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[インデックス 18310] ファイルの概要

このコミットは、Goコンパイラ(gc)のドキュメントに-packフラグに関する説明を追加するものです。具体的には、src/cmd/gc/doc.goファイルに2行の変更が加えられ、-packフラグがオブジェクトファイルではなくパッケージファイルを書き出すことを明記しています。

コミット

commit bec1a3e258e193cb093c815fac99660466f6b3a9
Author: Ian Lance Taylor <iant@golang.org>
Date:   Tue Jan 21 11:54:21 2014 -0800

    cmd/gc: document -pack flag
    
    R=golang-codereviews, r
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/55140044

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/bec1a3e258e193cb093c815fac99660466f6b3a9

元コミット内容

cmd/gc: document -pack flag

R=golang-codereviews, r
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/55140044

変更の背景

このコミットの背景は、Goコンパイラ(gc)の-packフラグの挙動を公式ドキュメントに明記することにあります。Goコンパイラは、ソースコードをコンパイルする際に、中間ファイルとしてオブジェクトファイル(.oファイル)やパッケージファイル(.aファイル)を生成します。通常、go buildコマンドを通じてコンパイルを行う場合、これらの内部的な挙動は抽象化されていますが、コンパイラを直接呼び出す開発者や、Goのビルドシステム自体を理解しようとする人々にとっては、各フラグの正確な機能が重要になります。

-packフラグは、コンパイラがオブジェクトファイルではなくパッケージファイルを生成するように指示するものであり、このコミット以前は、その機能がgcコマンドのドキュメントに明示されていなかったと考えられます。ドキュメントの追加は、ツールの透明性を高め、開発者がより正確にコンパイラの挙動を理解し、利用できるようにすることを目的としています。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下のGoのコンパイルプロセスと関連する概念について知っておく必要があります。

  1. Goコンパイラ (gc): Go言語の公式コンパイラはgcと呼ばれます。これはgo buildコマンドの内部で利用される主要なツールの一つです。gcはGoのソースコード(.goファイル)を読み込み、機械語に変換したり、中間形式のファイル(オブジェクトファイルやパッケージファイル)を生成したりします。

  2. オブジェクトファイルとパッケージファイル:

    • オブジェクトファイル (Object File): 通常、.oという拡張子を持つファイルで、コンパイルされた個々のソースファイルに対応する機械語コードを含みます。これらはまだ実行可能な形式ではなく、リンカによって結合されて最終的な実行可能ファイルやライブラリになります。
    • パッケージファイル (Package File): Goにおいては、コンパイルされたGoパッケージのアーカイブを指します。通常、.a(アーカイブ)という拡張子を持ちます。これは、そのパッケージ内のすべてのコンパイル済みオブジェクトコードと、そのパッケージがエクスポートする型、関数、変数などの情報(シンボル情報)を含んでいます。他のGoパッケージがそのパッケージをインポートする際に、このパッケージファイルが参照されます。Goのビルドシステムでは、依存関係にあるパッケージをコンパイルする際に、そのパッケージの.aファイルが生成され、利用されます。
  3. go buildコマンドの役割: go buildコマンドは、Goのソースコードをコンパイルし、実行可能バイナリやパッケージアーカイブを生成するための高レベルなコマンドです。このコマンドは、内部的にgcgo tool link(リンカ)などのツールを適切に呼び出し、依存関係の解決、コンパイル、リンクといった一連のプロセスを自動的に行います。開発者が直接gcコマンドを呼び出すことは稀ですが、Goのビルドシステムやツールチェインの内部動作を理解する上で、gcのフラグは重要な情報となります。

  4. doc.goファイル: Goのソースコードでは、パッケージやコマンドのドキュメントを記述するためにdoc.goというファイルが慣習的に使われます。このファイルには、パッケージ全体の概要や、コマンドラインツールの場合はその使い方、フラグの説明などが記述されます。このコミットで変更されたsrc/cmd/gc/doc.goは、gcコンパイラ自体のドキュメントを記述しているファイルです。

技術的詳細

このコミットは、Goコンパイラgcの内部的な挙動を制御する-packフラグに関するドキュメントの追加です。

Goのコンパイルプロセスでは、ソースコードがコンパイルされると、通常はオブジェクトファイルが生成されます。これらのオブジェクトファイルは、最終的な実行可能ファイルを生成するためにリンカによって結合されます。しかし、Goのパッケージシステムでは、他のパッケージからインポートされることを目的としたパッケージは、オブジェクトファイルだけでなく、そのパッケージの公開されたAPI(型、関数、変数など)に関するメタデータも含む「パッケージファイル」としてアーカイブされます。

-packフラグは、gcコンパイラに対して、通常のオブジェクトファイル(.o)ではなく、この「パッケージファイル」(.a)を生成するように指示します。これは、Goのビルドシステムが依存関係を解決し、ライブラリとして利用されるパッケージをコンパイルする際に内部的に使用される機能であると考えられます。

例えば、go buildコマンドがimport "fmt"のような行を処理する際、fmtパッケージのソースコードをコンパイルし、その結果をfmt.aのようなパッケージファイルとして保存します。このfmt.aファイルには、fmtパッケージのコンパイル済みコードと、fmt.Printlnなどの関数シグネチャや型定義といった情報が含まれており、go buildはこれを利用して、fmtパッケージに依存する他のコードをコンパイル・リンクします。

このコミット以前は、gcコマンドのヘルプやドキュメントに-packフラグの存在と機能が明記されていなかったため、その役割が不明瞭でした。今回の変更により、src/cmd/gc/doc.goに以下の説明が追加され、このフラグの目的が明確になりました。

-pack
        write a package file rather than an object file

これにより、gcコンパイラがオブジェクトファイルとパッケージファイルのどちらを生成するかを制御する内部的なメカニズムが、公式ドキュメントの一部として公開されたことになります。これは、Goのツールチェインの透明性を高め、より深いレベルでの理解を促進する上で重要な変更です。

なお、現在のgoコマンドラインツールでは、go buildgo installがこれらの内部的なコンパイラフラグを抽象化しており、ユーザーが直接-packフラグを指定することは一般的ではありません。このフラグは、Goのビルドシステム自体や、Goのツールチェインを開発する際に利用される低レベルなオプションである可能性が高いです。

コアとなるコードの変更箇所

変更はsrc/cmd/gc/doc.goファイルに集中しており、以下の2行が追加されています。

--- a/src/cmd/gc/doc.go
+++ b/src/cmd/gc/doc.go
@@ -37,6 +37,8 @@ Substitute 6g with 8g or 5g where appropriate.
 Flags:
  -o file
  output file, default file.6 for 6g, etc.
+-pack
+ write a package file rather than an object file
  -e
  normally the compiler quits after 10 errors; -e prints all errors
  -p path

具体的には、Flags:セクションの-o fileフラグの説明の後に、-packフラグとその説明が追加されています。

コアとなるコードの解説

追加されたコードは、Goコンパイラgcのドキュメントファイルであるsrc/cmd/gc/doc.go内のFlags:セクションに、-packフラグの説明を追加するものです。

  • -pack: これは、gcコンパイラに渡されるコマンドラインフラグです。
  • write a package file rather than an object file: この説明は、-packフラグが有効な場合、gcコンパイラが通常のオブジェクトファイル(.o)ではなく、Goのパッケージファイル(.a)を生成することを示しています。

この変更は、コンパイラの挙動自体を変更するものではなく、その挙動に関するドキュメントを改善するものです。これにより、gcコマンドのヘルプメッセージや関連ドキュメントを参照する開発者が、-packフラグの目的を明確に理解できるようになります。これは、Goのツールチェインの内部動作を理解しようとする人々にとって、非常に価値のある情報です。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語公式ドキュメント (Goのコンパイルプロセスやツールチェインに関する一般的な情報): https://go.dev/doc/
  • Goのビルドシステムに関する記事や解説(Goのオブジェクトファイルやパッケージファイルに関する一般的な情報)