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[インデックス 18326] ファイルの概要

このコミットは、Goランタイムのメモリ管理に関連するsrc/pkg/runtime/msize.cファイルに対するコードフォーマットの修正です。msize.cは、Goのランタイムにおいて、オブジェクトのサイズクラスを初期化し、効率的なメモリ割り当てを可能にするための重要な役割を担っています。具体的には、様々なサイズのオブジェクトを管理するために、メモリを特定のサイズに分類(サイズクラス)し、それらのサイズクラスに対応するページ数や割り当てサイズを計算するロジックが含まれています。

コミット

このコミットは、Goランタイムのコードベースにおけるコーディングスタイルの一貫性を向上させるためのフォーマット修正です。具体的には、論理AND演算子(&&)の配置と、式の継続行のインデントに関する修正が行われています。これにより、コードの可読性と保守性が向上します。

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/b7b93a7154ea1b569019e9d993f21a52d8aeda14

元コミット内容

commit b7b93a7154ea1b569019e9d993f21a52d8aeda14
Author: Dmitriy Vyukov <dvyukov@google.com>
Date:   Wed Jan 22 13:30:12 2014 +0400

    runtime: fix code formatting
    Place && at the end of line.
    Offset expression continuation.
    
    R=golang-codereviews, bradfitz
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/55380044

変更の背景

この変更の背景には、Go言語のプロジェクト全体で一貫したコーディングスタイルを維持しようとする努力があります。Go言語は、gofmtという標準的なフォーマッタツールを提供しており、コードのスタイルに関する議論を減らし、すべてのGoコードが同じように見えるようにすることを目指しています。

このコミットが行われた2014年当時、Goのコードベース、特にランタイムのような低レベルのCコード部分においても、特定のコーディング規約が適用されていました。この修正は、複数行にわたる条件式や長い式を記述する際に、論理演算子(&&||)を前の行の末尾に配置し、継続行を適切にインデントするという、当時のGoプロジェクトにおける推奨されるスタイルに準拠させるためのものです。これにより、コードの論理的な流れが視覚的に明確になり、可読性が向上します。

このようなフォーマットの修正は、機能的な変更ではないものの、大規模なプロジェクトにおいてコードベース全体の品質と保守性を高める上で非常に重要です。一貫したスタイルは、新しい開発者がコードベースを理解しやすくし、コードレビューのプロセスを効率化します。

前提知識の解説

Goランタイム

Goランタイムは、Goプログラムの実行を管理する低レベルのシステムです。これには、ガベージコレクション、スケジューラ(ゴルーチンの管理)、メモリ割り当て、システムコールインターフェースなどが含まれます。Goプログラムは、コンパイル時にランタイムとリンクされ、ランタイムが提供する機能を利用して実行されます。

メモリ割り当てとサイズクラス(msize.cの役割)

Goのランタイムは、効率的なメモリ管理のために独自のメモリ割り当てメカニズムを持っています。これは、一般的なmalloc/freeのようなシステムコールを直接使用するのではなく、より高速なアロケータを実装しています。

msize.cファイルは、このメモリ割り当てシステムの一部であり、特に「サイズクラス(size class)」の概念を扱います。

  • サイズクラス: Goのランタイムは、様々なサイズのオブジェクトを効率的に割り当てるために、メモリを事前に定義された「サイズクラス」に分類します。例えば、8バイトのオブジェクト、16バイトのオブジェクト、32バイトのオブジェクトなど、特定のサイズごとにメモリブロックを管理します。
  • ページ(Page): メモリは、OSから取得した大きなブロック(ページ)に分割されます。これらのページは、特定のサイズクラスのオブジェクトを格納するために使用されます。
  • runtime·InitSizes関数: このコミットで変更されたruntime·InitSizes関数は、ランタイムの初期化時に呼び出され、これらのサイズクラスの情報を設定します。具体的には、各サイズクラスに対応するオブジェクトサイズ、割り当てられるページ数、およびその他の関連するメタデータを計算し、内部テーブルに格納します。これにより、Goプログラムがオブジェクトを割り当てる際に、適切なサイズのメモリブロックを迅速に提供できるようになります。

C言語のコーディングスタイルとGoのgofmt

Go言語のプロジェクトでは、C言語で書かれたランタイム部分も、Go言語のコードと同様に特定のコーディングスタイルに従うことが推奨されています。Go言語のコードはgofmtというツールによって自動的にフォーマットされますが、C言語のコードにはgofmtは直接適用できません。しかし、Goプロジェクト全体として、可読性と一貫性を重視する文化があり、C言語のコードもそれに準じた手動または他のツールによるフォーマットが行われます。

このコミットで修正されたスタイルは、以下のような一般的なC言語のコーディング規約や、Goプロジェクト独自の規約に基づいています。

  • 論理演算子の配置: 複数行にわたる条件式の場合、&&||のような論理演算子を前の行の末尾に置くスタイルは、次の行が前の行の継続であることを視覚的に示し、条件がどのように結合されているかを明確にする効果があります。
  • 継続行のインデント: 長い式や関数呼び出しが複数行にわたる場合、継続行を適切にインデントすることで、コードの構造が明確になり、どの部分がどの式に属しているかが一目でわかるようになります。

技術的詳細

このコミットは、src/pkg/runtime/msize.cファイル内のruntime·InitSizes関数におけるif文の条件式のフォーマットを修正しています。

元のコードでは、複数行にわたるif文の条件式において、論理AND演算子(&&)が次の行の先頭に配置され、継続行のインデントが統一されていませんでした。

// 元のコード
if(sizeclass > 1
&& npages == runtime·class_to_allocnpages[sizeclass-1]
&& allocsize/size == allocsize/runtime·class_to_size[sizeclass-1]) {

このフォーマットは、一部の開発者にとっては読みにくいと感じられることがあります。特に、論理演算子が次の行の先頭にあると、前の行と次の行の論理的なつながりが瞬時に把握しにくい場合があります。

このコミットでは、以下の2つの主要なフォーマット変更が適用されています。

  1. &&の行末配置: 論理AND演算子(&&)が、それが結合する式の前の行の末尾に移動されました。

    • 変更前: && npages == ...
    • 変更後: sizeclass > 1 && このスタイルは、前の行がまだ継続していることを視覚的に示し、条件式の各部分がどのように連結されているかをより明確にします。
  2. 式の継続行のインデント: 複数行にわたる条件式の継続行が、より深いレベルでインデントされるようになりました。

    • 変更前: && npages == ...&& allocsize/size == ... が同じインデデントレベル
    • 変更後: npages == ...allocsize/size == ... がさらにインデントされる これにより、if文の条件式全体が1つの論理的なまとまりとして認識しやすくなり、各サブ条件が独立した行に配置されつつも、全体としての構造が保たれます。

これらの変更は、コードのセマンティクス(意味)には一切影響を与えません。プログラムの動作は変更されず、純粋にコードの視覚的な表現と可読性を向上させるためのものです。これは、Goプロジェクトがコードの一貫性と保守性を重視していることの表れと言えます。

コアとなるコードの変更箇所

src/pkg/runtime/msize.cファイルのruntime·InitSizes関数内のif文の条件式が変更されています。

--- a/src/pkg/runtime/msize.c
+++ b/src/pkg/runtime/msize.c
@@ -92,9 +92,9 @@ runtime·InitSizes(void)\n \t\t// objects into the page, we might as well\n \t\t// use just this size instead of having two\n \t\t// different sizes.\n-\t\tif(sizeclass > 1\n-\t\t&& npages == runtime·class_to_allocnpages[sizeclass-1]\n-\t\t&& allocsize/size == allocsize/runtime·class_to_size[sizeclass-1]) {\n+\t\tif(sizeclass > 1 &&\n+\t\t\tnpages == runtime·class_to_allocnpages[sizeclass-1] &&\n+\t\t\tallocsize/size == allocsize/runtime·class_to_size[sizeclass-1]) {\n \t\t\truntime·class_to_size[sizeclass-1] = size;\n \t\t\tcontinue;\n \t\t}\

コアとなるコードの解説

変更されたコードは、runtime·InitSizes関数内のif文の条件式です。このif文は、メモリサイズクラスの初期化ロジックの一部であり、特定の条件が満たされた場合に、既存のサイズクラスの情報を更新するかどうかを決定します。

元のコード:

if(sizeclass > 1
&& npages == runtime·class_to_allocnpages[sizeclass-1]
&& allocsize/size == allocsize/runtime·class_to_size[sizeclass-1]) {

このコードでは、3つの条件が論理AND(&&)で結合されています。

  1. sizeclass > 1: 現在のサイズクラスが1より大きいこと。
  2. npages == runtime·class_to_allocnpages[sizeclass-1]: 現在のページ数が、前のサイズクラスに割り当てられたページ数と同じであること。
  3. allocsize/size == allocsize/runtime·class_to_size[sizeclass-1]: 現在の割り当てサイズをオブジェクトサイズで割った値が、前のサイズクラスの割り当てサイズをそのオブジェクトサイズで割った値と同じであること。

変更後のコード:

if(sizeclass > 1 &&
		npages == runtime·class_to_allocnpages[sizeclass-1] &&
		allocsize/size == allocsize/runtime·class_to_size[sizeclass-1]) {

この変更では、以下の点が異なります。

  • 最初の&&sizeclass > 1の行末に移動しました。
  • 2番目と3番目の条件式が、if文の開始括弧(からさらにインデントされています。これにより、これらの行が前の行の継続であり、かつif文の条件式の一部であることが視覚的に明確になります。

この修正は、コードの動作には影響を与えず、純粋にコードの視覚的な構造と可読性を改善するためのものです。これにより、開発者がこの複雑な条件式をより迅速に理解できるようになります。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go Code Review Comments: https://go.dev/doc/effective_go#commentary
  • Go Wiki: CodeReviewComments: https://go.dev/wiki/CodeReviewComments
  • Goのメモリ管理に関する一般的な情報源 (例: Goの公式ドキュメント、ブログ記事など) - 特定のURLは挙げませんが、Goのランタイムとメモリ管理の概念を理解するために一般的な知識として参照しました。
  • gofmtに関する情報源 (例: Goの公式ドキュメント) - gofmtの目的とGoのコーディングスタイルへの影響を理解するために参照しました。
  • C言語の一般的なコーディングスタイルガイド - 論理演算子の配置やインデントの慣習を理解するために参照しました。