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[インデックス 19700] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のビルドツール(cmd/go)において、gccgoツールチェインがCgo関連のCソースファイル(特に_cgo_defun.c)をコンパイルする際に使用するCコンパイラの選択方法を改善するものです。具体的には、これまでハードコードされていたgccの使用を改め、標準的な$CC環境変数の値を尊重するように変更されました。これにより、ユーザーは環境変数を通じて任意のCコンパイラ(例: clang)を指定できるようになり、ビルドの柔軟性が向上します。

コミット

5512f6f3b333c97207a860cf89d78edf6bb38940

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/5512f6f3b333c97207a860cf89d78edf6bb38940

元コミット内容

cmd/go: use $CC to build _cgo_defun.c

LGTM=dave, iant
R=iant, dave
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/112000043

変更の背景

Go言語のビルドシステム、特にgccgoツールチェインを使用する環境において、Cgoによって生成されるCソースファイル(例: _cgo_defun.c)のコンパイルには、これまでCコンパイラとしてgccが直接指定されていました。これは、ユーザーがシステムにインストールされている別のCコンパイラ(例えばclangなど)を使用したい場合でも、その選択を許さないという制約がありました。

このコミットの背景には、ビルドプロセスの柔軟性を高め、ユーザーが自身の開発環境に合わせてCコンパイラを自由に選択できるようにするという目的があります。コミット前のコードには// TODO: Support using clang here (during gccgo build)?というコメントが存在しており、これは開発者自身がこの制限を認識し、将来的な改善点として計画していたことを示しています。このコミットは、その計画された改善を実現し、$CC環境変数を尊重することで、より標準的で期待されるビルド挙動を提供します。

前提知識の解説

  • Go言語のビルドプロセス: Goプログラムは、go buildコマンドによってソースコードから実行可能ファイルにコンパイルされます。このプロセスには、Goコンパイラ(主にgcまたはgccgo)、アセンブラ、リンカなどが関与します。
  • Cgo: Cgoは、GoプログラムからC言語のコードを呼び出したり、C言語のコードからGoの関数を呼び出したりするためのGoツールです。import "C"という特殊なインポート宣言を使用することで、GoとCの間の相互運用を可能にします。Cgoは、GoとCの間のブリッジとなるコード(グルーコード)を自動的に生成します。
  • _cgo_defun.c: CgoがGoとCの連携のために生成する中間ファイルの一つです。このファイルには、CgoによってGoの関数がCから呼び出せるようにするための定義や、Cの関数をGoから呼び出すためのスタブなどが含まれることがあります。これは通常のCソースファイルと同様にCコンパイラによってコンパイルされる必要があります。
  • $CC環境変数: Unix系システムにおいて、CCはCコンパイラを指定するための標準的な環境変数です。例えば、CC=clang go buildのように設定することで、デフォルトのgccではなくclangをCコンパイラとして使用するようにビルドシステムに指示できます。多くのビルドツールやMakefileは、この環境変数の値を尊重するように設計されています。
  • gccgoツールチェイン: Go言語には主に二つのコンパイラツールチェインがあります。一つは公式のgc(Go Compiler)で、もう一つはGCCのフロントエンドとして実装されたgccgoです。gccgoは、GoコードをGCCのバックエンドを通じてコンパイルするため、既存のGCCの最適化やターゲットサポートを活用できるという特徴があります。このコミットは、特にgccgoツールチェインを使用する際のCgoのビルド挙動に関連しています。

技術的詳細

このコミットは、src/cmd/go/build.goファイル内のgccgoToolchain構造体のccメソッドに対する変更です。このccメソッドは、gccgoツールチェインがCgoによって生成されたCソースファイル(例えば_cgo_defun.c)をコンパイルする際に呼び出される内部関数です。

変更前は、このccメソッド内でCコンパイラを呼び出す際に、コンパイラの実行ファイル名として"gcc"という文字列リテラルが直接指定されていました。これは、ユーザーが$CC環境変数に別のCコンパイラ(例: clang)を設定していたとしても、gccgoツールチェインのCgoコンパイルにおいては常にgccが使用されることを意味していました。

変更後、"gcc"の代わりにenvList("CC", defaultCC)が使用されるようになりました。

  • envList関数は、第一引数で指定された環境変数(この場合は"CC")の値を取得しようとします。
  • もし$CC環境変数が設定されていれば、その値(例: "clang")がCコンパイラとして使用されます。
  • もし$CC環境変数が設定されていなければ、第二引数で指定されたデフォルト値(この場合はdefaultCC)がフォールバックとして使用されます。defaultCCは通常、システムにインストールされているデフォルトのCコンパイラ(多くの場合gcc)を指します。

この変更により、gccgoツールチェインを使用するGoプロジェクトのビルドにおいて、Cgo関連のCソースファイルのコンパイルに、ユーザーが指定したCコンパイラ($CC環境変数経由)が適用されるようになります。これは、特定のCコンパイラに依存するライブラリを使用する場合や、クロスコンパイル環境で特定のツールチェインを使用する場合など、より多様なビルド環境への対応を可能にします。また、コミット前のコードに存在したTODOコメントが削除されたことから、この変更が意図された機能改善であったことが確認できます。

コアとなるコードの変更箇所

src/cmd/go/build.goファイルの以下の行が変更されました。

--- a/src/cmd/go/build.go
+++ b/src/cmd/go/build.go
@@ -1900,8 +1900,7 @@ func (gccgoToolchain) cc(b *builder, p *Package, objdir, ofile, cfile string) er
 	if pkgpath := gccgoCleanPkgpath(p); pkgpath != "" {
 		defs = append(defs, `-D`, `GOPKGPATH="`+pkgpath+`"`)
 	}
-	// TODO: Support using clang here (during gccgo build)?
-	return b.run(p.Dir, p.ImportPath, nil, "gcc", "-Wall", "-g",
+	return b.run(p.Dir, p.ImportPath, nil, envList("CC", defaultCC), "-Wall", "-g",
 		"-I", objdir, "-I", inc, "-o", ofile, defs, "-c", cfile)
 }

コアとなるコードの解説

変更された行は、gccgoToolchain構造体のccメソッド内で、Cコンパイラを実行するb.run関数の引数を変更しています。

  • 変更前:

    return b.run(p.Dir, p.ImportPath, nil, "gcc", "-Wall", "-g",
    

    ここでは、Cコンパイラとして文字列リテラル"gcc"が直接指定されていました。これは、b.run関数がシェルコマンドを実行する際に、常にgccというコマンド名を呼び出すことを意味します。

  • 変更後:

    return b.run(p.Dir, p.ImportPath, nil, envList("CC", defaultCC), "-Wall", "-g",
    

    "gcc"envList("CC", defaultCC)に置き換えられました。

    • envList("CC", defaultCC)は、まず環境変数CCの値をチェックします。
    • もしCCが設定されていれば、その値(例: clang)がCコンパイラのコマンド名として使用されます。
    • もしCCが設定されていなければ、defaultCCという内部変数に定義されているデフォルトのCコンパイラ名(通常はgccなど)が使用されます。

この変更により、gccgoツールチェインは、Cgo関連のCソースファイルをコンパイルする際に、ユーザーが$CC環境変数で指定したCコンパイラを優先的に使用するようになります。これにより、ビルド環境のカスタマイズ性が大幅に向上し、特定のCコンパイラに依存するプロジェクトや、異なるCコンパイラでのテストが必要な場合に柔軟に対応できるようになりました。また、削除されたTODOコメントは、この変更が以前から計画されていた機能改善であることを明確に示しています。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語公式ドキュメント (Cgo): https://go.dev/blog/cgo
  • Go言語公式ドキュメント (Build and install commands): https://go.dev/cmd/go/
  • GCCGoに関する情報: https://go.dev/doc/install/gccgo
  • 環境変数CCに関する一般的な情報 (例: GNU Makeのドキュメントなど)I have generated the detailed explanation for the commit. I will now output it to standard output.
# [インデックス 19700] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のビルドツール(`cmd/go`)において、`gccgo`ツールチェインがCgo関連のCソースファイル(特に`_cgo_defun.c`)をコンパイルする際に使用するCコンパイラの選択方法を改善するものです。具体的には、これまでハードコードされていた`gcc`の使用を改め、標準的な`$CC`環境変数の値を尊重するように変更されました。これにより、ユーザーは環境変数を通じて任意のCコンパイラ(例: `clang`)を指定できるようになり、ビルドの柔軟性が向上します。

## コミット

`5512f6f3b333c97207a860cf89d78edf6bb38940`

## GitHub上でのコミットページへのリンク

[https://github.com/golang/go/commit/5512f6f3b333c97207a860cf89d78edf6bb38940](https://github.com/golang/go/commit/5512f6f3b333c97207a860cf89d78edf6bb38940)

## 元コミット内容

cmd/go: use $CC to build _cgo_defun.c

LGTM=dave, iant R=iant, dave CC=golang-codereviews https://golang.org/cl/112000043


## 変更の背景

Go言語のビルドシステム、特に`gccgo`ツールチェインを使用する環境において、Cgoによって生成されるCソースファイル(例: `_cgo_defun.c`)のコンパイルには、これまでCコンパイラとして`gcc`が直接指定されていました。これは、ユーザーがシステムにインストールされている別のCコンパイラ(例えば`clang`など)を使用したい場合でも、その選択を許さないという制約がありました。

このコミットの背景には、ビルドプロセスの柔軟性を高め、ユーザーが自身の開発環境に合わせてCコンパイラを自由に選択できるようにするという目的があります。コミット前のコードには`// TODO: Support using clang here (during gccgo build)?`というコメントが存在しており、これは開発者自身がこの制限を認識し、将来的な改善点として計画していたことを示しています。このコミットは、その計画された改善を実現し、`$CC`環境変数を尊重することで、より標準的で期待されるビルド挙動を提供します。

## 前提知識の解説

*   **Go言語のビルドプロセス**: Goプログラムは、`go build`コマンドによってソースコードから実行可能ファイルにコンパイルされます。このプロセスには、Goコンパイラ(主に`gc`または`gccgo`)、アセンブラ、リンカなどが関与します。
*   **Cgo**: Cgoは、GoプログラムからC言語のコードを呼び出したり、C言語のコードからGoの関数を呼び出したりするためのGoツールです。`import "C"`という特殊なインポート宣言を使用することで、GoとCの間の相互運用を可能にします。Cgoは、GoとCの間のブリッジとなるコード(グルーコード)を自動的に生成します。
*   **`_cgo_defun.c`**: CgoがGoとCの連携のために生成する中間ファイルの一つです。このファイルには、CgoによってGoの関数がCから呼び出せるようにするための定義や、Cの関数をGoから呼び出すためのスタブなどが含まれることがあります。これは通常のCソースファイルと同様にCコンパイラによってコンパイルされる必要があります。
*   **`$CC`環境変数**: Unix系システムにおいて、`CC`はCコンパイラを指定するための標準的な環境変数です。例えば、`CC=clang go build`のように設定することで、デフォルトの`gcc`ではなく`clang`をCコンパイラとして使用するようにビルドシステムに指示できます。多くのビルドツールやMakefileは、この環境変数の値を尊重するように設計されています。
*   **`gccgo`ツールチェイン**: Go言語には主に二つのコンパイラツールチェインがあります。一つは公式の`gc`(Go Compiler)で、もう一つはGCCのフロントエンドとして実装された`gccgo`です。`gccgo`は、GoコードをGCCのバックエンドを通じてコンパイルするため、既存のGCCの最適化やターゲットサポートを活用できるという特徴があります。このコミットは、特に`gccgo`ツールチェインを使用する際のCgoのビルド挙動に関連しています。

## 技術的詳細

このコミットは、`src/cmd/go/build.go`ファイル内の`gccgoToolchain`構造体の`cc`メソッドに対する変更です。この`cc`メソッドは、`gccgo`ツールチェインがCgoによって生成されたCソースファイル(例えば`_cgo_defun.c`)をコンパイルする際に呼び出される内部関数です。

変更前は、この`cc`メソッド内でCコンパイラを呼び出す際に、コンパイラの実行ファイル名として`"gcc"`という文字列リテラルが直接指定されていました。これは、ユーザーが`$CC`環境変数に別のCコンパイラ(例: `clang`)を設定していたとしても、`gccgo`ツールチェインのCgoコンパイルにおいては常に`gcc`が使用されることを意味していました。

変更後、`"gcc"`の代わりに`envList("CC", defaultCC)`が使用されるようになりました。
*   `envList`関数は、第一引数で指定された環境変数(この場合は`"CC"`)の値を取得しようとします。
*   もし`$CC`環境変数が設定されていれば、その値(例: `"clang"`)がCコンパイラとして使用されます。
*   もし`$CC`環境変数が設定されていなければ、第二引数で指定されたデフォルト値(この場合は`defaultCC`)がフォールバックとして使用されます。`defaultCC`は通常、システムにインストールされているデフォルトのCコンパイラ(多くの場合`gcc`)を指します。

この変更により、`gccgo`ツールチェインを使用するGoプロジェクトのビルドにおいて、Cgo関連のCソースファイルのコンパイルに、ユーザーが指定したCコンパイラ(`$CC`環境変数経由)が適用されるようになります。これは、特定のCコンパイラに依存するライブラリを使用する場合や、クロスコンパイル環境で特定のツールチェインを使用する場合など、より多様なビルド環境への対応を可能にします。また、コミット前のコードに存在した`TODO`コメントが削除されたことから、この変更が意図された機能改善であったことが確認できます。

## コアとなるコードの変更箇所

`src/cmd/go/build.go`ファイルの以下の行が変更されました。

```diff
--- a/src/cmd/go/build.go
+++ b/src/cmd/go/build.go
@@ -1900,8 +1900,7 @@ func (gccgoToolchain) cc(b *builder, p *Package, objdir, ofile, cfile string) er
 	if pkgpath := gccgoCleanPkgpath(p); pkgpath != "" {
 		defs = append(defs, `-D`, `GOPKGPATH="`+pkgpath+`"`)
 	}
-	// TODO: Support using clang here (during gccgo build)?
-	return b.run(p.Dir, p.ImportPath, nil, "gcc", "-Wall", "-g",
+	return b.run(p.Dir, p.ImportPath, nil, envList("CC", defaultCC), "-Wall", "-g",
 		"-I", objdir, "-I", inc, "-o", ofile, defs, "-c", cfile)
 }

コアとなるコードの解説

変更された行は、gccgoToolchain構造体のccメソッド内で、Cコンパイラを実行するb.run関数の引数を変更しています。

  • 変更前:

    return b.run(p.Dir, p.ImportPath, nil, "gcc", "-Wall", "-g",
    

    ここでは、Cコンパイラとして文字列リテラル"gcc"が直接指定されていました。これは、b.run関数がシェルコマンドを実行する際に、常にgccというコマンド名を呼び出すことを意味します。

  • 変更後:

    return b.run(p.Dir, p.ImportPath, nil, envList("CC", defaultCC), "-Wall", "-g",
    

    "gcc"envList("CC", defaultCC)に置き換えられました。

    • envList("CC", defaultCC)は、まず環境変数CCの値をチェックします。
    • もしCCが設定されていれば、その値(例: clang)がCコンパイラのコマンド名として使用されます。
    • もしCCが設定されていなければ、defaultCCという内部変数に定義されているデフォルトのCコンパイラ名(通常はgccなど)が使用されます。

この変更により、gccgoツールチェインは、Cgo関連のCソースファイルをコンパイルする際に、ユーザーが$CC環境変数で指定したCコンパイラを優先的に使用するようになります。これにより、ビルド環境のカスタマイズ性が大幅に向上し、特定のCコンパイラに依存するプロジェクトや、異なるCコンパイラでのテストが必要な場合に柔軟に対応できるようになりました。また、削除されたTODOコメントは、この変更が以前から計画されていた機能改善であることを明確に示しています。

関連リンク

参考にした情報源リンク