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[インデックス 18902] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のunicodeパッケージ内のletter_test.goファイルに対するマイナーなクリーンアップを目的としています。具体的には、SimpleFold関数のテストケースから冗長な部分を削除し、関連するコメントを更新しています。

コミット

commit 79b3daa97722c71d73b519b062078b9296a36051
Author: Rui Ueyama <ruiu@google.com>
Date:   Wed Mar 19 10:14:04 2014 -0700

    unicode: minor cleanup
    
    These test cases are redundant because TestSimpleFold tests
    all possible rotations of test data, so no need to add
    rotated strings.
    
    Also updated the comment as it's guaranteed that SimpleFold
    returns values in increasing order.
    
    LGTM=bradfitz
    R=golang-codereviews, bradfitz
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/77730043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/79b3daa97722c71d73b519b062078b9296a36051

元コミット内容

このコミットの元の内容は、unicodeパッケージのテストファイルletter_test.goにおいて、simpleFoldTestsというテストデータセットから冗長なテストケースを削除し、SimpleFold関数の挙動に関するコメントを修正することです。

具体的には、TestSimpleFold関数がテストデータのあらゆる回転パターンを既にテストしているため、simpleFoldTestsスライス内で回転させた文字列を重複して記述する必要がないと判断されました。また、SimpleFold関数が常に増加順に値を返すことが保証されているため、その旨を反映するようにコメントが更新されました。

変更の背景

この変更の背景には、テストコードの効率化と正確性の向上が挙げられます。

  1. 冗長なテストケースの排除: TestSimpleFold関数は、与えられたテストデータに対して、その文字列のあらゆる回転パターンを自動的に生成し、それら全てに対してSimpleFoldのテストを実行するロジックを持っています。このため、simpleFoldTestsスライス内で手動で回転させた文字列(例: "Aa""aA")を記述することは、テストの重複となり、コードの可読性を低下させ、メンテナンスコストを増加させます。このコミットは、このような冗長性を排除し、テストデータセットをより簡潔に保つことを目的としています。

  2. コメントの正確性の向上: SimpleFold関数の内部実装により、その戻り値が常に増加順に並べられることが保証されています。以前のコメントでは、戻り値の順序が不定であるかのような記述がありましたが、これは関数の実際の挙動と一致していませんでした。このコミットは、コメントを更新することで、関数の正確な振る舞いを開発者に伝え、誤解を防ぐことを意図しています。

これらの変更は、Go言語の標準ライブラリの品質を維持し、開発者がコードをより容易に理解し、貢献できるようにするための継続的な取り組みの一環です。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下のGo言語およびUnicodeに関する基本的な知識が必要です。

  1. Go言語のunicodeパッケージ:

    • Go言語の標準ライブラリの一部であり、Unicode文字のプロパティ(カテゴリ、スクリプト、大文字・小文字変換など)を扱うための機能を提供します。
    • unicode.SimpleFold関数は、このパッケージ内で定義されており、Unicodeの「Simple Case Folding」ルールに従って、与えられたルーン(Unicodeコードポイント)の等価なルーンを返します。これは、大文字・小文字を区別しない比較(case-insensitive comparison)を行う際などに使用されます。
  2. Unicode Case Folding (ケースフォールディング):

    • Unicodeには、大文字・小文字の変換(大文字化、小文字化)とは別に、「ケースフォールディング」という概念があります。これは、文字列を大文字・小文字を区別せずに比較するために、すべての文字を共通の「折りたたまれた」形式に変換するプロセスです。
    • 「Simple Case Folding」は、1対1の変換のみを扱う比較的単純なケースフォールディングです。例えば、'A'と'a'は同じ「折りたたまれた」形式になります。
    • SimpleFold(r rune) rune関数は、rの次の等価なルーンを返します。もしrがそのケースフォールディングシーケンスの最後のルーンであれば、シーケンスの最初のルーンにラップアラウンド(循環)します。
  3. Go言語のテストフレームワーク:

    • Go言語は、標準でtestingパッケージを提供しており、これを使ってユニットテストやベンチマークテストを記述します。
    • テストファイルは通常、テスト対象のソースファイルと同じディレクトリに配置され、ファイル名の末尾に_test.goが付きます。
    • テスト関数はTestで始まり、*testing.T型の引数を取ります。
    • テストの実行はgo testコマンドで行われます。
  4. ルーン (Rune):

    • Go言語では、Unicodeコードポイントを表現するためにrune型(int32のエイリアス)を使用します。これは、UTF-8でエンコードされた文字列内の個々の文字を扱う際に重要です。

これらの概念を理解することで、コミットがunicode.SimpleFold関数のテストとドキュメンテーションの改善にどのように貢献しているかを深く把握できます。

技術的詳細

このコミットの技術的詳細は、unicodeパッケージのSimpleFold関数のテストロジックと、そのテストデータセットの最適化に焦点を当てています。

SimpleFold関数は、Unicodeのケースフォールディング規則に従って、与えられたルーンの次の等価なルーンを返します。この関数は、特定のルーンから始まり、そのケースフォールディングシーケンス内のルーンを順番にたどり、最後にシーケンスの最初のルーンに戻るという循環的な性質を持っています。

コミットの変更点であるletter_test.go内のsimpleFoldTestsスライスは、SimpleFold関数の動作を検証するための入力データを提供します。元のコードでは、例えば"Aa"というテストケースがあるにもかかわらず、その回転バージョンである"aA"も明示的に記述されていました。これは、TestSimpleFold関数が内部的に以下のようなロジックを持っているため、冗長でした。

TestSimpleFold関数は、simpleFoldTests内の各文字列(ルーンのシーケンス)に対して、その文字列のすべての可能な回転(シフト)パターンを生成します。例えば、"KkK"という文字列が与えられた場合、TestSimpleFoldは自動的に"kKK""KKk"といった回転パターンも生成し、それぞれに対してSimpleFoldのテストを実行します。これにより、テストデータセットに明示的に回転パターンを含める必要がなくなります。

コミットは、このTestSimpleFoldの挙動を認識し、simpleFoldTestsから手動で追加された冗長な回転パターンを削除しました。これにより、テストデータセットがより簡潔になり、テストコードの意図が明確になります。

また、simpleFoldTestsスライスの直前にあるコメントも更新されました。以前のコメントは、「SimpleFoldは戻り値のスライスを任意の順序で並べることができるが、実際には入力から始まりMaxRuneから0にラップアラウンドする増加順に並べることがわかっている」というような内容でした。しかし、SimpleFold関数の実装は、常に増加順に値を返すことを保証しています。新しいコメントは、この保証された挙動を正確に反映し、「SimpleFold(x)xより大きい次の等価なルーンを返すか、より小さい値にラップアラウンドする」と記述しています。これは、関数の動作に関する誤解を防ぎ、ドキュメンテーションの正確性を向上させます。

この変更は、テストの網羅性を損なうことなく、コードベースのクリーンアップとドキュメンテーションの改善に貢献しています。

コアとなるコードの変更箇所

変更はsrc/pkg/unicode/letter_test.goファイルに集中しています。

--- a/src/pkg/unicode/letter_test.go
+++ b/src/pkg/unicode/letter_test.go
@@ -387,32 +387,20 @@ func TestTurkishCase(t *testing.T) {
 }
 
 var simpleFoldTests = []string{
-	// SimpleFold could order its returned slices in any order it wants,
-	// but we know it orders them in increasing order starting at in
-	// and looping around from MaxRune to 0.
+	// SimpleFold(x) returns the next equivalent rune > x or wraps
+	// around to smaller values.
 
 	// Easy cases.
 	"Aa",
--	"aA",
 	"δΔ",
--	"Δδ",
 
 	// ASCII special cases.
 	"KkK",
--	"kKK",
--	"KKk",
 	"Ssſ",
--	"sſS",
--	"ſSs",
 
 	// Non-ASCII special cases.
 	"ρϱΡ",
--	"ϱΡρ",
--	"Ρρϱ",
 	"ͅΙιι",
--	"Ιιιͅ",
--	"ιιͅΙ",
--	"ιͅΙι",
 
 	// Extra special cases: has lower/upper but no case fold.
 	"İ",

コアとなるコードの解説

このコミットにおけるコアとなるコードの変更は、simpleFoldTestsという文字列スライスから複数の行が削除されたこと、およびそのスライスの直前にあるコメントが変更されたことです。

  1. コメントの変更:

    • 変更前: // SimpleFold could order its returned slices in any order it wants, // but we know it orders them in increasing order starting at in // and looping around from MaxRune to 0.
    • 変更後: // SimpleFold(x) returns the next equivalent rune > x or wraps // around to smaller values. この変更は、SimpleFold関数の戻り値の順序に関する記述をより正確にしました。以前のコメントは、順序が不定である可能性を示唆しつつも、実際には増加順であることを補足していましたが、新しいコメントは、関数が常に増加順に次の等価なルーンを返すか、循環してより小さい値に戻るという、保証された挙動を直接的に説明しています。これにより、関数の動作に関する誤解が解消されます。
  2. 冗長なテストケースの削除:

    • "aA" (元の"Aa"の回転)
    • "Δδ" (元の"δΔ"の回転)
    • "kKK", "KKk" (元の"KkK"の回転)
    • "sſS", "ſSs" (元の"Ssſ"の回転)
    • "ϱΡρ", "Ρρϱ" (元の"ρϱΡ"の回転)
    • "Ιιιͅ", "ιιͅΙ", "ιͅΙι" (元の"ͅΙιι"の回転) これらの行は、TestSimpleFold関数が内部的にテストデータの回転を処理するため、冗長であると判断され削除されました。TestSimpleFoldは、simpleFoldTests内の各エントリに対して、その文字列のすべての可能な循環シフトを生成し、それらすべてに対してSimpleFoldのテストを実行します。したがって、これらの明示的な回転パターンは不要であり、テストデータセットを不必要に長くしていました。削除することで、テストコードの簡潔さと効率が向上します。

このコミットは、機能的な変更ではなく、テストコードの品質向上とドキュメンテーションの正確性向上に貢献するものです。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント
  • Unicode Consortiumのウェブサイト
  • GitHubのgolang/goリポジトリのコミット履歴
  • Go言語のテストに関する一般的な知識
  • go testコマンドの動作に関する知識