[インデックス 18944] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ライブラリnet/http
パッケージ内のテストTestTLSServerClosesConnection
がWindows環境で不安定(flaky)であったため、一時的に無効化する変更です。これにより、Windows上でのCI(継続的インテグレーション)パイプラインにおけるテストの失敗を回避し、他の潜在的な問題の発見を妨げないようにすることが目的です。
コミット
- コミットハッシュ:
aa2d4dee60131b4c05d90efbb9a2bc414aea8240
- Author: Brad Fitzpatrick bradfitz@golang.org
- Date: Tue Mar 25 15:19:58 2014 -0700
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/aa2d4dee60131b4c05d90efbb9a2bc414aea8240
元コミット内容
net/http: disable recently-introduced flaky test on Windows
Disable it until it's debugged so it doesn't hide other real
problems on Windows. The test was known to be unreliable
anyway (which is why it only needed 1 of 20 runs to pass), but
apparently it never passes on Windows. Figure out why later.
Update #7634
LGTM=alex.brainman
R=adg, alex.brainman
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/80110043
変更の背景
このコミットの背景には、Go言語の標準ライブラリnet/http
パッケージに含まれるTestTLSServerClosesConnection
というテストが、Windows環境で継続的に失敗するという問題がありました。このテストは、元々golang.org/issue/3514
の再現を試みるために導入されたもので、TLSサーバーが接続を予期せず閉じるシナリオを検証することを目的としていました。
コミットメッセージによると、このテストは元々「20回中1回パスすればよい」という条件で導入されるほど、その信頼性に疑問符がついていました。しかし、Windows環境ではそれが全くパスしない状況に陥り、CIシステム上で常に失敗する原因となっていました。
テストが不安定であると、CIパイプラインが常に赤(失敗)になり、開発者が他の本当のバグや回帰を見落とすリスクが高まります。このような状況は開発効率を著しく低下させるため、一時的な措置として、問題のテストをWindows環境でのみスキップする決定が下されました。これは、テストの根本原因を特定し修正するまでの間、CIの健全性を保つための実用的なアプローチです。関連するIssueはgolang.org/issue/7634
として追跡されています。
前提知識の解説
1. Go言語のテストフレームワーク (testing
パッケージ)
Go言語には、標準ライブラリとしてtesting
パッケージが提供されており、ユニットテストやベンチマークテストを簡単に記述できます。テスト関数はTest
で始まり、*testing.T
型の引数を取ります。
*testing.T
: テストの状態を管理し、テストの失敗を報告したり、テストをスキップしたりするためのメソッドを提供します。t.Skip(args ...interface{})
: このメソッドが呼び出されると、現在のテストはスキップされ、テスト結果には「SKIP」と表示されます。これは、特定の環境でのみ発生する問題や、まだ実装されていない機能のテストなど、特定の条件下でテストを実行したくない場合に非常に便利です。
2. runtime.GOOS
runtime
パッケージは、Goプログラムが実行されているシステムに関する情報を提供します。
runtime.GOOS
: これは文字列定数であり、Goプログラムがコンパイルまたは実行されているオペレーティングシステム(OS)の名前を表します。例えば、Linuxでは"linux"
、macOSでは"darwin"
、Windowsでは"windows"
となります。この定数を使用することで、OSに依存するコードパスを条件分岐させることができます。クロスプラットフォーム開発において、特定のOSに特有の挙動を扱う際に不可欠な要素です。
3. net/http
パッケージとTLS
net/http
パッケージは、HTTPクライアントとサーバーの実装を提供します。ウェブアプリケーションやAPIの構築において中心的な役割を果たします。
- TLS (Transport Layer Security): インターネット上での通信を暗号化し、認証を行うためのプロトコルです。HTTPS通信の基盤となります。
net/http
パッケージは、TLSを介した安全なHTTP通信(HTTPS)をサポートしています。 - TLSハンドシェイク: クライアントとサーバーが安全な通信チャネルを確立するために行う一連のネゴシエーションプロセスです。このテストは、TLSハンドシェイク後の接続の振る舞い、特にサーバーが予期せず接続を閉じるシナリオを検証していました。
4. 不安定なテスト (Flaky Test)
「Flaky test」とは、同じコードに対して、同じ環境で実行しても、成功したり失敗したりするテストのことです。その失敗は、コードのバグではなく、環境の不安定さ、タイミングの問題、リソースの競合、外部サービスへの依存など、非決定的な要因によって引き起こされることが多いです。
- 問題点: 不安定なテストは、CIパイプラインの信頼性を損ない、開発者が本当のバグと誤った失敗を区別することを困難にします。これにより、開発者はテスト結果を信用しなくなり、重要な問題を見落とす可能性があります。
技術的詳細
このコミットの技術的詳細は、Go言語のクロスプラットフォーム対応とテストの信頼性管理に焦点を当てています。
変更はsrc/pkg/net/http/transport_test.go
ファイル内のTestTLSServerClosesConnection
関数に対して行われました。具体的には、テスト関数の冒頭に以下の条件分岐が追加されました。
if runtime.GOOS == "windows" {
t.Skip("skipping flaky test on Windows; golang.org/issue/7634")
}
このコードスニペットは、Goプログラムが実行されているOSがWindowsであるかどうかをruntime.GOOS
の値でチェックします。もしWindowsであれば、t.Skip()
メソッドが呼び出され、テストは直ちにスキップされます。スキップの理由として、テストがWindows上で不安定であること、および関連するIssue番号golang.org/issue/7634
がメッセージとして渡されています。
このアプローチは、テストの根本的な問題を解決するものではありませんが、CIシステムにおける継続的な失敗を一時的に停止させるための迅速かつ効果的な手段です。テストが不安定である場合、そのテストがCIパイプラインをブロックし、他の開発者が自身の変更をマージするのを妨げる可能性があります。このような状況では、一時的にテストをスキップし、後でその根本原因をデバッグして修正する方が、開発フローを円滑に進める上で合理的と判断されます。
この変更は、Go言語が多様なOSで動作することを前提としているため、特定のOSでのみ発生する問題に対して、そのOSに特化した対応を行う必要があることを示しています。また、テストの品質とCIの健全性を維持することの重要性も強調しています。
コアとなるコードの変更箇所
diff --git a/src/pkg/net/http/transport_test.go b/src/pkg/net/http/transport_test.go
index a7b461afeb..0eb6e63b36 100644
--- a/src/pkg/net/http/transport_test.go
+++ b/src/pkg/net/http/transport_test.go
@@ -1840,6 +1840,9 @@ func TestTransportTLSHandshakeTimeout(t *testing.T) {
// Trying to repro golang.org/issue/3514
func TestTLSServerClosesConnection(t *testing.T) {
defer afterTest(t)
+ if runtime.GOOS == "windows" {
+ t.Skip("skipping flaky test on Windows; golang.org/issue/7634")
+ }
closedc := make(chan bool, 1)
ts := httptest.NewTLSServer(HandlerFunc(func(w ResponseWriter, r *Request) {
if strings.Contains(r.URL.Path, "/keep-alive-then-die") {
コアとなるコードの解説
変更はsrc/pkg/net/http/transport_test.go
ファイル内のTestTLSServerClosesConnection
関数に対して行われました。
-
defer afterTest(t)
: これはテスト関数の慣用的なパターンで、テスト終了後にクリーンアップ処理(例えば、リソースの解放やテスト環境のリセット)を行うためのものです。defer
キーワードにより、この関数呼び出しはTestTLSServerClosesConnection
がリターンする直前に実行されます。 -
if runtime.GOOS == "windows" { ... }
:runtime.GOOS
は、Goプログラムが実行されているオペレーティングシステムの名前を文字列で返します。この場合、その値が"windows"
(つまり、テストがWindows環境で実行されている)であるかをチェックしています。- この条件が真(Windows上で実行されている)の場合、ブロック内のコードが実行されます。
-
t.Skip("skipping flaky test on Windows; golang.org/issue/7634")
:t
は、現在のテストの状態と結果を管理する*testing.T
型のインスタンスです。t.Skip()
メソッドは、このテストをスキップするようにGoのテストランナーに指示します。テストは実行されず、テスト結果には「SKIP」として記録されます。- 引数として渡されている文字列
"skipping flaky test on Windows; golang.org/issue/7634"
は、テストがスキップされた理由を説明するメッセージです。これにより、テストレポートを見た人がなぜこのテストが実行されなかったのかを理解できます。また、関連するGoのIssue番号golang.org/issue/7634
が明記されており、詳細な背景情報を参照できるようになっています。
この変更により、TestTLSServerClosesConnection
テストはWindows環境では実行されなくなり、CIパイプラインの安定性が向上します。これは、不安定なテストがCIを妨げるのを防ぐための一般的なプラクティスです。
関連リンク
- GitHubコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/aa2d4dee60131b4c05d90efbb9a2bc414aea8240
- Go Issue 7634 (net/http: TestStressSurpriseServerCloses is flaky): https://github.com/golang/go/issues/7634
- Go Issue 3514 (net/http: Transport doesn't close idle connections after TLS handshake timeout): https://github.com/golang/go/issues/3514 (このテストが再現を試みていた元の問題)
- Go Code Review 80110043: https://go-review.googlesource.com/c/go/+/80110043
参考にした情報源リンク
- Go言語公式ドキュメント:
testing
パッケージ (https://pkg.go.dev/testing) - Go言語公式ドキュメント:
runtime
パッケージ (https://pkg.go.dev/runtime) - Go言語公式ドキュメント:
net/http
パッケージ (https://pkg.go.dev/net/http) - GitHub Issues: golang/go repository (https://github.com/golang/go/issues)
- Web検索結果:
golang.org/issue/7634
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- Commit details
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- Original commit message
- Background of the change
- Explanation of prerequisite knowledge (Go testing,
runtime.GOOS
,net/http
, TLS, flaky tests) - Technical details of the change
- Core code changes (diff)
- Explanation of the core code
- Related links (GitHub, Go issues, Go Code Review)
- References used (Go documentation, GitHub issues, web search)
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