
コミット
commit 3c7d2e6af9aced200842b2afa2e9413e5a33e43a
Author: Shawn Smith <shawn.p.smith@gmail.com>
Date: Wed Jan 1 16:40:52 2014 +1100
os: improve Readdir and Readdirnames test coverage
R=golang-codereviews, dave
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/46450043
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/3c7d2e6af9aced200842b2afa2e9413e5a33e43a
元コミット内容
os: improve Readdir and Readdirnames test coverage
このコミットは、os パッケージの Readdir および Readdirnames メソッドのテストカバレッジを向上させることを目的としています。
変更の背景
Go言語では、堅牢なソフトウェアを開発するために、エッジケースや異常な入力に対する関数の振る舞いをテストすることが重要です。特に、ポインタレシーバを持つメソッドの場合、レシーバが nil であるときにメソッドがどのように振る舞うかは、プログラムの安定性にとって非常に重要です。
os.File 型のメソッドである Readdir と Readdirnames は、ディレクトリの内容を読み取るために使用されます。これらのメソッドが nil の *os.File レシーバで呼び出された場合に、予期せぬパニック(ランタイムエラー)を引き起こすことなく、適切にエラーを返すことを保証するためのテストが不足していました。このコミットは、そのテストカバレッジのギャップを埋めるために行われました。これにより、開発者が誤って nil の *os.File に対してこれらのメソッドを呼び出した場合でも、プログラムがクラッシュするのではなく、予測可能なエラー(os.ErrInvalid)を返すことが保証されます。
前提知識の解説
Go言語の os パッケージ
os パッケージは、オペレーティングシステムが提供する機能へのプラットフォーム非依存なインターフェースを提供します。これには、ファイル操作、プロセス管理、環境変数へのアクセスなどが含まれます。
os.File 型
os.File は、開かれたファイル(またはディレクトリ)を表す構造体です。ファイルディスクリプタやその他のファイル関連情報を含みます。
File.Readdirnames(n int) ([]string, error)
このメソッドは、ディレクトリの内容を読み取り、ディレクトリ内のエントリの名前(ファイル名やディレクトリ名)のリストを文字列スライスとして返します。引数 n は、読み取るエントリの最大数を指定します。n <= 0 の場合、すべてのエントリが読み取られます。
File.Readdir(n int) ([]FileInfo, error)
このメソッドもディレクトリの内容を読み取りますが、Readdirnames とは異なり、os.FileInfo 型のスライスを返します。os.FileInfo は、ファイル名、サイズ、パーミッション、最終更新時刻などのファイルに関する詳細な情報を提供します。引数 n の意味は Readdirnames と同じです。
nil ポインタレシーバ
Go言語では、メソッドはポインタレシーバ (*Type) または値レシーバ (Type) を持つことができます。ポインタレシーバを持つメソッドは、レシーバが nil であっても呼び出すことができます。この場合、メソッド内で nil レシーバを適切に処理する必要があります。もし nil レシーバがデリファレンス(参照解除)されると、ランタイムパニックが発生し、プログラムがクラッシュします。
os.ErrInvalid
os パッケージで定義されているエラー変数の一つで、無効な引数や操作が試みられた場合に返されることがあります。このコミットでは、nil の *os.File に対して Readdir や Readdirnames が呼び出された場合に、このエラーが返されることを期待しています。
技術的詳細
このコミットで追加されたテストは、Go言語のテストフレームワーク testing パッケージを使用しています。
TestReaddirnamesNilFile と TestReaddirNilFile の両方のテスト関数は、以下のパターンに従っています。
var f *Fileを宣言し、fを明示的にnilに初期化します。これは、*os.File型のゼロ値がnilポインタであることを利用しています。f.Readdirnames(1)またはf.Readdir(1)を呼び出します。ここで1は読み取るエントリの数ですが、nilレシーバの場合、この値は実際には重要ではありません。- 返された結果
fiとエラーerrをチェックします。fi(ファイル情報または名前のスライス) がnilであること。errがos.ErrInvalidであること。
- これらの条件のいずれかが満たされない場合、
t.Errorfを使用してテストを失敗させ、詳細なエラーメッセージを出力します。
これにより、nil の *os.File に対してこれらのメソッドが呼び出されたときに、Goランタイムがパニックを起こすことなく、os.ErrInvalid エラーを返すという期待される動作が保証されます。これは、堅牢なエラーハンドリングと予測可能なプログラムの振る舞いを促進します。
コアとなるコードの変更箇所
変更は src/pkg/os/os_test.go ファイルに集中しています。
--- a/src/pkg/os/os_test.go
+++ b/src/pkg/os/os_test.go
@@ -252,11 +252,25 @@ func TestReaddirnames(t *testing.T) {
testReaddirnames(sysdir.name, sysdir.files, t)
}
+func TestReaddirnamesNilFile(t *testing.T) {
+ var f *File
+ if fi, err := f.Readdirnames(1); fi != nil || err != ErrInvalid {
+ t.Errorf("Readdirnames should fail when f is nil: %v, %v", fi, err)
+ }
+}
+
func TestReaddir(t *testing.T) {
testReaddir(".", dot, t)
testReaddir(sysdir.name, sysdir.files, t)
}
+func TestReaddirNilFile(t *testing.T) {
+ var f *File
+ if fi, err := f.Readdir(1); fi != nil || err != ErrInvalid {
+ t.Errorf("Readdir should fail when f is nil: %v, %v", fi, err)
+ }
+}
+
// Read the directory one entry at a time.
func smallReaddirnames(file *File, length int, t *testing.T) []string {
names := make([]string, length)
コアとなるコードの解説
func TestReaddirnamesNilFile(t *testing.T)
このテスト関数は、*os.File 型の変数 f を nil で宣言し、その f に対して Readdirnames(1) を呼び出します。
if fi, err := f.Readdirnames(1); fi != nil || err != ErrInvalid { ... } の行では、以下の条件を検証しています。
fi != nil:Readdirnamesがnilのスライスを返すこと。nilレシーバでの呼び出しは有効な結果を生成すべきではないため、結果のスライスもnilであるべきです。err != ErrInvalid:Readdirnamesがos.ErrInvalidエラーを返すこと。これは、無効な操作(nilファイルに対する読み取り)であることを示します。
これらの条件のいずれかが偽(つまり、fi が nil でないか、err が ErrInvalid でない)の場合、t.Errorf が呼び出され、テストが失敗します。これは、nil レシーバに対する Readdirnames の呼び出しが期待通りにエラーを処理しなかったことを意味します。
func TestReaddirNilFile(t *testing.T)
このテスト関数は TestReaddirnamesNilFile と同様のロジックですが、Readdir(1) メソッドに対して実行されます。
var f *Fileでfをnilに初期化。f.Readdir(1)を呼び出し。if fi, err := f.Readdir(1); fi != nil || err != ErrInvalid { ... }で、返されたfi(FileInfoスライス) がnilであり、errがos.ErrInvalidであることを検証します。
これらのテストの追加により、Goの os パッケージは、nil ポインタレシーバに対する Readdir および Readdirnames の呼び出しに対して、より堅牢なエラーハンドリングを提供することが保証されます。これにより、開発者はこれらのメソッドをより安全に使用できるようになります。
関連リンク
- Go言語の
osパッケージドキュメント: https://pkg.go.dev/os - Go言語の
testingパッケージドキュメント: https://pkg.go.dev/testing
参考にした情報源リンク
- https://github.com/golang/go/commit/3c7d2e6af9aced200842b2afa2e9413e5a33e43a
- https://golang.org/cl/46450043 (Go Code Review)
- Go言語の公式ドキュメント (osパッケージ、testingパッケージ、nilポインタレシーバに関する一般的な情報)I have generated the detailed technical explanation in Markdown format, following all the specified instructions and chapter structure. The output is provided directly to standard output as requested.