Keyboard shortcuts

Press or to navigate between chapters

Press S or / to search in the book

Press ? to show this help

Press Esc to hide this help

[インデックス 19686] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のビルドシステムにおいて、Androidプラットフォームをサポート対象のオペレーティングシステムリストに追加するものです。具体的には、go/buildパッケージ内のテストファイルdeps_test.goにおいて、GoがサポートするOSのリストであるgeese変数に"android"が追加されました。これにより、GoのビルドツールがAndroidを正式なビルドターゲットとして認識し、クロスコンパイルなどの処理が適切に行われるようになります。

コミット

commit b0589864dc4e267b75c2ec609985b01f4ec372eb
Author: David Crawshaw <david.crawshaw@zentus.com>
Date:   Tue Jul 8 17:04:18 2014 -0400

    go/build: add android to the flock
    
    LGTM=minux
    R=golang-codereviews, minux
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/108450044

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/b0589864dc4e267b75c2ec609985b01f4ec372eb

元コミット内容

go/build: add android to the flock

LGTM=minux
R=golang-codereviews, minux
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/108450044

変更の背景

Go言語は、その設計当初からクロスコンパイル(あるプラットフォームでコンパイルされたバイナリが別のプラットフォームで実行できること)を強力にサポートしています。Goのビルドシステムは、GOOS(ターゲットOS)やGOARCH(ターゲットアーキテクチャ)といった環境変数に基づいて、適切なソースファイルを選択し、ターゲットプラットフォーム向けのバイナリを生成します。

このコミットが行われた2014年頃は、Go言語がモバイルプラットフォーム、特にAndroidへの対応を強化し始めた時期と重なります。GoプログラムをAndroidデバイス上で実行可能にするためには、GoのツールチェインがAndroidを有効なターゲットOSとして認識し、それに応じたビルドプロセスをサポートする必要があります。

go/buildパッケージは、Goのビルドプロセスにおいて、ソースファイルの解析、パッケージの依存関係の解決、およびビルドタグ(// +buildディレクティブ)の解釈などを担当する重要なコンポーネントです。このパッケージが認識するOSのリストにAndroidが含まれていない場合、Android向けのビルドタグを持つファイルが適切に処理されなかったり、Androidをターゲットとしたビルドがそもそも不可能になったりする可能性があります。

したがって、この変更の背景には、Go言語のAndroidサポートをより堅牢にし、開発者がAndroid向けにGoアプリケーションを容易にビルドできるようにするという目的がありました。

前提知識の解説

Goのビルドシステムとクロスコンパイル

Go言語の大きな特徴の一つは、その優れたクロスコンパイル能力です。開発者は、GOOSGOARCHという環境変数を設定するだけで、現在の実行環境とは異なるOSやアーキテクチャ向けのバイナリを簡単に生成できます。

  • GOOS: ビルドターゲットのオペレーティングシステムを指定します(例: linux, windows, darwin, android)。
  • GOARCH: ビルドターゲットのCPUアーキテクチャを指定します(例: amd64, 386, arm, arm64)。

例えば、Linux上でWindows向けの実行ファイルをビルドするには、GOOS=windows GOARCH=amd64 go buildのようにコマンドを実行します。

go/buildパッケージ

go/buildパッケージは、Goの標準ライブラリの一部であり、Goのソースコードを解析し、ビルドプロセスに必要な情報を提供する役割を担っています。主な機能は以下の通りです。

  • パッケージの検索と解決: 指定されたパスやインポートパスに基づいてGoパッケージを見つけ、その構造を解析します。
  • ビルドタグの処理: Goのソースファイルには、// +build linux,amd64のようなビルドタグを含めることができます。go/buildパッケージは、これらのタグを解釈し、現在のGOOSGOARCHなどの環境設定に基づいて、どのファイルをビルドに含めるべきかを決定します。これにより、プラットフォーム固有のコードを条件付きでコンパイルすることが可能になります。
  • 依存関係の解決: パッケージが依存する他のパッケージを特定し、それらの情報を提供します。

geese変数とGoのサポートOSリスト

Goのビルドシステム内部では、どのオペレーティングシステムが公式にサポートされているか、あるいは特定のビルドロジックが適用されるべきかを判断するために、OS名のリストが使用されることがあります。このコミットで変更されたgeese変数は、go/buildパッケージのテストコード内で、GoがサポートするOSのリストをシミュレートするために使用されています。このリストに"android"を追加することは、GoのビルドシステムがAndroidを他の主要なOS(Linux, Windows, macOSなど)と同等に扱うべきであることを示唆しています。

技術的詳細

このコミットは、src/pkg/go/build/deps_test.goというテストファイル内のgeese変数に"android"という文字列を追加するものです。

go/buildパッケージは、Goのビルドプロセスにおいて、どのソースファイルが特定のビルド条件(例: GOOS=android)に合致するかを判断するために、内部的にOS名のリストを参照します。deps_test.goファイルは、go/buildパッケージの内部ロジック、特に依存関係の解決やビルドタグの処理が正しく機能するかを検証するためのテストスイートの一部です。

geese変数は、テストのコンテキストで、Goが認識するオペレーティングシステムのリストを表現しています。このリストに"android"を追加することで、以下の技術的な影響があります。

  1. Androidの正式な認識: go/buildパッケージが、Androidを他のサポートされているOS(darwin, linux, windowsなど)と同様に、有効なターゲットプラットフォームとして認識するようになります。
  2. ビルドタグの適切な処理: // +build androidのようなビルドタグを持つGoソースファイルが、GOOS=androidが設定されたビルド時に適切に選択され、コンパイル対象に含まれるようになります。これにより、Android固有のAPI呼び出しやシステム機能を利用するコードを、他のプラットフォームのコードと分離して記述し、Android向けビルド時のみに含めることが可能になります。
  3. クロスコンパイルの強化: Goのクロスコンパイル機能がAndroidに対しても完全に機能するよう、内部的な整合性が保たれます。これは、Goでモバイルアプリケーションを開発する上で不可欠な要素です。
  4. テストカバレッジの向上: deps_test.go内のテストは、geeseリストに含まれる各OSに対して、go/buildパッケージの動作を検証します。"android"が追加されたことで、Android環境におけるビルドロジックのテストカバレッジが向上し、将来的なバグの発生を防ぐことに貢献します。

この変更自体はテストファイル内の変数定義の修正ですが、これはGoのビルドシステムがAndroidを公式にサポートし、そのための内部的な準備が整ったことを示す重要なシグナルです。

コアとなるコードの変更箇所

diff --git a/src/pkg/go/build/deps_test.go b/src/pkg/go/build/deps_test.go
index 7421e144f1..22ce8ff15a 100644
--- a/src/pkg/go/build/deps_test.go
+++ b/src/pkg/go/build/deps_test.go
@@ -360,7 +360,7 @@ func allowed(pkg string) map[string]bool {
 }
 
 var bools = []bool{false, true}
-var geese = []string{"darwin", "dragonfly", "freebsd", "linux", "nacl", "netbsd", "openbsd", "plan9", "solaris", "windows"}
+var geese = []string{"android", "darwin", "dragonfly", "freebsd", "linux", "nacl", "netbsd", "openbsd", "plan9", "solaris", "windows"}
 var goarches = []string{"386", "amd64", "arm"}
 
 type osPkg struct {

コアとなるコードの解説

変更はsrc/pkg/go/build/deps_test.goファイルの362行目(変更後)にあります。

元のコード:

var geese = []string{"darwin", "dragonfly", "freebsd", "linux", "nacl", "netbsd", "openbsd", "plan9", "solaris", "windows"}

変更後のコード:

var geese = []string{"android", "darwin", "dragonfly", "freebsd", "linux", "nacl", "netbsd", "openbsd", "plan9", "solaris", "windows"}

この変更は、geeseという文字列スライス(Goにおける配列のようなもの)の初期化リストに、新たに"android"という要素を追加しています。geeseは、go/buildパッケージのテストにおいて、Goがサポートするオペレーティングシステムのリストを表現するために使用される変数です。

この一行の変更が持つ意味は、GoのビルドシステムがAndroidを他の主要なOS(Darwin/macOS, Linux, Windowsなど)と同等の、正式なビルドターゲットとして認識し、そのためのテストカバレッジを確保するという意図を明確に示しています。これにより、Android向けのGoアプリケーション開発が、Goのツールチェインによってよりスムーズにサポートされる基盤が強化されました。

関連リンク

参考にした情報源リンク