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[インデックス 18432] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のsyscallパッケージのエラーコードおよびシグナル定義を生成するスクリプトsrc/pkg/syscall/mkerrors.shに、不足していたC言語の標準ライブラリヘッダファイルstdlib.hのインクルードを追加するものです。これにより、スクリプトが生成するCコードまたはスクリプト内で実行されるCコードスニペットが、stdlib.hで定義される関数を正しく利用できるようになり、Goのビルドプロセスの堅牢性が向上します。

コミット

commit 65675a3e24931dda1812cf5090ef7334dca8891e
Author: Mikio Hara <mikioh.mikioh@gmail.com>
Date:   Sun Feb 9 17:20:59 2014 +0900

    syscall: add missing include statement to bootstrap error code and signal generator
    
    LGTM=iant
    R=golang-codereviews, iant
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/54300054

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/65675a3e24931dda1812cf5090ef7334dca8891e

元コミット内容

syscall: add missing include statement to bootstrap error code and signal generator

LGTM=iant
R=golang-codereviews, iant
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/54300054

変更の背景

Go言語のビルドシステムは、その一部がGo言語自体で書かれているため、新しいバージョンのGoをビルドする際には、既存のGoコンパイラを使って新しいコンパイラをビルドするという「ブートストラップ」のプロセスが必要になります。このプロセスにおいて、src/pkg/syscall/mkerrors.shというシェルスクリプトが重要な役割を果たします。このスクリプトは、GoのsyscallパッケージがOS固有のエラーコードやシグナル定義を正しく扱うために、C言語のヘッダファイルから必要な情報を抽出し、Goのソースコードを自動生成します。

このコミットが行われる前は、mkerrors.shスクリプトが生成するC言語のコードスニペット、またはスクリプト自身の内部で実行されるCコードの断片が、stdlib.hに含まれる関数(例えば、エラー発生時にプログラムを終了させるexit()関数など)を使用しているにも関わらず、そのヘッダファイルが明示的にインクルードされていませんでした。この不足は、コンパイル時に「未定義の参照」エラーを引き起こしたり、予期せぬ動作の原因となったりする可能性がありました。特にブートストラップの段階では、このような依存関係の欠落はビルドプロセス全体を停止させる重大な問題となり得ます。

このコミットは、この不足している#include <stdlib.h>を追加することで、mkerrors.shの実行環境および生成されるコードの堅牢性と正確性を確保し、Goのビルドシステム、特にブートストラッププロセスが安定して動作するようにすることを目的としています。

前提知識の解説

  • Goのsyscallパッケージ: Go言語の標準ライブラリの一部であり、オペレーティングシステム(OS)が提供するシステムコールをGoプログラムから直接呼び出すための機能を提供します。ファイル操作、ネットワーク通信、プロセス管理など、OSレベルの低レベルな操作を行う際に利用されます。OSによってシステムコールのインターフェースやエラーコード、シグナル定義が異なるため、syscallパッケージはこれらの差異を吸収し、Goプログラムに移植性の高いインターフェースを提供します。
  • src/pkg/syscall/mkerrors.sh: Goのソースツリー内、src/pkg/syscallディレクトリに存在するシェルスクリプトです。このスクリプトの主要な役割は、様々なオペレーティングシステム(Linux, macOS, Windowsなど)のC言語ヘッダファイル(例: /usr/include/errno.h, /usr/include/signal.hなど)から、システムコールに関連するエラーコード(EACCES, ENOENTなど)やシグナル(SIGINT, SIGTERMなど)の定義を抽出し、それらをGo言語の定数として利用できるようにGoのソースコードを自動生成することです。これにより、GoプログラムがOS固有の定数を安全かつ移植性高く利用できるようになります。このスクリプトは、Goのビルドプロセスの一部として実行されます。
  • ブートストラップ (Bootstrap): ソフトウェア開発、特にコンパイラやプログラミング言語の分野で使われる用語です。ある言語(この場合はGo)で書かれたコンパイラを、その言語自体を使ってコンパイルするプロセスを指します。GoのコンパイラはGo言語で書かれているため、新しいバージョンのGoをビルドするには、まず既存のGoコンパイラ(または以前のバージョラ)が必要です。この自己コンパイルの過程をブートストラップと呼びます。このプロセス中に、mkerrors.shのようなツールが正しく機能することが、Goのビルドシステム全体の安定性にとって不可欠です。
  • C言語のヘッダファイル (.h): C言語のソースファイルで、関数やマクロ、型定義などの宣言が含まれるファイルです。C言語のプログラムで特定の機能(例: 入出力、メモリ管理、文字列操作)を利用する際には、対応するヘッダファイルを#includeプリプロセッサディレクティブを使ってソースファイルに読み込む必要があります。
    • stdio.h: Standard Input/Output。標準入出力関数(printf, scanf, fopenなど)の宣言が含まれます。
    • errno.h: Error Number。システムコールやライブラリ関数がエラーを報告する際に設定されるグローバル変数errnoや、様々なエラーコード定数(EACCES, ENOENTなど)の宣言が含まれます。
    • stdlib.h: Standard Library。標準ライブラリの汎用関数(メモリ割り当てのmalloc, free、数値変換のatoi, atol、乱数生成のrand, srand、プロセス制御のexit, abortなど)の宣言が含まれます。

技術的詳細

mkerrors.shスクリプトは、単なるシェルスクリプトではなく、Cプリプロセッサ(cpp)やawksedといったUNIXの強力なテキスト処理ツールを組み合わせて、複雑なロジックを実行します。このスクリプトは、OSのシステムヘッダファイルの内容を解析し、そこから特定のマクロの値や構造体のオフセットなどを抽出し、最終的にGo言語のソースコードを生成します。

この抽出プロセスでは、スクリプトが一時的にC言語のコードスニペットを生成し、それをコンパイルまたはCプリプロセッサで処理して、必要な情報を取得する手法が用いられることがあります。例えば、特定のマクロが定義されているかどうかを確認したり、そのマクロの値を評価したりするために、短いCプログラムを生成して実行するようなケースです。

このコミットで追加された#include <stdlib.h>は、まさにこのようなCコードスニペットがstdlib.hで定義されている関数(例えば、エラー時にスクリプトを終了させるためにexit()関数を呼び出す場合など)を使用している場合に必要となります。もしstdlib.hがインクルードされていないと、Cコンパイラはこれらの関数の宣言を見つけることができず、「未定義の参照」エラー(implicit declaration of function 'exit'のような警告やエラー)を発生させる可能性があります。

Goのビルドシステムは、非常に多くのコンポーネントが相互に依存しており、特にブートストラップの段階では、各ツールが完璧に動作することが求められます。mkerrors.shのような基盤的なスクリプトがC言語の依存関係を正しく解決できない場合、Goのビルドプロセス全体が失敗する可能性があります。この修正は、一見すると小さな変更に見えますが、Goのビルドシステムの自己完結性と堅牢性を高めるための、非常に重要な基盤的改善と言えます。これにより、異なるOS環境やコンパイラバージョンにおいても、mkerrors.shが安定して動作し、Goのsyscallパッケージが正しくビルドされることが保証されます。

コアとなるコードの変更箇所

変更はsrc/pkg/syscall/mkerrors.shファイルの一箇所のみです。 具体的には、既存の#include <stdio.h>の下に#include <stdlib.h>が追加されています。

--- a/src/pkg/syscall/mkerrors.sh
+++ b/src/pkg/syscall/mkerrors.sh
@@ -306,6 +306,7 @@ echo ')'
 (
 	/bin/echo "
 #include <stdio.h>
+#include <stdlib.h>
 #include <errno.h>
 #include <ctype.h>
 #include <string.h>

コアとなるコードの解説

mkerrors.shスクリプトのこの部分は、Goのsyscallパッケージで使用されるC言語のヘッダファイルをインクルードするためのものです。このスクリプトは、Goのビルドプロセス中に実行され、OS固有のエラーコードやシグナル定義をGoのソースコードとして生成します。

追加された行#include <stdlib.h>は、C標準ライブラリの一部であるstdlib.hヘッダファイルをインクルードすることを指示しています。このヘッダファイルには、メモリ割り当て(malloc, free)、数値変換(atoi, atol)、乱数生成(rand, srand)、プロセス制御(exit, abort)など、多くの汎用関数が含まれています。

この変更により、mkerrors.shが内部的にコンパイルまたは評価するCコードスニペットが、stdlib.hで定義されている関数(例えば、エラー処理のためにexit()を使用する場合など)を安全に利用できるようになります。これにより、スクリプトの実行時における潜在的なコンパイルエラーや未定義動作が解消され、Goのsyscallパッケージのビルドプロセスがより安定します。これは、特にGoのブートストラップビルドにおいて、依存関係が完全に解決され、予期せぬビルド失敗を防ぐ上で重要な修正です。

関連リンク

参考にした情報源リンク