[インデックス 18406] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ライブラリである net/http
パッケージ内のテストコード transport_test.go
に対する変更です。具体的には、テストが失敗した場合の挙動を修正し、より早期に、より厳密にテストを終了させるように変更されています。
コミット
commit 4723308ff5ab437d2b0892e7cdac86d490495a9b
Author: Brad Fitzpatrick <bradfitz@golang.org>
Date: Mon Feb 3 16:01:58 2014 -0500
net/http: make a test fail harder, earlier
LGTM=dave
R==r, r, dave
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/59810043
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/4723308ff5ab437d2b0892e7cdac86d490495a9b
元コミット内容
src/pkg/net/http/transport_test.go
ファイルにおいて、テストの検証部分で t.Errorf
が t.Fatalf
に変更されました。
--- a/src/pkg/net/http/transport_test.go
+++ b/src/pkg/net/http/transport_test.go
@@ -1347,7 +1347,7 @@ func TestTransportCloseResponseBody(t *testing.T) {
t.Fatal(err)
}
if !bytes.Equal(buf, want) {
- t.Errorf("read %q; want %q", buf, want)
+ t.Fatalf("read %q; want %q", buf, want)
}
didClose := make(chan error, 1)
go func() {
変更の背景
この変更の背景は、テストの信頼性とデバッグの効率性を向上させることにあります。元のコードでは、bytes.Equal(buf, want)
が false
の場合に t.Errorf
が呼び出されていました。t.Errorf
はエラーを報告しますが、テストの実行は継続されます。しかし、この特定のケースでは、buf
と want
が一致しないという状況は、それ以降のテストロジックが意味をなさなくなる、あるいはさらなる誤った結果を引き起こす可能性のある致命的なエラーであると判断されたと考えられます。
テストが早期に失敗し、その原因が明確になることで、開発者は問題の特定と修正を迅速に行うことができます。コミットメッセージの「make a test fail harder, earlier」(テストをより厳しく、より早く失敗させる)は、この意図を明確に示しています。
前提知識の解説
このコミットを理解するためには、Go言語のテストフレームワークである testing
パッケージの基本的な知識が必要です。
testing
パッケージ: Go言語に組み込まれているテストフレームワークです。テスト関数はfunc TestXxx(*testing.T)
の形式で定義されます。*testing.T
: テスト関数に渡される構造体で、テストの実行を制御し、結果を報告するためのメソッドを提供します。t.Errorf(format string, args ...interface{})
:- エラーを報告しますが、テストの実行は継続されます。
- テストが失敗したとマークされますが、そのテスト関数内の残りのコードは実行され続けます。
- 複数の独立したアサーションがあり、全てのエラーを一度に確認したい場合などに有用です。
t.Fatalf(format string, args ...interface{})
:- エラーを報告し、現在のテスト関数を即座に終了させます。
t.Fatalf
が呼び出されると、そのテスト関数内のそれ以降のコードは実行されません。- テストの前提条件が満たされない場合や、それ以降のテストが意味をなさないような致命的なエラーが発生した場合に有用です。
このコミットでは、t.Errorf
から t.Fatalf
への変更が行われたため、この二つのメソッドの挙動の違いを理解することが重要です。
技術的詳細
変更が行われた TestTransportCloseResponseBody
関数は、net/http
パッケージの Transport
型がHTTPレスポンスボディを適切にクローズするかどうかをテストしていると考えられます。
元のコードでは、bytes.Equal(buf, want)
が false
の場合、つまり期待されるレスポンスボディが読み取れなかった場合に t.Errorf
が呼び出されていました。これは、テストが期待通りのデータを読み取れなかったことを示すエラーですが、テスト関数自体はその後も実行を継続します。
変更後のコードでは、この部分が t.Fatalf
に変更されました。これにより、buf
と want
が一致しないという状況が発生した場合、テストは即座に終了します。これは、レスポンスボディの内容が正しくないという問題が、その後のテストロジック(例えば、didClose
チャネルを使ったボディクローズの検証など)の前提を崩す、あるいはその検証自体が無意味になるほど深刻な問題であると判断されたことを意味します。
この変更は、テストの「堅牢性」を高めるための典型的なプラクティスです。テストの早い段階で致命的なエラーを検出し、それ以降の無駄な実行を避けることで、テストの実行時間を短縮し、デバッグ時に問題の根本原因をより迅速に特定できるようになります。
コアとなるコードの変更箇所
変更は src/pkg/net/http/transport_test.go
ファイルの以下の行です。
- t.Errorf("read %q; want %q", buf, want)
+ t.Fatalf("read %q; want %q", buf, want)
コアとなるコードの解説
この変更は、TestTransportCloseResponseBody
関数内の特定の条件分岐にあります。
if !bytes.Equal(buf, want) {
// 変更前: t.Errorf("read %q; want %q", buf, want)
// 変更後: t.Fatalf("read %q; want %q", buf, want)
}
ここで buf
は実際に読み取られたバイトスライス、want
は期待されるバイトスライスです。bytes.Equal
関数はこれら二つのスライスが等しいかどうかを比較します。
- 変更前 (
t.Errorf
):buf
とwant
が等しくない場合、t.Errorf
が呼び出され、エラーメッセージがログに出力されます。しかし、テスト関数TestTransportCloseResponseBody
の実行は継続されます。例えば、その後にdidClose
チャネルの検証コードがあれば、それは実行されます。もしbuf
が期待通りでなければ、その後の検証も失敗する可能性が高いですが、t.Errorf
はそれを強制的に停止させません。 - 変更後 (
t.Fatalf
):buf
とwant
が等しくない場合、t.Fatalf
が呼び出され、エラーメッセージがログに出力されるだけでなく、TestTransportCloseResponseBody
関数の実行が即座に停止します。これにより、テストの失敗がより明確になり、問題が早期に検出されます。この変更は、buf
とwant
の不一致が、このテストの目的を達成する上で致命的なエラーであるという判断に基づいています。
関連リンク
- Go言語
testing
パッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/testing - Go言語
bytes
パッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/bytes - Go言語
net/http
パッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/net/http
参考にした情報源リンク
- Go言語の公式ドキュメント (
pkg.go.dev
) - Go言語のソースコード (
github.com/golang/go
) - Go言語のテストに関する一般的な知識