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[インデックス 18640] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のランタイムにおけるタイマーの実装に関する変更です。具体的には、Linux/ARMアーキテクチャにおいて、タイマーの基盤となるクロックとしてCLOCK_REALTIMEからCLOCK_MONOTONICへの切り替えを行っています。

コミット

commit 7206f50f719cdac2a93e2beb723908bff69d7f22
Author: Mikio Hara <mikioh.mikioh@gmail.com>
Date:   Tue Feb 25 23:03:01 2014 +0900

    runtime: use monotonic clock for timers on linux/arm
    
    Update #6007
    
    LGTM=dvyukov
    R=golang-codereviews, dvyukov
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/67730048

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/7206f50f719cdac2a93e2beb723908bff69d7f22

元コミット内容

runtime: use monotonic clock for timers on linux/arm

Update #6007

LGTM=dvyukov
R=golang-codereviews, dvyukov
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/67730048

変更の背景

この変更の背景には、Goランタイムがタイマーやスケジューリングのために使用する時間の精度と信頼性の問題がありました。特に、システムクロック(CLOCK_REALTIME)がNTP(Network Time Protocol)などによって調整されたり、手動で変更されたりすると、その影響がGoランタイムのタイマーに及び、予期せぬ動作やパフォーマンスの問題を引き起こす可能性がありました。

Goランタイムは、ゴルーチン(goroutine)のスケジューリング、ネットワークI/Oのタイムアウト、time.Sleepなどの機能で内部的にタイマーを使用しています。これらの機能が正確に動作するためには、システムクロックの変更に影響されない、単調増加する時間源が必要です。

コミットメッセージにあるUpdate #6007は、この変更がGoのIssue 6007に関連していることを示唆しています。Issue 6007は、Goのタイマーがシステムクロックの変更に影響される問題について議論しており、CLOCK_MONOTONICの使用が解決策として提案されていました。

前提知識の解説

システムクロックの種類

Linuxシステムには、主に以下の2種類のシステムクロックが存在します。

  1. CLOCK_REALTIME (リアルタイムクロック):

    • これは「壁時計時間(wall-clock time)」とも呼ばれ、実際のカレンダー時間(年、月、日、時、分、秒)を表します。
    • システム起動時からの経過時間ではなく、特定の基準点(通常は1970年1月1日00:00:00 UTC)からの経過時間を表します。
    • NTPサーバーとの同期や、システム管理者の手動操作によって、進んだり遅れたり、あるいはジャンプしたりする可能性があります。
    • 時刻の変更は、タイマーや時間計測に依存するアプリケーションの動作に影響を与える可能性があります。例えば、時刻が過去に巻き戻されると、タイマーが予期せず長く待機したり、すでに期限切れと判断されるべきイベントがまだ発生していないと見なされたりする可能性があります。
  2. CLOCK_MONOTONIC (モノトニッククロック):

    • これは「単調増加クロック」とも呼ばれ、システムが起動してからの経過時間を表します。
    • システムクロックの変更(NTP同期や手動調整)には影響されず、常に単調に増加します。つまり、過去に巻き戻ることはありません。
    • システムのサスペンド時には停止し、レジューム時に再開する場合があります(CLOCK_MONOTONIC_RAWはサスペンド中も進み続けますが、CLOCK_MONOTONICは通常サスペンドの影響を受けます)。
    • 主に、時間間隔の計測やタイムアウトの実装など、絶対時刻ではなく相対的な時間経過が重要な場面で使用されます。

Goランタイムのタイマー

Goランタイムは、内部的に非常に効率的なタイマー管理システムを持っています。これは、ゴルーチンのスケジューリング、ネットワークI/Oのタイムアウト、time.Sleeptime.Aftertime.NewTimerなどの標準ライブラリ関数を支える基盤となります。

Goのタイマーは、最小ヒープ(min-heap)データ構造を使用して管理されており、次に期限が来るタイマーが常にヒープのルートに位置するように設計されています。これにより、効率的に次のタイマーイベントを処理できます。タイマーの期限が来ると、関連するゴルーチンが実行可能状態になり、Goスケジューラによって実行されます。

タイマーの正確性は、その基盤となるシステムクロックに大きく依存します。システムクロックが不安定だと、タイマーの精度が損なわれ、アプリケーションの動作に悪影響を及ぼす可能性があります。

ARMアーキテクチャ

ARM(Advanced RISC Machine)は、モバイルデバイス、組み込みシステム、IoTデバイスなどで広く使用されているRISC(Reduced Instruction Set Computer)ベースのプロセッサアーキテクチャです。低消費電力と高性能を両立できる点が特徴です。Go言語は、ARMを含む多くのアーキテクチャをサポートしており、それぞれのアーキテクチャに特化したランタイムコードを持っています。

技術的詳細

このコミットの技術的な核心は、Linux/ARM環境におけるGoランタイムのnanotime関数の実装変更です。nanotime関数は、Goランタイムがナノ秒単位の現在時刻を取得するために使用する内部関数です。

変更前は、nanotime関数がCLOCK_REALTIMEを使用して時刻を取得していました。これは、Linuxシステムコールclock_gettimeを呼び出す際に、CLOCK_REALTIMEに対応する定数(通常は0)を引数として渡すことで実現されていました。

変更後は、nanotime関数がCLOCK_MONOTONICを使用するように修正されました。これは、clock_gettimeシステムコールにCLOCK_MONOTONICに対応する定数(通常は1)を渡すことで実現されます。

この変更により、Goランタイムのタイマーは、システムクロックの調整やジャンプの影響を受けなくなります。これにより、タイマーの精度と信頼性が向上し、特に長時間稼働するサーバーアプリケーションや、厳密な時間管理が求められるシステムにおいて、より堅牢な動作が期待できます。

ARMアーキテクチャに特化してこの変更が適用されたのは、おそらく当時のGoのサポート状況や、特定のARMベースのシステムでCLOCK_REALTIMEの不安定性が顕著であったためと考えられます。他のアーキテクチャやOSでは、既にCLOCK_MONOTONICが使用されていたか、あるいは同様の問題が後から修正された可能性があります。

コアとなるコードの変更箇所

変更は、src/pkg/runtime/sys_linux_arm.sファイル内のruntime·nanotime関数の実装にあります。このファイルは、Linux/ARMアーキテクチャに特化したGoランタイムのアセンブリコードを含んでいます。

--- a/src/pkg/runtime/sys_linux_arm.s
+++ b/src/pkg/runtime/sys_linux_arm.s
@@ -175,7 +175,7 @@ TEXT time·now(SB), NOSPLIT, $32
 // int64 nanotime(void) so really
 // void nanotime(int64 *nsec)
 TEXT runtime·nanotime(SB),NOSPLIT,$32
-	MOVW	$0, R0  // CLOCK_REALTIME
+	MOVW	$1, R0  // CLOCK_MONOTONIC
 	MOVW	$8(R13), R1  // timespec
 	MOVW	$SYS_clock_gettime, R7
 	SWI	$0

コアとなるコードの解説

上記のコードスニペットは、ARMアセンブリ言語で書かれています。

  • TEXT runtime·nanotime(SB),NOSPLIT,$32:
    • これはruntime·nanotimeというGoの関数を定義しています。SBはシンボルベースレジスタ、NOSPLITはスタックフレームを分割しないことを示し、$32はスタックフレームのサイズ(32バイト)を示します。
  • MOVW $0, R0 // CLOCK_REALTIME (変更前):
    • MOVWは「Move Word」命令で、即値0をARMプロセッサのレジスタR0に移動します。
    • R0は、Linuxシステムコールを呼び出す際の最初の引数を渡すために使用されるレジスタです。
    • コメントにあるように、0CLOCK_REALTIMEに対応する定数です。これは、clock_gettimeシステムコールに「リアルタイムクロックの時刻を取得してほしい」と指示していました。
  • MOVW $1, R0 // CLOCK_MONOTONIC (変更後):
    • 変更後、即値1R0に移動されます。
    • 1CLOCK_MONOTONICに対応する定数です。これにより、clock_gettimeシステムコールは「単調増加クロックの時刻を取得してほしい」と指示されるようになります。
  • MOVW $8(R13), R1 // timespec:
    • R13はスタックポインタ(SP)レジスタです。8(R13)は、スタックポインタから8バイトオフセットしたアドレスを指します。
    • このアドレスには、timespec構造体(秒とナノ秒で時間を表す構造体)を格納するためのメモリ領域が確保されています。R1は、clock_gettimeシステムコールの2番目の引数として、このtimespec構造体へのポインタを渡すために使用されます。
  • MOVW $SYS_clock_gettime, R7:
    • SYS_clock_gettimeは、clock_gettimeシステムコールの番号を表す定数です。
    • この定数がR7レジスタに移動されます。ARMでは、システムコール番号はR7レジスタに格納されます。
  • SWI $0:
    • SWIは「Software Interrupt」命令で、システムコールを実行します。$0は、通常、システムコールをトリガーするためのソフトウェア割り込み番号です。

この一連のアセンブリ命令は、Goランタイムがclock_gettime(CLOCK_ID, &timespec)というC言語の関数呼び出しに相当する処理を、Linux/ARM環境で実行する方法を示しています。変更の核心は、CLOCK_IDとしてCLOCK_REALTIME0)ではなくCLOCK_MONOTONIC1)を使用するように定数を変更した点にあります。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語のソースコード(特にsrc/pkg/runtime/sys_linux_arm.s
  • Linux clock_gettimeシステムコールのドキュメント
  • ARMアセンブリ言語の基本
  • Go言語のタイマーとスケジューラに関する一般的な情報源
  • Go Issue 6007の議論内容(Web検索で確認)

[インデックス 18640] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のランタイムにおけるタイマーの実装に関する変更です。具体的には、Linux/ARMアーキテクチャにおいて、タイマーの基盤となるクロックとしてCLOCK_REALTIMEからCLOCK_MONOTONICへの切り替えを行っています。

コミット

commit 7206f50f719cdac2a93e2beb723908bff69d7f22
Author: Mikio Hara <mikioh.mikioh@gmail.com>
Date:   Tue Feb 25 23:03:01 2014 +0900

    runtime: use monotonic clock for timers on linux/arm
    
    Update #6007
    
    LGTM=dvyukov
    R=golang-codereviews, dvyukov
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/67730048

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/7206f50f719cdac2a93e2beb723908bff69d7f22

元コミット内容

runtime: use monotonic clock for timers on linux/arm

Update #6007

LGTM=dvyukov
R=golang-codereviews, dvyukov
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/67730048

変更の背景

この変更の背景には、Goランタイムがタイマーやスケジューリングのために使用する時間の精度と信頼性の問題がありました。特に、システムクロック(CLOCK_REALTIME)がNTP(Network Time Protocol)などによって調整されたり、手動で変更されたりすると、その影響がGoランタイムのタイマーに及び、予期せぬ動作やパフォーマンスの問題を引き起こす可能性がありました。

Goランタイムは、ゴルーチン(goroutine)のスケジューリング、ネットワークI/Oのタイムアウト、time.Sleepなどの機能で内部的にタイマーを使用しています。これらの機能が正確に動作するためには、システムクロックの変更に影響されない、単調増加する時間源が必要です。

コミットメッセージにあるUpdate #6007は、この変更がGoのIssue 6007に関連していることを示唆しています。Issue 6007は、Goのタイマーがシステムクロックの変更に影響される問題について議論しており、CLOCK_MONOTONICの使用が解決策として提案されていました。Go 1.3では、time.SleepTickerTimer関数がLinuxを含む様々なプラットフォームでCLOCK_MONOTONICを利用するように変更され、システムクロックの変更に対する堅牢性が向上しました。さらに、Go 1.9ではtime.Time値が内部的にモノトニッククロックの読み取りを追跡するようになり、システムウォールクロックが調整された場合でも、2つのtime.Time値間の正確な期間計算が可能になりました。

前提知識の解説

システムクロックの種類

Linuxシステムには、主に以下の2種類のシステムクロックが存在します。

  1. CLOCK_REALTIME (リアルタイムクロック):

    • これは「壁時計時間(wall-clock time)」とも呼ばれ、実際のカレンダー時間(年、月、日、時、分、秒)を表します。
    • システム起動時からの経過時間ではなく、特定の基準点(通常は1970年1月1日00:00:00 UTC)からの経過時間を表します。
    • NTPサーバーとの同期や、システム管理者の手動操作によって、進んだり遅れたり、あるいはジャンプしたりする可能性があります。
    • 時刻の変更は、タイマーや時間計測に依存するアプリケーションの動作に影響を与える可能性があります。例えば、時刻が過去に巻き戻されると、タイマーが予期せず長く待機したり、すでに期限切れと判断されるべきイベントがまだ発生していないと見なされたりする可能性があります。
  2. CLOCK_MONOTONIC (モノトニッククロック):

    • これは「単調増加クロック」とも呼ばれ、システムが起動してからの経過時間を表します。
    • システムクロックの変更(NTP同期や手動調整)には影響されず、常に単調に増加します。つまり、過去に巻き戻ることはありません。
    • システムのサスペンド時には停止し、レジューム時に再開する場合があります(CLOCK_MONOTONIC_RAWはサスペンド中も進み続けますが、CLOCK_MONOTONICは通常サスペンドの影響を受けます)。
    • 主に、時間間隔の計測やタイムアウトの実装など、絶対時刻ではなく相対的な時間経過が重要な場面で使用されます。
    • Go 1.9以降では、Linuxシステムで利用可能な場合はCLOCK_BOOTTIMEが優先されるようになりました。CLOCK_BOOTTIMECLOCK_MONOTONICに似ていますが、システムがサスペンド状態にある間の時間も考慮するため、コンピュータが一時停止している期間をまたぐ期間測定において、より正確な値を提供します。

Goランタイムのタイマー

Goランタイムは、内部的に非常に効率的なタイマー管理システムを持っています。これは、ゴルーチンのスケジューリング、ネットワークI/Oのタイムアウト、time.Sleeptime.Aftertime.NewTimerなどの標準ライブラリ関数を支える基盤となります。

Goのタイマーは、最小ヒープ(min-heap)データ構造を使用して管理されており、次に期限が来るタイマーが常にヒープのルートに位置するように設計されています。これにより、効率的に次のタイマーイベントを処理できます。タイマーの期限が来ると、関連するゴルーチンが実行可能状態になり、Goスケジューラによって実行されます。

タイマーの正確性は、その基盤となるシステムクロックに大きく依存します。システムクロックが不安定だと、タイマーの精度が損なわれ、アプリケーションの動作に悪影響を及ぼす可能性があります。

ARMアーキテクチャ

ARM(Advanced RISC Machine)は、モバイルデバイス、組み込みシステム、IoTデバイスなどで広く使用されているRISC(Reduced Instruction Set Computer)ベースのプロセッサアーキテクチャです。低消費電力と高性能を両立できる点が特徴です。Go言語は、ARMを含む多くのアーキテクチャをサポートしており、それぞれのアーキテクチャに特化したランタイムコードを持っています。

技術的詳細

このコミットの技術的な核心は、Linux/ARM環境におけるGoランタイムのnanotime関数の実装変更です。nanotime関数は、Goランタイムがナノ秒単位の現在時刻を取得するために使用する内部関数です。

変更前は、nanotime関数がCLOCK_REALTIMEを使用して時刻を取得していました。これは、Linuxシステムコールclock_gettimeを呼び出す際に、CLOCK_REALTIMEに対応する定数(通常は0)を引数として渡すことで実現されていました。

変更後は、nanotime関数がCLOCK_MONOTONICを使用するように修正されました。これは、clock_get_timeシステムコールにCLOCK_MONOTONICに対応する定数(通常は1)を渡すことで実現されます。

この変更により、Goランタイムのタイマーは、システムクロックの調整やジャンプの影響を受けなくなります。これにより、タイマーの精度と信頼性が向上し、特に長時間稼働するサーバーアプリケーションや、厳密な時間管理が求められるシステムにおいて、より堅牢な動作が期待できます。

ARMアーキテクチャに特化してこの変更が適用されたのは、おそらく当時のGoのサポート状況や、特定のARMベースのシステムでCLOCK_REALTIMEの不安定性が顕著であったためと考えられます。他のアーキテクチャやOSでは、既にCLOCK_MONOTONICが使用されていたか、あるいは同様の問題が後から修正された可能性があります。

コアとなるコードの変更箇所

変更は、src/pkg/runtime/sys_linux_arm.sファイル内のruntime·nanotime関数の実装にあります。このファイルは、Linux/ARMアーキテクチャに特化したGoランタイムのアセンブリコードを含んでいます。

--- a/src/pkg/runtime/sys_linux_arm.s
+++ b/src/pkg/runtime/sys_linux_arm.s
@@ -175,7 +175,7 @@ TEXT time·now(SB), NOSPLIT, $32
 // int64 nanotime(void) so really
 // void nanotime(int64 *nsec)
 TEXT runtime·nanotime(SB),NOSPLIT,$32
-	MOVW	$0, R0  // CLOCK_REALTIME
+	MOVW	$1, R0  // CLOCK_MONOTONIC
 	MOVW	$8(R13), R1  // timespec
 	MOVW	$SYS_clock_gettime, R7
 	SWI	$0

コアとなるコードの解説

上記のコードスニペットは、ARMアセンブリ言語で書かれています。

  • TEXT runtime·nanotime(SB),NOSPLIT,$32:
    • これはruntime·nanotimeというGoの関数を定義しています。SBはシンボルベースレジスタ、NOSPLITはスタックフレームを分割しないことを示し、$32はスタックフレームのサイズ(32バイト)を示します。
  • MOVW $0, R0 // CLOCK_REALTIME (変更前):
    • MOVWは「Move Word」命令で、即値0をARMプロセッサのレジスタR0に移動します。
    • R0は、Linuxシステムコールを呼び出す際の最初の引数を渡すために使用されるレジスタです。
    • コメントにあるように、0CLOCK_REALTIMEに対応する定数です。これは、clock_gettimeシステムコールに「リアルタイムクロックの時刻を取得してほしい」と指示していました。
  • MOVW $1, R0 // CLOCK_MONOTONIC (変更後):
    • 変更後、即値1R0に移動されます。
    • 1CLOCK_MONOTONICに対応する定数です。これにより、clock_gettimeシステムコールは「単調増加クロックの時刻を取得してほしい」と指示されるようになります。
  • MOVW $8(R13), R1 // timespec:
    • R13はスタックポインタ(SP)レジスタです。8(R13)は、スタックポインタから8バイトオフセットしたアドレスを指します。
    • このアドレスには、timespec構造体(秒とナノ秒で時間を表す構造体)を格納するためのメモリ領域が確保されています。R1は、clock_gettimeシステムコールの2番目の引数として、このtimespec構造体へのポインタを渡すために使用されます。
  • MOVW $SYS_clock_gettime, R7:
    • SYS_clock_gettimeは、clock_gettimeシステムコールの番号を表す定数です。
    • この定数がR7レジスタに移動されます。ARMでは、システムコール番号はR7レジスタに格納されます。
  • SWI $0:
    • SWIは「Software Interrupt」命令で、システムコールを実行します。$0は、通常、システムコールをトリガーするためのソフトウェア割り込み番号です。

この一連のアセンブリ命令は、Goランタイムがclock_gettime(CLOCK_ID, &timespec)というC言語の関数呼び出しに相当する処理を、Linux/ARM環境で実行する方法を示しています。変更の核心は、CLOCK_IDとしてCLOCK_REALTIME0)ではなくCLOCK_MONOTONIC1)を使用するように定数を変更した点にあります。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語のソースコード(特にsrc/pkg/runtime/sys_linux_arm.s
  • Linux clock_gettimeシステムコールのドキュメント
  • ARMアセンブリ言語の基本
  • Go言語のタイマーとスケジューラに関する一般的な情報源
  • Go Issue 6007の議論内容(Web検索で確認)