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[インデックス 19423] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のバージョン管理システムにおいて、go1.3beta1 および go1.3beta2 という2つのベータ版リリースをタグ付けするために行われたものです。具体的には、Mercurial (Hg) リポジトリで使用される.hgtagsファイルに、対応するコミットハッシュとタグ名のマッピングを追加しています。この変更自体はGo言語のソースコードやランタイムの機能に直接的な影響を与えるものではなく、リリース管理プロセスの一部として行われたものです。

コミット

commit 80f0a7df26d216c96400d1f7cfbb5106d4b354df
Author: Andrew Gerrand <adg@golang.org>
Date:   Wed May 21 13:23:24 2014 +1000

    tag go1.3beta1 and go1.3beta2
    
    LGTM=rsc
    R=golang-codereviews, rsc
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/100660043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/80f0a7df26d216c96400d1f7cfbb5106d4b354df

元コミット内容

tag go1.3beta1 and go1.3beta2

LGTM=rsc
R=golang-codereviews, rsc
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/100660043

変更の背景

このコミットは、Go 1.3のリリースサイクルにおける重要なマイルストーンであるベータ版の公開に伴うものです。ソフトウェア開発において、安定版リリースに先立ってベータ版を公開することは一般的です。ベータ版は、新機能のテスト、バグの特定、パフォーマンスの評価などを目的として、より広範なユーザーコミュニティに提供されます。

バージョン管理システムにおいて、特定の時点のコードベースに「タグ」を付けることは、その時点のコードを識別しやすくするために不可欠です。これにより、開発者は特定のリリースバージョン(例: go1.3beta1)に対応する正確なコードスナップショットを簡単に取得できるようになります。このコミットは、Go 1.3のベータ版リリースを正式にマークし、将来の参照やビルドのためにその時点のコードベースを固定する役割を果たしています。

また、このコミットが行われた2014年5月時点では、GoプロジェクトはまだMercurial (Hg) を主要なバージョン管理システムとして使用していました。そのため、タグの管理はMercurialの慣習に従い、.hgtagsファイルを通じて行われていました。GoプロジェクトがGitに移行したのは2014年11月以降、Go 1.4リリース後であるため、このコミットはMercurial時代の名残と言えます。

前提知識の解説

バージョン管理システムにおける「タグ」の概念

バージョン管理システム(VCS)における「タグ(Tag)」とは、リポジトリ内の特定のコミット(またはリビジョン)に対して、人間が読みやすい名前を付ける機能です。これは、プロジェクトの重要な時点、例えば公式リリース、安定版、特定の開発マイルストーンなどを永続的にマークするために使用されます。タグは通常、変更されることのない固定された参照点として扱われ、後からその時点のコードベースを簡単にチェックアウトしたり、参照したりすることを可能にします。

GitやMercurialのような分散型バージョン管理システムでは、タグは特定のコミットハッシュ(またはチェンジセットID)に紐付けられます。これにより、開発者は複雑なコミットハッシュを覚えることなく、v1.0release-candidate-1といった意味のある名前で特定のバージョンを参照できます。

Mercurial (Hg) とそのタグ管理 (.hgtags ファイル)

Mercurial (Hg) は、Gitと同様に分散型バージョン管理システムの一つです。Mercurialは、そのシンプルさと使いやすさで知られています。Mercurialにおけるタグの管理方法は、Gitとは異なり、.hgtagsという特殊なファイルを使用する点が特徴的です。

.hgtagsファイルは、リポジトリのルートディレクトリに配置されるプレーンテキストファイルです。このファイルは、バージョン管理下に置かれ、各行が「チェンジセットハッシュ(コミットハッシュ)」と「タグ名」のペアで構成されます。Mercurialは、この.hgtagsファイルを読み込むことで、どのチェンジセットがどのタグに対応するかを認識します。

この方式の利点は、タグ情報自体がリポジトリの履歴の一部としてバージョン管理されるため、タグの追加や削除も通常のコミットとして扱われる点です。これにより、タグの変更履歴も追跡可能になります。

GoプロジェクトがかつてMercurialを使用していた歴史

Go言語プロジェクトは、その初期から長らくMercurialを主要なバージョン管理システムとして採用していました。Google内部での開発環境がMercurialをベースにしていたことや、Mercurialの設計思想がGoプロジェクトのニーズに合致していたことが理由として挙げられます。

しかし、2014年後半になると、GoプロジェクトはMercurialからGitへの移行を発表し、2014年12月のGo 1.4リリース後に完全にGitベースの開発に切り替わりました。この移行は、GitHubを中心としたGitエコシステムの普及、より多くの開発者がGitに慣れていること、そしてGitが提供する特定の機能(例: プルリクエストのワークフロー)の利点を享受するためでした。

このコミットは、GoプロジェクトがまだMercurialを使用していた時期に行われたため、Mercurial特有のタグ管理ファイルである.hgtagsが変更されています。

技術的詳細

このコミットの技術的な核心は、Mercurialのタグ管理メカニズムである.hgtagsファイルへの変更です。

.hgtagsファイルは、Mercurialリポジトリのルートに存在するテキストファイルで、各行が特定のチェンジセット(コミット)のハッシュと、それに対応するタグ名を記述します。Mercurialは、このファイルの内容を解析して、リポジトリ内のタグを管理します。

このコミットでは、以下の2行が.hgtagsファイルに追加されました。

  1. f8b50ad4cac4d4c4ecf48324b4f512f65e82cc1c go1.3beta1
  2. 9e1652c32289c164126b6171f024afad5665fc9e go1.3beta2

これは、それぞれ以下の意味を持ちます。

  • f8b50ad4cac4d4c4ecf48324b4f512f65e82cc1c というチェンジセットハッシュ(コミットハッシュ)に go1.3beta1 というタグを関連付けます。
  • 9e1652c32289c164126b6171f024afad5665fc9e というチェンジセットハッシュに go1.3beta2 というタグを関連付けます。

これらのハッシュは、それぞれ go1.3beta1 および go1.3beta2 のリリース時点でのGoリポジトリの正確な状態を指し示しています。これにより、開発者やユーザーは、これらのタグ名を使って、特定のベータ版のソースコードを簡単に取得できるようになります。

Go 1.3は、2014年6月18日に正式リリースされました。このコミットは、その約1ヶ月前に行われたものであり、正式リリースに向けたベータテスト期間中に、段階的にベータ版が公開されていたことを示しています。Go 1.3の主な変更点としては、正確なガベージコレクション、コンパイラツールチェーンのリファクタリング、パフォーマンス改善、Native Client (NaCl) サポート、新しいOSの実験的サポートなどが挙げられます。これらの機能は、ベータ版を通じてテストされ、フィードバックが収集されました。

コアとなるコードの変更箇所

変更は、リポジトリのルートにある.hgtagsファイルに対して行われました。

--- a/.hgtags
+++ b/.hgtags
@@ -127,3 +127,5 @@ b3d5a20b070a92da2458c5788694d1359b353f4a go1.2rc5
 0ddbdc3c7ce27e66508fe58ab81ff29324786026 go1.2.1
 9c4fdd8369ca4483fbed1cb8e67f02643ca10f79 go1.2.2
 9c4fdd8369ca4483fbed1cb8e67f02643ca10f79 release
+f8b50ad4cac4d4c4ecf48324b4f512f65e82cc1c go1.3beta1
+9e1652c32289c164126b6171f024afad5665fc9e go1.3beta2

コアとなるコードの解説

追加された2行は、Mercurialのタグ定義の標準的な形式に従っています。

  • f8b50ad4cac4d4c4ecf48324b4f512f65e82cc1c go1.3beta1

    • f8b50ad4cac4d4c4ecf48324b4f512f65e82cc1c: これは、go1.3beta1というタグが指し示す特定のコミット(チェンジセット)のハッシュです。このハッシュは、Go 1.3ベータ1がリリースされた時点でのリポジトリの正確な状態を一意に識別します。
    • go1.3beta1: これは、そのコミットハッシュに関連付けられたタグ名です。このタグ名を使用することで、開発者はMercurialコマンド(例: hg update go1.3beta1)を通じて、Go 1.3ベータ1のソースコードを簡単に取得できます。
  • 9e1652c32289c164126b6171f024afad5665fc9e go1.3beta2

    • 9e1652c32289c164126b6171f024afad5665fc9e: これは、go1.3beta2というタグが指し示すコミットのハッシュです。go1.3beta1のリリース後に、さらなる開発やバグ修正が行われ、その結果としてgo1.3beta2がリリースされたことを示唆しています。
    • go1.3beta2: これは、そのコミットハッシュに関連付けられたタグ名です。同様に、このタグ名を使ってGo 1.3ベータ2のソースコードを取得できます。

これらの変更は、Goプロジェクトのリリース管理プロセスにおいて、特定のバージョンを明確にマークし、追跡可能にするための重要なステップでした。

関連リンク

参考にした情報源リンク