[インデックス 19164] ファイルの概要
このコミットは、Goプロジェクトのdoc
ディレクトリから、もはや使用されていないMakefile
を削除するものです。これにより、ドキュメント生成プロセスにおける古いビルド手順が廃止され、プロジェクトのビルドシステムがより現代的なアプローチに移行したことを示唆しています。
コミット
doc: remove outdated Makefile
Fixes #7773.
LGTM=bradfitz
R=golang-codereviews, bradfitz
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/87400043
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/6037841dbdf69cf02ae2db8c01e53c6a840598a2
元コミット内容
doc: remove outdated Makefile
Fixes #7773.
LGTM=bradfitz
R=golang-codereviews, bradfitz
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/87400043
変更の背景
このコミットの主な目的は、doc
ディレクトリに存在していたMakefile
が古くなり、もはやGoプロジェクトのドキュメント生成プロセスに必要なくなったため、それを削除することです。コミットメッセージにあるFixes #7773
は、このMakefile
の陳腐化や削除の必要性に関する課題が追跡されていたことを示唆しています。
一般的なソフトウェアプロジェクトにおいて、Makefile
はビルドやタスク自動化に広く利用されますが、プロジェクトの進化や新しいツールの導入に伴い、その役割が変化したり、完全に不要になったりすることがあります。Goプロジェクトでは、go build
やgo generate
、godoc
といったGoツールチェインが提供するネイティブなコマンドがビルドやドキュメント生成の主要な手段となるため、従来のMakefile
が不要になるケースが多く見られます。
このMakefile
の削除は、Goプロジェクトのドキュメント生成ワークフローが、よりGoネイティブなツールや自動化されたCI/CDパイプラインに移行した結果であると考えられます。これにより、ビルドプロセスの簡素化と保守性の向上が図られます。
(注: Fixes #7773
に関する具体的なIssueの詳細は、公開されているGoリポジトリのIssueトラッカーでは直接確認できませんでした。また、コミットメッセージに記載されているhttps://golang.org/cl/87400043
のGerrit Change-IDは、このコミットとは異なる内容(runtime: fix race in TestStackGrowth
)を示しており、誤った参照である可能性があります。)
前提知識の解説
Makefileとは
Makefile
は、主にUnix系システムでソフトウェアのビルドプロセスを自動化するために使用されるファイルです。make
コマンドによって解釈され、ソースコードのコンパイル、ライブラリのリンク、ドキュメントの生成、テストの実行など、一連のタスクを定義し、依存関係に基づいて実行します。
Makefile
は「ターゲット」「依存関係」「コマンド」の3つの主要な要素で構成されます。
- ターゲット: 実行したいタスクの名前(例:
all
,clean
,install
)。 - 依存関係: ターゲットをビルドするために必要なファイルや他のターゲット。依存関係が更新されている場合のみ、ターゲットが再ビルドされます。
- コマンド: ターゲットをビルドするために実行されるシェルコマンド。
Goプロジェクトにおけるビルドとドキュメント生成
Go言語は、その設計思想としてシンプルなビルドプロセスを重視しており、go
コマンド(Goツールチェイン)が強力なビルド機能を提供します。
go build
: Goのソースコードをコンパイルして実行可能ファイルを生成します。依存関係の解決やクロスコンパイルも自動的に行われます。go install
: 実行可能ファイルをGOPATH/bin
(またはGOBIN
)にインストールします。go generate
: ソースコード内の特別なコメント(//go:generate
)に基づいてコード生成ツールを実行します。これにより、モックの生成、アセットの埋め込み、プロトコルバッファのコンパイルなど、様々なタスクを自動化できます。godoc
: Goのソースコードからドキュメントを生成するツールです。コード内のコメントやエクスポートされたシンボルから自動的にドキュメントを抽出し、HTML形式で表示したり、静的なHTMLファイルを生成したりできます。
Goツールチェインのこれらの機能は、従来のMakefile
が担っていた多くの役割を代替できるため、GoプロジェクトではMakefile
の使用が限定的になるか、完全に不要になることがあります。特に、ドキュメント生成に関してはgodoc
が非常に強力であり、別途Makefile
で複雑なルールを記述する必要性が薄れます。
Outdated Makefiles(古くなったMakefile)
プロジェクトのライフサイクルにおいて、Makefile
が「古くなる」状況はいくつか考えられます。
- ビルドシステムの変更: プロジェクトが新しいビルドツールやフレームワークに移行した場合、古い
Makefile
は新しいシステムと競合したり、冗長になったりします。 - タスクの自動化:
go generate
のようなコード生成ツールや、CI/CDパイプラインの導入により、Makefile
で手動で定義していたタスクが自動化され、不要になることがあります。 - 依存関係の変更: プロジェクトの依存関係やファイル構造が大きく変わると、
Makefile
内のパスやルールが機能しなくなることがあります。 - メンテナンスの放棄: 特定の
Makefile
が特定の目的のためだけに存在し、その目的が達成されたり、別の方法で処理されるようになったりすると、メンテナンスされなくなり、最終的に削除されます。
このコミットの場合、doc/Makefile
が削除されたことは、Goのドキュメント生成プロセスが進化し、このMakefile
が提供していた機能がGoツールチェインのネイティブ機能や他の自動化された手段によって置き換えられたことを強く示唆しています。
技術的詳細
削除されたdoc/Makefile
は、Goプロジェクトのドキュメント生成の一部を自動化するために使用されていました。このMakefile
の主な役割は、godoc -url
コマンドを使用して.html
ファイルから.rawhtml
ファイルを生成することでした。
具体的には、以下の種類のドキュメントファイルが対象となっていました。
articles/defer_panic_recover.rawhtml
articles/error_handling.rawhtml
articles/slices_usage_and_internals.rawhtml
articles/laws_of_reflection.rawhtml
articles/c_go_cgo.rawhtml
articles/concurrency_patterns.rawhtml
articles/godoc_documenting_go_code.rawhtml
articles/gobs_of_data.rawhtml
articles/json_and_go.rawhtml
articles/json_rpc_tale_of_interfaces.rawhtml
articles/image_draw.rawhtml
articles/image_package.rawhtml
effective_go.rawhtml
go1.rawhtml
これらの.rawhtml
ファイルは、おそらくGoのウェブサイトやドキュメントサーバーで表示されるために、godoc
によって処理されたHTMLコンテンツを保持していたと考えられます。godoc -url /doc/$<
というコマンドは、godoc
をHTTPサーバーモードで実行し、指定されたURLパス(この場合は/doc/
以下)からコンテンツを取得して標準出力に出力するものです。この出力が.rawhtml
ファイルにリダイレクトされていました。
Makefile
には、all
(すべての.rawhtml
ファイルを生成)、clean
(生成されたファイルを削除)、compare
(生成されたファイルと既存のファイルを比較して差分を表示)といったターゲットも含まれていました。compare
ターゲットは、godoc
で生成された内容が既存のファイルと一致しているかを確認するための検証ステップとして機能していました。
このMakefile
の削除は、これらの.rawhtml
ファイルの生成プロセスが変更されたか、あるいはこれらのファイル自体がもはや必要とされなくなったことを意味します。例えば、godoc
が直接ウェブサーバーとして機能し、動的にコンテンツを生成するようになった、または静的サイトジェネレータのような別のツールが導入された可能性が考えられます。これにより、手動で.rawhtml
ファイルを生成・管理する必要がなくなったため、関連するMakefile
が不要になったと推測されます。
コアとなるコードの変更箇所
削除されたファイル:
doc/Makefile
変更内容:
doc/Makefile
の全内容(32行)が削除されました。
コアとなるコードの解説
削除されたdoc/Makefile
は、以下の主要な機能を持っていました。
-
RAWHTML
変数の定義: Goのドキュメント記事やガイドに対応する.rawhtml
ファイルの一覧を定義していました。これらはgodoc
ツールによって生成されるHTMLコンテンツの出力先でした。 -
all
ターゲット:$(RAWHTML)
変数にリストされたすべての.rawhtml
ファイルを生成するためのデフォルトターゲットでした。これにより、一度にすべてのドキュメントを更新することができました。 -
パターンルール
%.rawhtml: %.html
: このルールは、.html
ファイルから対応する.rawhtml
ファイルを生成する方法を定義していました。具体的には、godoc -url /doc/$< >$@
というコマンドを実行していました。$<
: 依存関係のファイル名(例:effective_go.html
)$@
: ターゲットのファイル名(例:effective_go.rawhtml
) このコマンドは、godoc
をURLモードで実行し、指定されたHTMLドキュメントの内容を標準出力に書き出し、それを.rawhtml
ファイルにリダイレクトしていました。
-
clean
ターゲット: 生成されたすべての.rawhtml
ファイルを削除するためのターゲットでした。 -
compare
ターゲット: 生成された.rawhtml
ファイルと、godoc
によって動的に生成される内容との間で差分を比較するためのターゲットでした。これは、ドキュメントの変更が意図通りに反映されているか、または予期せぬ変更がないかを確認するための品質保証ステップとして機能していました。diff -u
コマンドを使用して、詳細な差分を表示していました。
このMakefile
が削除されたことにより、上記のドキュメント生成、クリーンアップ、比較といった一連のプロセスが、このMakefile
を介しては実行されなくなりました。これは、これらのタスクがGoツールチェインの他の機能(例: go generate
)や、CI/CDパイプライン、あるいはgodoc
の直接利用といった、より統合された方法で処理されるようになったことを意味します。
関連リンク
- Go言語公式ドキュメント: https://go.dev/doc/
godoc
コマンドのドキュメント: https://pkg.go.dev/cmd/godoc
参考にした情報源リンク
- コミット情報:
/home/orange/Project/comemo/commit_data/19164.txt
- GitHubコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/6037841dbdf69cf02ae2db8c01e53c6a840598a2
- Google検索 (golang/go #7773): 関連するIssueの詳細は見つかりませんでした。
- Google検索 (golang.org/cl/87400043): 参照されたGerrit Change-IDは、このコミットとは異なる内容を示していました。
- Makefileに関する一般的な知識
- Go言語のビルドおよびドキュメント生成に関する一般的な知識