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[インデックス 18909] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のテストスイートにおける特定のテストファイル test/fixedbugs/bug385_32.go のビルド設定を更新し、amd64p32 アーキテクチャでもこのテストが実行されるように変更するものです。これにより、amd64p32 環境における潜在的なバグの検出と修正の網羅性を高めています。

コミット

commit b4e41b4680423b14d9558c9950dc22f78524d9f4
Author: Rémy Oudompheng <oudomphe@phare.normalesup.org>
Date:   Thu Mar 20 07:28:24 2014 +0100

    test: enable bug385_32 test on amd64p32.
    
    LGTM=dave
    R=dave, rsc
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/78110043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/b4e41b4680423b14d9558c9950dc22f78524d9f4

元コミット内容

このコミットの元々の内容は、test/fixedbugs/bug385_32.go ファイルのビルド制約(build tag)を修正することです。具体的には、ファイルの先頭にあるビルドタグの行が、// +build 386 arm から // +build 386 amd64p32 arm へと変更されています。

--- a/test/fixedbugs/bug385_32.go
+++ b/test/fixedbugs/bug385_32.go
@@ -1,4 +1,4 @@
-// +build 386 arm
+// +build 386 amd64p32 arm
 // errorcheck
 
 // Copyright 2011 The Go Authors.  All rights reserved.

この変更により、bug385_32.go テストは、既存の 386 および arm アーキテクチャに加えて、新たに amd64p32 アーキテクチャでもビルドおよび実行されるようになります。

変更の背景

この変更の背景には、Go言語のテストカバレッジを拡大し、特定のアーキテクチャ(この場合は amd64p32)における潜在的なバグや回帰を早期に検出するという目的があります。

amd64p32 は、64ビットのAMD64(x86-64)命令セットを使用しながら、ポインタや int/uint 型のサイズを32ビットに制限した特殊なアーキテクチャです。これは主にGoogle Native Client (NaCl) 環境向けに設計されており、メモリ消費を抑えることを目的としていました。Go言語のランタイムやコンパイラは、様々なアーキテクチャに対応する必要があり、それぞれの環境でコードが正しく動作することを保証するために、広範なテストが不可欠です。

bug385_32 というテストは、おそらく go/types パッケージに関連する特定のバグ(型チェックの誤りやパニックなど)を修正するために作成されたものです。このテストを amd64p32 アーキテクチャでも実行可能にすることで、この特殊な環境下で同様のバグが再発しないことを確認し、Go言語全体の堅牢性を向上させることが狙いです。

前提知識の解説

Go言語のビルドタグ(Build Tags / Build Constraints)

Go言語には、ソースファイルの先頭に特別なコメントを記述することで、そのファイルを特定の条件に基づいてビルドに含めるか除外するかを制御する「ビルドタグ」(またはビルド制約)という機能があります。これは条件付きコンパイルの一種であり、プラットフォーム固有のコード、機能の有効/無効化、依存関係の制御などに利用されます。

  • 記述方法: ビルドタグは、Goソースファイルの先頭(package 宣言の前)に // +build または //go:build の形式で記述します。Go 1.17以降では //go:build 構文が推奨されていますが、このコミットが作成された時点では // +build が一般的でした。
  • 論理演算:
    • スペース区切り (// +build tag1 tag2): OR条件。tag1 または tag2 のいずれかが存在すればファイルが含まれます。
    • カンマ区切り (// +build tag1,tag2): AND条件。tag1tag2 の両方が存在する場合にのみファイルが含まれます。
    • ! プレフィックス (// +build !tag): NOT条件。tag が存在しない場合にファイルが含まれます。
  • 使用例:
    • // +build linux: Linux環境でのみビルド。
    • // +build windows,amd64: WindowsかつAMD64アーキテクチャでのみビルド。
    • // +build !darwin: macOS以外の環境でビルド。

このコミットでは、既存の // +build 386 armamd64p32 を追加することで、OR条件でこれらのアーキテクチャのいずれかに合致する場合にテストがビルドされるようにしています。

amd64p32 アーキテクチャ

amd64p32 は、Go言語における特定のターゲットアーキテクチャの一つです。

  • 特徴:
    • 命令セット: 64ビットのx86-64(AMD64)命令セットを使用します。これにより、64ビットCPUの持つレジスタの多さや命令の豊富さを利用できます。
    • ポインタサイズ: ポインタのサイズは32ビットです。通常の amd64 が64ビットポインタを使用するのに対し、amd64p32 は32ビットポインタを使用します。
    • 整数型サイズ: int および uint 型も32ビットです。
  • 主な目的: 主にGoogle Native Client (NaCl) 環境での使用を想定していました。NaClは、ウェブブラウザ内でネイティブコードを安全に実行するための技術であり、メモリ使用量を削減することが重要でした。32ビットポインタを使用することで、プログラムのメモリフットプリントを小さくし、ヒープサイズを削減する効果がありました。
  • 現在の状況: Go 1.14以降、amd64p32 アーキテクチャはGoツールチェインから公式にサポートが終了しています。これは、NaClのサポート終了と時期を同じくしています。

bug385_32 テスト

bug385_32 は、Go言語の標準ライブラリやツールチェインにおける特定のバグを修正し、その回帰を防ぐために作成されたテストケースです。ファイル名から推測されるように、このテストはバグ番号 385 に関連しており、32 は32ビット環境や32ビットのデータ型に関連する問題を示唆している可能性があります。

Goのテストスイートには、test/fixedbugs ディレクトリ以下に、過去に発見され修正されたバグの回帰テストが多数含まれています。これらのテストは、将来の変更によって同じバグが再発しないことを保証するために非常に重要です。

具体的な bug385_32 の内容は、go/types パッケージ(Goプログラムの静的型チェックを担当する重要なコンポーネント)における型チェックの誤りや、特定のコード構造が原因で発生するパニックなどに関連している可能性が高いです。

技術的詳細

このコミットの技術的な変更は非常にシンプルですが、その背景にある意味は重要です。

Goコンパイラは、ソースファイルをビルドする際に、ファイルの先頭にあるビルドタグを読み取り、現在のビルド環境(OS、アーキテクチャなど)と照合します。もしタグの条件が満たされれば、そのファイルはコンパイル対象に含まれます。

元の test/fixedbugs/bug385_32.go ファイルは、// +build 386 arm というタグを持っていました。これは、このテストが 386(32ビットx86)または arm アーキテクチャのいずれかでビルドされることを意味します。

今回の変更で、このタグが // +build 386 amd64p32 arm となりました。これにより、amd64p32 アーキテクチャもこのテストの対象に追加されました。これは、amd64p32 環境においても bug385_32 で修正された問題が再現しないことを確認するための措置です。

amd64p32 は64ビット命令セットを使用しますが、ポインタや int/uint が32ビットであるため、メモリレイアウトやアライメント、ポインタ演算の挙動が通常の amd64 とは異なります。このような違いが、特定のバグ(特に型システムやメモリ管理に関連するもの)を顕在化させる可能性があります。したがって、このアーキテクチャで既存のバグ修正テストを実行することは、Goランタイムのクロスアーキテクチャ互換性と堅牢性を保証する上で重要なステップとなります。

コアとなるコードの変更箇所

変更は test/fixedbugs/bug385_32.go ファイルの1行のみです。

--- a/test/fixedbugs/bug385_32.go
+++ b/test/fixedbugs/bug385_32.go
@@ -1,4 +1,4 @@
-// +build 386 arm
+// +build 386 amd64p32 arm
 // errorcheck
 
 // Copyright 2011 The Go Authors.  All rights reserved.

具体的には、ファイルの1行目のビルドタグが変更されています。

コアとなるコードの解説

変更された行は、Go言語のビルドシステムに対する指示です。

  • 変更前: // +build 386 arm
    • この行は、Goコンパイラに対して、このファイル(bug385_32.go)を GOARCH=386 または GOARCH=arm の場合にのみビルドに含めるように指示していました。
  • 変更後: // +build 386 amd64p32 arm
    • この行は、Goコンパイラに対して、このファイルを GOARCH=386GOARCH=amd64p32、または GOARCH=arm のいずれかの場合にビルドに含めるように指示しています。

この追加により、amd64p32 環境でGoのテストスイートが実行される際に、bug385_32 テストもコンパイルされ、実行されるようになります。これにより、amd64p32 特有の環境でこのバグが再発しないことを確認できます。

errorcheck というコメントは、このテストがコンパイルエラーを期待するテストであることを示しています。つまり、特定のコードが意図通りにエラーを発生させるか、あるいはエラーを発生させないかを検証するテストです。bug385_32go/types パッケージのバグに関連していることを考えると、これは型チェックの挙動を検証するテストである可能性が高いです。

関連リンク

  • Go言語のビルド制約に関する公式ドキュメント(Go 1.17以降の //go:build 構文について):https://go.dev/cmd/go/#hdr-Build_constraints
  • Go言語の amd64p32 アーキテクチャに関する議論(Go 1.14での削除に関する情報を含む):https://github.com/golang/go/issues/35753 (これは amd64p32 の削除に関するissueであり、直接このコミットの背景ではないが、関連情報として有用)
  • Go言語のコードレビューシステム(Gerrit)におけるこのコミットの変更リスト(CL):https://golang.org/cl/78110043

参考にした情報源リンク