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[インデックス 18583] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリ net/http パッケージ内のテストコード TestMultipartReaderOrder において、一時ファイルのクリーンアップ処理を追加するものです。具体的には、req.ParseMultipartForm() によって作成される可能性のある一時ファイルを、テスト終了時に確実に削除するための defer req.MultipartForm.RemoveAll() の呼び出しが追加されています。

コミット

commit 5a6af5fc9439f96829bcdc9463a28baee0e41d85
Author: Alex Brainman <alex.brainman@gmail.com>
Date:   Thu Feb 20 17:24:25 2014 +1100

    net/http: remove tmp file created in TestMultipartReaderOrder
    
    LGTM=minux.ma
    R=golang-codereviews, minux.ma
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/66470043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/5a6af5fc9439f96829bcdc9463a28baee0e41d85

元コミット内容

net/http: remove tmp file created in TestMultipartReaderOrder

LGTM=minux.ma
R=golang-codereviews, minux.ma
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/66470043

変更の背景

このコミットの背景には、Go言語の net/http パッケージにおけるマルチパートフォームデータの処理と、それに伴う一時ファイルの管理があります。

HTTPの multipart/form-data は、Webフォームを通じてファイルアップロードなどを行う際に使用されるMIMEタイプです。Goの net/http パッケージでは、Request オブジェクトの ParseMultipartForm メソッドを使用して、このマルチパートフォームデータを解析します。

ParseMultipartForm メソッドは、受信したリクエストボディが特定のサイズ(デフォルトでは10MB、または引数で指定されたサイズ)を超える場合、そのデータをメモリ上に保持するのではなく、一時ファイルとしてディスクに書き出すことがあります。これは、大量のデータを扱う際にメモリ消費を抑え、システムの安定性を保つための一般的な戦略です。

しかし、一時ファイルが作成された場合、そのファイルは明示的に削除される必要があります。テストコードにおいては、テストの実行後に作成された一時ファイルが残存すると、ディスクスペースの無駄遣いになるだけでなく、後続のテスト実行に影響を与えたり、テスト環境を汚染したりする可能性があります。特にCI/CD環境などでは、テストのたびに一時ファイルが蓄積されると問題となります。

TestMultipartReaderOrder は、net/http パッケージの MultipartReaderParseMultipartForm の挙動を検証するためのテストです。このテスト内で ParseMultipartForm が呼び出されるため、一時ファイルが作成される可能性がありました。このコミットは、テストが終了する際に、ParseMultipartForm によって作成された可能性のある一時ファイルを確実にクリーンアップすることを目的としています。これにより、テストの冪等性(何度実行しても同じ結果が得られ、環境に副作用を残さないこと)が保証され、テスト環境の健全性が維持されます。

前提知識の解説

1. HTTP multipart/form-data

multipart/form-data は、HTTPリクエストのボディ形式の一つで、主にWebフォームからのファイルアップロードに使用されます。この形式では、リクエストボディが複数の「パート」に分割され、各パートが独立したデータ(テキストフィールド、ファイルなど)を表します。各パートは境界文字列(boundary string)で区切られ、それぞれに Content-Disposition ヘッダや Content-Type ヘッダを持つことができます。

2. Go net/http パッケージ

Go言語の net/http パッケージは、HTTPクライアントとサーバーの実装を提供します。Webアプリケーション開発において中心的な役割を果たすパッケージです。

  • http.Request: 受信したHTTPリクエストを表す構造体です。リクエストメソッド、URL、ヘッダ、ボディなどの情報を含みます。
  • Request.ParseMultipartForm(maxMemory int64): このメソッドは、HTTPリクエストのボディが multipart/form-data 形式である場合に、そのデータを解析するために使用されます。 maxMemory 引数は、メモリに保持するフォームデータの最大サイズを指定します。このサイズを超えるデータ(特にファイルアップロード)は、自動的に一時ファイルとしてディスクに書き込まれます。 解析が成功すると、Request.MultipartForm フィールドに解析されたフォームデータが格納されます。
  • Request.MultipartReader(): このメソッドは、multipart/form-data 形式のリクエストボディをストリームとして読み込むための multipart.Reader を返します。ParseMultipartForm とは異なり、データをメモリにロードしたり一時ファイルに書き込んだりせず、ストリームとして逐次処理する際に使用されます。 重要な点として、ParseMultipartForm が一度呼び出されると、リクエストボディは既に読み込まれて解析されているため、その後に MultipartReader を呼び出すとエラーになります。これは、リクエストボディが一度しか読み取れないためです。

3. multipart.Form 構造体と RemoveAll() メソッド

ParseMultipartForm メソッドによって解析されたマルチパートフォームデータは、http.Request.MultipartForm フィールドに格納されます。このフィールドの型は *multipart.Form です。

  • multipart.Form: この構造体は、解析されたマルチパートフォームデータ全体を保持します。これには、通常のフォームフィールド(Value マップ)と、アップロードされたファイル(File マップ)が含まれます。 File マップの値は []*multipart.FileHeader であり、各 FileHeader はアップロードされたファイルに関するメタデータ(ファイル名、サイズ、ヘッダなど)と、そのファイルの内容へのアクセス手段(一時ファイルへのパスなど)を提供します。
  • Form.RemoveAll(): multipart.Form 構造体には RemoveAll() というメソッドが定義されています。このメソッドは、ParseMultipartForm によって作成されたすべての一時ファイルを削除する責任を持ちます。このメソッドを呼び出すことで、ディスク上に残された不要な一時ファイルをクリーンアップし、リソースリークを防ぐことができます。

4. defer ステートメント

Go言語の defer ステートメントは、関数がリターンする直前に実行される関数呼び出しをスケジュールするために使用されます。これは、リソースの解放(ファイルハンドルのクローズ、ロックの解除、一時ファイルの削除など)を確実に行うための非常に便利な機能です。defer はLIFO(Last-In, First-Out)順で実行されます。

このコミットでは、defer req.MultipartForm.RemoveAll() を使用することで、TestMultipartReaderOrder 関数が終了する際に、ParseMultipartForm が作成した一時ファイルが自動的に削除されるようにしています。これにより、テストコードの堅牢性とクリーンアップの信頼性が向上します。

技術的詳細

このコミットの技術的詳細は、Goの net/http パッケージがマルチパートフォームデータをどのように処理し、それに伴う一時ファイルのライフサイクルをどのように管理するかという点に集約されます。

http.Request.ParseMultipartForm(maxMemory int64) メソッドは、リクエストボディを解析する際に、maxMemory で指定されたサイズを超える部分をディスク上の一時ファイルとして保存します。これは、特に大きなファイルがアップロードされる場合に、サーバーのメモリが枯渇するのを防ぐための重要なメカニズムです。一時ファイルは通常、システムのデフォルトの一時ディレクトリ(例: Linuxでは /tmp)に作成されます。

ParseMultipartForm が成功すると、解析されたデータは req.MultipartForm フィールドに格納されます。この MultipartForm*multipart.Form 型であり、その内部にはアップロードされたファイルに関する情報が含まれています。これらのファイルが一時ファイルとして保存されている場合、multipart.Form オブジェクトはそれらのファイルへの参照を保持しています。

問題は、これらの一時ファイルが自動的に削除されないという点です。Goのランタイムやガベージコレクタは、これらのファイルがディスク上に存在することを認識せず、自動的にクリーンアップすることはありません。したがって、開発者が明示的に multipart.Form.RemoveAll() メソッドを呼び出して、関連する一時ファイルを削除する必要があります。

テストコード TestMultipartReaderOrder では、req.ParseMultipartForm(25) が呼び出されています。引数 25maxMemory のサイズが25バイトであることを意味します。これは非常に小さな値であり、テストデータが25バイトを超えるとすぐに一時ファイルが作成される可能性が高いことを示唆しています。テストが終了した際に、この一時ファイルがディスク上に残ってしまうと、テストの実行ごとに不要なファイルが蓄積され、ディスク容量を圧迫したり、テストの再現性を損なったりする原因となります。

このコミットでは、defer req.MultipartForm.RemoveAll() を追加することで、この問題を解決しています。defer ステートメントは、TestMultipartReaderOrder 関数が正常に終了するか、パニックが発生して終了するかにかかわらず、必ず req.MultipartForm.RemoveAll() が呼び出されることを保証します。これにより、テスト実行後に作成された一時ファイルが確実にクリーンアップされ、テスト環境が常にクリーンな状態に保たれます。

この変更は、単なるバグ修正以上の意味を持ちます。それは、Goのテストコードにおけるベストプラクティス、すなわち「テストは環境に副作用を残すべきではない」という原則を強化するものです。リソース(この場合は一時ファイル)の適切な解放は、堅牢で信頼性の高いソフトウェア開発において不可欠な要素であり、テストコードにおいても同様に重要です。

コアとなるコードの変更箇所

変更は src/pkg/net/http/request_test.go ファイルの1箇所のみです。

--- a/src/pkg/net/http/request_test.go
+++ b/src/pkg/net/http/request_test.go
@@ -218,6 +218,7 @@ func TestMultipartReaderOrder(t *testing.T) {
 	if err := req.ParseMultipartForm(25); err != nil {
 		t.Fatalf("ParseMultipartForm: %v", err)
 	}
+	defer req.MultipartForm.RemoveAll()
 	if _, err := req.MultipartReader(); err == nil {
 		t.Fatal("expected an error from MultipartReader after call to ParseMultipartForm")
 	}

コアとなるコードの解説

追加された行は以下の1行です。

defer req.MultipartForm.RemoveAll()

この行は、TestMultipartReaderOrder 関数内で req.ParseMultipartForm(25) が呼び出された直後に挿入されています。

  1. req.ParseMultipartForm(25): この呼び出しは、HTTPリクエスト req のマルチパートフォームデータを解析します。引数 25 は、メモリに保持するデータの最大サイズが25バイトであることを意味します。これを超えるデータは一時ファイルとしてディスクに書き込まれます。このメソッドが成功すると、解析されたフォームデータは req.MultipartForm フィールドに格納されます。
  2. defer キーワード: defer はGo言語のキーワードで、それに続く関数呼び出しを、現在の関数(この場合は TestMultipartReaderOrder)がリターンする直前に実行するようにスケジュールします。関数が正常に終了する場合でも、パニックが発生して終了する場合でも、defer された関数は必ず実行されます。
  3. req.MultipartForm: これは、ParseMultipartForm によって設定される *multipart.Form 型のフィールドです。この構造体は、解析されたマルチパートフォームデータ(通常のフォームフィールドとアップロードされたファイル)を保持します。
  4. .RemoveAll(): これは multipart.Form 型のメソッドです。このメソッドが呼び出されると、ParseMultipartForm によって作成されたすべての一時ファイルがディスクから削除されます。

したがって、defer req.MultipartForm.RemoveAll() は、「TestMultipartReaderOrder 関数が終了する際に、req.MultipartForm に関連付けられたすべての一時ファイルを削除する」という動作を保証します。これにより、テスト実行後にディスク上に不要な一時ファイルが残ることを防ぎ、テスト環境のクリーンアップを確実に行うことができます。これは、テストの冪等性を保ち、リソースリークを防ぐための重要な修正です。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • https://github.com/golang/go/commit/5a6af5fc9439f96829bcdc9463a28baee0e41d85
  • https://golang.org/cl/66470043
  • Go言語の公式ドキュメント (pkg.go.dev)
  • Go言語のブログ (go.dev/blog)
  • RFC 7578 (Request for Comments)
  • 一般的なHTTPおよびWeb開発に関する知識
  • Go言語のテストに関する一般的な知識
  • Go言語の defer ステートメントに関する一般的な知識
  • Go言語の net/http および mime/multipart パッケージのソースコード分析# [インデックス 18583] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリ net/http パッケージ内のテストコード TestMultipartReaderOrder において、一時ファイルのクリーンアップ処理を追加するものです。具体的には、req.ParseMultipartForm() によって作成される可能性のある一時ファイルを、テスト終了時に確実に削除するための defer req.MultipartForm.RemoveAll() の呼び出しが追加されています。

コミット

commit 5a6af5fc9439f96829bcdc9463a28baee0e41d85
Author: Alex Brainman <alex.brainman@gmail.com>
Date:   Thu Feb 20 17:24:25 2014 +1100

    net/http: remove tmp file created in TestMultipartReaderOrder
    
    LGTM=minux.ma
    R=golang-codereviews, minux.ma
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/66470043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/5a6af5fc9439f96829bcdc9463a28baee0e41d85

元コミット内容

net/http: remove tmp file created in TestMultipartReaderOrder

LGTM=minux.ma
R=golang-codereviews, minux.ma
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/66470043

変更の背景

このコミットの背景には、Go言語の net/http パッケージにおけるマルチパートフォームデータの処理と、それに伴う一時ファイルの管理があります。

HTTPの multipart/form-data は、Webフォームを通じてファイルアップロードなどを行う際に使用されるMIMEタイプです。Goの net/http パッケージでは、Request オブジェクトの ParseMultipartForm メソッドを使用して、このマルチパートフォームデータを解析します。

ParseMultipartForm メソッドは、受信したリクエストボディが特定のサイズ(デフォルトでは10MB、または引数で指定されたサイズ)を超える場合、そのデータをメモリ上に保持するのではなく、一時ファイルとしてディスクに書き出すことがあります。これは、大量のデータを扱う際にメモリ消費を抑え、システムの安定性を保つための一般的な戦略です。

しかし、一時ファイルが作成された場合、そのファイルは明示的に削除される必要があります。テストコードにおいては、テストの実行後に作成された一時ファイルが残存すると、ディスクスペースの無駄遣いになるだけでなく、後続のテスト実行に影響を与えたり、テスト環境を汚染したりする可能性があります。特にCI/CD環境などでは、テストのたびに一時ファイルが蓄積されると問題となります。

TestMultipartReaderOrder は、net/http パッケージの MultipartReaderParseMultipartForm の挙動を検証するためのテストです。このテスト内で ParseMultipartForm が呼び出されるため、一時ファイルが作成される可能性がありました。このコミットは、テストが終了する際に、ParseMultipartForm によって作成された可能性のある一時ファイルを確実にクリーンアップすることを目的としています。これにより、テストの冪等性(何度実行しても同じ結果が得られ、環境に副作用を残さないこと)が保証され、テスト環境の健全性が維持されます。

前提知識の解説

1. HTTP multipart/form-data

multipart/form-data は、HTTPリクエストのボディ形式の一つで、主にWebフォームからのファイルアップロードに使用されます。この形式では、リクエストボディが複数の「パート」に分割され、各パートが独立したデータ(テキストフィールド、ファイルなど)を表します。各パートは境界文字列(boundary string)で区切られ、それぞれに Content-Disposition ヘッダや Content-Type ヘッダを持つことができます。

2. Go net/http パッケージ

Go言語の net/http パッケージは、HTTPクライアントとサーバーの実装を提供します。Webアプリケーション開発において中心的な役割を果たすパッケージです。

  • http.Request: 受信したHTTPリクエストを表す構造体です。リクエストメソッド、URL、ヘッダ、ボディなどの情報を含みます。
  • Request.ParseMultipartForm(maxMemory int64): このメソッドは、HTTPリクエストのボディが multipart/form-data 形式である場合に、そのデータを解析するために使用されます。 maxMemory 引数は、メモリに保持するフォームデータの最大サイズを指定します。このサイズを超えるデータ(特にファイルアップロード)は、自動的に一時ファイルとしてディスクに書き込まれます。 解析が成功すると、Request.MultipartForm フィールドに解析されたフォームデータが格納されます。
  • Request.MultipartReader(): このメソッドは、multipart/form-data 形式のリクエストボディをストリームとして読み込むための multipart.Reader を返します。ParseMultipartForm とは異なり、データをメモリにロードしたり一時ファイルに書き込んだりせず、ストリームとして逐次処理する際に使用されます。 重要な点として、ParseMultipartForm が一度呼び出されると、リクエストボディは既に読み込まれて解析されているため、その後に MultipartReader を呼び出すとエラーになります。これは、リクエストボディが一度しか読み取れないためです。

3. multipart.Form 構造体と RemoveAll() メソッド

ParseMultipartForm メソッドによって解析されたマルチパートフォームデータは、http.Request.MultipartForm フィールドに格納されます。このフィールドの型は *multipart.Form です。

  • multipart.Form: この構造体は、解析されたマルチパートフォームデータ全体を保持します。これには、通常のフォームフィールド(Value マップ)と、アップロードされたファイル(File マップ)が含まれます。 File マップの値は []*multipart.FileHeader であり、各 FileHeader はアップロードされたファイルに関するメタデータ(ファイル名、サイズ、ヘッダなど)と、そのファイルの内容へのアクセス手段(一時ファイルへのパスなど)を提供します。
  • Form.RemoveAll(): multipart.Form 構造体には RemoveAll() というメソッドが定義されています。このメソッドは、ParseMultipartForm によって作成されたすべての一時ファイルを削除する責任を持ちます。このメソッドを呼び出すことで、ディスク上に残された不要な一時ファイルをクリーンアップし、リソースリークを防ぐことができます。

4. defer ステートメント

Go言語の defer ステートメントは、関数がリターンする直前に実行される関数呼び出しをスケジュールするために使用されます。これは、リソースの解放(ファイルハンドルのクローズ、ロックの解除、一時ファイルの削除など)を確実に行うための非常に便利な機能です。defer はLIFO(Last-In, First-Out)順で実行されます。

このコミットでは、defer req.MultipartForm.RemoveAll() を使用することで、TestMultipartReaderOrder 関数が終了する際に、ParseMultipartForm が作成した一時ファイルが自動的に削除されるようにしています。これにより、テストコードの堅牢性とクリーンアップの信頼性が向上します。

技術的詳細

このコミットの技術的詳細は、Goの net/http パッケージがマルチパートフォームデータをどのように処理し、それに伴う一時ファイルのライフサイクルをどのように管理するかという点に集約されます。

http.Request.ParseMultipartForm(maxMemory int64) メソッドは、リクエストボディを解析する際に、maxMemory で指定されたサイズを超える部分をディスク上の一時ファイルとして保存します。これは、特に大きなファイルがアップロードされる場合に、サーバーのメモリが枯渇するのを防ぐための重要なメカニズムです。一時ファイルは通常、システムのデフォルトの一時ディレクトリ(例: Linuxでは /tmp)に作成されます。

ParseMultipartForm が成功すると、解析されたデータは req.MultipartForm フィールドに格納されます。この MultipartForm*multipart.Form 型であり、その内部にはアップロードされたファイルに関する情報が含まれています。これらのファイルが一時ファイルとして保存されている場合、multipart.Form オブジェクトはそれらのファイルへの参照を保持しています。

問題は、これらの一時ファイルが自動的に削除されないという点です。Goのランタイムやガベージコレクタは、これらのファイルがディスク上に存在することを認識せず、自動的にクリーンアップすることはありません。したがって、開発者が明示的に multipart.Form.RemoveAll() メソッドを呼び出して、関連する一時ファイルを削除する必要があります。

テストコード TestMultipartReaderOrder では、req.ParseMultipartForm(25) が呼び出されています。引数 25maxMemory のサイズが25バイトであることを意味します。これは非常に小さな値であり、テストデータが25バイトを超えるとすぐに一時ファイルが作成される可能性が高いことを示唆しています。テストが終了した際に、この一時ファイルがディスク上に残ってしまうと、テストの実行ごとに不要なファイルが蓄積され、ディスク容量を圧迫したり、テストの再現性を損なったりする原因となります。

このコミットでは、defer req.MultipartForm.RemoveAll() を追加することで、この問題を解決しています。defer ステートメントは、TestMultipartReaderOrder 関数が正常に終了するか、パニックが発生して終了するかにかかわらず、必ず req.MultipartForm.RemoveAll() が呼び出されることを保証します。これにより、テスト実行後に作成された一時ファイルが確実にクリーンアップされ、テスト環境が常にクリーンな状態に保たれます。

この変更は、単なるバグ修正以上の意味を持ちます。それは、Goのテストコードにおけるベストプラクティス、すなわち「テストは環境に副作用を残すべきではない」という原則を強化するものです。リソース(この場合は一時ファイル)の適切な解放は、堅牢で信頼性の高いソフトウェア開発において不可欠な要素であり、テストコードにおいても同様に重要です。

コアとなるコードの変更箇所

変更は src/pkg/net/http/request_test.go ファイルの1箇所のみです。

--- a/src/pkg/net/http/request_test.go
+++ b/src/pkg/net/http/request_test.go
@@ -218,6 +218,7 @@ func TestMultipartReaderOrder(t *testing.T) {
 	if err := req.ParseMultipartForm(25); err != nil {
 		t.Fatalf("ParseMultipartForm: %v", err)
 	}
+	defer req.MultipartForm.RemoveAll()
 	if _, err := req.MultipartReader(); err == nil {
 		t.Fatal("expected an error from MultipartReader after call to ParseMultipartForm")
 	}

コアとなるコードの解説

追加された行は以下の1行です。

defer req.MultipartForm.RemoveAll()

この行は、TestMultipartReaderOrder 関数内で req.ParseMultipartForm(25) が呼び出された直後に挿入されています。

  1. req.ParseMultipartForm(25): この呼び出しは、HTTPリクエスト req のマルチパートフォームデータを解析します。引数 25 は、メモリに保持するデータの最大サイズが25バイトであることを意味します。これを超えるデータは一時ファイルとしてディスクに書き込まれます。このメソッドが成功すると、解析されたフォームデータは req.MultipartForm フィールドに格納されます。
  2. defer キーワード: defer はGo言語のキーワードで、それに続く関数呼び出しを、現在の関数(この場合は TestMultipartReaderOrder)がリターンする直前に実行するようにスケジュールします。関数が正常に終了する場合でも、パニックが発生して終了する場合でも、defer された関数は必ず実行されます。
  3. req.MultipartForm: これは、ParseMultipartForm によって設定される *multipart.Form 型のフィールドです。この構造体は、解析されたマルチパートフォームデータ(通常のフォームフィールドとアップロードされたファイル)を保持します。
  4. .RemoveAll(): これは multipart.Form 型のメソッドです。このメソッドが呼び出されると、ParseMultipartForm によって作成されたすべての一時ファイルがディスクから削除されます。

したがって、defer req.MultipartForm.RemoveAll() は、「TestMultipartReaderOrder 関数が終了する際に、req.MultipartForm に関連付けられたすべての一時ファイルを削除する」という動作を保証します。これにより、テスト実行後にディスク上に不要な一時ファイルが残ることを防ぎ、テスト環境のクリーンアップを確実に行うことができます。これは、テストの冪等性を保ち、リソースリークを防ぐための重要な修正です。

関連リンク

参考にした情報源リンク