[インデックス 18712] ファイルの概要
このコミットは、Go言語のテスト実行スクリプトである test/run
に関連する変更です。具体的には、テスト実行環境の PATH
環境変数に /usr/pkg/bin
を追加することで、pkgsrc
経由でインストールされた perl
などのツールがテスト中に正しく見つけられるようにする修正です。
コミット
test/run: add /usr/pkg/bin to PATH.
perl is installed by pkgsrc to /usr/pkg/bin.
LGTM=iant
R=golang-codereviews, iant
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/70630043
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/8b1b1e159d0ff464062b5325edf29c52000fd1f4
元コミット内容
test/run: add /usr/pkg/bin to PATH.
perl is installed by pkgsrc to /usr/pkg/bin.
このコミットは、Goのテスト実行スクリプト test/run
において、PATH
環境変数に /usr/pkg/bin
を追加するものです。これは、pkgsrc
を通じて /usr/pkg/bin
にインストールされた perl
が、テスト実行時に正しく参照されるようにするための変更です。
変更の背景
Go言語のテストスイートは、様々な環境で実行されることを想定しています。このコミットが行われた当時、特定の環境(おそらく pkgsrc
を利用しているシステム)において、テストスクリプトが依存する外部ツール(この場合は perl
)が見つからないという問題が発生していたと考えられます。
pkgsrc
は、NetBSDプロジェクトが開発しているポータブルなパッケージ管理システムで、様々なUNIX系OSで利用できます。pkgsrc
を利用してインストールされたソフトウェアは、通常 /usr/pkg/bin
や /usr/pkg/sbin
といったディレクトリに配置されます。
test/run
スクリプトは、Goのテストを実行するためのシェルスクリプトであり、テストの実行環境をセットアップする役割を担っています。このスクリプト内で perl
が必要とされる場面があったにもかかわらず、PATH
環境変数に /usr/pkg/bin
が含まれていなかったため、pkgsrc
経由でインストールされた perl
が見つからず、テストが失敗する可能性がありました。
このコミットは、このような環境依存の問題を解決し、Goのテストスイートのポータビリティと信頼性を向上させることを目的としています。
前提知識の解説
PATH 環境変数
PATH
環境変数は、UNIX系オペレーティングシステムにおいて、実行可能ファイル(コマンド)を探すディレクトリのリストを定義するものです。ユーザーがコマンド名を入力して実行しようとすると、シェルはこの PATH
に含まれるディレクトリを順番に検索し、最初に見つかった実行可能ファイルを実行します。
例えば、PATH
が /usr/local/bin:/usr/bin:/bin
と設定されている場合、ls
コマンドを実行すると、シェルはまず /usr/local/bin
で ls
を探し、次に /usr/bin
、最後に /bin
を探します。
このコミットでは、test/run
スクリプトがテスト実行時に使用する PATH
を明示的に設定しています。これにより、テスト環境が特定のディレクトリに依存するツールを見つけられるようになります。
pkgsrc
pkgsrc
は、NetBSDプロジェクトによって開発された、クロスプラットフォームなパッケージ管理システムです。NetBSDだけでなく、Linux、macOS、Solaris、FreeBSDなど、50以上の異なるオペレーティングシステムで利用できます。
pkgsrc
の主な特徴は以下の通りです。
- ポータビリティ: 多くのUNIX系OSで同じ方法でソフトウェアをインストール・管理できます。
- ソースベース: 基本的にソースコードからソフトウェアをビルドしてインストールします。これにより、特定のシステムアーキテクチャに最適化されたバイナリを生成できます。
- 依存関係の解決: ソフトウェアの依存関係を自動的に解決し、必要なライブラリやツールも同時にインストールします。
pkgsrc
を利用してインストールされた実行可能ファイルは、通常 /usr/pkg/bin
ディレクトリに配置されます。このため、pkgsrc
環境で Go のテストを実行する場合、perl
のようなツールが /usr/pkg/bin
に存在することが一般的です。
Perl
Perlは、Larry Wallによって開発された高水準の汎用プログラミング言語です。テキスト処理能力に優れており、システム管理、Web開発、ネットワークプログラミングなど、幅広い分野で利用されています。Go言語のテストスイートの中には、テストの準備や結果の解析などの補助的なタスクにPerlスクリプトを使用しているものがある可能性があります。
Goのテスト環境 (test/run
スクリプト)
Go言語には、標準で強力なテストフレームワークが組み込まれていますが、より複雑なテストや、特定の環境設定が必要なテストのために、test/run
のような補助的なスクリプトが使用されることがあります。
test/run
スクリプトは、Goのソースツリーの test/
ディレクトリに存在し、Goの標準ライブラリやツールのテストを実行するための主要なエントリポイントの一つです。このスクリプトは、テストの実行に必要な環境変数(PATH
など)を設定し、テストバイナリを実行し、結果を収集する役割を担っています。
技術的詳細
このコミットの技術的な核心は、test/run
スクリプト内で PATH
環境変数を設定している行に /usr/pkg/bin
を追加した点です。
元の PATH
設定は以下のようになっていました。
PATH=${GOBIN:-$GOROOT/bin}:
pwd:/bin:/usr/bin:/usr/local/bin
この設定は、Goのバイナリが置かれる可能性のあるディレクトリ (GOBIN
または $GOROOT/bin
)、現在の作業ディレクトリ (pwd
)、そして一般的なシステムバイナリのパス (/bin
, /usr/bin
, /usr/local/bin
) を含んでいます。
しかし、pkgsrc
を利用しているシステムでは、perl
のような重要なツールが /usr/pkg/bin
にインストールされることが一般的です。このディレクトリが PATH
に含まれていないと、test/run
スクリプトや、それが呼び出すテストスクリプトが perl
を見つけられず、テストが失敗してしまいます。
変更後の PATH
設定は以下の通りです。
PATH=${GOBIN:-$GOROOT/bin}:
pwd:/bin:/usr/bin:/usr/local/bin:/usr/pkg/bin
末尾に : /usr/pkg/bin
が追加されたことで、test/run
スクリプトが実行される環境において、/usr/pkg/bin
に存在する実行可能ファイルも検索対象に含まれるようになりました。これにより、pkgsrc
経由でインストールされた perl
が正しく見つかり、テストが期待通りに動作するようになります。
この変更は、特定のパッケージ管理システム(pkgsrc
)を使用している環境でのGoテストの互換性を向上させるための、堅実な修正と言えます。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/test/run
+++ b/test/run
@@ -33,7 +33,7 @@ unset GOROOT_FINAL # breaks ./ imports
failed=0
-PATH=${GOBIN:-$GOROOT/bin}:`pwd`:/bin:/usr/bin:/usr/local/bin
+PATH=${GOBIN:-$GOROOT/bin}:`pwd`:/bin:/usr/bin:/usr/local/bin:/usr/pkg/bin
# TODO: We add the tool directory to the PATH to avoid thinking about a better way.
PATH="$GOTOOLDIR:$PATH"
コアとなるコードの解説
変更は test/run
スクリプトの36行目(変更後)にあります。
元の行:
PATH=${GOBIN:-$GOROOT/bin}:
pwd:/bin:/usr/bin:/usr/local/bin
変更後の行:
PATH=${GOBIN:-$GOROOT/bin}:
pwd:/bin:/usr/bin:/usr/local/bin:/usr/pkg/bin
この変更は、PATH
環境変数の定義に : /usr/pkg/bin
を追加しています。これはシェルスクリプトの構文で、既存の PATH
の値に新しいディレクトリ /usr/pkg/bin
をコロン :
で区切って追加することを意味します。これにより、シェルが実行可能ファイルを探す際に /usr/pkg/bin
も検索対象に含まれるようになります。
この修正は非常にシンプルですが、pkgsrc
を利用する環境におけるGoテストの安定性と互換性を確保するために重要です。
関連リンク
- Go Code Review: https://golang.org/cl/70630043
参考にした情報源リンク
pkgsrc
公式サイト: https://www.pkgsrc.org/- Perl 公式サイト: https://www.perl.org/
- PATH 環境変数 (Wikipedia): https://ja.wikipedia.org/wiki/PATH
- Go言語のテスト (Go公式ドキュメントなど、一般的なGoテストに関する情報)