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[インデックス 18297] ファイルの概要

このコミットは、Goランタイムのテストコード src/pkg/runtime/proc_test.go におけるWindows環境での問題を修正するものです。具体的には、/dev/null が存在しない環境(Windowsなど)でテストが実行された際に、余分な改行が出力されるバグを修正しています。

コミット

commit d76a1e593c221e147fd5d51c98f068a60bb8f74a
Author: Dmitriy Vyukov <dvyukov@google.com>
Date:   Tue Jan 21 10:44:08 2014 +0400

    runtime: fix test on windows
    The test prints an excessive \n when /dev/null is not present.
    
    R=golang-codereviews, bradfitz, dave
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/54890043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/d76a1e593c221e147fd5d51c98f068a60bb8f74a

元コミット内容

runtime: fix test on windows
The test prints an excessive \n when /dev/null is not present.

変更の背景

このコミットは、Goランタイムのテストスイートの一部である proc_test.go がWindows環境で正しく動作しない問題を解決するために行われました。

proc_test.go 内の特定のテストでは、ファイルシステム操作のパフォーマンスを測定するために /dev/null への書き込み速度を利用していました。しかし、/dev/null はUnix系システムに存在する特殊なデバイスファイルであり、書き込まれたデータをすべて破棄する役割を持っています。Windowsオペレーティングシステムには、デフォルトで /dev/null に相当するパスは存在しません。Windowsでは、同様の機能を持つデバイスとして NUL デバイスがありますが、パスの表現が異なります。

テストコードは、os.IsNotExist(err) を使用して /dev/null が存在しない場合に特定の処理を行うように記述されていました。この「存在しない」という条件がWindowsで満たされた場合、テストは「OK」というメッセージを出力して終了する設計になっていました。しかし、この「OK」メッセージの出力時に fmt.Println("OK\n") と記述されていたため、意図しない余分な改行(\n)が追加で出力されていました。

この余分な改行は、テストの出力が自動化されたスクリプトやCI/CDパイプラインによって解析される際に問題を引き起こす可能性がありました。例えば、特定の文字列パターンを期待するテストハーネスが、予期せぬ改行によってテスト結果を誤って解釈する、あるいはテストが失敗したと判断する、といった事態が考えられます。

したがって、このコミットは、Windows環境でのテストの出力の整合性を保ち、テスト結果の誤解釈を防ぐために、この余分な改行を削除することを目的としています。

前提知識の解説

1. /dev/nullNUL デバイス

  • /dev/null: Unix系オペレーティングシステム(Linux, macOSなど)に存在する特殊なファイルです。このファイルに書き込まれたデータはすべて破棄され、読み込もうとすると常にEOF(End Of File)が返されます。プログラムの出力を捨てたい場合や、空の入力を提供したい場合によく利用されます。
  • NUL デバイス: Windowsオペレーティングシステムにおける /dev/null に相当する特殊なデバイスです。機能は /dev/null と同様で、書き込まれたデータは破棄され、読み込みは常にEOFを返します。コマンドプロンプトなどでは NUL と指定して利用されます。Go言語の os パッケージは、クロスプラットフォーム対応のために、内部的にOSごとの適切なパス解決を行いますが、このテストでは明示的に /dev/null を参照していたため、Windowsでの問題が発生しました。

2. os.IsNotExist(err)

Go言語の os パッケージには、ファイルシステム操作に関連するエラーを扱うためのヘルパー関数がいくつか提供されています。os.IsNotExist(err) はその一つで、引数として渡されたエラー err が、ファイルやディレクトリが存在しないことを示すエラーである場合に true を返します。これにより、プログラムはファイルが存在しないという特定の状況を検出し、それに応じた処理を行うことができます。

3. fmt.Println()

fmt パッケージはGo言語の標準ライブラリの一部であり、フォーマットされたI/O(入出力)を提供します。fmt.Println() 関数は、引数として渡された値を標準出力に表示し、その後に改行文字(\n)を自動的に追加します。

このコミットの変更点では、fmt.Println("OK\n") から fmt.Println("OK") への変更が行われています。元のコードでは、"OK\n" という文字列自体に改行文字が含まれており、さらに fmt.Println() が自動的に改行を追加するため、結果として二重の改行が出力されていました。修正後のコードでは、"OK" という文字列に改行文字を含めないことで、fmt.Println() による自動的な改行のみが適用され、単一の改行出力に修正されています。

技術的詳細

このコミットの技術的な詳細は、Go言語のクロスプラットフォームテストにおけるOS固有の挙動の考慮と、標準出力の厳密な制御に集約されます。

src/pkg/runtime/proc_test.go 内の該当箇所は、ファイルシステムへの書き込み速度をテストする目的で、/dev/null を利用していました。これは、書き込み操作のオーバーヘッドを測定する際に、実際のディスクI/Oを伴わない「無限のシンク」として /dev/null が理想的であるためです。

	if os.IsNotExist(err) {
		// This test tests what it is intended to test only if writes are fast.
		// If there is no /dev/null, we just don't execute the test.
		fmt.Println("OK\n") // <-- 修正前
		return
	}

上記のコードスニペットでは、os.IsNotExist(err)true を返す、つまり /dev/null が存在しない場合に、テストが実行されないことを示すために "OK" を出力して早期リターンしています。この err は、os.OpenFile("/dev/null", ...) のような操作で /dev/null を開こうとした際に発生するエラーです。

Windows環境では /dev/null というパスは存在しないため、os.IsNotExist(err)true となり、このブロックが実行されます。問題は fmt.Println("OK\n") の部分にありました。

  • "OK\n": この文字列リテラル自体が O, K, 改行 の3文字を含んでいます。
  • fmt.Println(): この関数は、引数として渡された文字列の末尾に自動的に改行文字を追加します。

したがって、fmt.Println("OK\n") は、"OK" とそれに続く2つの改行文字(\nfmt.Println が追加する \n)を出力していました。これにより、テストの出力は OK\n\n のような形になり、期待される OK\n とは異なっていました。

このコミットは、この冗長な改行を削除するために、fmt.Println("OK\n")fmt.Println("OK") に変更しました。

		fmt.Println("OK") // <-- 修正後

修正後のコードでは、"OK" という文字列リテラルには改行文字が含まれていません。fmt.Println("OK") は、"OK" を出力した後、自動的に1つの改行文字を追加します。これにより、最終的な出力は OK\n となり、テストの意図する出力と一致するようになりました。

この変更は、Go言語のクロスプラットフォーム互換性を維持しつつ、テストの信頼性を向上させるための細かながらも重要な修正です。特に、自動化されたテスト環境では、出力の厳密な一致が求められることが多いため、このような細部の修正が全体の安定性に寄与します。

コアとなるコードの変更箇所

変更は src/pkg/runtime/proc_test.go ファイルの1箇所のみです。

--- a/src/pkg/runtime/proc_test.go
+++ b/src/pkg/runtime/proc_test.go
@@ -268,7 +268,7 @@ func main() {
 	if os.IsNotExist(err) {
 		// This test tests what it is intended to test only if writes are fast.
 		// If there is no /dev/null, we just don't execute the test.
-		fmt.Println("OK\n")
+		fmt.Println("OK")
 		return
 	}
 	if err != nil {

コアとなるコードの解説

変更された行は、src/pkg/runtime/proc_test.go 内の main 関数(テストのセットアップまたはヘルパー関数の一部として機能している可能性が高い)にあります。

元のコード:

fmt.Println("OK\n")

この行は、/dev/null が存在しない(主にWindows環境で発生)場合に、テストが実行されずに「OK」というメッセージを出力して終了することを示していました。しかし、"OK\n" という文字列リテラル自体に改行が含まれているにもかかわらず、fmt.Println 関数がさらに自動的に改行を追加するため、結果として二重の改行が出力されていました。

修正後のコード:

fmt.Println("OK")

この変更により、fmt.Println に渡される文字列リテラルから明示的な改行文字 \n が削除されました。fmt.Println 関数は引き続き自動的に1つの改行を追加するため、最終的な出力は OK の後に1つの改行が続く形となり、テストの意図する出力と一致するようになりました。

この修正は、Goのテストスイートが異なるオペレーティングシステム(特にUnix系とWindows)で一貫した出力を生成することを保証するために重要です。テストの出力は、自動化されたビルドシステムやCI/CDパイプラインによって解析されることが多いため、予期せぬ余分な文字はテストの誤判定につながる可能性があります。このシンプルな変更により、そのような潜在的な問題を回避し、テストの信頼性を向上させています。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go CL 54890043 のレビューコメントと変更内容
  • Go言語の公式ドキュメント
  • Unix系OSにおける /dev/null の概念
  • Windowsにおける NUL デバイスの概念
  • fmt.Println の挙動に関するGo言語のドキュメントと一般的な知識