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[インデックス 19727] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のバージョン1.4における変更点をまとめたドキュメントファイル doc/go1.4.txt に、for range x 構文の導入に関する記述を追加するものです。これは、Go言語の仕様変更を公式ドキュメントに反映させるためのコミットであり、Go 1.4で導入された新しい for range の使用方法を開発者に伝えることを目的としています。

コミット

  • コミットハッシュ: 81e661aa4556901de303e2a87e078896a53df6a6
  • Author: Rob Pike r@golang.org
  • Date: Mon Jul 14 15:45:14 2014 -0700

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/81e661aa4556901de303e2a87e078896a53df6a6

元コミット内容

doc/go1.4.txt: permit for range x

CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/110640044

変更の背景

このコミットの背景には、Go言語の for range ループの使い勝手を向上させるという目的があります。Go 1.4より前のバージョンでは、for range ループを使用してコレクション(文字列、配列、スライス、マップ、チャネルなど)をイテレートする際に、たとえインデックスや値が必要ない場合でも、明示的に変数(例えば for _ = range x { ... }for i := range x { ... })を宣言する必要がありました。

これは、単にコレクションの要素数分だけ処理を繰り返したい場合や、チャネルからの受信を待つ場合など、インデックスや値そのものには関心がないケースにおいて、冗長な記述となっていました。この冗長性を解消し、コードをより簡潔に記述できるようにするため、Go 1.4では for range x { ... } という、インデックス変数や値変数を宣言しない形式が言語仕様として許可されることになりました。

この変更は、Go issue 6102「spec: range should not require a variable.」として議論され、その解決策として導入されました。このコミットは、その仕様変更がGo 1.4のリリースノートに適切に記載されるようにするためのものです。

前提知識の解説

Go言語の for range ループ

Go言語の for range ループは、配列、スライス、文字列、マップ、チャネルといったコレクション型をイテレートするための構文です。基本的な形式は以下の通りです。

  • 配列、スライス、文字列:

    for index, value := range collection {
        // index は要素のインデックス、value は要素の値
    }
    

    index または value のいずれか一方のみが必要な場合は、不要な方をブランク識別子 _ で置き換えることができます。

    for _, value := range collection { // 値のみが必要な場合
        // value は要素の値
    }
    for index := range collection { // インデックスのみが必要な場合
        // index は要素のインデックス
    }
    
  • マップ:

    for key, value := range map_name {
        // key はキー、value は値
    }
    
  • チャネル:

    for value := range channel_name {
        // value はチャネルから受信した値
    }
    

Go言語のリリースノート (doc/go1.4.txt)

Go言語の各バージョンリリース時には、そのバージョンで導入された新機能、変更点、バグ修正などがまとめられたリリースノートが公開されます。doc/go1.4.txt は、Go 1.4のリリースノートの草稿または一部であり、Go言語の公式ドキュメントの一部として、開発者が新しいバージョンで何が変わったのかを把握するための重要な情報源となります。このようなドキュメントは、言語仕様の変更や標準ライブラリの更新など、Goエコシステム全体に影響を与える重要な情報を伝達する役割を担っています。

技術的詳細

Go 1.4で導入された for range x 構文は、for range ループの柔軟性を高め、特定のユースケースにおけるコードの簡潔性を向上させます。

変更前(Go 1.4より前):

// スライスの要素数分だけ処理を繰り返したいが、インデックスも値も不要な場合
for _ = range mySlice {
    fmt.Println("Iteration")
}

// チャネルからの受信を待つが、受信した値は不要な場合
for _ = range myChannel {
    fmt.Println("Received from channel")
}

上記のように、インデックスや値が不要な場合でも、ブランク識別子 _ を使って変数を宣言する必要がありました。これは、構文上の要件であり、コードの意図を直接的に表現する上でのわずかな障壁となっていました。

変更後(Go 1.4以降):

// スライスの要素数分だけ処理を繰り返したいが、インデックスも値も不要な場合
for range mySlice {
    fmt.Println("Iteration")
}

// チャネルからの受信を待つが、受信した値は不要な場合
for range myChannel {
    fmt.Println("Received from channel")
}

Go 1.4以降では、for range x { ... } という形式が許可され、インデックス変数や値変数を完全に省略できるようになりました。これにより、コードがより直感的になり、開発者は本当に必要な情報(この場合はイテレーションの実行そのもの)に集中できるようになります。

この変更は、Go言語の設計哲学である「簡潔さ」と「明瞭さ」に沿ったものです。既存のGoプログラムとの後方互換性は維持されており、以前の形式で書かれたコードも引き続き問題なくコンパイル・実行されます。この仕様変更の実装は、主に構文解析器の調整であり、ランタイムに大きな変更を伴うものではありませんでした。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットによる変更は、doc/go1.4.txt ファイルの以下の部分です。

--- a/doc/go1.4.txt
+++ b/doc/go1.4.txt
@@ -5,6 +5,8 @@ Please keep the descriptions to a single line, starting with the
 package or cmd/xxx directory name, and ending in a CL number.
 Please keep the list sorted (as in sort.Strings of the lines).

+spec: permit for range x (CL 104680043)
+
 encoding/gob: remove unsafe (CL 102680045)
 misc: deleted editor support; refer to https://code.google.com/p/go-wiki/wiki/IDEsAndTextEditorPlugins instead (CL 105470043)
 runtime/race: freebsd is supported (CL 107270043)

具体的には、doc/go1.4.txt の5行目と6行目の間に、以下の行が追加されています。

spec: permit for range x (CL 104680043)

コアとなるコードの解説

追加された行 spec: permit for range x (CL 104680043) は、Go 1.4のリリースノートにおいて、Go言語の仕様変更を簡潔に記述したものです。

  • spec:: これは、Go言語の「仕様 (specification)」に関する変更であることを示します。Go言語の仕様は、言語の動作を定義する公式なドキュメントであり、その変更は言語の根幹に関わるものです。
  • permit for range x: これが、具体的な仕様変更の内容です。for range ループにおいて、インデックス変数や値変数を宣言せずに for range x という形式を許可するという意味です。
  • (CL 104680043): これは、この仕様変更がGoのコードレビューシステム(Gerrit)におけるChange List (CL) 104680043によって導入されたことを示します。CL番号は、関連する具体的なコード変更や議論を追跡するための参照情報となります。

この一行の追加により、Go 1.4のリリースノートを読む開発者は、for range ループの新しい使用方法が言語仕様の一部として正式にサポートされたことを認識できます。これは、Go言語の進化と、開発者の利便性を高めるための継続的な改善努力を示すものです。

関連リンク

参考にした情報源リンク