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[インデックス 19267] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリである html/template パッケージ内の js.go ファイルに対する修正です。html/template パッケージは、HTMLテンプレートを安全に生成するための機能を提供し、特にクロスサイトスクリプティング(XSS)攻撃を防ぐための自動エスケープ処理が特徴です。

js.go ファイルは、JavaScriptコンテキストにおけるエスケープ処理とサニタイズロジックを扱います。具体的には、JavaScriptコード内でテンプレートが展開される際に、文字列リテラルや正規表現リテラルが正しくエスケープされ、意図しないコード実行を防ぐための内部的な状態管理やキーワードの識別を行います。

コミット

このコミットは、src/pkg/html/template/js.go ファイル内のコメントと変数名における小さなタイプミスを修正するものです。具体的には、「regex」という略語が「regexp」というより正確な表現に修正されました。これは機能的な変更ではなく、コードの可読性と正確性を向上させるためのものです。

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/3b3e1a09a9dc495a0d5fc298f472538a7216a503

元コミット内容

commit 3b3e1a09a9dc495a0d5fc298f472538a7216a503
Author: Robert Hencke <robert.hencke@gmail.com>
Date:   Thu May 1 16:29:34 2014 -0400

    html: fix small typo
    
    LGTM=dsymonds, adg, crawshaw, r, bradfitz, campoy, nigeltao, sameer, iant, robsc, djd, michael.j.fromberger, gmlewis, adonovan, rsc
    R=golang-codereviews, dsymonds, adg, crawshaw, r, nigeltao, sameer, iant, robsc, djd, michael.j.fromberger, gmlewis, adonovan, rsc
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/98880043

変更の背景

この変更は、コード内のコメントと変数名に含まれる「regex」という記述が、より一般的で正確な「regexp」(Regular Expressionの略)に修正されたものです。これは、Go言語のコードベース全体で用語の統一性を保ち、誤解を避けるための品質改善の一環として行われました。機能的な影響は一切ありません。

前提知識の解説

Go言語の html/template パッケージ

html/template パッケージは、Go言語でウェブアプリケーションを開発する際に、HTMLコンテンツを動的に生成するためのテンプレートエンジンです。このパッケージの最も重要な特徴は、出力されるHTMLが自動的にエスケープされることで、クロスサイトスクリプティング(XSS)攻撃などのセキュリティ脆弱性を防ぐ点にあります。

テンプレートエンジンは、プレースホルダーを含むテンプレート文字列と、そのプレースホルダーに埋め込むデータを受け取り、最終的なHTML文字列を生成します。この際、ユーザー入力などの信頼できないデータがHTMLに直接挿入されると、悪意のあるスクリプトが実行される可能性があります。html/template は、このようなリスクを軽減するために、コンテキストに応じた適切なエスケープ処理(例: HTMLエンティティへの変換、URLエンコード、JavaScript文字列リテラルエスケープなど)を自動的に適用します。

JavaScriptにおける正規表現リテラル

JavaScriptでは、正規表現は RegExp オブジェクトとして扱われますが、コード中に直接記述する際には /pattern/flags の形式の「正規表現リテラル」を使用できます。例えば、/abc/i は "abc" という文字列を大文字小文字を区別せずに検索する正規表現です。

JavaScriptの構文解析において、正規表現リテラルは / で始まりますが、これは除算演算子 / と同じ記号であるため、文脈によってどちらとして解釈されるかが重要になります。例えば、a / b は除算ですが、a /b/a を正規表現 /b/ で除算するのではなく、a の後に正規表現リテラル /b/ が続くものとして解釈されます。

JavaScriptの「先行キーワード」(Preceding Keywords)

JavaScriptのパーサーは、特定のキーワードの後に / が来た場合、それを正規表現リテラルの開始と解釈する傾向があります。これらのキーワードは「先行キーワード」(preceding keywords)と呼ばれ、例えば return, throw, case, typeof, new, delete, void, in, instanceof などが挙げられます。これらのキーワードの後に / が続く場合、それは除算演算子ではなく、正規表現リテラルの開始であると判断されます。

html/template パッケージがJavaScriptコンテキストを安全に扱うためには、このようなJavaScriptの構文規則を正確に理解し、正規表現リテラルが始まる可能性のある場所を識別する必要があります。これにより、テンプレートに挿入されるデータが正規表現リテラルの一部として解釈されるべきか、それとも通常の文字列や数値としてエスケープされるべきかを適切に判断できます。

技術的詳細

このコミットは、src/pkg/html/template/js.go ファイル内の regexpPrecederKeywords という変数名と、その変数に関するコメントの修正です。

元のコードでは、この変数は regexPrecederKeywords と命名され、コメントも「regexPrecederKeywords is a set of reserved JS keywords that can precede a regular expression in JS source.」となっていました。

「regex」は「regular expression」の一般的な略語ですが、Go言語の標準ライブラリや他の多くのプログラミング言語では、「regexp」という略語がより公式かつ正確な表現として用いられることが多いです。例えば、Go言語の正規表現パッケージは regexp と命名されています。

この修正は、コードベース全体での用語の統一性を図り、将来的な誤解や混乱を防ぐことを目的としています。機能的な変更は一切なく、プログラムの動作には影響を与えません。これは、コードの品質、可読性、および保守性を向上させるための典型的なリファクタリングの一種です。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/html/template/js.go
+++ b/src/pkg/html/template/js.go
@@ -99,7 +99,7 @@ func nextJSCtx(s []byte, preceding jsCtx) jsCtx {
 	return jsCtxDivOp
 }
 
-// regexPrecederKeywords is a set of reserved JS keywords that can precede a
+// regexpPrecederKeywords is a set of reserved JS keywords that can precede a
 // regular expression in JS source.
 var regexpPrecederKeywords = map[string]bool{
 	"break":      true,

コアとなるコードの解説

変更された箇所は、js.go ファイル内の以下の部分です。

// regexPrecederKeywords is a set of reserved JS keywords that can precede a
// regular expression in JS source.
var regexpPrecederKeywords = map[string]bool{
	"break":      true,
	// ... (他のキーワードが続く)
}

このコードスニペットは、JavaScriptの正規表現リテラルが始まる前に現れる可能性のある予約語のセットを定義しています。html/template パッケージは、JavaScriptコードを解析する際に、これらのキーワードの後にスラッシュ (/) が続く場合、それが除算演算子ではなく正規表現リテラルの開始であると判断するためにこのマップを使用します。

修正前は、変数名とコメントが regexPrecederKeywords でしたが、修正後は regexpPrecederKeywords に変更されました。これにより、Go言語の慣習(regexp パッケージなど)に沿った、より正確な命名になりました。

このマップに true が設定されているキーワードは、JavaScriptの構文規則上、その後に / が続く場合に正規表現リテラルとして解釈される可能性が高いことを示しています。html/template はこの情報を用いて、テンプレートに挿入されるコンテンツがJavaScriptの正規表現リテラルの一部として安全にエスケープされるようにします。

関連リンク

特になし。

参考にした情報源リンク

特になし。