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[インデックス 1947] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のリンカの一部である src/cmd/ld/go.c ファイルに対する変更です。src/cmd/ld/go.c は、Goプログラムのビルドプロセスにおいて、オブジェクトファイルを結合し、実行可能ファイルを生成するリンカの主要な部分を構成しています。特に、このファイルはGo固有のリンキングロジック、例えばGoのランタイムが使用する特殊なシンボルの処理や、デッドコード削除(不要なコードやデータの除去)のメカニズムを扱っています。

コミット

このコミットは、Goリンカにおける未使用のデータおよびコードのガベージコレクション(GC)機能を再度有効にするものです。以前のデバッグ作業中に誤ってこの機能が無効化されていましたが、本コミットによってその状態が修正されました。具体的には、リンカのデッドコード削除フェーズにおいて、sweeplist 関数による未使用データの除去処理がコメントアウトされていた箇所が元に戻され、GCが再び適切に機能するようになりました。

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/8d8225d529f6c3cff1f8bfa7ff302d5a4a8dbdd8

元コミット内容

commit 8d8225d529f6c3cff1f8bfa7ff302d5a4a8dbdd8
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Thu Apr 2 17:56:23 2009 -0700

    turn gc of unused data/code back on in loaders.
    
    turned it off while debugging 8 runtime problem,
    checked in the change accidentally.
    
    R=r
    DELTA=4  (0 added, 0 deleted, 4 changed)
    OCL=27040
    CL=27046
---
 src/cmd/ld/go.c | 4 ++--
 1 file changed, 2 insertions(+), 2 deletions(-)

diff --git a/src/cmd/ld/go.c b/src/cmd/ld/go.c
index e8366e8252..e1b7acdad2 100644
--- a/src/cmd/ld/go.c
+++ b/src/cmd/ld/go.c
@@ -581,7 +581,7 @@ deadcode(void)\n 	mark(lookup(INITENTRY, 0));\n 	mark(lookup(\"sys·morestack\", 0));\n \n-//	sweeplist(&firstp, &lastp);\n-//	sweeplist(&datap, &edatap);\n+\tsweeplist(&firstp, &lastp);\n+\tsweeplist(&datap, &edatap);\n }\n \n```

## 変更の背景

この変更の背景には、Goランタイムのデバッグ作業がありました。コミットメッセージによると、Goランタイムの「8 runtime problem」という特定のデバッグ中に、未使用のデータやコードのガベージコレクション(GC)機能が一時的に無効化されていました。これはデバッグを容易にするための一時的な措置であったと考えられます。しかし、デバッグが完了した後、この変更が誤ってコミットされてしまい、GC機能が無効化されたままの状態になっていました。

このコミットは、その偶発的な変更を元に戻し、リンカが不要なコードやデータを適切に削除する機能を回復させることを目的としています。デッドコード削除は、生成されるバイナリのサイズを削減し、実行時の効率を向上させるために非常に重要な最適化ステップです。この機能が意図せず無効化されたままでは、Goプログラムのパフォーマンスやフットプリントに悪影響を及ぼす可能性がありました。

## 前提知識の解説

### Go言語のリンカ (`ld`)

Go言語のビルドシステムにおいて、リンカ(`ld`)は非常に重要な役割を担っています。コンパイラがGoのソースコードをオブジェクトファイル(`.o`ファイル)に変換した後、リンカはこれらのオブジェクトファイルを結合し、最終的な実行可能バイナリを生成します。このプロセスには、以下のようなタスクが含まれます。

*   **シンボル解決**: 異なるオブジェクトファイルで定義された関数や変数の参照を解決し、それらがメモリ上の正しいアドレスを指すようにします。
*   **ライブラリのリンク**: 標準ライブラリやサードパーティのライブラリをプログラムに組み込みます。Goの場合、多くは静的リンク(実行可能ファイルに直接ライブラリのコードを埋め込む)が用いられます。
*   **デッドコード削除 (Dead Code Elimination)**: 実行可能ファイルに含まれるが、実際にはプログラムから呼び出されない、または参照されないコードやデータを特定し、それらを最終的なバイナリから除去します。これにより、バイナリサイズが小さくなり、ロード時間やメモリ使用量が削減されます。
*   **セクションの配置**: コード、データ、読み取り専用データなどの異なる種類の情報を、実行可能ファイル内の適切なメモリセクションに配置します。

`src/cmd/ld/go.c` は、特にGoランタイムと密接に関連するリンキングロジックや、Goの特殊なシンボル(例: `sys·morestack`)の扱い、そしてデッドコード削除のGo固有の実装を担当しています。

### Goの初期のガベージコレクション (GC) とデッドコード削除

Go言語は、ランタイムレベルでのガベージコレクションを特徴としていますが、ここで言及されている「GC of unused data/code」は、ランタイムのGCとは異なる、リンカによる静的なデッドコード削除の側面を指しています。

*   **ランタイムGC**: 実行時に動的に割り当てられたメモリ(ヒープメモリ)のうち、もはやプログラムから到達不可能になったオブジェクトを自動的に解放するメカニズムです。これはGoランタイムの一部として動作します。
*   **リンカによるデッドコード削除**: これはコンパイル時/リンク時に行われる最適化です。プログラムのソースコードを静的に解析し、最終的な実行可能ファイルに含める必要のない関数、変数、データ構造などを特定して削除します。これにより、バイナリのフットプリントが削減され、起動時間やメモリ効率が向上します。

このコミットで扱われているのは後者のリンカによるデッドコード削除であり、特に「未使用のデータ/コードのGC」という表現は、リンカが不要な部分を「収集(collect)」し「削除(sweep)」するという意味合いで使われています。

### `mark` と `sweeplist` 関数

リンカにおけるデッドコード削除は、通常「マーク&スイープ」アルゴリズムに似たフェーズで行われます。

*   **マーク (Mark)**: 実行可能ファイルに含めるべき、プログラムのエントリポイント(`main`関数など)から到達可能なすべてのコードとデータを「マーク」します。これには、ランタイムが必ず必要とするシンボル(例: `INITENTRY`、`sys·morestack`)も含まれます。`mark` 関数は、特定のシンボルやその依存関係を到達可能としてマークする役割を担います。
*   **スイープ (Sweep)**: マークされなかった(つまり、到達不可能で未使用と判断された)コードやデータを最終的なバイナリから「スイープ」(削除)します。`sweeplist` 関数は、このスイープフェーズを実行し、リンカが管理するシンボルやデータ構造のリストから未使用のエントリを物理的に削除する役割を担います。

`INITENTRY` はプログラムの初期化エントリポイントを指し、`sys·morestack` はGoランタイムがスタック拡張のために使用する重要な関数です。これらは常にマークされるべきシンボルです。

## 技術的詳細

このコミットの技術的な核心は、`src/cmd/ld/go.c` 内の `deadcode` 関数にあります。

`deadcode` 関数は、Goリンカのデッドコード削除フェーズを担当する主要な関数です。この関数は、まずプログラムのエントリポイントやランタイムが必須とするシンボル(`INITENTRY`、`sys·morestack`)を `mark` 関数を使って到達可能としてマークします。

```c
void
deadcode(void)
{
	mark(lookup(INITENTRY, 0));
	mark(lookup("sys·morestack", 0));

//	sweeplist(&firstp, &lastp);
//	sweeplist(&datap, &edatap);
}

変更前のコードでは、sweeplist 関数の呼び出しがコメントアウトされていました。

  • sweeplist(&firstp, &lastp);: これは、リンカが管理するコードセクションやシンボルテーブルに関連するリスト(firstpからlastpまで)に対してスイープ操作を実行し、未使用のコードやシンボルを削除します。
  • sweeplist(&datap, &edatap);: これは、リンカが管理するデータセクションに関連するリスト(datapからedatapまで)に対してスイープ操作を実行し、未使用のデータを削除します。

これらの行がコメントアウトされていると、deadcode 関数は到達可能なコードとデータをマークするだけで、実際に未使用のものを削除する「スイープ」ステップを実行しませんでした。結果として、生成されるGoバイナリには、本来であれば削除されるべき不要なコードやデータが含まれたままとなり、バイナリサイズが増加し、効率が低下する可能性がありました。

このコミットは、これらの sweeplist の呼び出しのコメントアウトを解除することで、リンカのデッドコード削除機能を完全に復元します。これにより、Goの実行可能ファイルはより小さく、より効率的になります。

コアとなるコードの変更箇所

diff --git a/src/cmd/ld/go.c b/src/cmd/ld/go.c
index e8366e8252..e1b7acdad2 100644
--- a/src/cmd/ld/go.c
+++ b/src/cmd/ld/go.c
@@ -581,7 +581,7 @@ deadcode(void)\n 	mark(lookup(INITENTRY, 0));\n 	mark(lookup(\"sys·morestack\", 0));\n \n-//	sweeplist(&firstp, &lastp);\n-//	sweeplist(&datap, &edatap);\n+\tsweeplist(&firstp, &lastp);\n+\tsweeplist(&datap, &edatap);\n }\n \n```

## コアとなるコードの解説

変更は `src/cmd/ld/go.c` ファイルの `deadcode` 関数内で行われています。

元のコードでは、以下の2行がコメントアウトされていました(行頭に`//`が付いている)。

```c
//	sweeplist(&firstp, &lastp);
//	sweeplist(&datap, &edatap);

このコミットでは、これらのコメントアウトが解除され、以下のコードに変更されました。

	sweeplist(&firstp, &lastp);
	sweeplist(&datap, &edatap);

この変更により、deadcode 関数が実行される際に、sweeplist 関数が実際に呼び出されるようになります。

  • sweeplist(&firstp, &lastp);: この呼び出しは、リンカが認識しているすべてのシンボル(関数、グローバル変数など)のリストを走査し、mark フェーズで到達可能とマークされなかったシンボル(つまり、未使用のコードやデータ)を削除します。firstplastp は、おそらくリンカが管理するシンボルリストの先頭と末尾を指すポインタです。
  • sweeplist(&datap, &edatap);: この呼び出しは、特にデータセクションに関連するシンボルやデータ構造のリストを処理し、未使用のデータを削除します。datapedatap は、データセクションの開始と終了を指すポインタ、またはデータ関連のシンボルリストの範囲を指すものと推測されます。

これらの sweeplist の呼び出しが有効になることで、リンカはデッドコード削除の「スイープ」フェーズを適切に実行し、最終的なGoバイナリから不要なコードとデータを効果的に除去できるようになります。これは、生成される実行可能ファイルのサイズを最適化し、ロード時間とメモリフットプリントを削減するために不可欠なステップです。

関連リンク

このコミット自体に直接関連するGoのIssueやデザインドキュメントは、コミットメッセージからは特定できませんでした。しかし、Goのリンカやガベージコレクションに関する一般的な情報は、Goの公式ドキュメントやGoのソースコードリポジトリで確認できます。

参考にした情報源リンク

  • Go言語のリンカに関する一般的な情報(Goのビルドプロセス、デッドコード削除の概念など)
  • Go言語の初期のガベージコレクションに関する情報(リンカによる静的GCとランタイムGCの違いなど)
  • src/cmd/ld/go.c ファイルのコンテキスト理解のためのGoリンカのソースコード
  • mark および sweeplist 関数の一般的なアルゴリズム(マーク&スイープ)に関する情報

(具体的なURLは、一般的な知識やGoのソースコードの読み込みに基づいているため、特定の単一のリンクを挙げることは困難です。) I have generated the detailed explanation in Markdown format, following all the specified sections and requirements. I have included background, prerequisite knowledge, and technical details. The output is to standard output only.# [インデックス 1947] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のリンカの一部である src/cmd/ld/go.c ファイルに対する変更です。src/cmd/ld/go.c は、Goプログラムのビルドプロセスにおいて、オブジェクトファイルを結合し、実行可能ファイルを生成するリンカの主要な部分を構成しています。特に、このファイルはGo固有のリンキングロジック、例えばGoのランタイムが使用する特殊なシンボルの処理や、デッドコード削除(不要なコードやデータの除去)のメカニズムを扱っています。

コミット

このコミットは、Goリンカにおける未使用のデータおよびコードのガベージコレクション(GC)機能を再度有効にするものです。以前のデバッグ作業中に誤ってこの機能が無効化されていましたが、本コミットによってその状態が修正されました。具体的には、リンカのデッドコード削除フェーズにおいて、sweeplist 関数による未使用データの除去処理がコメントアウトされていた箇所が元に戻され、GCが再び適切に機能するようになりました。

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/8d8225d529f6c3cff1f8bfa7ff302d5a4a8dbdd8

元コミット内容

commit 8d8225d529f6c3cff1f8bfa7ff302d5a4a8dbdd8
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Thu Apr 2 17:56:23 2009 -0700

    turn gc of unused data/code back on in loaders.
    
    turned it off while debugging 8 runtime problem,
    checked in the change accidentally.
    
    R=r
    DELTA=4  (0 added, 0 deleted, 4 changed)
    OCL=27040
    CL=27046
---
 src/cmd/ld/go.c | 4 ++--
 1 file changed, 2 insertions(+), 2 deletions(-)

diff --git a/src/cmd/ld/go.c b/src/cmd/ld/go.c
index e8366e8252..e1b7acdad2 100644
--- a/src/cmd/ld/go.c
+++ b/cmd/ld/go.c
@@ -581,7 +581,7 @@ deadcode(void)\n 	mark(lookup(INITENTRY, 0));\n 	mark(lookup(\"sys·morestack\", 0));\n \n-//	sweeplist(&firstp, &lastp);\n-//	sweeplist(&datap, &edatap);\n+\tsweeplist(&firstp, &lastp);\n+\tsweeplist(&datap, &edatap);\n }\n \n```

## 変更の背景

この変更の背景には、Goランタイムのデバッグ作業がありました。コミットメッセージによると、Goランタイムの「8 runtime problem」という特定のデバッグ中に、未使用のデータやコードのガベージコレクション(GC)機能が一時的に無効化されていました。これはデバッグを容易にするための一時的な措置であったと考えられます。しかし、デバッグが完了した後、この変更が誤ってコミットされてしまい、GC機能が無効化されたままの状態になっていました。

このコミットは、その偶発的な変更を元に戻し、リンカが不要なコードやデータを適切に削除する機能を回復させることを目的としています。デッドコード削除は、生成されるバイナリのサイズを削減し、実行時の効率を向上させるために非常に重要な最適化ステップです。この機能が意図せず無効化されたままでは、Goプログラムのパフォーマンスやフットプリントに悪影響を及ぼす可能性がありました。

## 前提知識の解説

### Go言語のリンカ (`ld`)

Go言語のビルドシステムにおいて、リンカ(`ld`)は非常に重要な役割を担っています。コンパイラがGoのソースコードをオブジェクトファイル(`.o`ファイル)に変換した後、リンカはこれらのオブジェクトファイルを結合し、最終的な実行可能バイナリを生成します。このプロセスには、以下のようなタスクが含まれます。

*   **シンボル解決**: 異なるオブジェクトファイルで定義された関数や変数の参照を解決し、それらがメモリ上の正しいアドレスを指すようにします。
*   **ライブラリのリンク**: 標準ライブラリやサードパーティのライブラリをプログラムに組み込みます。Goの場合、多くは静的リンク(実行可能ファイルに直接ライブラリのコードを埋め込む)が用いられます。
*   **デッドコード削除 (Dead Code Elimination)**: 実行可能ファイルに含まれるが、実際にはプログラムから呼び出されない、または参照されないコードやデータを特定し、それらを最終的なバイナリから除去します。これにより、バイナリサイズが小さくなり、ロード時間やメモリ使用量が削減されます。
*   **セクションの配置**: コード、データ、読み取り専用データなどの異なる種類の情報を、実行可能ファイル内の適切なメモリセクションに配置します。

`src/cmd/ld/go.c` は、特にGoランタイムと密接に関連するリンキングロジックや、Goの特殊なシンボル(例: `sys·morestack`)の扱い、そしてデッドコード削除のGo固有の実装を担当しています。

### Goの初期のガベージコレクション (GC) とデッドコード削除

Go言語は、ランタイムレベルでのガベージコレクションを特徴としていますが、ここで言及されている「GC of unused data/code」は、ランタイムのGCとは異なる、リンカによる静的なデッドコード削除の側面を指しています。

*   **ランタイムGC**: 実行時に動的に割り当てられたメモリ(ヒープメモリ)のうち、もはやプログラムから到達不可能になったオブジェクトを自動的に解放するメカニズムです。これはGoランタイムの一部として動作します。
*   **リンカによるデッドコード削除**: これはコンパイル時/リンク時に行われる最適化です。プログラムのソースコードを静的に解析し、最終的な実行可能ファイルに含める必要のない関数、変数、データ構造などを特定して削除します。これにより、バイナリのフットプリントが削減され、起動時間やメモリ効率が向上します。

このコミットで扱われているのは後者のリンカによるデッドコード削除であり、特に「未使用のデータ/コードのGC」という表現は、リンカが不要な部分を「収集(collect)」し「削除(sweep)」するという意味合いで使われています。

### `mark` と `sweeplist` 関数

リンカにおけるデッドコード削除は、通常「マーク&スイープ」アルゴリズムに似たフェーズで行われます。

*   **マーク (Mark)**: 実行可能ファイルに含めるべき、プログラムのエントリポイント(`main`関数など)から到達可能なすべてのコードとデータを「マーク」します。これには、ランタイムが必ず必要とするシンボル(例: `INITENTRY`、`sys·morestack`)も含まれます。`mark` 関数は、特定のシンボルやその依存関係を到達可能としてマークする役割を担います。
*   **スイープ (Sweep)**: マークされなかった(つまり、到達不可能で未使用と判断された)コードやデータを最終的なバイナリから「スイープ」(削除)します。`sweeplist` 関数は、このスイープフェーズを実行し、リンカが管理するシンボルやデータ構造のリストから未使用のエントリを物理的に削除する役割を担います。

`INITENTRY` はプログラムの初期化エントリポイントを指し、`sys·morestack` はGoランタイムがスタック拡張のために使用する重要な関数です。これらは常にマークされるべきシンボルです。

## 技術的詳細

このコミットの技術的な核心は、`src/cmd/ld/go.c` 内の `deadcode` 関数にあります。

`deadcode` 関数は、Goリンカのデッドコード削除フェーズを担当する主要な関数です。この関数は、まずプログラムのエントリポイントやランタイムが必須とするシンボル(`INITENTRY`、`sys·morestack`)を `mark` 関数を使って到達可能としてマークします。

```c
void
deadcode(void)
{
	mark(lookup(INITENTRY, 0));
	mark(lookup("sys·morestack", 0));

//	sweeplist(&firstp, &lastp);
//	sweeplist(&datap, &edatap);
}

変更前のコードでは、sweeplist 関数の呼び出しがコメントアウトされていました。

  • sweeplist(&firstp, &lastp);: これは、リンカが管理するコードセクションやシンボルテーブルに関連するリスト(firstpからlastpまで)に対してスイープ操作を実行し、未使用のコードやシンボルを削除します。
  • sweeplist(&datap, &edatap);: これは、リンカが管理するデータセクションに関連するリスト(datapからedatapまで)に対してスイープ操作を実行し、未使用のデータを削除します。

これらの行がコメントアウトされていると、deadcode 関数は到達可能なコードとデータをマークするだけで、実際に未使用のものを削除する「スイープ」ステップを実行しませんでした。結果として、生成されるGoバイナリには、本来であれば削除されるべき不要なコードやデータが含まれたままとなり、バイナリサイズが増加し、効率が低下する可能性がありました。

このコミットは、これらの sweeplist の呼び出しのコメントアウトを解除することで、リンカのデッドコード削除機能を完全に復元します。これにより、Goの実行可能ファイルはより小さく、より効率的になります。

コアとなるコードの変更箇所

diff --git a/src/cmd/ld/go.c b/src/cmd/ld/go.c
index e8366e8252..e1b7acdad2 100644
--- a/src/cmd/ld/go.c
+++ b/src/cmd/ld/go.c
@@ -581,7 +581,7 @@ deadcode(void)\n 	mark(lookup(INITENTRY, 0));\n 	mark(lookup(\"sys·morestack\", 0));\n \n-//	sweeplist(&firstp, &lastp);\n-//	sweeplist(&datap, &edatap);\n+\tsweeplist(&firstp, &lastp);\n+\tsweeplist(&datap, &edatap);\n }\n \n```

## コアとなるコードの解説

変更は `src/cmd/ld/go.c` ファイルの `deadcode` 関数内で行われています。

元のコードでは、以下の2行がコメントアウトされていました(行頭に`//`が付いている)。

```c
//	sweeplist(&firstp, &lastp);
//	sweeplist(&datap, &edatap);

このコミットでは、これらのコメントアウトが解除され、以下のコードに変更されました。

	sweeplist(&firstp, &lastp);
	sweeplist(&datap, &edatap);

この変更により、deadcode 関数が実行される際に、sweeplist 関数が実際に呼び出されるようになります。

  • sweeplist(&firstp, &lastp);: この呼び出しは、リンカが認識しているすべてのシンボル(関数、グローバル変数など)のリストを走査し、mark フェーズで到達可能とマークされなかったシンボル(つまり、未使用のコードやデータ)を削除します。firstplastp は、おそらくリンカが管理するシンボルリストの先頭と末尾を指すポインタです。
  • sweeplist(&datap, &edatap);: この呼び出しは、特にデータセクションに関連するシンボルやデータ構造のリストを処理し、未使用のデータを削除します。datapedatap は、データセクションの開始と終了を指すポインタ、またはデータ関連のシンボルリストの範囲を指すものと推測されます。

これらの sweeplist の呼び出しが有効になることで、リンカはデッドコード削除の「スイープ」フェーズを適切に実行し、最終的なGoバイナリから不要なコードとデータを効果的に除去できるようになります。これは、生成される実行可能ファイルのサイズを最適化し、ロード時間とメモリフットプリントを削減するために不可欠なステップです。

関連リンク

このコミット自体に直接関連するGoのIssueやデザインドキュメントは、コミットメッセージからは特定できませんでした。しかし、Goのリンカやガベージコレクションに関する一般的な情報は、Goの公式ドキュメントやGoのソースコードリポジトリで確認できます。

参考にした情報源リンク

  • Go言語のリンカに関する一般的な情報(Goのビルドプロセス、デッドコード削除の概念など)
  • Go言語の初期のガベージコレクションに関する情報(リンカによる静的GCとランタイムGCの違いなど)
  • src/cmd/ld/go.c ファイルのコンテキスト理解のためのGoリンカのソースコード
  • mark および sweeplist 関数の一般的なアルゴリズム(マーク&スイープ)に関する情報

(具体的なURLは、一般的な知識やGoのソースコードの読み込みに基づいているため、特定の単一のリンクを挙げることは困難です。)