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[インデックス 18819] ファイルの概要

このコミットは、Goランタイムのガベージコレクションに関連するsrc/pkg/runtime/mgc0.cファイルから、未使用の宣言を削除するものです。具体的には、RootBlockSizeという定数とaddfinrootsという関数宣言が削除されています。これはコードのクリーンアップと保守性の向上を目的とした変更です。

コミット

commit 1306279cd14e1e1e5c7645de6697bd3ab09c59aa
Author: Keith Randall <khr@golang.org>
Date:   Mon Mar 10 16:02:46 2014 -0700

    runtime: remove unused declarations.
    
    LGTM=bradfitz
    R=golang-codereviews, bradfitz
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/73720044

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/1306279cd14e1e1e5c7645de6697bd3ab09c59aa

元コミット内容

runtime: remove unused declarations.

LGTM=bradfitz
R=golang-codereviews, bradfitz
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/73720044

変更の背景

このコミットは、Goランタイムのコードベースの健全性を維持するための定期的なクリーンアップの一環として行われました。ソフトウェア開発において、コードベースが成長するにつれて、過去の機能や実験的なコードの名残として、使用されなくなった変数、定数、関数宣言などが残ることがあります。これらはコンパイルエラーを引き起こさない場合でも、コードの可読性を低下させ、将来の開発者がコードを理解する際の妨げとなる可能性があります。また、未使用のコードが存在することで、誤ってそのコードが使用されたり、意図しない副作用を引き起こしたりするリスクもわずかながら存在します。

この特定のコミットでは、Goのガベージコレクション(GC)に関連するファイルmgc0.cから、もはや使用されていないRootBlockSizeという定数とaddfinrootsという関数宣言が削除されました。これは、GoランタイムのGCメカニズムが進化する過程で、これらの宣言が不要になったことを示唆しています。未使用の宣言を削除することで、コードベースはより簡潔になり、保守が容易になります。

前提知識の解説

Goランタイム

Goランタイムは、Goプログラムが実行される環境を提供する低レベルのシステムです。これには、スケジューラ(ゴルーチンの管理)、メモリ管理(アロケータとガベージコレクタ)、チャネルの実装、システムコールインターフェースなどが含まれます。Goプログラムのパフォーマンスと効率は、このランタイムの設計と実装に大きく依存しています。

ガベージコレクション (GC)

ガベージコレクションは、プログラムが動的に割り当てたメモリのうち、もはや使用されていない(到達不能な)領域を自動的に解放するプロセスです。GoのGCは、並行マーク&スイープ方式を採用しており、プログラムの実行と並行してGCが動作することで、アプリケーションの一時停止(ストップ・ザ・ワールド)時間を最小限に抑えるように設計されています。

mgc0.c

mgc0.cは、Goランタイムのガベージコレクタの初期の実装に関連するC言語のソースファイルです。Goランタイムの多くの部分はGo言語で書かれていますが、パフォーマンスが非常に重要であったり、低レベルのシステムリソースに直接アクセスする必要がある部分(特にGCやスケジューラの一部)はC言語(またはアセンブリ言語)で書かれていました。このファイルは、GoのGCの進化の歴史において重要な役割を果たしました。

enumと定数

C言語においてenum(列挙型)は、関連する定数のセットを定義するために使用されます。RootBlockSizeは、おそらくガベージコレクタがメモリを管理する際に使用するブロックサイズに関連する定数として定義されていたと考えられます。

関数宣言

C言語における関数宣言は、関数の名前、戻り値の型、および引数の型をコンパイラに伝えるものです。これにより、関数が定義される前にその関数を呼び出すことが可能になります。static void addfinroots(void *wbufp, void *v);は、addfinrootsという名前の関数が、2つのvoid*型の引数を取り、何も返さない(void)ことを宣言しています。staticキーワードは、この関数がそのファイル内でのみ可視であることを意味します。

技術的詳細

このコミットは、src/pkg/runtime/mgc0.cファイル内の2つの特定の宣言を削除しています。

  1. RootBlockSize 定数の削除: enumブロック内で定義されていたRootBlockSize = 4*1024,が削除されました。

    @@ -73,7 +73,6 @@ enum {
     	bitShift = sizeof(void*)*8/4,
    
     	WorkbufSize	= 16*1024,
    -	RootBlockSize	= 4*1024,
     	FinBlockSize	= 4*1024,
    
     	handoffThreshold = 4,
    

    この定数は、ガベージコレクタがルート(GCの開始点となるオブジェクト、例えばグローバル変数やスタック上の変数)を処理する際に使用するメモリブロックのサイズを定義していた可能性があります。GoのGCは進化しており、メモリ管理戦略やデータ構造が変更された結果、この特定のブロックサイズがもはや必要とされなくなったか、別の方法で管理されるようになったと考えられます。

  2. addfinroots 関数宣言の削除: static void addfinroots(void *wbufp, void *v);という関数宣言が削除されました。

    @@ -256,7 +255,6 @@ static Workbuf* getfull(Workbuf*);\n static void	putempty(Workbuf*);\n static Workbuf* handoff(Workbuf*);\n static void	gchelperstart(void);\n-static void	addfinroots(void *wbufp, void *v);\n static void	flushallmcaches(void);\n static bool	scanframe(Stkframe *frame, void *wbufp);\n static void	addstackroots(G *gp, Workbuf **wbufp);\n    ```
    `addfinroots`という名前から、この関数はファイナライザ(オブジェクトがGCによって回収される直前に実行される関数)に関連するルートを追加するために使用されていたと推測されます。Goのファイナライザは、C++のデストラクタに似た機能を提供しますが、GCのタイミングに依存するため、その動作はより複雑です。GCの内部実装が変更され、ファイナライザの処理方法やルートの管理方法が更新された結果、この関数が不要になったと考えられます。
    
    

これらの変更は、Goランタイムのガベージコレクタが時間の経過とともに最適化され、より効率的で洗練された設計へと移行していることを示しています。未使用のコードを削除することは、コードベースをスリムに保ち、将来の変更を容易にする上で非常に重要です。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/runtime/mgc0.c
+++ b/src/pkg/runtime/mgc0.c
@@ -73,7 +73,6 @@ enum {
 	bitShift = sizeof(void*)*8/4,

 	WorkbufSize	= 16*1024,
-	RootBlockSize	= 4*1024,
 	FinBlockSize	= 4*1024,

 	handoffThreshold = 4,
@@ -256,7 +255,6 @@ static Workbuf* getfull(Workbuf*);\n static void	putempty(Workbuf*);\n static Workbuf* handoff(Workbuf*);\n static void	gchelperstart(void);\n-static void	addfinroots(void *wbufp, void *v);\n static void	flushallmcaches(void);\n static bool	scanframe(Stkframe *frame, void *wbufp);\n static void	addstackroots(G *gp, Workbuf **wbufp);\

コアとなるコードの解説

上記の差分は、src/pkg/runtime/mgc0.cファイルから2つの宣言が削除されたことを示しています。

  1. - RootBlockSize = 4*1024,: これは、enumブロック内からRootBlockSizeという名前の定数定義が削除されたことを示しています。この定数は、ガベージコレクタの内部でメモリブロックのサイズを定義するために使用されていた可能性があります。削除されたということは、この定数がもはやコードのどこからも参照されていない、つまり不要になったことを意味します。これは、GCのメモリ管理戦略が変更されたか、あるいはこの特定のブロックサイズが他のより汎用的なメカニズムに置き換えられたことを示唆しています。

  2. -static void addfinroots(void *wbufp, void *v);: これは、addfinrootsという名前の静的関数宣言が削除されたことを示しています。staticキーワードは、この関数がmgc0.cファイル内でのみ使用されることを意図していたことを意味します。関数名から、ファイナライザに関連するルート(ガベージコレクタが到達可能性を判断するための開始点)を追加する役割を担っていたと考えられます。この宣言が削除されたということは、この関数がもはや呼び出されていない、つまりファイナライザの処理ロジックが変更され、この関数が不要になったか、あるいはその機能が別の関数に統合されたことを示唆しています。

これらの変更は、Goランタイムのガベージコレクタが継続的に改善され、不要なコードが定期的に削除されることで、コードベースがクリーンで効率的に保たれていることを示しています。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント (特にガベージコレクションに関するセクション)
  • Goランタイムのソースコード (特にsrc/runtimeディレクトリ)
  • Goのガベージコレクションに関する技術ブログや論文 (一般的な知識として)
  • C言語のenumと関数宣言に関する一般的な情報