[インデックス 19552] ファイルの概要
このコミットは、Goコンパイラツールチェーンの一部であるcmd/5c
、cmd/6c
、cmd/8c
、およびcmd/cc
から、未使用のグローバル変数retok
を削除するものです。これにより、コードベースのクリーンアップと保守性の向上が図られています。
コミット
cmd/5c, cmd/6c, cmd/8c, cmd/cc: remove unused global variable retok.
LGTM=bradfitz
R=rsc, iant
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/107160046
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/e9da5fe2795335d11fa4da2e2a383ff4d9786d75
元コミット内容
commit e9da5fe2795335d11fa4da2e2a383ff4d9786d75
Author: Shenghou Ma <minux@golang.org>
Date: Tue Jun 17 02:05:27 2014 -0400
cmd/5c, cmd/6c, cmd/8c, cmd/cc: remove unused global variable retok.
LGTM=bradfitz
R=rsc, iant
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/107160046
---
src/cmd/5c/gc.h | 1 -
src/cmd/6c/gc.h | 1 -
src/cmd/8c/gc.h | 1 -
src/cmd/cc/pgen.c | 2 --
4 files changed, 5 deletions(-)
diff --git a/src/cmd/5c/gc.h b/src/cmd/5c/gc.h
index 40d3a2b070..166900c3a9 100644
--- a/src/cmd/5c/gc.h
+++ b/src/cmd/5c/gc.h
@@ -144,7 +144,6 @@ EXTERN Prog* lastp;
EXTERN int32 maxargsafe;
EXTERN int mnstring;
EXTERN Multab multab[20];
-EXTERN int retok;
extern int hintabsize;
EXTERN Node* nodrat;
EXTERN Node* nodret;
diff --git a/src/cmd/6c/gc.h b/src/cmd/6c/gc.h
index a196e55a80..bc4e36ccd8 100644
--- a/src/cmd/6c/gc.h
+++ b/src/cmd/6c/gc.h
@@ -143,7 +143,6 @@ EXTERN int32 cursafe;
EXTERN Prog* lastp;
EXTERN int32 maxargsafe;
EXTERN int mnstring;
-EXTERN int retok;
EXTERN Node* nodrat;
EXTERN Node* nodret;
EXTERN Node* nodsafe;
diff --git a/src/cmd/8c/gc.h b/src/cmd/8c/gc.h
index 87b8e22bcf..9c4613f562 100644
--- a/src/cmd/8c/gc.h
+++ b/src/cmd/8c/gc.h
@@ -143,7 +143,6 @@ EXTERN int32 cursafe;
EXTERN Prog* lastp;
EXTERN int32 maxargsafe;
EXTERN int mnstring;
-EXTERN int retok;
EXTERN Node* nodrat;
EXTERN Node* nodret;
EXTERN Node* nodsafe;
diff --git a/src/cmd/cc/pgen.c b/src/cmd/cc/pgen.c
index 10bebc196d..0ee13787f0 100644
--- a/src/cmd/cc/pgen.c
+++ b/src/cmd/cc/pgen.c
@@ -155,8 +155,6 @@ codgen(Node *n, Node *nn)\n \t}\n \t}\n \n-\tretok = 0;\n-\n \tcanreach = 1;\n \twarnreach = 1;\n \tgen(n);\n```
## 変更の背景
ソフトウェア開発において、未使用のコードや変数は、コードベースの肥大化、可読性の低下、そして将来的な誤解やバグの原因となる可能性があります。特に、グローバル変数はプログラム全体に影響を及ぼす可能性があるため、その存在は慎重に管理されるべきです。
このコミットの背景には、Goコンパイラの開発プロセスにおける継続的なコード品質向上への取り組みがあります。`retok`というグローバル変数が、Goコンパイラの特定のバックエンド(`5c`, `6c`, `8c`)およびCコンパイラ(`cc`)において、もはや使用されていないことが判明しました。そのため、コードの健全性を保ち、不必要な複雑さを排除するために、この変数を削除する決定がなされました。これにより、コンパイラのコードベースがより簡潔になり、理解しやすくなります。
## 前提知識の解説
* **Goコンパイラツールチェーン**: Go言語のソースコードを機械語に変換するためのツール群です。これには、コンパイラ(`gc`)、アセンブラ(`as`)、リンカ(`ld`)などが含まれます。
* **`cmd/5c`, `cmd/6c`, `cmd/8c`**: これらはGoコンパイラのバックエンドの一部で、それぞれ異なるCPUアーキテクチャに対応しています。
* `cmd/5c`: ARMアーキテクチャ(例: ARMv5, ARMv6, ARMv7)向けのコンパイラバックエンド。
* `cmd/6c`: x86-64(AMD64)アーキテクチャ向けのコンパイラバックエンド。
* `cmd/8c`: ARM64(AArch64)アーキテクチャ向けのコンパイラバックエンド。
これらのディレクトリには、各アーキテクチャに特化したコード生成ロジックや、レジスタ割り当て、命令選択などの最適化に関するコードが含まれています。
* **`cmd/cc`**: Go言語のツールチェーンに含まれるCコンパイラです。Goのランタイムや一部の標準ライブラリはC言語で書かれており、これらをコンパイルするために使用されます。
* **グローバル変数**: プログラムのどの部分からでもアクセス可能な変数です。通常、プログラムの開始時に初期化され、プログラムの終了までメモリに存在します。グローバル変数は、その広範なスコープのために、意図しない副作用を引き起こす可能性があり、使用には注意が必要です。
* **`gc.h`**: Goコンパイラのバックエンドで使用される共通のヘッダーファイルです。コンパイラの内部構造や、様々なグローバル変数、関数プロトタイプなどが定義されています。
* **`pgen.c`**: `cmd/cc`ディレクトリにあるファイルで、おそらくCコードのプロシージャルコード生成(`pgen`は"procedure generation"の略かもしれません)に関連する部分を扱っています。
## 技術的詳細
このコミットは、Goコンパイラの複数のバックエンドおよびCコンパイラにおいて、`retok`という名前のグローバル変数がもはや使用されていないことを特定し、その宣言と代入を削除するものです。
具体的には、以下のファイルから`retok`の宣言が削除されています。
* `src/cmd/5c/gc.h`
* `src/cmd/6c/gc.h`
* `src/cmd/8c/gc.h`
これらのファイルでは、`EXTERN int retok;`という形式で`retok`がグローバル変数として宣言されていました。`EXTERN`マクロは、変数が外部リンケージを持つことを示唆しており、他のファイルから参照可能であることを意味します。
また、`src/cmd/cc/pgen.c`ファイルからは、`retok = 0;`という`retok`への代入処理が削除されています。これは、この変数が以前は特定の処理の開始時に0にリセットされていたことを示唆していますが、その後のコード変更により、この変数の値が利用されなくなったため、代入自体も不要になったと考えられます。
このような未使用変数の削除は、コンパイラのバイナリサイズをわずかに削減し、コンパイル時のメモリ使用量を減らす可能性があります。しかし、主な目的はコードの可読性と保守性の向上です。存在しない変数を参照しようとするコンパイルエラーのリスクを排除し、開発者がコードを理解する際の認知負荷を軽減します。
## コアとなるコードの変更箇所
このコミットによる変更は以下の4つのファイルにわたります。
1. `src/cmd/5c/gc.h`: 1行削除
2. `src/cmd/6c/gc.h`: 1行削除
3. `src/cmd/8c/gc.h`: 1行削除
4. `src/cmd/cc/pgen.c`: 2行削除
合計で5行の削除が行われています。
## コアとなるコードの解説
各ファイルの変更点を詳細に見ていきます。
### `src/cmd/5c/gc.h`, `src/cmd/6c/gc.h`, `src/cmd/8c/gc.h`
これらのファイルは、Goコンパイラの各アーキテクチャ向けバックエンドの共通ヘッダーファイルです。変更内容はすべて同じです。
```diff
--- a/src/cmd/5c/gc.h
+++ b/src/cmd/5c/gc.h
@@ -144,7 +144,6 @@ EXTERN Prog* lastp;
EXTERN int32 maxargsafe;
EXTERN int mnstring;
EXTERN Multab multab[20];
-EXTERN int retok;
extern int hintabsize;
EXTERN Node* nodrat;
EXTERN Node* nodret;
この差分は、EXTERN int retok;
という行が削除されたことを示しています。これは、retok
という名前のグローバル変数の宣言が、これらのヘッダーファイルから完全に削除されたことを意味します。これにより、これらのコンパイラバックエンドにおいてretok
がもはや存在しないことが明確になります。
src/cmd/cc/pgen.c
このファイルは、GoツールチェーンのCコンパイラの一部です。
--- a/src/cmd/cc/pgen.c
+++ b/src/cmd/cc/pgen.c
@@ -155,8 +155,6 @@ codgen(Node *n, Node *nn)\n \t}\n \t}\n \n-\tretok = 0;\n-\n \tcanreach = 1;\n \twarnreach = 1;\n \tgen(n);\
この差分は、codgen
関数内でretok = 0;
という代入文が削除されたことを示しています。以前は、codgen
関数の実行時にretok
変数が0に初期化されていましたが、この変数が他の場所で利用されなくなったため、この初期化処理も不要となり削除されました。
これらの変更は、retok
変数がGoコンパイラおよびCコンパイラのコードベース全体で完全に未使用であることを確認した上で行われた、クリーンアップ作業の一環です。
関連リンク
- Go CL 107160046: https://golang.org/cl/107160046
参考にした情報源リンク
この解説は、提供されたコミット情報とGo言語の一般的な知識に基づいて作成されました。追加の外部情報源は参照していません。