Keyboard shortcuts

Press or to navigate between chapters

Press S or / to search in the book

Press ? to show this help

Press Esc to hide this help

[インデックス 19555] ファイルの概要

このコミットは、Goランタイムのstring_test.goファイル内の特定のワイド文字列テストケースを一時的に無効化するものです。これは、テストが期待通りに動作しない、または問題を引き起こしている可能性があり、その原因究明と修正のための暫定的な措置として行われました。

コミット

commit f2147cd740810ac50b56f96f429ef6b47245e904
Author: Keith Randall <khr@golang.org>
Date:   Tue Jun 17 00:45:39 2014 -0700

    runtime: disable funky wide string test for now.
    
    TBR=bradfitz
    R=bradfitz
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/105280045
---
 src/pkg/runtime/string_test.go | 2 +-| 1 file changed, 1 insertion(+), 1 deletion(-)

diff --git a/src/pkg/runtime/string_test.go b/src/pkg/runtime/string_test.go
index 28a5c6bd1e..cd253b2349 100644
--- a/src/pkg/runtime/string_test.go
+++ b/src/pkg/runtime/string_test.go
@@ -104,7 +104,7 @@ func BenchmarkRuneIterate2(b *testing.B) {
 func TestStringW(t *testing.T) {
  strings := []string{
  "hello",
-		"a\\u5566\\u7788\\b",
+		//\"a\\u5566\\u7788b\",
  }
 
  for _, s := range strings {

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/f2147cd740810ac50b56f96f429ef6b47245e904

元コミット内容

このコミットの目的は、「一時的に奇妙なワイド文字列テストを無効にする」ことです。これは、src/pkg/runtime/string_test.goファイル内の特定のテストケースが、何らかの理由で問題を引き起こしているため、そのテストをコメントアウトして一時的に無効化する変更です。

変更の背景

Go言語のランタイムは、文字列の内部表現と操作において非常に効率的かつ正確であることが求められます。特に、Goの文字列はUTF-8でエンコードされたバイトのシーケンスであり、Unicodeの文字(ルーン)を正しく扱う必要があります。string_test.goのようなテストファイルは、これらの文字列操作が様々なエッジケース(例えば、マルチバイト文字、エスケープシーケンス、無効なUTF-8シーケンスなど)で正しく機能するかを確認するために存在します。

このコミットが行われた背景には、TestStringWというテスト関数内の特定の文字列リテラル "a\\u5566\\u7788\\b" が、当時のGoランタイムの文字列処理、特にワイド文字列(Unicode文字を含む文字列)の扱いにおいて、予期せぬ問題やバグを引き起こしていた可能性が考えられます。コミットメッセージにある「funky wide string test」という表現は、このテストケースが通常の文字列とは異なる、あるいは特定の条件下で問題が顕在化するような特殊なケースであったことを示唆しています。

開発者は、このテストが継続的なインテグレーションや開発プロセスを妨げることを避けるため、問題の根本原因を特定して修正するまでの間、一時的にテストを無効化するという判断を下しました。これは、ソフトウェア開発において一般的なプラクティスであり、問題のあるテストを一時的に無効にすることで、他の開発作業のブロックを解除し、後で集中的に問題解決に取り組むための時間とリソースを確保します。

前提知識の解説

Go言語における文字列とルーン

Go言語において、文字列(string型)は不変なバイトのシーケンスです。Goの文字列リテラルはUTF-8でエンコードされており、Goのソースコード自体もUTF-8で記述されます。

  • バイトとルーン: Goの文字列はバイトの集まりですが、Unicodeの文字は「ルーン(rune)」と呼ばれます。1つのルーンは1バイトから4バイトのUTF-8シーケンスで表現されます。
  • 文字列のイテレーション: for rangeループを使って文字列をイテレートすると、各要素はバイトではなくルーンとして扱われます。これにより、マルチバイト文字も正しく処理できます。
  • エスケープシーケンス: Goの文字列リテラルでは、\uXXXX\UXXXXXXXXのようなUnicodeエスケープシーケンスを使用して、特定のUnicode文字を表現できます。また、\bはバックスペース文字を表すエスケープシーケンスです。

Go言語のテスト

Goには標準でテストフレームワークが組み込まれています。

  • testingパッケージ: Goのテストは、testingパッケージを使用して記述されます。テストファイルは通常、テスト対象のファイルと同じディレクトリに_test.goというサフィックスを付けて配置されます。
  • テスト関数: テスト関数はTestXxx(*testing.T)というシグネチャを持ちます。*testing.Tはテストの状態を管理し、エラー報告などの機能を提供します。
  • ベンチマーク関数: ベンチマーク関数はBenchmarkXxx(*testing.B)というシグネチャを持ち、コードのパフォーマンスを測定するために使用されます。
  • テストの実行: go testコマンドでテストを実行します。

Goランタイム

Goランタイムは、Goプログラムの実行を管理するシステムです。これには、ガベージコレクタ、スケジューラ、メモリ管理、プリミティブ型の操作などが含まれます。src/pkg/runtimeディレクトリには、これらのランタイムのコアコンポーネントのソースコードが含まれています。文字列の内部表現や基本的な操作もランタイムの一部として扱われます。

技術的詳細

このコミットは、src/pkg/runtime/string_test.goファイル内のTestStringW関数に焦点を当てています。この関数は、Goランタイムが様々な種類の文字列、特にUnicode文字を含む「ワイド文字列」をどのように処理するかを検証するために設計されています。

問題のテストケースは、以下の文字列リテラルを含んでいました。 "a\\u5566\\u7788\\b"

この文字列は、以下のような構成になっています。

  • a: 通常のASCII文字
  • \u5566: UnicodeコードポイントU+5566(CJK統合漢字「啦」)
  • \u7788: UnicodeコードポイントU+7788(CJK統合漢字「眯」)
  • \b: バックスペース文字

この文字列が「funky」と表現された理由はいくつか考えられます。

  1. 特殊なUnicode文字の組み合わせ: \u5566\u7788は、一般的なASCII文字とは異なり、マルチバイトのUTF-8シーケンスとしてエンコードされます。これらの文字の組み合わせが、ランタイムの文字列処理ロジック(例えば、ルーンのデコード、文字列の長さ計算、インデックスアクセスなど)において、特定のバグを露呈させた可能性があります。
  2. 制御文字の存在: \b(バックスペース)のような制御文字が文字列内に含まれていることが、特定の環境や処理系で予期せぬ挙動を引き起こした可能性も考えられます。特に、文字列の表示や出力に関するテストであれば、制御文字の扱いは重要になります。
  3. コンパイラ/ランタイムのバグ: 当時のGoコンパイラやランタイムに、特定のUnicodeエスケープシーケンスやマルチバイト文字の組み合わせを正しく処理できないバグが存在した可能性があります。テストが失敗するということは、期待される動作と実際の動作が異なっていたことを意味します。
  4. テスト自体の問題: テストケース自体が、当時のランタイムの挙動と合致しない、あるいはテストの検証ロジックに誤りがあった可能性もゼロではありません。しかし、コミットメッセージが「disable funky wide string test」と述べていることから、テスト対象の文字列が問題の根源であった可能性が高いです。

このコミットは、問題の文字列リテラルをコメントアウトすることで、テストが一時的にスキップされるように変更しています。これは、テストスイート全体の実行を妨げずに、問題の根本原因を後で調査・修正するための典型的なアプローチです。

コアとなるコードの変更箇所

変更はsrc/pkg/runtime/string_test.goファイルにあります。

--- a/src/pkg/runtime/string_test.go
+++ b/src/pkg/runtime/string_test.go
@@ -104,7 +104,7 @@ func BenchmarkRuneIterate2(b *testing.B) {
 func TestStringW(t *testing.T) {
  strings := []string{
  "hello",
-		"a\\u5566\\u7788\\b",
+		//\"a\\u5566\\u7788b\",
  }
 
  for _, s := range strings {

具体的には、TestStringW関数内のstringsスライスから、問題の文字列リテラル "a\\u5566\\u7788\\b" が削除され、代わりにコメントアウトされた行 //\"a\\u5566\\u7788b\", が追加されています。

コアとなるコードの解説

この変更は非常にシンプルで、TestStringWテスト関数がテストする文字列のリストから、特定の1つの文字列を削除(実質的にはコメントアウト)しています。

  • 変更前:
    func TestStringW(t *testing.T) {
        strings := []string{
            "hello",
            "a\\u5566\\u7788\\b", // この行が問題
        }
        // ...
    }
    
  • 変更後:
    func TestStringW(t *testing.T) {
        strings := []string{
            "hello",
            //\"a\\u5566\\u7788b\", // この行がコメントアウトされた
        }
        // ...
    }
    

注目すべきは、コメントアウトされた文字列が元の文字列とわずかに異なっている点です(\\bbになっている)。これは、コメントアウトする際に意図的に変更されたのか、あるいは元のテストケースが実際にbで終わるべきだったのかは、このコミットだけでは判断できません。しかし、重要なのは、この特定のテストケースがテストスイートから一時的に除外されたという事実です。

この変更により、TestStringW関数は、問題を引き起こしていた特定のワイド文字列ケースをテストしなくなります。これにより、テストスイート全体の実行が成功するようになり、開発者は他の作業を進めることができます。ただし、これは根本的なバグ修正ではなく、あくまで一時的な回避策です。このテストケースが将来的に再有効化され、問題が解決されることが期待されます。

関連リンク

参考にした情報源リンク