[インデックス 1896] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ライブラリの一部であるunicode
パッケージのテストファイルsrc/lib/unicode/decimaldigit_test.go
に対する変更です。このファイルは、Unicodeの10進数字(decimal digits)を識別する機能が正しく動作するかを検証するためのテストコードを含んでいます。具体的には、unicode
パッケージが提供するIsDecimalDigit
関数などの挙動をテストしています。
コミット
- コミットハッシュ:
8e39472e3b0bc001caea29566dde9533d22517ee
- 作者: Rob Pike r@golang.org
- コミット日時: 2009年3月26日 木曜日 22:04:34 -0700
- 変更ファイル:
src/lib/unicode/decimaldigit_test.go
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/8e39472e3b0bc001caea29566dde9533d22517ee
元コミット内容
rename redefined symbols
R=iant
DELTA=4 (0 added, 0 deleted, 4 changed)
OCL=26802
CL=26811
変更の背景
このコミットの背景には、テストファイル内で定義されていた変数名が、Go言語のunicode
パッケージ内の他のシンボルと名前が衝突する可能性があった、あるいはそのテスト専用の性質をより明確にする必要があったという事情が考えられます。
Go言語では、パッケージ内で定義されたシンボル(変数、関数、型など)は、そのパッケージ内でのみ有効な「非公開(unexported)」なものと、他のパッケージから参照可能な「公開(exported)」なものがあります。非公開シンボルは小文字で始まり、公開シンボルは大文字で始まります。
decimaldigit_test.go
ファイル内でdecimal
やletter
という名前の変数が定義されていましたが、これらはunicode
パッケージ自体が提供する可能性のある、あるいは将来的に提供する可能性のある公開シンボル(例: unicode.Decimal
やunicode.Letter
のような定数や関数)と名前が重複し、混乱を招く可能性がありました。
このような名前の衝突や曖昧さを避けるため、テストファイル内で使用されるこれらの変数をtestDecimal
およびtestLetter
という名前に変更することで、それらがテスト専用のデータであることを明確にし、コードの可読性と保守性を向上させる目的があったと推測されます。これは、特にGo言語の初期段階において、ライブラリの設計原則や命名規則が確立されていく過程で発生した調整の一つと考えられます。
前提知識の解説
Go言語のテストの慣習
Go言語では、テストコードは通常、テスト対象のソースファイルと同じディレクトリに配置され、ファイル名の末尾に_test.go
を付けます(例: decimaldigit.go
に対するdecimaldigit_test.go
)。テスト関数はTest
で始まり、*testing.T
型の引数を取ります。これにより、go test
コマンドを実行した際に自動的にテストが発見され、実行されます。
Go言語における変数スコープと名前解決
Go言語では、変数のスコープはブロック({}
で囲まれた範囲)によって決まります。パッケージレベルで宣言された変数は、そのパッケージ全体でアクセス可能です。また、Goの命名規則では、小文字で始まる識別子はパッケージ内で非公開(private)であり、大文字で始まる識別子は公開(public)となります。
このコミットで変更されたdecimal
とletter
は、テストファイル内で定義された非公開変数でした。しかし、たとえ非公開であっても、その名前が標準ライブラリの他の部分で使われている、あるいは使われる可能性のある一般的な用語と重複すると、開発者がコードを読んだ際に混乱を招くことがあります。
unicode
パッケージの役割
Go言語の標準ライブラリunicode
パッケージは、Unicodeの文字プロパティに関する機能を提供します。これには、特定の文字が数字であるか、文字であるか、句読点であるかなどを判定する関数(例: unicode.IsDigit
, unicode.IsLetter
)や、文字のカテゴリに関する定数などが含まれます。decimaldigit_test.go
は、これらの機能がUnicode標準に準拠して正しく動作するかを検証するためのテストです。
技術的詳細
このコミットは、src/lib/unicode/decimaldigit_test.go
ファイル内の2つのグローバル変数(テストファイル内でのみ使用される)の名前を変更しています。
decimal
という名前の[]int
型スライスがtestDecimal
にリネームされました。このスライスは、Unicodeの10進数字のコードポイントのリストを保持しています。letter
という名前の[]int
型スライスがtestLetter
にリネームされました。このスライスは、Unicodeの文字(letter)のコードポイントのリストを保持しています。
これらの変数は、TestIsDecimalDigit
関数内でIsDecimalDigit
関数のテストデータとして使用されていました。リネームにより、これらの変数がテスト目的でのみ使用されるデータセットであることを明確にしています。
この変更は、コードの機能には影響を与えません。テストのロジックや、unicode
パッケージ自体の動作は一切変更されていません。純粋に、テストコード内の変数名をより意図が明確になるように調整したものです。これは、大規模なプロジェクトや標準ライブラリにおいて、命名の一貫性と明確性が重要視される典型的な例です。
コアとなるコードの変更箇所
diff --git a/src/lib/unicode/decimaldigit_test.go b/src/lib/unicode/decimaldigit_test.go
index f7c09d7372..f7b470c676 100644
--- a/src/lib/unicode/decimaldigit_test.go
+++ b/src/lib/unicode/decimaldigit_test.go
@@ -13,7 +13,7 @@ import (
//\tgrep '^....;[^;]*;Nd;' UnicodeData.txt
// To generate this table:
// ,s/([^;]+).+/\t0x\\1,\t\\/\\/ &/g
-var decimal = []int{
+var testDecimal = []int{
\t0x0030,\t// 0030;DIGIT ZERO;Nd;0;EN;;0;0;0;N;;;;;
\t0x0031,\t// 0031;DIGIT ONE;Nd;0;EN;;1;1;1;N;;;;;
\t0x0032,\t// 0032;DIGIT TWO;Nd;0;EN;;2;2;2;N;;;;;
@@ -326,7 +326,7 @@ var decimal = []int{
\t0xFF19,\t// FF19;FULLWIDTH DIGIT NINE;Nd;0;EN;<wide> 0039;9;9;9;N;;;;;
}\n
-var letter = []int{
+var testLetter = []int{
\t0x41,\n \t0x61,\n \t0xaa,\n
@@ -362,12 +362,12 @@ var letter = []int{
}\n
func TestIsDecimalDigit(t *testing.T) {
-\tfor i, r := range(decimal) {
+\tfor i, r := range(testDecimal) {
\t\tif !IsDecimalDigit(r) {
\t\t\tt.Errorf(\"IsDecimalDigit(%#x) = false, want true\\n\", r);\n \t\t}\n \t}\n-\tfor i, r := range(letter) {
+\tfor i, r := range(testLetter) {
\t\tif IsDecimalDigit(r) {
\t\t\tt.Errorf(\"IsDecimalDigit(%#x) = true, want false\\n\", r);\n \t\t}\n
コアとなるコードの解説
上記のdiff
は、以下の2つの主要な変更を示しています。
-
decimal
変数のリネーム:- 変更前:
var decimal = []int{...}
- 変更後:
var testDecimal = []int{...}
- この変更により、Unicodeの10進数字のコードポイントを格納するスライスが
decimal
からtestDecimal
に名前が変更されました。これにより、この変数がテスト目的で使われるデータセットであることが明確になります。
- 変更前:
-
letter
変数のリネーム:- 変更前:
var letter = []int{...}
- 変更後:
var testLetter = []int{...}
- 同様に、Unicodeの文字(letter)のコードポイントを格納するスライスが
letter
からtestLetter
に名前が変更されました。これもまた、テスト専用のデータであることを示唆しています。
- 変更前:
これらの変数名のリネームに伴い、TestIsDecimalDigit
関数内でこれらの変数が使用されている箇所も更新されています。
for i, r := range(decimal)
はfor i, r := range(testDecimal)
に変更。for i, r := range(letter)
はfor i, r := range(testLetter)
に変更。
この変更は、Go言語のコードベース全体における命名規則の統一と、テストコードの意図の明確化を目的としています。特に、標準ライブラリのような共有されるコードベースでは、将来的な拡張や他の開発者による理解を容易にするために、このような細かな命名の調整が重要となります。
関連リンク
- Go言語の
unicode
パッケージ公式ドキュメント: https://pkg.go.dev/unicode - Go言語のテストに関する公式ドキュメント: https://go.dev/doc/code#testing
参考にした情報源リンク
- Go言語の公式ドキュメント (上記「関連リンク」に記載)
- コミット情報 (
./commit_data/1896.txt
の内容) - GitHub上のコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/8e39472e3b0bc001caea29566dde9533d22517ee