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[インデックス 18923] ファイルの概要

コミット

このコミットは、Go言語の標準ライブラリ unicode/utf16 パッケージ内の DecodeRune 関数から不要な型変換を削除するものです。具体的には、rune(r1)rune(r2) という明示的な rune 型への変換が冗長であったため、これらを削除し、コードの簡潔性と効率性を向上させています。

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/160649ff9adaffddf91c45da2767f3fdc99f6d73

元コミット内容

commit 160649ff9adaffddf91c45da2767f3fdc99f6d73
Author: Rui Ueyama <ruiu@google.com>
Date:   Sun Mar 23 15:07:26 2014 -0700

    unicode/utf16: remove unnecessary type conversions
    
    LGTM=iant
    R=golang-codereviews, iant
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/79080044
---
 src/pkg/unicode/utf16/utf16.go | 2 +-|
 1 file changed, 1 insertion(+), 1 deletion(-)|

diff --git a/src/pkg/unicode/utf16/utf16.go b/src/pkg/unicode/utf16/utf16.go
index 903e4012aa..c0e47c535a 100644
--- a/src/pkg/unicode/utf16/utf16.go
+++ b/src/pkg/unicode/utf16/utf16.go
@@ -36,7 +36,7 @@ func IsSurrogate(r rune) bool {
 // the Unicode replacement code point U+FFFD.
 func DecodeRune(r1, r2 rune) bool {
  if surr1 <= r1 && r1 < surr2 && surr2 <= r2 && r2 < surr3 {
-		return (rune(r1)-surr1)<<10 | (rune(r2) - surr2) + 0x10000
+		return (r1-surr1)<<10 | (r2 - surr2) + 0x10000
  }
  return replacementChar
 }

変更の背景

この変更の背景には、Go言語のコードベースにおける一般的な品質向上と最適化の取り組みがあります。Go言語では、型システムが厳密でありながらも、開発者が冗長な記述を避けることができるように設計されています。このコミットでは、DecodeRune 関数の引数 r1r2 が既に rune 型であるにもかかわらず、関数内部で再度 rune() への型変換が行われていたという、不要なコードが発見されました。

このような冗長な型変換は、コードの可読性をわずかに低下させるだけでなく、コンパイラが余分な処理を行う可能性(ごくわずかではあるが)も排除できません。Goのコンパイラは非常に効率的ですが、それでも不要な操作は取り除くのがベストプラクティスです。このコミットは、このような小さな最適化とコードのクリーンアップを通じて、Go標準ライブラリ全体の品質と保守性を高めることを目的としています。

前提知識の解説

Go言語における rune

Go言語において、rune は組み込みの型であり、Unicodeのコードポイントを表すために使用されます。これは int32 のエイリアスであり、UTF-8でエンコードされた文字列を扱う際に特に重要になります。Goの文字列はUTF-8バイトのシーケンスとして扱われますが、個々のUnicode文字(コードポイント)を操作する際には rune 型が用いられます。例えば、for range ループで文字列をイテレートすると、各要素は rune 型として取得されます。

UTF-16エンコーディング

UTF-16は、Unicode文字をエンコードするための可変長文字エンコーディングです。多くの文字は16ビット(2バイト)で表現されますが、U+FFFFを超えるような高位のUnicodeコードポイント(サロゲートペアが必要な文字)は、2つの16ビット値(合計4バイト)で表現されます。この2つの16ビット値の組を「サロゲートペア」と呼びます。

  • サロゲートペア (Surrogate Pair): Unicodeの基本多言語面(BMP、Basic Multilingual Plane、U+0000からU+FFFFまで)に含まれない文字(例えば、絵文字や歴史的な文字など)を表現するために使用されます。サロゲートペアは、上位サロゲート(High Surrogate、U+D800からU+DBFF)と下位サロゲート(Low Surrogate、U+DC00からU+DFFF)の2つのコードユニットで構成されます。

unicode/utf16 パッケージ

Go言語の unicode/utf16 パッケージは、UTF-16エンコーディングされたテキストを扱うためのユーティリティ関数を提供します。このパッケージには、UTF-16コードユニットから rune へのデコードや、rune からUTF-16コードユニットへのエンコードを行う関数が含まれています。

DecodeRune 関数

DecodeRune 関数は、UTF-16のサロゲートペアを構成する2つの runer1r2)を受け取り、それらが表す単一のUnicodeコードポイント(rune)を返します。もし入力が有効なサロゲートペアでなければ、Unicodeの置換文字(U+FFFD)を返します。

技術的詳細

このコミットが対象としている DecodeRune 関数は、UTF-16のサロゲートペアをデコードするロジックを含んでいます。サロゲートペアは、上位サロゲートと下位サロゲートの2つの16ビット値から、元のUnicodeコードポイントを再構築します。その計算式は以下のようになります。

Unicodeコードポイント = (上位サロゲート - 0xD800) * 0x400 + (下位サロゲート - 0xDC00) + 0x10000

Go言語の DecodeRune 関数では、この計算を (r1-surr1)<<10 | (r2 - surr2) + 0x10000 という形で実装しています。ここで、r1 は上位サロゲート、r2 は下位サロゲートに相当します。surr10xD800surr20xDC00 を表す定数です。

コミット前のコードでは、r1r2 が既に rune 型(つまり int32)であるにもかかわらず、rune(r1)rune(r2) のように明示的に rune 型への変換が行われていました。Go言語では、変数が既に目的の型である場合、このような明示的な型変換は不要であり、コンパイラによって最適化されるか、あるいは単に冗長な記述として扱われます。このコミットは、この冗長な型変換を削除することで、コードをよりクリーンで、Goのイディオムに沿ったものにしています。

コアとなるコードの変更箇所

変更は src/pkg/unicode/utf16/utf16.go ファイルの DecodeRune 関数内の一行です。

--- a/src/pkg/unicode/utf16/utf16.go
+++ b/src/pkg/unicode/utf16/utf16.go
@@ -36,7 +36,7 @@ func IsSurrogate(r rune) bool {
 // the Unicode replacement code point U+FFFD.
 func DecodeRune(r1, r2 rune) rune {
  if surr1 <= r1 && r1 < surr2 && surr2 <= r2 && r2 < surr3 {
-		return (rune(r1)-surr1)<<10 | (rune(r2) - surr2) + 0x10000
+		return (r1-surr1)<<10 | (r2 - surr2) + 0x10000
  }
  return replacementChar
 }

コアとなるコードの解説

変更された行は、UTF-16のサロゲートペアから単一のUnicodeコードポイントを計算する部分です。

  • 変更前: return (rune(r1)-surr1)<<10 | (rune(r2) - surr2) + 0x10000
  • 変更後: return (r1-surr1)<<10 | (r2 - surr2) + 0x10000

この変更は、r1r2 が既に rune 型(int32 のエイリアス)として関数の引数で宣言されているため、rune(r1)rune(r2) といった明示的な型変換が不要であることを示しています。Go言語では、同じ型への変換はコンパイラによって無視されるか、あるいは警告の対象となる場合があります。この修正は、コードの冗長性を排除し、より簡潔で読みやすいコードにすることを目的としています。機能的な変更は一切なく、プログラムの動作に影響はありません。これは純粋なコードのクリーンアップと、Goの型システムに対するより正確な理解に基づいた改善です。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント
  • Unicode標準
  • Go言語のソースコードリポジトリ (GitHub)
  • Go言語のコードレビューシステム (Gerrit) - コミットメッセージに記載されている https://golang.org/cl/79080044 は、この変更のGerritレビューページへのリンクです。