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[インデックス 18422] ファイルの概要

このコミットは、GoランタイムのCgo(C言語との相互運用機能)において、FreeBSD/ARMアーキテクチャでのビルド問題を修正することを目的としています。具体的には、src/pkg/runtime/cgo/gcc_freebsd_arm.cファイルに不足していたヘッダーファイルsys/signalvar.hのインクルードを追加することで、ビルドエラーを解消し、FreeBSD/ARM上でのCgoの動作を可能にします。

コミット

  • コミットハッシュ: 61fe7d83089015eca494b789dff8c325bfbfb720
  • Author: Mikio Hara mikioh.mikioh@gmail.com
  • Date: Fri Feb 7 10:22:34 2014 +0900

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/61fe7d83089015eca494b789dff8c325bfbfb720

元コミット内容

runtime/cgo: fix build on freebsd/arm

This CL is in preparation to make cgo work on freebsd/arm.

LGTM=iant
R=iant
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/60500044

変更の背景

Go言語は、その設計思想としてクロスプラットフォーム対応を重視しています。しかし、Cgo(C言語との相互運用)を使用する場合、GoのランタイムはターゲットとなるOSとアーキテクチャに特化したC言語のコードをコンパイル・リンクする必要があります。

このコミットが行われた当時、FreeBSDのARMアーキテクチャ(freebsd/arm)環境において、Goのランタイム、特にCgo関連のコードのビルドが失敗するという問題がありました。これは、CgoがC言語のコードを扱う際に、特定のシステムヘッダーファイルが不足しているために発生していました。このビルドエラーは、FreeBSD/ARM上でGoアプリケーションがCgoを利用することを妨げていました。

この変更は、FreeBSD/ARM環境でCgoが正しく機能するための準備として行われました。具体的には、Cgoのビルドプロセスが依存するsys/signalvar.hヘッダーファイルがgcc_freebsd_arm.cにインクルードされていなかったことが原因で、コンパイルエラーが発生していました。このコミットは、その不足を解消し、FreeBSD/ARM上でのGoのCgoサポートを確立するための一歩となります。

前提知識の解説

GoにおけるCgo

Cgoは、GoプログラムからC言語のコードを呼び出したり、C言語のコードからGoの関数を呼び出したりするためのGoの機能です。これにより、既存のCライブラリをGoプロジェクトで再利用したり、パフォーマンスが重要な部分をCで記述したりすることが可能になります。

Cgoを使用するGoプログラムをビルドする際には、Goコンパイラだけでなく、Cコンパイラ(通常はGCCやClang)も必要となります。Cgoは、GoのコードとCのコードを連携させるための接着剤のような役割を果たし、Goのビルドプロセス中にCのコードをコンパイルし、Goの実行可能ファイルにリンクします。

クロスコンパイルとCgo

Goは強力なクロスコンパイル機能を備えており、あるOS/アーキテクチャ上で別のOS/アーキテクチャ向けの実行ファイルを生成できます(例: Linux/AMD64でFreeBSD/ARM向けのバイナリを生成)。しかし、Cgoが絡むとクロスコンパイルは複雑になります。これは、CgoがターゲットOS/アーキテクチャ用のCコンパイラとライブラリを必要とするためです。

クロスコンパイル時にCgoを有効にするには、通常CGO_ENABLED=1を設定し、ターゲットアーキテクチャ用のCコンパイラ(例: arm-freebsd-gcc)をCC環境変数で指定する必要があります。

FreeBSD/ARMアーキテクチャ

FreeBSDは、UNIX系のオペレーティングシステムであり、ARMはモバイルデバイスや組み込みシステムで広く使用されているプロセッサアーキテクチャです。Go言語は、FreeBSDを含む様々なOSとARMを含む複数のアーキテクチャをサポートしています。

sys/signalvar.h

sys/signalvar.hは、UNIX系システム、特にBSD系のシステム(FreeBSDなど)で利用されるシステムヘッダーファイルです。このファイルには、シグナル(プロセス間通信や例外処理に使用されるソフトウェア割り込み)に関連するデータ構造やマクロ、関数プロトタイプなどが定義されています。

CgoがGoランタイムとC言語のコード間でシグナルハンドリングやスレッド管理を行う場合、これらのシステム固有の定義が必要となることがあります。特に、低レベルのランタイムコードやシステムコールを扱うCgoの内部実装では、OSのシグナル処理メカニズムに直接アクセスするために、このようなヘッダーファイルが不可欠です。

技術的詳細

このコミットの技術的な問題は、FreeBSD/ARM環境でGoのCgoランタイムコード(src/pkg/runtime/cgo/gcc_freebsd_arm.c)をコンパイルする際に、必要なシグナル関連の定義が見つからず、コンパイルエラーが発生していた点にあります。

gcc_freebsd_arm.cは、FreeBSDのARMアーキテクチャにおけるCgoの低レベルな実装を担うファイルです。このファイルは、GoランタイムがCコードと連携する際に、スレッドの管理、スタックの切り替え、シグナルハンドリングといったOS固有の操作を行うためにC言語で記述されています。

コンパイルエラーの原因は、このファイルがsys/signalvar.hヘッダーファイルをインクルードしていなかったことです。このヘッダーファイルには、FreeBSDシステムにおけるシグナル処理に関連する重要な型定義やマクロが含まれています。例えば、シグナルスタックの管理や、特定のシグナルハンドラの動作を定義するために必要な構造体や定数がこのファイルで定義されている可能性があります。

Cgoの内部では、GoルーチンとCスレッド間のコンテキストスイッチや、CコードからのGoコールバックの処理において、シグナルメカニズムが利用されることがあります。sys/signalvar.hが提供する定義が不足していると、Cコンパイラはこれらのシグナル関連の操作に必要なシンボルを解決できず、結果としてコンパイルエラー(未定義の型や関数、マクロなど)を引き起こします。

このコミットは、単に#include <sys/signalvar.h>gcc_freebsd_arm.cに追加することで、この問題を解決しています。これにより、コンパイラは必要なシグナル関連の定義にアクセスできるようになり、FreeBSD/ARM上でのCgoランタイムのビルドが成功するようになります。これは、GoがFreeBSD/ARM環境でCgoを介してCライブラリと連携するための基盤を強化する重要な修正です。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/runtime/cgo/gcc_freebsd_arm.c
+++ b/src/pkg/runtime/cgo/gcc_freebsd_arm.c
@@ -4,6 +4,7 @@
 
 #include <sys/types.h>
 #include <machine/sysarch.h>
+#include <sys/signalvar.h>
 #include <pthread.h>
 #include <signal.h>
 #include <string.h>

コアとなるコードの解説

変更はsrc/pkg/runtime/cgo/gcc_freebsd_arm.cファイルに対して行われました。

追加された行は以下の通りです。

#include <sys/signalvar.h>

この行は、Cプリプロセッサに対して、FreeBSDシステムに存在するsys/signalvar.hというヘッダーファイルの内容を、このCソースファイルに含めるように指示しています。

前述の通り、sys/signalvar.hはFreeBSDにおけるシグナル処理に関連する定義(データ構造、マクロ、関数プロトタイプなど)を提供します。gcc_freebsd_arm.cはGoランタイムのCgo部分であり、FreeBSD/ARMアーキテクチャに特化した低レベルな処理(例えば、スレッドの管理やシグナルハンドリング)を行うためにC言語で書かれています。

このヘッダーファイルが以前はインクルードされていなかったため、gcc_freebsd_arm.c内のコードがsys/signalvar.hで定義されているシンボル(型、関数、マクロなど)を参照しようとした際に、コンパイラがそれらを見つけられず、ビルドエラーが発生していました。

この#include文を追加することで、コンパイラは必要なシグナル関連の定義にアクセスできるようになり、結果としてコンパイルエラーが解消され、FreeBSD/ARM上でのCgoランタイムのビルドが成功するようになりました。これは、GoがFreeBSD/ARM環境でCgoを介してCライブラリと連携するための基盤を強化する、シンプルながらも重要な修正です。

関連リンク

参考にした情報源リンク