Keyboard shortcuts

Press or to navigate between chapters

Press S or / to search in the book

Press ? to show this help

Press Esc to hide this help

[インデックス 19500] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の公式ドキュメント doc/install-source.html における記述の修正です。具体的には、GO386 環境変数の自動検出に関する説明を更新し、386 および amd64 アーキテクチャの両方でビルドする際に、この自動検出が機能することを明確にしています。これにより、ドキュメントの正確性が向上し、ユーザーがGoのビルドプロセスをより正確に理解できるようになります。

コミット

  • コミットハッシュ: ae1b5c7bd9c907a4f8d097b88a3e882fdfd5a349
  • Author: Shenghou Ma minux@golang.org
  • Date: Wed Jun 4 19:53:37 2014 -0400

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/ae1b5c7bd9c907b88a3e882fdfd5a349

元コミット内容

doc/install-source.html: document that GO386 will be auto-detected when building on both 386 and amd64.
Fixes #8152.

LGTM=iant
R=iant
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/102150046

変更の背景

この変更の背景には、Go言語のビルドシステムにおける GO386 環境変数の挙動に関するドキュメントの曖昧さがありました。GO386 は、32ビットIntelアーキテクチャ(386)をターゲットとする際に、浮動小数点演算の処理方法(387コプロセッサを使用するか、SSE2命令を使用するか)を制御する変数です。

以前のドキュメントでは、GO386 の自動検出が「ネイティブでビルドされた場合」にのみ行われると記述されていました。しかし、実際には 386 アーキテクチャだけでなく、amd64 アーキテクチャ上で 386 向けにクロスコンパイルを行う場合にも、この自動検出は適切に機能していました。

コミットメッセージにある Fixes #8152 は、このドキュメントの不正確さを指摘する内部の課題(バグ報告またはドキュメント改善要求)に対応したものであると推測されます。ドキュメントの記述が実際の挙動と異なることで、ユーザーがGoのビルド設定について誤解する可能性があったため、この修正が必要とされました。

前提知識の解説

1. Go言語のビルドプロセスと環境変数

Go言語は、ソースコードをコンパイルして実行可能なバイナリを生成します。このプロセスは、go build コマンドによって行われます。Goのビルドシステムは、クロスコンパイル(異なるアーキテクチャやOS向けのバイナリを生成すること)を強力にサポートしており、その挙動は様々な環境変数によって制御されます。

2. 386amd64 アーキテクチャ

  • 386: Intel 80386プロセッサに由来する名称で、一般的に32ビットのx86アーキテクチャを指します。古いシステムや、メモリ使用量を抑えたい場合などに使用されます。
  • amd64: AMDが開発した64ビットのx86アーキテクチャの名称ですが、Intelの64ビットプロセッサ(Intel 64)もこれに含まれます。現在主流の64ビットシステムで広く使用されています。

3. GO386 環境変数

GO386 は、Goコンパイラが 386 アーキテクチャをターゲットにする際に、浮動小数点演算をどのように処理するかを決定するための環境変数です。主な設定値は以下の通りです(コミット当時の状況に基づく):

  • 387: 387浮動小数点コプロセッサ(FPU)を使用します。これは古いx86プロセッサで一般的なFPUです。
  • sse2: SSE2(Streaming SIMD Extensions 2)命令セットを使用します。SSE2はIntel Pentium 4以降のプロセッサでサポートされており、より高速な浮動小数点演算を提供します。

Goコンパイラは、ターゲットシステムがSSE2をサポートしているかどうかを自動的に検出し、最適な設定を選択しようとします。この自動検出の挙動が、今回のドキュメント修正の焦点となっています。

4. 浮動小数点演算とFPU/SSE2

浮動小数点演算は、実数をコンピュータで表現し、計算するための方法です。

  • FPU (Floating-Point Unit): 浮動小数点演算を専門に行うプロセッサ内のコンポーネントです。387コプロセッサは、初期のx86プロセッサで外部または統合されたFPUとして機能しました。
  • SSE2 (Streaming SIMD Extensions 2): Intelが開発したSIMD(Single Instruction, Multiple Data)命令セットの一つです。複数のデータを同時に処理できるため、浮動小数点演算を含む大量のデータ処理において高いパフォーマンスを発揮します。現代のほとんどのx86プロセッサはSSE2以降のSIMD命令セットをサポートしています。

技術的詳細

このコミットの技術的なポイントは、Goコンパイラが GO386 の設定を自動検出する際のロジックが、単に「ネイティブビルド」(つまり、386 システム上で 386 向けにビルドする場合)に限定されないという点にあります。

Goのビルドシステムは、クロスコンパイルを非常に重視しています。これは、開発者が自分のマシン(例えば amd64 Linux)上で、異なるターゲット(例えば 386 Windows)向けのバイナリを簡単に生成できることを意味します。

GO386 の自動検出は、コンパイラがターゲットアーキテクチャの能力を判断する際に、ビルドを実行しているホストアーキテクチャも考慮に入れることを示唆しています。具体的には、amd64 ホスト上で 386 ターゲット向けにビルドする場合でも、コンパイラは 386 ターゲットの一般的な能力(例えばSSE2のサポート)を適切に推測し、GO386 のデフォルト値を設定します。

この挙動は、Goの「ビルドの容易さ」という設計思想に合致しています。開発者が手動で GO386 を設定することなく、多くの場合で最適な浮動小数点演算の挙動を得られるように設計されています。今回のドキュメント修正は、この自動検出の範囲が 386amd64 の両方のホストアーキテクチャに及ぶことを明示することで、ユーザーの混乱を防ぎ、より正確な情報を提供することを目的としています。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/doc/install-source.html
+++ b/doc/install-source.html
@@ -457,7 +457,7 @@ installs all commands there.
 </p>
 
 <li><code>$GO386</code> (for <code>386</code> only, default is auto-detected
-if built natively, <code>387</code> if not)
+if built on either <code>386</code> or <code>amd64</code>, <code>387</code> otherwise)
 <p>
 This controls the code generated by 8g to use either the 387 floating-point unit
 (set to <code>387</code>) or SSE2 instructions (set to <code>sse2</code>) for

コアとなるコードの解説

変更は doc/install-source.html ファイルの1行に集中しています。

  • 変更前: if built natively, 387 if not)
  • 変更後: if built on either 386 or amd64, 387 otherwise)

この修正により、GO386 環境変数の自動検出が、386 アーキテクチャ上でビルドされた場合だけでなく、amd64 アーキテクチャ上でビルドされた場合にも適用されることが明確に示されました。

具体的には、386 または amd64 のいずれかのシステムでGoをビルドする際に、386 ターゲット向けの GO386 のデフォルト値が自動的に検出されることを意味します。もしこれらのアーキテクチャ以外でビルドされる場合(例えば、ARMシステムで 386 向けにクロスコンパイルする場合など)、デフォルトは 387 になるという補足も含まれています。

この変更は、ドキュメントの正確性を高め、Goのクロスコンパイル機能を利用する開発者にとって、GO386 の挙動に関する誤解を解消する上で非常に重要です。

関連リンク

参考にした情報源リンク