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[インデックス 1815] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の公式仕様書 (doc/go_spec.html) におけるHTMLエンティティの誤った記述を修正するものです。具体的には、コード例として示されているビット演算子の部分で、小なり記号 (<) がHTMLエンティティ (&lt;) として適切にエスケープされていなかった問題を解決しています。

コミット

fix unqouted &

R=gri
OCL=26158
CL=26158

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/02827193872641250d6f52944fbdb2c22d17d481

元コミット内容

このコミットは、Go言語の初期開発段階において、HTML形式の仕様書 doc/go_spec.html 内の記述ミスを修正したものです。コミットメッセージは非常に簡潔に「fix unqouted &」とだけ記されており、これは「引用符で囲まれていないアンパサンド(&)の修正」を意味します。しかし、実際の変更内容を見ると、アンパサンドそのものではなく、HTMLエンティティとしてエスケープされるべき小なり記号 (<) がエスケープされていなかった問題への対処であることがわかります。

変更の背景

このコミットが行われた2009年3月は、Go言語がまだ一般に公開される前の、活発な開発と仕様策定の初期段階でした。この時期は、言語の機能が固まりつつある一方で、その公式ドキュメントである仕様書の整備も並行して進められていました。

HTMLドキュメントにおいて、< (小なり記号) や > (大なり記号) は、HTMLタグの開始と終了を示す特別な意味を持つ文字です。もしこれらの文字がHTMLファイル内にそのまま記述されると、ウェブブラウザはそれらをHTMLタグの一部として解釈しようとします。これにより、以下のような問題が発生する可能性があります。

  1. 表示崩れ: ブラウザが意図しないHTML構造を解釈し、ドキュメントのレイアウトが崩れる。
  2. 意味の誤解釈: コード例として示された 1<<n のような式が、ブラウザによってHTMLタグとして扱われ、正しく表示されない。
  3. セキュリティ上の脆弱性: 悪意のあるスクリプトが挿入されるクロスサイトスクリプティング (XSS) などのセキュリティリスクにつながる可能性もゼロではありません。

このコミットは、Go言語の仕様書という極めて重要なドキュメントの正確性と堅牢性を確保するために、このような基本的なHTML記述の誤りを修正することを目的としています。仕様書は言語の「憲法」とも言える存在であり、その内容が正確に、かつ意図通りに表示されることは、開発者コミュニティにとって非常に重要です。

前提知識の解説

1. HTMLエンティティ

HTMLエンティティは、HTMLドキュメント内で特殊文字(例: <>&"')や、キーボードから直接入力できない文字(例: 著作権記号 ©、登録商標記号 ®)を表現するために使用される特殊な文字シーケンスです。これらは通常、アンパサンド (&) で始まり、セミコロン (;) で終わります。

  • &lt;: 小なり記号 (<) を表します (less than)。
  • &gt;: 大なり記号 (>) を表します (greater than)。
  • &amp;: アンパサンド (&) を表します (ampersand)。
  • &quot;: 二重引用符 (") を表します (quotation mark)。
  • &apos;: アポストロフィ (') を表します (apostrophe)。

HTMLパーサーはこれらのエンティティを認識し、対応する文字に変換して表示します。これにより、HTMLの構造を壊すことなく特殊文字を安全に表示できます。

2. Go言語のビット演算子 &^=

Go言語には、C言語などと同様にビット演算子が用意されています。&^= は「ビットクリア代入演算子」と呼ばれ、以下のように機能します。

x &^= yx = x & (^y) と同等です。

これは、x のビットのうち、y の対応するビットが 1 であるビットを 0 にクリア(設定解除)する操作です。

例: i &^= (1 << n)

この式は、変数 in 番目のビット(0から数えて)を 0 にクリアする操作を表しています。1 << n は、1n ビット左にシフトすることで、n 番目のビットのみが 1 で、他が 0 の値を作成します。例えば、n3 の場合、1 << 3 はバイナリで 00001000 となり、これは10進数で 8 です。したがって、i &^= (1 << 3)i の4番目のビット(0-indexed)をクリアします。

3. Go言語の仕様書 (doc/go_spec.html)

Go言語の仕様書は、Go言語の文法、セマンティクス、組み込み型、演算子、パッケージなど、言語のあらゆる側面を定義する公式ドキュメントです。開発初期からHTML形式で提供されており、言語の設計思想や詳細な挙動を理解するための最も重要な情報源の一つです。このコミットが修正しているのは、そのHTML形式の仕様書内の記述です。

技術的詳細

このコミットの技術的な核心は、HTMLドキュメントにおける文字エンコーディングの正確性、特に予約文字のエスケープ処理にあります。

Go言語の仕様書 doc/go_spec.html は、ウェブブラウザで閲覧されることを前提としたHTMLファイルです。HTMLの仕様では、<> といった文字はタグの開始・終了を示す予約文字として扱われます。したがって、これらの文字をテキストとして表示したい場合は、HTMLエンティティに変換する必要があります。

元のコードスニペット i &^= (1<<n) は、Go言語のコードとしては正しい記述です。しかし、この文字列をHTMLファイル内にそのまま埋め込むと、ブラウザは (1<<n)< をHTMLタグの開始と誤解釈する可能性があります。この誤解釈は、以下のような具体的な問題を引き起こす可能性があります。

  • DOMツリーの破損: ブラウザがHTMLをパースする際に、予期せぬタグの開始と判断し、Document Object Model (DOM) ツリーが正しく構築されない可能性があります。
  • レンダリングの不整合: DOMツリーの破損は、結果としてウェブページのレイアウトが崩れたり、一部のコンテンツが表示されなくなったりする原因となります。
  • スクリプトインジェクションのリスク: 最悪の場合、攻撃者が < を利用して悪意のあるスクリプト(例: <script>alert('XSS')</script>) を挿入し、それがブラウザによって実行されてしまうクロスサイトスクリプティング (XSS) 攻撃の足がかりとなる可能性も理論上は存在します。仕様書のような信頼性の高いドキュメントでは可能性は低いですが、一般的なウェブアプリケーション開発においては常に考慮すべきリスクです。

このコミットでは、1<<n<&lt; に修正することで、この問題を解決しています。&lt; はHTMLエンティティとして定義されており、HTMLパーサーはこれをHTMLタグではなく、単なる小なり記号として正しく解釈します。これにより、ブラウザ上でコードスニペットが意図通りに i &^= (1<<n) と表示されるようになり、ドキュメントの正確性と堅牢性が保たれます。

この修正は、Go言語の機能そのものには影響を与えませんが、その公式ドキュメントの品質と信頼性を向上させる上で非常に重要な役割を果たしています。特に、言語仕様書のような公式ドキュメントでは、記述の正確性が極めて重要であり、このような細かいHTMLエンティティの修正も、ドキュメントの信頼性を保つために不可欠な作業です。

コアとなるコードの変更箇所

変更は doc/go_spec.html ファイルの1箇所のみです。

--- a/doc/go_spec.html
+++ b/doc/go_spec.html
@@ -3023,7 +3023,7 @@ x = 1
 *p = f()
 a[i] = 23
 k = <-ch
-i &^= (1<<n)\n+i &^= (1&lt;&lt;n)\n </pre>

具体的には、以下の行が変更されました。

  • 変更前: -i &^= (1<<n)
  • 変更後: +i &^= (1&lt;&lt;n)

コアとなるコードの解説

変更された行は、Go言語の仕様書内でビットクリア代入演算子 &^= の使用例を示すコードブロックの一部です。

  • 変更前 (-i &^= (1<<n)): この行では、Goのコード例として 1<<n という左シフト演算子が含まれています。HTMLの文脈では、この < がHTMLタグの開始と誤解釈される可能性がありました。ブラウザがこれをHTMLタグとして解釈しようとすると、その後の n)</pre> タグの解釈に影響を与え、表示が崩れる原因となります。

  • 変更後 (+i &^= (1&lt;&lt;n)): 変更後では、< がHTMLエンティティである &lt; に置き換えられています。これにより、HTMLパーサーはこれをHTMLタグではなく、単なる小なり記号として認識し、ブラウザ上で正しく i &^= (1<<n) と表示されるようになります。この修正により、HTMLの構文が正しく保たれ、ドキュメントのレンダリングが安定します。

この修正は、Go言語の機能そのものには影響を与えませんが、その公式ドキュメントの品質と正確性を向上させる上で重要な役割を果たしています。特に、仕様書のような公式ドキュメントでは、記述の正確性が極めて重要であり、このような細かいHTMLエンティティの修正も、ドキュメントの信頼性を保つために不可欠です。

関連リンク

参考にした情報源リンク