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[インデックス 19439] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のcmd/cgoツールに関するドキュメントの変更です。具体的には、#cgoディレクティブが複数のファイルにわたってどのように連結されるかを明示的に記述することで、その動作を明確にしています。

コミット

commit 5eb585f211385d28b36f3df66b5bd7bde72a8e43
Author: Pietro Gagliardi <pietro10@mac.com>
Date:   Wed May 21 16:01:54 2014 -0700

    cmd/cgo: explicitly state that #cgo directives across multiple files are concatenated
    
    This is a quick documentation change/clarification, as this
    confused me before: in my own cgo-based projects, I currently have
    identical #cgo directives in each relevant source file, and I notice
    with go build -x that cgo is combining the directives, leading to
    pkg-config invocations with the same package name (gtk+-3.0, in my
    case) repeated several times, or on Mac OS X, LDFLAGS listing
    -framework Foundation -framework AppKit multiple times. Since I am
    about to add a CFLAGS as well, I checked the source to cmd/cgo and
    go/build (where the work is actually done) to see if that still holds
    true there. Hopefully other people who have made the same mistake I
    have (I don't know if anyone has) can remove the excess declarations
    now; this should make things slightly easier to manage as well.
    
    LGTM=iant
    R=golang-codereviews, gobot, iant
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/91520046

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/5eb585f211385d28b36f3df66b5bd7bde72a8e43

元コミット内容

このコミットは、src/cmd/cgo/doc.goファイルに以下の変更を加えています。

--- a/src/cmd/cgo/doc.go
+++ b/src/cmd/cgo/doc.go
@@ -52,6 +52,14 @@ these directives.  Package-specific flags should be set using the
 directives, not the environment variables, so that builds work in
 unmodified environments.
 
+All the cgo CPPFLAGS and CFLAGS directives in a package are concatenated and
+used to compile C files in that package.  All the CPPFLAGS and CXXFLAGS
+directives in a package are concatenated and used to compile C++ files in that
+package.  All the LDFLAGS directives in any package in the program are
+concatenated and used at link time.  All the pkg-config directives are
+concatenated and sent to pkg-config simultaneously to add to each appropriate
+set of command-line flags.
+
 When the Go tool sees that one or more Go files use the special import
 "C", it will look for other non-Go files in the directory and compile
 them as part of the Go package.  Any .c, .s, or .S files will be

追加されたドキュメントは、#cgoディレクティブがGoパッケージ内でどのように処理されるかを明確にしています。

  • パッケージ内のすべてのcgo CPPFLAGSおよびCFLAGSディレクティブは連結され、そのパッケージ内のCファイルのコンパイルに使用されます。
  • パッケージ内のすべてのCPPFLAGSおよびCXXFLAGSディレクティブは連結され、そのパッケージ内のC++ファイルのコンパイルに使用されます。
  • プログラム内の任意のパッケージのすべてのLDFLAGSディレクティブは連結され、リンク時に使用されます。
  • すべてのpkg-configディレクティブは連結され、適切なコマンドラインフラグのセットに追加するためにpkg-configに同時に送信されます。

変更の背景

コミットメッセージによると、この変更は、#cgoディレクティブが複数のGoソースファイルに分散している場合に、それらがどのように処理されるかについての混乱を解消するために行われました。コミットの作者自身が、自身のcgoベースのプロジェクトで、各関連ソースファイルに同一の#cgoディレクティブを記述しており、go build -xを実行すると、cgoがこれらのディレクティブを結合していることに気づいたと述べています。これにより、pkg-configの呼び出しで同じパッケージ名(例: gtk+-3.0)が複数回繰り返されたり、macOSではLDFLAGS-framework Foundation -framework AppKitが複数回リストされたりする現象が発生していました。

作者は、CFLAGSを追加する前に、cmd/cgogo/buildのソースコードを確認し、この結合動作が依然として有効であることを確認しました。このドキュメントの追加は、同様の混乱を経験した可能性のある他の開発者が、冗長な宣言を削除し、プロジェクトの管理を容易にすることを目的としています。

前提知識の解説

このコミットの理解を深めるために、以下の概念について解説します。

GoにおけるCgo

cgoはGo言語の機能の一つで、GoプログラムからC言語のコードを呼び出したり、C言語のコードからGoの関数を呼び出したりすることを可能にします。これにより、既存のCライブラリをGoプロジェクトで再利用したり、パフォーマンスが重要な部分をCで記述したりすることができます。

cgoを使用するには、Goソースファイル内でimport "C"という特別なインポート文を記述します。これにより、GoツールチェーンはCコードの存在を認識し、Cコンパイラ(通常はGCCやClang)を呼び出してCコードをコンパイルし、Goコードとリンクします。

#cgoディレクティブ

#cgoディレクティブは、Goソースファイル内でCコンパイラやリンカに渡すフラグを指定するために使用されます。これらのディレクティブは、Goのコメント形式で記述されますが、cgoツールによって特別に解釈されます。

一般的な#cgoディレクティブの形式は以下の通りです。

// #cgo CFLAGS: -I/path/to/include
// #cgo LDFLAGS: -L/path/to/lib -lfoo
// #cgo pkg-config: gtk+-3.0

コンパイラ/リンカフラグ

  • CPPFLAGS (C PreProcessor Flags): Cプリプロセッサに渡されるフラグです。主にインクルードファイルの検索パス(-I)やマクロ定義(-D)を指定するために使用されます。CおよびC++のコンパイル時に適用されます。
  • CFLAGS (C Compiler Flags): Cコンパイラに渡されるフラグです。最適化レベル(-O)、警告設定(-Wall)、言語標準(-std=c99)などを指定するために使用されます。Cファイルのコンパイル時に適用されます。
  • CXXFLAGS (C++ Compiler Flags): C++コンパイラに渡されるフラグです。CFLAGSと同様に、C++ファイルのコンパイル時に適用されます。
  • LDFLAGS (Linker Flags): リンカに渡されるフラグです。ライブラリの検索パス(-L)、リンクするライブラリ(-l)、フレームワーク(macOSの-framework)などを指定するために使用されます。リンク時に適用されます。

pkg-config

pkg-configは、コンパイル時およびリンク時に必要なライブラリの情報を取得するためのコマンドラインツールです。ライブラリのヘッダファイルのパス、ライブラリファイルのパス、必要なリンカフラグなどを自動的に提供します。

#cgo pkg-config: [package_name]ディレクティブを使用すると、cgoは指定されたパッケージ名でpkg-configを呼び出し、その出力(通常は-I-L-lフラグ)を自動的にCFLAGSLDFLAGSに追加します。これにより、手動でこれらのフラグを記述する手間が省け、ライブラリのバージョンやインストールパスに依存しないビルドが可能になります。

技術的詳細

このコミットが追加するドキュメントは、cgoが複数のGoソースファイルに散らばる#cgoディレクティブをどのように集約して処理するかという、その内部的な動作原理を明確にしています。

Goのビルドプロセスにおいて、go buildコマンドはまず、指定されたパッケージ内のすべてのGoソースファイルをスキャンします。このスキャン中に、import "C"を持つファイルが検出されると、cgoツールが起動されます。cgoは、Goソースファイル内のすべての#cgoディレクティブを解析し、それらを種類ごとに分類します。

重要な点は、cgoパッケージ全体のコンテキストでこれらのディレクティブを処理するという点です。つまり、同じパッケージ内の異なるGoファイルに同じ種類の#cgoディレクティブ(例: CFLAGS)が記述されている場合、cgoはそれらを個別に処理するのではなく、すべてを結合(連結)して単一のフラグセットとしてC/C++コンパイラやリンカに渡します。

具体的には:

  • CPPFLAGSCFLAGS: パッケージ内のすべてのGoファイルから集められたCPPFLAGSCFLAGSは、Cファイルのコンパイル時に使用される単一のCPPFLAGSCFLAGSのセットに連結されます。
  • CPPFLAGSCXXFLAGS: 同様に、C++ファイルのコンパイル時には、すべてのCPPFLAGSCXXFLAGSが連結されます。
  • LDFLAGS: プログラム全体(複数のパッケージを含む場合がある)のすべてのLDFLAGSディレクティブは連結され、最終的なリンクステップで一度だけ使用されます。これは、リンカがプログラム全体を構成するすべてのオブジェクトファイルを結合するためです。
  • pkg-config: すべてのpkg-configディレクティブも連結され、pkg-configコマンドにまとめて渡されます。これにより、必要なすべてのライブラリのフラグが一度に取得され、対応するCFLAGSLDFLAGSに追加されます。

この連結動作は、開発者が冗長な#cgoディレクティブを複数のファイルに記述しても、最終的なビルドコマンドが正しく生成されることを保証します。しかし、コミットメッセージが示唆するように、この動作が明示されていなかったために、開発者が不必要に同じディレクティブを繰り返してしまうという混乱が生じていました。このドキュメントの追加により、この動作が明確になり、よりクリーンで効率的なcgoディレクティブの管理が可能になります。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットによるコードの変更は、src/cmd/cgo/doc.goファイルへのドキュメントの追加のみです。実際のcgoの動作を変更するコードは含まれていません。

具体的には、以下の行が追加されました。

All the cgo CPPFLAGS and CFLAGS directives in a package are concatenated and
used to compile C files in that package.  All the CPPFLAGS and CXXFLAGS
directives in a package are concatenated and used to compile C++ files in that
package.  All the LDFLAGS directives in any package in the program are
concatenated and used at link time.  All the pkg-config directives are
concatenated and sent to pkg-config simultaneously to add to each appropriate
set of command-line flags.

この追加は、cmd/cgoのドキュメント内の「#cgo directives」セクションに挿入されています。

コアとなるコードの解説

変更されたファイルsrc/cmd/cgo/doc.goは、cgoコマンドのドキュメントを生成するためのGoソースファイルです。このファイルは、Goの標準ライブラリのドキュメント生成システムによって処理され、最終的にgo doc cmd/cgoコマンドやGoの公式ドキュメントウェブサイトで表示される内容となります。

追加されたテキストは、#cgoディレクティブの処理に関する重要な仕様を明確に記述しています。これは、cgoのユーザーが、複数のGoファイルにわたって#cgoディレクティブをどのように配置すべきか、そしてそれらがビルドプロセスでどのように解釈されるかを理解する上で不可欠な情報です。

このドキュメントの追加は、cgoの内部的な連結ロジックをユーザーに開示することで、以下のようなメリットをもたらします。

  1. 明確性の向上: cgoディレクティブがどのように集約されるかという曖昧さを解消します。
  2. 冗長性の排除: 開発者が同じ#cgoディレクティブを複数のファイルに不必要に繰り返すことを防ぎます。これにより、コードの重複が減り、保守性が向上します。
  3. デバッグの容易化: ビルドエラーや予期せぬ動作が発生した場合に、#cgoディレクティブの処理方法を理解していることで、問題の特定が容易になります。
  4. ベストプラクティスの促進: cgoディレクティブをパッケージ内で一元的に管理する、あるいは少なくともその連結動作を意識した記述を促します。

この変更は、機能的な変更ではなく、ドキュメントの改善を通じてユーザーエクスペリエンスを向上させることを目的としています。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント
  • pkg-configに関する一般的な情報源
  • コミットメッセージに記載されている情報
  • Go言語のソースコード(cmd/cgoおよびgo/build)の一般的な知識I have generated the detailed explanation in Markdown format, following all the specified instructions and chapter structure. I have also included explanations for the prerequisite knowledge and technical details, leveraging web search for comprehensive information. The output is directed to standard output only.
# [インデックス 19439] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の`cmd/cgo`ツールに関するドキュメントの変更です。具体的には、`#cgo`ディレクティブが複数のファイルにわたってどのように連結されるかを明示的に記述することで、その動作を明確にしています。

## コミット

commit 5eb585f211385d28b36f3df66b5bd7bde72a8e43 Author: Pietro Gagliardi pietro10@mac.com Date: Wed May 21 16:01:54 2014 -0700

cmd/cgo: explicitly state that #cgo directives across multiple files are concatenated

This is a quick documentation change/clarification, as this
confused me before: in my own cgo-based projects, I currently have
identical #cgo directives in each relevant source file, and I notice
with go build -x that cgo is combining the directives, leading to
pkg-config invocations with the same package name (gtk+-3.0, in my
case) repeated several times, or on Mac OS X, LDFLAGS listing
-framework Foundation -framework AppKit multiple times. Since I am
about to add a CFLAGS as well, I checked the source to cmd/cgo and
go/build (where the work is actually done) to see if that still holds
true there. Hopefully other people who have made the same mistake I
have (I don't know if anyone has) can remove the excess declarations
now; this should make things slightly easier to manage as well.

LGTM=iant
R=golang-codereviews, gobot, iant
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/91520046

## GitHub上でのコミットページへのリンク

[https://github.com/golang/go/commit/5eb585f211385d28b36f3df66b5bd7bde72a8e43](https://github.com/golang/go/commit/5eb585f211385d28b36f3df66b5bd7bde72a8e43)

## 元コミット内容

このコミットは、`src/cmd/cgo/doc.go`ファイルに以下の変更を加えています。

```diff
--- a/src/cmd/cgo/doc.go
+++ b/src/cmd/cgo/doc.go
@@ -52,6 +52,14 @@ these directives.  Package-specific flags should be set using the
 directives, not the environment variables, so that builds work in
 unmodified environments.
 
+All the cgo CPPFLAGS and CFLAGS directives in a package are concatenated and
+used to compile C files in that package.  All the CPPFLAGS and CXXFLAGS
+directives in a package are concatenated and used to compile C++ files in that
+package.  All the LDFLAGS directives in any package in the program are
+concatenated and used at link time.  All the pkg-config directives are
+concatenated and sent to pkg-config simultaneously to add to each appropriate
+set of command-line flags.
+
 When the Go tool sees that one or more Go files use the special import
 "C", it will look for other non-Go files in the directory and compile
 them as part of the Go package.  Any .c, .s, or .S files will be

追加されたドキュメントは、#cgoディレクティブがGoパッケージ内でどのように処理されるかを明確にしています。

  • パッケージ内のすべてのcgo CPPFLAGSおよびCFLAGSディレクティブは連結され、そのパッケージ内のCファイルのコンパイルに使用されます。
  • パッケージ内のすべてのCPPFLAGSおよびCXXFLAGSディレクティブは連結され、そのパッケージ内のC++ファイルのコンパイルに使用されます。
  • プログラム内の任意のパッケージのすべてのLDFLAGSディレクティブは連結され、リンク時に使用されます。
  • すべてのpkg-configディレクティブは連結され、適切なコマンドラインフラグのセットに追加するためにpkg-configに同時に送信されます。

変更の背景

コミットメッセージによると、この変更は、#cgoディレクティブが複数のGoソースファイルに分散している場合に、それらがどのように処理されるかについての混乱を解消するために行われました。コミットの作者自身が、自身のcgoベースのプロジェクトで、各関連ソースファイルに同一の#cgoディレクティブを記述しており、go build -xを実行すると、cgoがこれらのディレクティブを結合していることに気づいたと述べています。これにより、pkg-configの呼び出しで同じパッケージ名(例: gtk+-3.0)が複数回繰り返されたり、macOSではLDFLAGS-framework Foundation -framework AppKitが複数回リストされたりする現象が発生していました。

作者は、CFLAGSを追加する前に、cmd/cgogo/buildのソースコードを確認し、この結合動作が依然として有効であることを確認しました。このドキュメントの追加は、同様の混乱を経験した可能性のある他の開発者が、冗長な宣言を削除し、プロジェクトの管理を容易にすることを目的としています。

前提知識の解説

このコミットの理解を深めるために、以下の概念について解説します。

GoにおけるCgo

cgoはGo言語の機能の一つで、GoプログラムからC言語のコードを呼び出したり、C言語のコードからGoの関数を呼び出したりすることを可能にします。これにより、既存のCライブラリをGoプロジェクトで再利用したり、パフォーマンスが重要な部分をCで記述したりすることができます。

cgoを使用するには、Goソースファイル内でimport "C"という特別なインポート文を記述します。これにより、GoツールチェーンはCコードの存在を認識し、Cコンパイラ(通常はGCCやClang)を呼び出してCコードをコンパイルし、Goコードとリンクします。

#cgoディレクティブ

#cgoディレクティブは、Goソースファイル内でCコンパイラやリンカに渡すフラグを指定するために使用されます。これらのディレクティブは、Goのコメント形式で記述されますが、cgoツールによって特別に解釈されます。

一般的な#cgoディレクティブの形式は以下の通りです。

// #cgo CFLAGS: -I/path/to/include
// #cgo LDFLAGS: -L/path/to/lib -lfoo
// #cgo pkg-config: gtk+-3.0

コンパイラ/リンカフラグ

  • CPPFLAGS (C PreProcessor Flags): Cプリプロセッサに渡されるフラグです。主にインクルードファイルの検索パス(-I)やマクロ定義(-D)を指定するために使用されます。CおよびC++のコンパイル時に適用されます。
  • CFLAGS (C Compiler Flags): Cコンパイラに渡されるフラグです。最適化レベル(-O)、警告設定(-Wall)、言語標準(-std=c99)などを指定するために使用されます。Cファイルのコンパイル時に適用されます。
  • CXXFLAGS (C++ Compiler Flags): C++コンパイラに渡されるフラグです。CFLAGSと同様に、C++ファイルのコンパイル時に適用されます。
  • LDFLAGS (Linker Flags): リンカに渡されるフラグです。ライブラリの検索パス(-L)、リンクするライブラリ(-l)、フレームワーク(macOSの-framework)などを指定するために使用されます。リンク時に適用されます。

pkg-config

pkg-configは、コンパイル時およびリンク時に必要なライブラリの情報を取得するためのコマンドラインツールです。ライブラリのヘッダファイルのパス、ライブラリファイルのパス、必要なリンカフラグなどを自動的に提供します。

#cgo pkg-config: [package_name]ディレクティブを使用すると、cgoは指定されたパッケージ名でpkg-configを呼び出し、その出力(通常は-I-L-lフラグ)を自動的にCFLAGSLDFLAGSに追加します。これにより、手動でこれらのフラグを記述する手間が省け、ライブラリのバージョンやインストールパスに依存しないビルドが可能になります。

技術的詳細

このコミットが追加するドキュメントは、cgoが複数のGoソースファイルに散らばる#cgoディレクティブをどのように集約して処理するかという、その内部的な動作原理を明確にしています。

Goのビルドプロセスにおいて、go buildコマンドはまず、指定されたパッケージ内のすべてのGoソースファイルをスキャンします。このスキャン中に、import "C"を持つファイルが検出されると、cgoツールが起動されます。cgoは、Goソースファイル内のすべての#cgoディレクティブを解析し、それらを種類ごとに分類します。

重要な点は、cgoパッケージ全体のコンテキストでこれらのディレクティブを処理するという点です。つまり、同じパッケージ内の異なるGoファイルに同じ種類の#cgoディレクティブ(例: CFLAGS)が記述されている場合、cgoはそれらを個別に処理するのではなく、すべてを結合(連結)して単一のフラグセットとしてC/C++コンパイラやリンカに渡します。

具体的には:

  • CPPFLAGSCFLAGS: パッケージ内のすべてのGoファイルから集められたCPPFLAGSCFLAGSは、Cファイルのコンパイル時に使用される単一のCPPFLAGSCFLAGSのセットに連結されます。
  • CPPFLAGSCXXFLAGS: 同様に、C++ファイルのコンパイル時には、すべてのCPPFLAGSCXXFLAGSが連結されます。
  • LDFLAGS: プログラム全体(複数のパッケージを含む場合がある)のすべてのLDFLAGSディレクティブは連結され、最終的なリンクステップで一度だけ使用されます。これは、リンカがプログラム全体を構成するすべてのオブジェクトファイルを結合するためです。
  • pkg-config: すべてのpkg-configディレクティブも連結され、pkg-configコマンドにまとめて渡されます。これにより、必要なすべてのライブラリのフラグが一度に取得され、対応するCFLAGSLDFLAGSに追加されます。

この連結動作は、開発者が冗長な#cgoディレクティブを複数のファイルに記述しても、最終的なビルドコマンドが正しく生成されることを保証します。しかし、コミットメッセージが示唆するように、この動作が明示されていなかったために、開発者が不必要に同じディレクティブを繰り返してしまうという混乱が生じていました。このドキュメントの追加により、この動作が明確になり、よりクリーンで効率的なcgoディレクティブの管理が可能になります。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットによるコードの変更は、src/cmd/cgo/doc.goファイルへのドキュメントの追加のみです。実際のcgoの動作を変更するコードは含まれていません。

具体的には、以下の行が追加されました。

All the cgo CPPFLAGS and CFLAGS directives in a package are concatenated and
used to compile C files in that package.  All the CPPFLAGS and CXXFLAGS
directives in a package are concatenated and used to compile C++ files in that
package.  All the LDFLAGS directives in any package in the program are
concatenated and used at link time.  All the pkg-config directives are
concatenated and sent to pkg-config simultaneously to add to each appropriate
set of command-line flags.

この追加は、cmd/cgoのドキュメント内の「#cgo directives」セクションに挿入されています。

コアとなるコードの解説

変更されたファイルsrc/cmd/cgo/doc.goは、cgoコマンドのドキュメントを生成するためのGoソースファイルです。このファイルは、Goの標準ライブラリのドキュメント生成システムによって処理され、最終的にgo doc cmd/cgoコマンドやGoの公式ドキュメントウェブサイトで表示される内容となります。

追加されたテキストは、#cgoディレクティブの処理に関する重要な仕様を明確に記述しています。これは、cgoのユーザーが、複数のGoファイルにわたって#cgoディレクティブをどのように配置すべきか、そしてそれらがビルドプロセスでどのように解釈されるかを理解する上で不可欠な情報です。

このドキュメントの追加は、cgoの内部的な連結ロジックをユーザーに開示することで、以下のようなメリットをもたらします。

  1. 明確性の向上: cgoディレクティブがどのように集約されるかという曖昧さを解消します。
  2. 冗長性の排除: 開発者が同じ#cgoディレクティブを複数のファイルに不必要に繰り返すことを防ぎます。これにより、コードの重複が減り、保守性が向上します。
  3. デバッグの容易化: ビルドエラーや予期せぬ動作が発生した場合に、#cgoディレクティブの処理方法を理解していることで、問題の特定が容易になります。
  4. ベストプラクティスの促進: cgoディレクティブをパッケージ内で一元的に管理する、あるいは少なくともその連結動作を意識した記述を促します。

この変更は、機能的な変更ではなく、ドキュメントの改善を通じてユーザーエクスペリエンスを向上させることを目的としています。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント
  • pkg-configに関する一般的な情報源
  • コミットメッセージに記載されている情報
  • Go言語のソースコード(cmd/cgoおよびgo/build)の一般的な知識