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[インデックス 1973] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリである path パッケージにおけるパス操作ロジックの改善と、それに関連するテストの追加・修正を行います。特に、パスの結合を行う Join 関数の挙動が変更され、常に Clean 関数を適用することで、より正規化されたパスを生成するようになりました。

コミット

commit 7cbec417b1d1726f1cea5149a0b4138e5da1ce54
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Tue Apr 7 21:53:39 2009 -0700

    fumbly fingers + non-working ^C
    submitted CL without applying edits.
    
    make changes from CL 27142 review
    
    R=r
    DELTA=26  (17 added, 3 deleted, 6 changed)
    OCL=27155
    CL=27199

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/7cbec417b1d1726f1cea5149a0b4138e5da1ce54

元コミット内容

コミットメッセージは、まず「fumbly fingers + non-working ^C」と「submitted CL without applying edits.」という個人的な状況に言及しています。これは、コミット作成者が意図した変更を完全に適用せずにコードレビュー(CL 27142)に提出してしまったことを示唆しています。その上で、「make changes from CL 27142 review」とあり、このコミットが以前のコードレビューで指摘された内容を反映するためのものであることが明確に示されています。

具体的には、src/lib/path.gosrc/lib/path_test.go の2つのファイルが変更され、パス操作に関するロジックとテストが更新されています。

変更の背景

この変更の背景には、Go言語の path パッケージにおけるパスの正規化と結合の挙動をより堅牢かつ予測可能にするという目的があります。特に、Join 関数が単にパス文字列を結合するだけでなく、結合後に Clean 関数を適用することで、冗長なスラッシュ(//)やカレントディレクトリ(.)、親ディレクトリ(..)の要素を適切に処理し、正規化されたパスを返すようにすることが求められました。

コミットメッセージにある「CL 27142 review」は、この変更がコードレビュープロセスを経て行われたことを示しています。コードレビューでは、既存の実装の潜在的な問題点や改善点が指摘され、それに基づいてこのコミットが作成されたと考えられます。これにより、path パッケージの信頼性と使いやすさが向上します。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下のGo言語の path パッケージに関する基本的な知識が必要です。

  • パスの表現: ファイルシステム上の場所を示す文字列。ディレクトリの区切りにはスラッシュ(/)が使われます。
  • 絶対パスと相対パス:
    • 絶対パス: ルートディレクトリ(/)から始まるパスで、ファイルシステム上の特定の位置を一意に示します(例: /home/user/document.txt)。
    • 相対パス: 現在の作業ディレクトリを基準としたパスです(例: document.txt../images/photo.jpg)。
  • . (カレントディレクトリ): パス内で . は現在のディレクトリを指します。例えば、/a/./b/a/b と同じ意味です。
  • .. (親ディレクトリ): パス内で .. は親ディレクトリを指します。例えば、/a/b/../c/a/c と同じ意味です。
  • path.Clean 関数: path.Clean は、パスを正規化するための関数です。以下のルールを適用してパスを「クリーン」な形式に変換します。
    1. 複数のスラッシュを単一のスラッシュに置き換える(例: a//b -> a/b)。
    2. カレントディレクトリを示す . 要素を削除する(例: a/./b -> a/b)。
    3. 親ディレクトリを示す .. 要素とその直前の非 .. 要素を削除する(例: a/b/../c -> a/c)。
    4. ルートパスの先頭にある .. 要素を削除する(例: /../a -> /a)。
    5. 結果が空文字列の場合、. に置き換える。
    6. 結果がスラッシュで終わる場合、そのスラッシュは保持される(ただし、ルートディレクトリ / の場合を除く)。
  • path.Join 関数: path.Join は、複数のパス要素を結合して単一のパスを生成する関数です。通常、要素間にスラッシュを挿入します。このコミット以前は、単純な文字列結合とスラッシュの追加のみを行っていました。
  • path.Ext 関数: path.Ext は、与えられたパスのファイル名拡張子を返します。拡張子がない場合は空文字列を返します。

技術的詳細

このコミットの主要な技術的変更点は、path.Join 関数の実装が path.Clean 関数を利用するように変更されたことです。

変更前: Join 関数は、dirfile を結合する際に、dir が空の場合や dir がスラッシュで終わる場合にのみ特別な処理を行い、それ以外の場合は単純に dir + "/" + file の形式で結合していました。この実装では、結合されたパスが //... といった正規化されていない要素を含んでしまう可能性がありました。

例えば、Join("a", "../b") のようなケースでは、期待される b ではなく a/../b のようなパスが生成され、その後のパス解決で問題を引き起こす可能性がありました。

変更後: Join 関数は、dir が空の場合を除き、常に Clean(dir + "/" + file) を呼び出すようになりました。これにより、Join が返すパスは常に Clean 関数によって正規化された形式になります。

この変更は、path パッケージの利用者が Join の結果を明示的に Clean する必要がなくなるため、APIの使いやすさと堅牢性を向上させます。パスの結合と正規化が一体化されることで、より安全で予測可能なパス操作が可能になります。

また、path.Clean 関数のコメントも微修正され、"Replace multiple slashes by a single slash.""Replace multiple slashes with a single slash." に、"Eliminate each .. path name element (the parent directory)""Eliminate each inner .. path name element (the parent directory)" に変更されています。これは機能的な変更ではなく、説明の明確化を目的としています。特に inner という単語の追加は、ルートパスの先頭にある .. の扱い(Clean のルール4)と区別するためと考えられます。

テストファイル src/lib/path_test.go では、Join 関数の新しい挙動を検証するためのテストケースが追加・修正されています。特に、JoinTest{"a", "", "a/"}JoinTest{"a", "", "a"} に、JoinTest{"a/", "", "a/"}JoinTest{"a/", "", "a"} に変更されたのは、Clean が適用されることで末尾のスラッシュが削除されるケースを反映しています。これは、Clean がパスがディレクトリを表す場合でも末尾のスラッシュを削除する挙動(ただし、ルートディレクトリ / の場合は除く)によるものです。

さらに、TestJoinTestExt という新しいテスト関数が追加され、既存のテストデータ (jointestsexttests) を用いてそれぞれの関数の動作を網羅的に検証するようになりました。これにより、テストカバレッジが向上し、将来の変更に対する回帰テストの基盤が強化されます。

コアとなるコードの変更箇所

src/lib/path.go

--- a/src/lib/path.go
+++ b/src/lib/path.go
@@ -12,9 +12,9 @@ import "io"
 // by purely lexical processing.  It applies the following rules
 // iteratively until no further processing can be done:
 //
-//	1. Replace multiple slashes by a single slash.
+//	1. Replace multiple slashes with a single slash.
 //	2. Eliminate each . path name element (the current directory).
-//	3. Eliminate each .. path name element (the parent directory)
+//	3. Eliminate each inner .. path name element (the parent directory)
 //	   along with the non-.. element that precedes it.
 //	4. Eliminate .. elements that begin a rooted path:
 //	   that is, replace "/.." by "/" at the beginning of a path.
@@ -114,13 +114,10 @@ func Split(path string) (dir, file string) {
 // Join joins dir and file into a single path, adding a separating
 // slash if necessary.  If dir is empty, it returns file.
 func Join(dir, file string) string {
-\tswitch {
-\tcase dir == "":
+\tif dir == "" {
 \t\treturn file;
-\tcase dir[len(dir)-1] == '/':
-\t\treturn dir + file;
 \t}\
-\treturn dir + "/" + file;
+\treturn Clean(dir + "/" + file);
 }
 
 // Ext returns the file name extension used by path.

src/lib/path_test.go

--- a/src/lib/path_test.go
+++ b/src/lib/path_test.go
@@ -97,12 +97,20 @@ type JoinTest struct {
 
 var jointests = []JoinTest {
 	JoinTest{"a", "b", "a/b"},
-\tJoinTest{"a", "", "a/"},
+\tJoinTest{"a", "", "a"},
 	JoinTest{"", "b", "b"},
 	JoinTest{"/", "a", "/a"},
 	JoinTest{"/", "", "/"},
 	JoinTest{"a/", "b", "a/b"},
-\tJoinTest{"a/", "", "a/"},
+\tJoinTest{"a/", "", "a"},
+}
+
+func TestJoin(t *testing.T) {
+	for i, test := range jointests {
+		if p := Join(test.dir, test.file); p != test.path {
+			t.Errorf("Join(%q, %q) = %q, want %q", test.dir, test.file, p, test.path);
+		}
+	}
 }
 
 type ExtTest struct {
@@ -117,3 +125,12 @@ var exttests = []ExtTest {
 	ExtTest{"a.dir/b.go", ".go"},
 	ExtTest{"a.dir/", ""},
 }\n+\n+func TestExt(t *testing.T) {\n+\tfor i, test := range exttests {\n+\t\tif x := Ext(test.path); x != test.ext {\n+\t\t\tt.Errorf("Ext(%q) = %q, want %q", test.path, x, test.ext);\n+\t\t}\n+\t}\n+}\n+\n```

## コアとなるコードの解説

### `src/lib/path.go` の変更点

1.  **`Clean` 関数のコメント修正**:
    *   `// 1. Replace multiple slashes by a single slash.` が `// 1. Replace multiple slashes with a single slash.` に変更されました。これは「by」を「with」に置き換えたもので、意味合いは同じですが、より自然な英語表現になっています。
    *   `// 3. Eliminate each .. path name element (the parent directory)` が `// 3. Eliminate each inner .. path name element (the parent directory)` に変更されました。`inner` という単語が追加されたことで、`..` 要素がパスの途中に現れる場合に適用されるルールであることを明確にしています。これは、`Clean` 関数のルール4(ルートパスの先頭にある `..` の扱い)との区別をより明確にするためのものです。

2.  **`Join` 関数の実装変更**:
    *   変更前は `switch` 文を使って `dir` が空か、末尾がスラッシュかで条件分岐していました。
    *   変更後は `if dir == ""` の条件のみが残り、それ以外の場合は `Clean(dir + "/" + file)` を呼び出すようになりました。
    *   この変更により、`Join` 関数は常に結合されたパスを `Clean` 関数で正規化するようになりました。これにより、`Join` の結果が常に正規化された形式となり、パス操作の堅牢性が向上します。例えば、`Join("a//", "b")` は `a/b` を返し、`Join("a", "../b")` は `b` を返すようになります。

### `src/lib/path_test.go` の変更点

1.  **`jointests` の修正**:
    *   `JoinTest{"a", "", "a/"}` が `JoinTest{"a", "", "a"}` に変更されました。
    *   `JoinTest{"a/", "", "a/"}` が `JoinTest{"a/", "", "a"}` に変更されました。
    *   これらの変更は、`Join` 関数が `Clean` を呼び出すようになった結果、`Join("a", "")` や `Join("a/", "")` のようにファイル名が空の場合に、`Clean` が末尾のスラッシュを削除する挙動を反映しています。`Clean` は、パスがディレクトリを表す場合でも、ルートディレクトリ `/` 以外では末尾のスラッシュを削除します。

2.  **`TestJoin` 関数の追加**:
    *   `func TestJoin(t *testing.T)` という新しいテスト関数が追加されました。
    *   この関数は `jointests` スライスをループし、各テストケースに対して `Join` 関数を呼び出し、期待される結果と比較します。これにより、`Join` 関数の動作が網羅的にテストされるようになりました。

3.  **`TestExt` 関数の追加**:
    *   `func TestExt(t *testing.T)` という新しいテスト関数が追加されました。
    *   この関数は `exttests` スライスをループし、各テストケースに対して `Ext` 関数を呼び出し、期待される結果と比較します。`Ext` 関数自体はこのコミットで変更されていませんが、テストカバレッジを向上させるために追加されたと考えられます。

これらの変更により、`path` パッケージのパス操作がより予測可能で堅牢になり、テストカバレッジも向上しました。

## 関連リンク

*   Go言語 `path` パッケージのドキュメント: [https://pkg.go.dev/path](https://pkg.go.dev/path)
*   Go言語の `path.Clean` 関数の詳細: [https://pkg.go.dev/path#Clean](https://pkg.go.dev/path#Clean)
*   Go言語の `path.Join` 関数の詳細: [https://pkg.go.dev/path#Join](https://pkg.go.dev/path#Join)

## 参考にした情報源リンク

*   Go言語の公式ドキュメント
*   Go言語のソースコード (特に `src/path/path.go` と `src/path/path_test.go`)
*   Go言語のコードレビュープロセスに関する一般的な情報 (CL: Change List)I have generated the detailed technical explanation in Markdown format, following all the specified instructions and chapter structure. The output is to standard output only.
```markdown
# [インデックス 1973] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリである `path` パッケージにおけるパス操作ロジックの改善と、それに関連するテストの追加・修正を行います。特に、パスの結合を行う `Join` 関数の挙動が変更され、常に `Clean` 関数を適用することで、より正規化されたパスを生成するようになりました。

## コミット

commit 7cbec417b1d1726f1cea5149a0b4138e5da1ce54 Author: Russ Cox rsc@golang.org Date: Tue Apr 7 21:53:39 2009 -0700

fumbly fingers + non-working ^C
submitted CL without applying edits.

make changes from CL 27142 review

R=r
DELTA=26  (17 added, 3 deleted, 6 changed)
OCL=27155
CL=27199

## GitHub上でのコミットページへのリンク

[https://github.com/golang/go/commit/7cbec417b1d1726f1cea5149a0b4138e5da1ce54](https://github.com/golang/go/commit/7cbec417b1d1726f1cea5149a0b4138e5da1ce54)

## 元コミット内容

コミットメッセージは、まず「fumbly fingers + non-working ^C」と「submitted CL without applying edits.」という個人的な状況に言及しています。これは、コミット作成者が意図した変更を完全に適用せずにコードレビュー(CL 27142)に提出してしまったことを示唆しています。その上で、「make changes from CL 27142 review」とあり、このコミットが以前のコードレビューで指摘された内容を反映するためのものであることが明確に示されています。

具体的には、`src/lib/path.go` と `src/lib/path_test.go` の2つのファイルが変更され、パス操作に関するロジックとテストが更新されています。

## 変更の背景

この変更の背景には、Go言語の `path` パッケージにおけるパスの正規化と結合の挙動をより堅牢かつ予測可能にするという目的があります。特に、`Join` 関数が単にパス文字列を結合するだけでなく、結合後に `Clean` 関数を適用することで、冗長なスラッシュ(`//`)やカレントディレクトリ(`.`)、親ディレクトリ(`..`)の要素を適切に処理し、正規化されたパスを返すようにすることが求められました。

コミットメッセージにある「CL 27142 review」は、この変更がコードレビュープロセスを経て行われたことを示しています。コードレビューでは、既存の実装の潜在的な問題点や改善点が指摘され、それに基づいてこのコミットが作成されたと考えられます。これにより、`path` パッケージの信頼性と使いやすさが向上します。

## 前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下のGo言語の `path` パッケージに関する基本的な知識が必要です。

*   **パスの表現**: ファイルシステム上の場所を示す文字列。ディレクトリの区切りにはスラッシュ(`/`)が使われます。
*   **絶対パスと相対パス**:
    *   **絶対パス**: ルートディレクトリ(`/`)から始まるパスで、ファイルシステム上の特定の位置を一意に示します(例: `/home/user/document.txt`)。
    *   **相対パス**: 現在の作業ディレクトリを基準としたパスです(例: `document.txt` や `../images/photo.jpg`)。
*   **`.` (カレントディレクトリ)**: パス内で `.` は現在のディレクトリを指します。例えば、`/a/./b` は `/a/b` と同じ意味です。
*   **`..` (親ディレクトリ)**: パス内で `..` は親ディレクトリを指します。例えば、`/a/b/../c` は `/a/c` と同じ意味です。
*   **`path.Clean` 関数**:
    `path.Clean` は、パスを正規化するための関数です。以下のルールを適用してパスを「クリーン」な形式に変換します。
    1.  複数のスラッシュを単一のスラッシュに置き換える(例: `a//b` -> `a/b`)。
    2.  カレントディレクトリを示す `.` 要素を削除する(例: `a/./b` -> `a/b`)。
    3.  親ディレクトリを示す `..` 要素とその直前の非 `..` 要素を削除する(例: `a/b/../c` -> `a/c`)。
    4.  ルートパスの先頭にある `..` 要素を削除する(例: `/../a` -> `/a`)。
    5.  結果が空文字列の場合、`."` に置き換える。
    6.  結果がスラッシュで終わる場合、そのスラッシュは保持される(ただし、ルートディレクトリ `/` の場合を除く)。
*   **`path.Join` 関数**:
    `path.Join` は、複数のパス要素を結合して単一のパスを生成する関数です。通常、要素間にスラッシュを挿入します。このコミット以前は、単純な文字列結合とスラッシュの追加のみを行っていました。
*   **`path.Ext` 関数**:
    `path.Ext` は、与えられたパスのファイル名拡張子を返します。拡張子がない場合は空文字列を返します。

## 技術的詳細

このコミットの主要な技術的変更点は、`path.Join` 関数の実装が `path.Clean` 関数を利用するように変更されたことです。

**変更前**:
`Join` 関数は、`dir` と `file` を結合する際に、`dir` が空の場合や `dir` がスラッシュで終わる場合にのみ特別な処理を行い、それ以外の場合は単純に `dir + "/" + file` の形式で結合していました。この実装では、結合されたパスが `//` や `.`、`..` といった正規化されていない要素を含んでしまう可能性がありました。

例えば、`Join("a", "../b")` のようなケースでは、期待される `b` ではなく `a/../b` のようなパスが生成され、その後のパス解決で問題を引き起こす可能性がありました。

**変更後**:
`Join` 関数は、`dir` が空の場合を除き、常に `Clean(dir + "/" + file)` を呼び出すようになりました。これにより、`Join` が返すパスは常に `Clean` 関数によって正規化された形式になります。

この変更は、`path` パッケージの利用者が `Join` の結果を明示的に `Clean` する必要がなくなるため、APIの使いやすさと堅牢性を向上させます。パスの結合と正規化が一体化されることで、より安全で予測可能なパス操作が可能になります。

また、`path.Clean` 関数のコメントも微修正され、`"Replace multiple slashes by a single slash."` が `"Replace multiple slashes with a single slash."` に、`"Eliminate each .. path name element (the parent directory)"` が `"Eliminate each inner .. path name element (the parent directory)"` に変更されています。これは機能的な変更ではなく、説明の明確化を目的としています。特に `inner` という単語の追加は、ルートパスの先頭にある `..` の扱い(`Clean` のルール4)と区別するためと考えられます。

テストファイル `src/lib/path_test.go` では、`Join` 関数の新しい挙動を検証するためのテストケースが追加・修正されています。特に、`JoinTest{"a", "", "a/"}` が `JoinTest{"a", "", "a"}` に、`JoinTest{"a/", "", "a/"}` が `JoinTest{"a/", "", "a"}` に変更されたのは、`Clean` が適用されることで末尾のスラッシュが削除されるケースを反映しています。これは、`Clean` がパスがディレクトリを表す場合でも末尾のスラッシュを削除する挙動(ただし、ルートディレクトリ `/` の場合は除く)によるものです。

さらに、`TestJoin` と `TestExt` という新しいテスト関数が追加され、既存のテストデータ (`jointests` と `exttests`) を用いてそれぞれの関数の動作を網羅的に検証するようになりました。これにより、テストカバレッジが向上し、将来の変更に対する回帰テストの基盤が強化されます。

## コアとなるコードの変更箇所

### `src/lib/path.go`

```diff
--- a/src/lib/path.go
+++ b/src/lib/path.go
@@ -12,9 +12,9 @@ import "io"
 // by purely lexical processing.  It applies the following rules
 // iteratively until no further processing can be done:
 //
-//	1. Replace multiple slashes by a single slash.
+//	1. Replace multiple slashes with a single slash.
 //	2. Eliminate each . path name element (the current directory).
-//	3. Eliminate each .. path name element (the parent directory)
+//	3. Eliminate each inner .. path name element (the parent directory)
 //	   along with the non-.. element that precedes it.
 //	4. Eliminate .. elements that begin a rooted path:
 //	   that is, replace "/.." by "/" at the beginning of a path.
@@ -114,13 +114,10 @@ func Split(path string) (dir, file string) {
 // Join joins dir and file into a single path, adding a separating
 // slash if necessary.  If dir is empty, it returns file.
 func Join(dir, file string) string {
-\tswitch {
-\tcase dir == "":
+\tif dir == "" {
 \t\treturn file;
-\tcase dir[len(dir)-1] == '/':
-\t\treturn dir + file;
 \t}\
-\treturn dir + "/" + file;
+\treturn Clean(dir + "/" + file);
 }
 
 // Ext returns the file name extension used by path.

src/lib/path_test.go

--- a/src/lib/path_test.go
+++ b/src/lib/path_test.go
@@ -97,12 +97,20 @@ type JoinTest struct {
 
 var jointests = []JoinTest {
 	JoinTest{"a", "b", "a/b"},
-\tJoinTest{"a", "", "a/"},
+\tJoinTest{"a", "", "a"},
 	JoinTest{"", "b", "b"},
 	JoinTest{"/", "a", "/a"},
 	JoinTest{"/", "", "/"},
 	JoinTest{"a/", "b", "a/b"},
-\tJoinTest{"a/", "", "a/"},
+\tJoinTest{"a/", "", "a"},
+}
+
+func TestJoin(t *testing.T) {
+	for i, test := range jointests {
+		if p := Join(test.dir, test.file); p != test.path {
+			t.Errorf("Join(%q, %q) = %q, want %q", test.dir, test.file, p, test.path);
+		}
+	}
 }
 
 type ExtTest struct {
@@ -117,3 +125,12 @@ var exttests = []ExtTest {
 	ExtTest{"a.dir/b.go", ".go"},
 	ExtTest{"a.dir/", ""},
 }\n+\n+func TestExt(t *testing.T) {\n+\tfor i, test := range exttests {\n+\t\tif x := Ext(test.path); x != test.ext {\n+\t\t\tt.Errorf("Ext(%q) = %q, want %q", test.path, x, test.ext);\n+\t\t}\n+\t}\n+}\n+\n```

## コアとなるコードの解説

### `src/lib/path.go` の変更点

1.  **`Clean` 関数のコメント修正**:
    *   `// 1. Replace multiple slashes by a single slash.` が `// 1. Replace multiple slashes with a single slash.` に変更されました。これは「by」を「with」に置き換えたもので、意味合いは同じですが、より自然な英語表現になっています。
    *   `// 3. Eliminate each .. path name element (the parent directory)` が `// 3. Eliminate each inner .. path name element (the parent directory)` に変更されました。`inner` という単語が追加されたことで、`..` 要素がパスの途中に現れる場合に適用されるルールであることを明確にしています。これは、`Clean` 関数のルール4(ルートパスの先頭にある `..` の扱い)との区別をより明確にするためのものです。

2.  **`Join` 関数の実装変更**:
    *   変更前は `switch` 文を使って `dir` が空か、末尾がスラッシュかで条件分岐していました。
    *   変更後は `if dir == ""` の条件のみが残り、それ以外の場合は `Clean(dir + "/" + file)` を呼び出すようになりました。
    *   この変更により、`Join` 関数は常に結合されたパスを `Clean` 関数で正規化するようになりました。これにより、`Join` の結果が常に正規化された形式となり、パス操作の堅牢性が向上します。例えば、`Join("a//", "b")` は `a/b` を返し、`Join("a", "../b")` は `b` を返すようになります。

### `src/lib/path_test.go` の変更点

1.  **`jointests` の修正**:
    *   `JoinTest{"a", "", "a/"}` が `JoinTest{"a", "", "a"}` に変更されました。
    *   `JoinTest{"a/", "", "a/"}` が `JoinTest{"a/", "", "a"}` に変更されました。
    *   これらの変更は、`Join` 関数が `Clean` を呼び出すようになった結果、`Join("a", "")` や `Join("a/", "")` のようにファイル名が空の場合に、`Clean` が末尾のスラッシュを削除する挙動を反映しています。`Clean` は、パスがディレクトリを表す場合でも、ルートディレクトリ `/` 以外では末尾のスラッシュを削除します。

2.  **`TestJoin` 関数の追加**:
    *   `func TestJoin(t *testing.T)` という新しいテスト関数が追加されました。
    *   この関数は `jointests` スライスをループし、各テストケースに対して `Join` 関数を呼び出し、期待される結果と比較します。これにより、`Join` 関数の動作が網羅的にテストされるようになりました。

3.  **`TestExt` 関数の追加**:
    *   `func TestExt(t *testing.T)` という新しいテスト関数が追加されました。
    *   この関数は `exttests` スライスをループし、各テストケースに対して `Ext` 関数を呼び出し、期待される結果と比較します。`Ext` 関数自体はこのコミットで変更されていませんが、テストカバレッジを向上させるために追加されたと考えられます。

これらの変更により、`path` パッケージのパス操作がより予測可能で堅牢になり、テストカバレッジも向上しました。

## 関連リンク

*   Go言語 `path` パッケージのドキュメント: [https://pkg.go.dev/path](https://pkg.go.dev/path)
*   Go言語の `path.Clean` 関数の詳細: [https://pkg.go.dev/path#Clean](https://pkg.go.dev/path#Clean)
*   Go言語の `path.Join` 関数の詳細: [https://pkg.go.dev/path#Join](https://pkg.go.dev/path#Join)

## 参考にした情報源リンク

*   Go言語の公式ドキュメント
*   Go言語のソースコード (特に `src/path/path.go` と `src/path/path_test.go`)
*   Go言語のコードレビュープロセスに関する一般的な情報 (CL: Change List)