[インデックス 18339] ファイルの概要
このコミットは、Goコンパイラ (cmd/gc
) のドキュメントにおける -pack
フラグの説明を修正するものです。具体的には、「package file」という曖昧な表現を、より明確な「archive file」という言葉に置き換えることで、ドキュメントの正確性と理解しやすさを向上させています。
コミット
commit d07d08e60f9eacde0af7648d577a09a65d4eb992
Author: Rob Pike <r@golang.org>
Date: Wed Jan 22 15:55:56 2014 -0800
cmd/gc: add the word 'archive' to the documentation for -pack
The term "package file" is unclear.
R=iant, dave
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/54760044
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/d07d08e60f9eacde0af7648d577a09a65d4eb992
元コミット内容
cmd/gc: add the word 'archive' to the documentation for -pack
The term "package file" is unclear.
変更の背景
Go言語のコンパイラ gc
には、コンパイル結果の出力形式を制御するための -pack
フラグが存在します。このフラグは、コンパイルされたGoパッケージを、実行可能なオブジェクトファイルとしてではなく、他のGoプログラムからインポート可能な形式で出力するために使用されます。
しかし、従来のドキュメントでは、この出力形式を「package file」と表現していました。Go言語において「パッケージ」という言葉は、ソースコードの論理的なまとまりを指すため、コンパイルされたバイナリファイルそのものを指す「package file」という表現は、読者にとって混乱を招く可能性がありました。特に、Goのツールチェインが内部的に使用する、コンパイル済みパッケージのバイナリ形式は、Unix系のシステムで一般的な「アーカイブファイル」(通常 .a
拡張子を持つ)の形式に準拠しています。
この曖昧さを解消し、ドキュメントの正確性を高めるために、Rob Pike氏(Go言語の共同開発者の一人)によって、より技術的に正確な「archive file」という用語に置き換える変更が提案されました。これにより、開発者が -pack
フラグの挙動をより正確に理解できるようになります。
前提知識の解説
- Goコンパイラ (
gc
): Go言語の公式コンパイラであり、Goソースコードを機械語に変換する役割を担います。cmd/gc
は、Goプロジェクトのソースツリー内でこのコンパイラのコードが配置されているディレクトリを指します。 - オブジェクトファイル (Object File): ソースコードがコンパイルされた結果生成される中間ファイルで、機械語コードを含みます。通常、リンカによって複数のオブジェクトファイルが結合され、最終的な実行可能ファイルやライブラリが作成されます。Goコンパイラは、デフォルトでオブジェクトファイルを出力します。
- パッケージファイル (Package File): Go言語の文脈では、この用語は二重の意味を持ち得ます。
- ソースコードの論理的なまとまり:
package main
やpackage fmt
のように、Goソースコードの先頭で宣言される論理的な単位。 - コンパイル済みバイナリ: 本コミットで言及されている、コンパイルされたGoパッケージのバイナリ形式。他のGoプログラムからインポートされる際に使用されます。
- ソースコードの論理的なまとまり:
- アーカイブファイル (Archive File): 複数のファイルを一つにまとめたファイル形式。Unix系のシステムでは、
ar
コマンドで作成・操作される.a
拡張子を持つファイルが一般的です。Goのツールチェインでは、コンパイルされたGoパッケージのバイナリは、このアーカイブ形式で保存されます。これには、コンパイルされたコードだけでなく、パッケージのメタデータ(エクスポートされた型、関数、変数など)も含まれます。他のGoパッケージがこのアーカイブファイルをインポートする際に、リンカがその内容を読み込み、必要なシンボルを解決します。 -pack
フラグ:go tool compile
(または古いgc
コマンド) に渡されるオプションの一つで、コンパイラがオブジェクトファイルではなく、コンパイル済みパッケージのアーカイブファイルを出力するように指示します。これは、主にGoのビルドシステムが内部的に使用するもので、ユーザーが直接このフラグを使うことは稀です。通常、go build
やgo install
コマンドが内部で適切にgc
やgo tool compile
を呼び出し、必要に応じて-pack
フラグを渡します。
技術的詳細
このコミットは、Goコンパイラ gc
のドキュメントファイル src/cmd/gc/doc.go
内の記述を修正するものです。doc.go
ファイルは、Goのツールチェインのドキュメント生成プロセスで使用される特殊なファイルで、Goのソースコードコメント形式で書かれたドキュメントを含んでいます。
変更の対象となったのは、-pack
フラグの説明行です。
変更前:
write a package file rather than an object file
変更後:
write an archive file rather than an object file
この変更は、単なる用語の置き換えですが、その背後にはGoのビルドシステムにおけるコンパイル済みパッケージの物理的な表現に関する正確な理解があります。Goのコンパイラが -pack
フラグ付きで実行されると、出力されるファイルは、Goのパッケージ構造とメタデータを含む、標準的なUnixアーカイブ形式(.a
ファイル)になります。この形式は、リンカが他のパッケージとリンクする際に必要な情報を提供します。
「package file」という用語は、Goのソースコードの論理的なパッケージと混同される可能性がありましたが、「archive file」という用語は、その物理的な格納形式をより正確に表現しています。これにより、Goのツールチェインの内部動作や、コンパイル済みパッケージの構造について深く理解しようとする開発者にとって、ドキュメントがより明確になります。
コアとなるコードの変更箇所
変更は src/cmd/gc/doc.go
ファイルの1箇所のみです。
--- a/src/cmd/gc/doc.go
+++ b/src/cmd/gc/doc.go
@@ -38,7 +38,7 @@ Flags:
-o file
\toutput file, default file.6 for 6g, etc.
-pack
- \twrite a package file rather than an object file
+ \twrite an archive file rather than an object file
-e
\tnormally the compiler quits after 10 errors; -e prints all errors
-p path
コアとなるコードの解説
この変更は、Goコンパイラ gc
のコマンドラインフラグに関するドキュメントを定義している doc.go
ファイル内のコメントを修正しています。
doc.go
ファイルは、Goのソースコード内にドキュメントを埋め込むための慣習的な方法です。go doc
コマンドや、Goの公式ドキュメントサイト (pkg.go.dev など) で表示されるドキュメントは、これらの doc.go
ファイルや、Goソースコード内のコメントから自動生成されます。
変更された行は、-pack
フラグの機能説明です。
-pack
フラグは、Goコンパイラが通常のオブジェクトファイル(.o
拡張子を持つことが多い)ではなく、コンパイル済みパッケージのアーカイブファイルを出力するように指示します。- このアーカイブファイルは、他のGoパッケージが
import
される際に、リンカによって参照されます。
このコミットは、コードの動作自体を変更するものではなく、その動作を説明するドキュメントの記述を改善するものです。これにより、Goのツールチェインの内部構造や、コンパイルプロセスに関する理解が深まります。
関連リンク
- Go言語の公式ドキュメント: https://go.dev/doc/
- Goコンパイラ (
cmd/compile
) のソースコード: https://github.com/golang/go/tree/master/src/cmd/compile - Goのツールチェインに関する詳細な情報(Go Wiki): https://go.dev/wiki/GoToolchain
参考にした情報源リンク
- Goのコミット履歴: https://github.com/golang/go/commits/master
- Go Gerrit Code Review: https://go.dev/cl/54760044 (コミットメッセージに記載されているGerritの変更リストへのリンク)
- Go言語のパッケージとモジュールに関する概念: https://go.dev/doc/code
- Unix
ar
コマンドとアーカイブファイル形式に関する一般的な情報 (例: Wikipediaなど) - Goのコンパイルプロセスに関するブログ記事や解説 (一般的なGo開発者コミュニティのリソース)```markdown
[インデックス 18339] ファイルの概要
このコミットは、Goコンパイラ (cmd/gc
) のドキュメントにおける -pack
フラグの説明を修正するものです。具体的には、「package file」という曖昧な表現を、より明確な「archive file」という言葉に置き換えることで、ドキュメントの正確性と理解しやすさを向上させています。
コミット
commit d07d08e60f9eacde0af7648d577a09a65d4eb992
Author: Rob Pike <r@golang.org>
Date: Wed Jan 22 15:55:56 2014 -0800
cmd/gc: add the word 'archive' to the documentation for -pack
The term "package file" is unclear.
R=iant, dave
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/54760044
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/d07d08e60f9eacde0af7648d577a09a65d4eb992
元コミット内容
cmd/gc: add the word 'archive' to the documentation for -pack
The term "package file" is unclear.
変更の背景
Go言語のコンパイラ (gc
) には、コンパイル結果の出力形式を制御するための -pack
フラグが存在します。このフラグは、コンパイルされたGoパッケージを、実行可能なオブジェクトファイルとしてではなく、他のGoプログラムからインポート可能な形式で出力するために使用されます。
しかし、従来のドキュメントでは、この出力形式を「package file」と表現していました。Go言語において「パッケージ」という言葉は、ソースコードの論理的なまとまりを指すため、コンパイルされたバイナリファイルそのものを指す「package file」という表現は、読者にとって混乱を招く可能性がありました。特に、Goのツールチェインが内部的に使用する、コンパイル済みパッケージのバイナリ形式は、Unix系のシステムで一般的な「アーカイブファイル」(通常 .a
拡張子を持つ)の形式に準拠しています。
この曖昧さを解消し、ドキュメントの正確性を高めるために、Rob Pike氏(Go言語の共同開発者の一人)によって、より技術的に正確な「archive file」という用語に置き換える変更が提案されました。これにより、開発者が -pack
フラグの挙動をより正確に理解できるようになります。
前提知識の解説
- Goコンパイラ (
gc
): Go言語の公式コンパイラであり、Goソースコードを機械語に変換する役割を担います。cmd/gc
は、Goプロジェクトのソースツリー内でこのコンパイラのコードが配置されているディレクトリを指します。 - オブジェクトファイル (Object File): ソースコードがコンパイルされた結果生成される中間ファイルで、機械語コードを含みます。通常、リンカによって複数のオブジェクトファイルが結合され、最終的な実行可能ファイルやライブラリが作成されます。Goコンパイラは、デフォルトでオブジェクトファイルを出力します。
- パッケージファイル (Package File): Go言語の文脈では、この用語は二重の意味を持ち得ます。
- ソースコードの論理的なまとまり:
package main
やpackage fmt
のように、Goソースコードの先頭で宣言される論理的な単位。 - コンパイル済みバイナリ: 本コミットで言及されている、コンパイルされたGoパッケージのバイナリ形式。他のGoプログラムからインポートされる際に使用されます。
- ソースコードの論理的なまとまり:
- アーカイブファイル (Archive File): 複数のファイルを一つにまとめたファイル形式。Unix系のシステムでは、
ar
コマンドで作成・操作される.a
拡張子を持つファイルが一般的です。Goのツールチェインでは、コンパイルされたGoパッケージのバイナリは、このアーカイブ形式で保存されます。これには、コンパイルされたコードだけでなく、パッケージのメタデータ(エクスポートされた型、関数、変数など)も含まれます。他のGoパッケージがこのアーカイブファイルをインポートする際に、リンカがその内容を読み込み、必要なシンボルを解決します。 -pack
フラグ:go tool compile
(または古いgc
コマンド) に渡されるオプションの一つで、コンパイラがオブジェクトファイルではなく、コンパイル済みパッケージのアーカイブファイルを出力するように指示します。これは、主にGoのビルドシステムが内部的に使用するもので、ユーザーが直接このフラグを使うことは稀です。通常、go build
やgo install
コマンドが内部で適切にgc
やgo tool compile
を呼び出し、必要に応じて-pack
フラグを渡します。
技術的詳細
このコミットは、Goコンパイラ gc
のドキュメントファイル src/cmd/gc/doc.go
内の記述を修正するものです。doc.go
ファイルは、Goのツールチェインのドキュメント生成プロセスで使用される特殊なファイルで、Goのソースコードコメント形式で書かれたドキュメントを含んでいます。
変更の対象となったのは、-pack
フラグの説明行です。
変更前:
write a package file rather than an object file
変更後:
write an archive file rather than an object file
この変更は、単なる用語の置き換えですが、その背後にはGoのビルドシステムにおけるコンパイル済みパッケージの物理的な表現に関する正確な理解があります。Goのコンパイラが -pack
フラグ付きで実行されると、出力されるファイルは、Goのパッケージ構造とメタデータを含む、標準的なUnixアーカイブ形式(.a
ファイル)になります。この形式は、リンカが他のパッケージとリンクする際に必要な情報を提供します。
「package file」という用語は、Goのソースコードの論理的なパッケージと混同される可能性がありましたが、「archive file」という用語は、その物理的な格納形式をより正確に表現しています。これにより、Goのツールチェインの内部動作や、コンパイル済みパッケージの構造について深く理解しようとする開発者にとって、ドキュメントがより明確になります。
コアとなるコードの変更箇所
変更は src/cmd/gc/doc.go
ファイルの1箇所のみです。
--- a/src/cmd/gc/doc.go
+++ b/src/cmd/gc/doc.go
@@ -38,7 +38,7 @@ Flags:
-o file
\toutput file, default file.6 for 6g, etc.
-pack
- \twrite a package file rather than an object file
+ \twrite an archive file rather than an object file
-e
\tnormally the compiler quits after 10 errors; -e prints all errors
-p path
コアとなるコードの解説
この変更は、Goコンパイラ gc
のコマンドラインフラグに関するドキュメントを定義している doc.go
ファイル内のコメントを修正しています。
doc.go
ファイルは、Goのソースコード内にドキュメントを埋め込むための慣習的な方法です。go doc
コマンドや、Goの公式ドキュメントサイト (pkg.go.dev など) で表示されるドキュメントは、これらの doc.go
ファイルや、Goソースコード内のコメントから自動生成されます。
変更された行は、-pack
フラグの機能説明です。
-pack
フラグは、Goコンパイラが通常のオブジェクトファイル(.o
拡張子を持つことが多い)ではなく、コンパイル済みパッケージのアーカイブファイルを出力するように指示します。- このアーカイブファイルは、他のGoパッケージが
import
される際に、リンカによって参照されます。
このコミットは、コードの動作自体を変更するものではなく、その動作を説明するドキュメントの記述を改善するものです。これにより、Goのツールチェインの内部構造や、コンパイルプロセスに関する理解が深まります。
関連リンク
- Go言語の公式ドキュメント: https://go.dev/doc/
- Goコンパイラ (
cmd/compile
) のソースコード: https://github.com/golang/go/tree/master/src/cmd/compile - Goのツールチェインに関する詳細な情報(Go Wiki): https://go.dev/wiki/GoToolchain
参考にした情報源リンク
- Goのコミット履歴: https://github.com/golang/go/commits/master
- Go Gerrit Code Review: https://go.dev/cl/54760044 (コミットメッセージに記載されているGerritの変更リストへのリンク)
- Go言語のパッケージとモジュールに関する概念: https://go.dev/doc/code
- Unix
ar
コマンドとアーカイブファイル形式に関する一般的な情報 (例: Wikipediaなど) - Goのコンパイルプロセスに関するブログ記事や解説 (一般的なGo開発者コミュニティのリソース)