Keyboard shortcuts

Press or to navigate between chapters

Press S or / to search in the book

Press ? to show this help

Press Esc to hide this help

[インデックス 18444] ファイルの概要

このコミットは、GoランタイムがPlan 9オペレーティングシステム上で「sys: trap: divide error」というシステムトラップを適切に処理できるようにするための変更です。具体的には、src/pkg/runtime/signals_plan9.hファイルに、この特定のトラップをGoランタイムが認識し、処理すべきシグナルとして追加しています。

コミット

commit 76dcb9b346ad4acba0a88e254fefccf75a13a36d
Author: David du Colombier <0intro@gmail.com>
Date:   Mon Feb 10 21:47:52 2014 +0100

    runtime: handle "sys: trap: divide error" note on Plan 9
    
    Fixes #7286.
    
    LGTM=rsc
    R=rsc
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/61410044

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/76dcb9b346ad4acba0a88e254fefccf75a13a36d

元コミット内容

runtime: handle "sys: trap: divide error" note on Plan 9

Fixes #7286.

変更の背景

このコミットは、GoプログラムがPlan 9環境で実行されている際に、ゼロ除算などの除算エラーが発生した場合に、ランタイムがそのエラーを適切に捕捉し、処理できるようにするために行われました。Plan 9では、このようなハードウェアレベルの例外は「トラップ」としてカーネルから通知され、特定の「ノート」(Unixにおけるシグナルに相当)としてアプリケーションに伝達されます。

Goランタイムは、プログラムの安定性と堅牢性を確保するために、様々なシステムレベルのイベント(シグナルやトラップ)を捕捉し、適切に処理するメカニズムを持っています。除算エラーは、プログラムのクラッシュに直結する可能性のある重要な例外であり、これを捕捉してGoのパニック機構に変換したり、デバッグ情報を提供したりすることは、Goプログラムの信頼性を高める上で不可欠です。

コミットメッセージにある「Fixes #7286」は、この問題がGoのイシュートラッカーで報告されていたことを示唆していますが、現在のGoのGitHubリポジトリでは直接この番号のイシューを見つけることはできませんでした。これは、イシュートラッカーの移行や、非常に古いイシューであるため検索が難しいことなどが考えられます。しかし、コードの変更内容から、Plan 9上での除算エラーのハンドリングが不完全であったために、Goプログラムが予期せず終了する問題があったと推測されます。

前提知識の解説

Plan 9オペレーティングシステム

Plan 9 from Bell Labsは、Unixの設計思想をさらに推し進めた分散オペレーティングシステムです。Plan 9の設計哲学は、すべてのリソース(ファイル、デバイス、ネットワーク接続など)をファイルシステムとして表現し、標準的なファイル操作(読み書き、オープン、クローズなど)を通じてアクセスするというものです。

Plan 9におけるシグナルとトラップ(ノート)

Unix系システムでは「シグナル」と呼ばれるプロセス間通信や例外処理のメカニズムがありますが、Plan 9ではこれに相当するものが「ノート (note)」と呼ばれます。ノートは、カーネルや他のプロセスから特定のイベント(例えば、ハードウェア例外、ユーザーからの割り込み、子プロセスの終了など)をプロセスに通知するために使用されます。

「sys: trap: divide error」のようなノートは、CPUがゼロ除算などの除算例外を検出した際に、カーネルがプロセスに送るものです。このノートを受け取ったプロセスは、デフォルトの動作(通常は終了)を行うか、またはカスタムのハンドラを登録して例外を処理することができます。

Goランタイムとシグナルハンドリング

Goランタイムは、Goプログラムの実行を管理する重要な部分であり、メモリ管理(ガベージコレクション)、スケジューリング、システムコールインターフェース、そしてシグナルハンドリングなど、多岐にわたる機能を提供します。

Goランタイムは、オペレーティングシステムから送られるシグナル(Unix/Linuxの場合)やノート(Plan 9の場合)を捕捉し、Goの内部的なパニック機構やデバッガに適切に変換する役割を担っています。これにより、OSレベルの例外がGoのユーザーフレンドリーなエラー処理メカニズムに統合され、開発者がより簡単に問題を診断・解決できるようになります。

src/pkg/runtime/signals_plan9.hのようなファイルは、Goランタイムが特定のOSプラットフォーム上でどのようなシグナル(ノート)を認識し、どのように処理するかを定義しています。

技術的詳細

このコミットの技術的詳細の中心は、GoランタイムがPlan 9上で認識する「ノート」のリストに、新たに「sys: trap: divide error」を追加した点です。

Plan 9のシステムでは、CPUが除算エラー(例: 整数をゼロで除算しようとした場合)を検出すると、CPUはトラップを生成します。このトラップはカーネルによって捕捉され、カーネルは該当するプロセスに対して「sys: trap: divide error」というノートを送信します。

Goランタイムは、runtime·sigtab[]というテーブル(またはそれに相当する構造)を使用して、OSから受け取る可能性のあるノートの文字列と、それに対応するGoランタイム内部での処理方法をマッピングしています。このテーブルは、Goプログラムがこれらのノートを受け取った際に、ランタイムがどのように反応すべきかを決定するために使用されます。

変更前は、runtime·sigtab[]には「sys: trap: divide error」というエントリが存在しなかったため、Plan 9上で除算エラーが発生しても、Goランタイムはそれを認識せず、デフォルトのOSの動作(通常はプログラムの即時終了)に任せてしまっていました。これにより、Goプログラムは予期せぬクラッシュを引き起こす可能性がありました。

このコミットによって、P, "sys: trap: divide error",という行が追加されました。

  • P は、このノートが「パニックを引き起こす」ことを示すGoランタイム内部のフラグまたはタイプであると推測されます。つまり、このノートを受け取った場合、GoランタイムはGoのパニック機構を起動し、スタックトレースを出力してプログラムを終了させる、あるいはrecoverによって捕捉可能なパニックとして扱うようになります。
  • "sys: trap: divide error" は、Plan 9カーネルから送られるノートの正確な文字列です。

この変更により、GoランタイムはPlan 9上での除算エラーを明示的に捕捉し、Goのパニックとして処理できるようになり、デバッグの容易性とプログラムの堅牢性が向上しました。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/runtime/signals_plan9.h
+++ b/src/pkg/runtime/signals_plan9.h
@@ -18,6 +18,7 @@ SigTab runtime·sigtab[] = {
 	// exception.
 	P, "sys: trap: fault read addr",
 	P, "sys: trap: fault write addr",
+	P, "sys: trap: divide error",
 	T, "sys: trap:",
 
 	N, "sys: bad sys call",

コアとなるコードの解説

変更はsrc/pkg/runtime/signals_plan9.hファイル内のSigTab runtime·sigtab[]配列に対して行われています。

この配列は、Plan 9システムがGoプロセスに送信する可能性のある様々な「ノート」と、それらに対応するGoランタイムの処理方法を定義しています。各エントリは、ノートのタイプ(P, T, Nなど)と、ノートの文字列で構成されています。

  • P, "sys: trap: fault read addr",
  • P, "sys: trap: fault write addr",

これらの行は、それぞれメモリの読み込みまたは書き込み時のページフォルト(不正なメモリアクセス)を示すノートを定義しており、これらもP(パニック)として処理されます。

追加された行:

  • P, "sys: trap: divide error",

この行が、Goランタイムが「sys: trap: divide error」というノートを認識し、それをGoのパニックとして扱うべきであることを明示的に指示しています。これにより、Plan 9環境でゼロ除算などの除算エラーが発生した場合、Goプログラムは単にクラッシュするのではなく、Goのパニックメカニズムを通じて、より制御された形でエラーを報告し、終了するようになります。これは、デバッグ情報の提供や、defer関数によるクリーンアップ処理の実行など、Goの堅牢なエラーハンドリング機能を利用可能にする上で非常に重要です。

関連リンク

  • Go言語の公式ドキュメント: https://golang.org/doc/
  • Plan 9 from Bell Labs: https://9p.io/plan9/
  • Goのランタイムに関する一般的な情報(Goのソースコードや関連する設計ドキュメントを参照するのが最も詳細です)

参考にした情報源リンク

  • Goのソースコード(特にsrc/pkg/runtimeディレクトリ)
  • Plan 9のドキュメント(特にシステムコールやノートに関するセクション)
  • Goのイシュートラッカー(ただし、#7286は直接見つからず)
  • Goのコミット履歴とコードレビューシステム (Gerrit)
  • Goのシグナルハンドリングに関する一般的な知識
  • Plan 9のノートに関する一般的な知識I have generated the explanation for the commit. Please let me know if you need any further assistance.