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[インデックス 19023] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリ net/url パッケージにおいて、Windows形式のファイルURLの解釈に関する既存の挙動をテストするためのものです。将来的な変更があった際に、このテストが失敗することで、関連するIssue 6027を参照するように促すことを目的としています。

コミット

commit 844b625ebcc7101e09fb87828a0e71db942a2416
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Thu Apr 3 16:10:33 2014 -0400

    net/url: add test of "Windows" file URL
    
    This is just testing the status quo, so that any future attempt
    to change it will make the test break and redirect the person
    making the change to look at issue 6027.
    
    Fixes #6027.
    
    LGTM=bradfitz
    R=golang-codereviews, bradfitz
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/83930046

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/844b625ebcc7101e09fb87828a0e71db942a2416

元コミット内容

net/url パッケージに、Windows形式のファイルURL(例: file:///C:/FooBar/Baz.txt)のパースに関するテストケースを追加します。このテストは、現在の net/url の挙動(C: の部分をホスト名ではなくパスの一部として扱う)が維持されることを保証するためのものです。このテストが失敗した場合、開発者はIssue 6027を参照し、その背景にある議論を理解することが求められます。

変更の背景

このコミットの背景には、Go言語の net/url パッケージがファイルURLをどのように解釈するか、特にWindowsのパス形式(ドライブレターを含む C:/path/to/file のような形式)をURLのパス部分として適切に扱うかという議論があります。

一般的なURLの仕様では、file://host/path の形式が用いられます。ここで host はオプションであり、省略された場合はローカルファイルシステムを指します。しかし、Windowsのパスにはドライブレター(例: C:)が含まれるため、これがURLの host 部分と誤解される可能性がありました。

Issue 6027は、この file:///C:/FooBar/Baz.txt のようなURLが net/url パッケージによってどのようにパースされるべきか、という点に関する議論を扱っていたと考えられます。具体的には、C: がホスト名として解釈されるべきか、それともパスの一部として解釈されるべきか、という点が論点になっていた可能性があります。

このコミットは、既存の net/url の実装が C: をパスの一部として正しく解釈している「現状維持」をテストで保証することを目的としています。これは、将来的に誰かがこの挙動を変更しようとした際に、意図しない副作用を防ぎ、Issue 6027での議論を再確認させるための「安全網」として機能します。

前提知識の解説

URL (Uniform Resource Locator)

URLは、インターネット上のリソースの位置を示すための標準的な方法です。一般的なURLの構造は以下のようになります。

scheme://[user:password@]host[:port][/path][?query][#fragment]

  • Scheme (スキーム): リソースにアクセスするためのプロトコル(例: http, https, ftp, file)。
  • Host (ホスト): リソースが配置されているサーバーのドメイン名またはIPアドレス。
  • Port (ポート): サーバー上の特定のアプリケーションを識別するための番号(通常はスキームによってデフォルト値が定められている)。
  • Path (パス): ホスト上のリソースの場所。
  • Query (クエリ): リソースに渡される追加のデータ(キーと値のペア)。
  • Fragment (フラグメント): リソース内の特定の部分を指す識別子。

file スキームのURL

file スキームは、ローカルファイルシステム上のリソースを指すために使用されます。その形式は通常 file://host/path です。

  • host が省略された場合(例: file:///path/to/file)、それはローカルマシン上のファイルを指します。
  • host が指定された場合(例: file://localhost/path/to/file または file://servername/path/to/file)、それは指定されたホスト上のファイルを指します。

Windowsのファイルパス

Windowsオペレーティングシステムでは、ファイルパスは通常、ドライブレター(例: C:, D:)から始まります。 例: C:\Users\username\Documents\file.txt

URLとして表現する場合、バックスラッシュ (\) はスラッシュ (/) に変換され、ドライブレターはパスの一部として扱われることが一般的です。 例: file:///C:/Users/username/Documents/file.txt

Go言語の net/url パッケージ

Go言語の net/url パッケージは、URLのパース(解析)、構築、およびクエリパラメータの操作を行うための機能を提供します。url.Parse() 関数は、与えられた文字列から url.URL 構造体を生成し、URLの各コンポーネント(スキーム、ホスト、パスなど)にアクセスできるようにします。

Issue 6027

このコミットが参照しているIssue 6027は、net/url パッケージがWindows形式のファイルURLをどのようにパースするかに関する議論があったことを示唆しています。特に、file:///C:/FooBar/Baz.txt のようなURLにおいて、C: の部分がホスト名として誤って解釈される可能性があったか、あるいはその解釈が曖昧であったために、明確な挙動を定義し、それをテストで保証する必要があったと考えられます。コミットメッセージの「especially comment #9」という記述は、そのIssueの特定のコメントで重要な議論や結論があったことを示唆しています。

技術的詳細

このコミットは、net/url パッケージの url_test.go ファイルに新しいテストケースを追加しています。追加されたテストケースは以下の通りです。

	// "Windows" paths are no exception to the rule.
	// See golang.org/issue/6027, especially comment #9.
	{
		"file:///C:/FooBar/Baz.txt",
		&URL{
			Scheme: "file",
			Host:   "",
			Path:   "/C:/FooBar/Baz.txt",
		},
		"file:///C:/FooBar/Baz.txt",
	},

このテストケースは、"file:///C:/FooBar/Baz.txt" という入力URL文字列が、net/url パッケージによってどのようにパースされるべきかを定義しています。

  • 入力文字列: "file:///C:/FooBar/Baz.txt"
  • 期待される URL 構造体:
    • Scheme: "file": スキームは file である。
    • Host: "": ホストは空文字列である。これは、C: がホスト名として解釈されず、ローカルファイルパスの一部として扱われることを意味します。
    • Path: "/C:/FooBar/Baz.txt": パスは /C:/FooBar/Baz.txt 全体である。

このテストの目的は、net/urlfile:///C:/FooBar/Baz.txt をパースする際に、C: をホスト名としてではなく、パスの先頭部分として正しく認識することを確認することです。もし将来的に net/url のパースロジックが変更され、このテストケースが期待する HostPath の値と異なる結果を返した場合、テストは失敗し、開発者にIssue 6027の議論を再検討するよう促します。

これは、特定のプラットフォーム(Windows)に特有のパス形式が、一般的なURLパースルールとどのように調和するかという、クロスプラットフォーム開発における重要な側面を扱っています。Go言語の標準ライブラリが、このようなエッジケースをどのように処理するかを明確にし、その挙動を保証するためのテストの追加は、ライブラリの堅牢性と予測可能性を高める上で非常に重要です。

コアとなるコードの変更箇所

変更は src/pkg/net/url/url_test.go ファイルにのみ行われています。

--- a/src/pkg/net/url/url_test.go
+++ b/src/pkg/net/url/url_test.go
@@ -251,6 +251,17 @@ var urltests = []URLTest{\n 		},\n 		"file:///home/adg/rabbits",\n 	},\n+\t// "Windows" paths are no exception to the rule.\n+\t// See golang.org/issue/6027, especially comment #9.\n+\t{\n+\t\t"file:///C:/FooBar/Baz.txt",\n+\t\t&URL{\n+\t\t\tScheme: "file",\n+\t\t\tHost:   "",\n+\t\t\tPath:   "/C:/FooBar/Baz.txt",\n+\t\t},\n+\t\t"file:///C:/FooBar/Baz.txt",\n+\t},\n \t// case-insensitive scheme\n \t{\n \t\t"MaIlTo:webmaster@golang.org",

コアとなるコードの解説

追加されたコードは、urltests という URLTest 型のスライスに新しい要素を追加しています。URLTest 構造体は、URLのテストケースを定義するために使用され、通常、入力文字列、期待される url.URL 構造体、および期待される再構築されたURL文字列を含みます。

この新しいテストケースは、以下の3つのフィールドで構成されています。

  1. 入力URL文字列: "file:///C:/FooBar/Baz.txt"
    • これは、テスト対象となるWindows形式のファイルURLです。
  2. 期待される url.URL 構造体:
    &URL{
        Scheme: "file",
        Host:   "",
        Path:   "/C:/FooBar/Baz.txt",
    }
    
    • Scheme: "file": URLのスキームが file であることを期待します。
    • Host: "": URLのホスト部分が空文字列であることを期待します。これは、C: がホスト名としてではなく、パスの一部として解釈されることを明確に示しています。もし C: がホスト名として解釈されると、Host フィールドには C: が設定されることになります。
    • Path: "/C:/FooBar/Baz.txt": URLのパス部分が /C:/FooBar/Baz.txt 全体であることを期待します。
  3. 期待される再構築されたURL文字列: "file:///C:/FooBar/Baz.txt"
    • パースされた url.URL 構造体を再度文字列に変換した際に、元の文字列と同じになることを期待します。

このテストケースは、net/url パッケージがWindowsのドライブレターを含むファイルURLを、ホスト名を持たないローカルファイルパスとして正しくパースすることを保証します。これは、GoアプリケーションがWindows環境でファイルURLを扱う際の互換性と正確性を維持するために重要です。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • コミットメッセージと差分情報 (./commit_data/19023.txt)
  • Go言語の公式ドキュメント (pkg.go.dev)
  • URLの一般的な構造に関する知識
  • Windowsのファイルパスに関する知識
  • (Issue 6027の具体的な内容が不明なため、一般的なGoのIssueトラッカーの挙動と、コミットメッセージからの推測に基づいています。)