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[インデックス 10160] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリ内のいくつかのマイナーなクリーンアップと改善を目的としています。具体的には、冗長な .String() メソッド呼び出しの削除と、os.Error (現在の error インターフェース) の扱いをより堅牢にするための変数名の変更が含まれています。

コミット

  • コミットハッシュ: 92926f54722ce3e67765e440d0d6e5ef6da7474b
  • Author: Russ Cox rsc@golang.org
  • Date: Mon Oct 31 17:53:39 2011 -0400
  • コミットメッセージ:
    pkg: minor cleanup
    
    remove some redundant .String()
    change variable name to make it os.Error-proof
    
    R=golang-dev, iant
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5302075
    

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/92926f54722ce3e67765e440d0d6e5ef6da7474b

元コミット内容

pkg: minor cleanup

remove some redundant .String()
change variable name to make it os.Error-proof

R=golang-dev, iant
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5302075

変更の背景

このコミットは、Go言語の初期段階におけるエラーハンドリングとインターフェースの設計思想の成熟を反映しています。

  1. 冗長な .String() の削除: Go言語の error インターフェース(当時は os.Error)は、Error() string メソッドを定義しています。fmt.Printft.Errorf のようなフォーマット関数は、error 型の値を引数に取ると、自動的にその Error() メソッドを呼び出して文字列表現を取得します。したがって、err.String() のように明示的に String() を呼び出すことは、err が既に error インターフェースを満たしている場合、冗長であるか、あるいは意図しない動作を引き起こす可能性がありました。この変更は、よりGoらしい(idiomatic Go)エラーの扱い方に準拠するためのものです。

  2. os.Error-proofな変数名への変更: recoverError 関数は panic から os.Error 型の値を捕捉し、それを呼び出し元に返すことを目的としています。Goの recover() 関数は interface{} 型の値を返します。panic された値が os.Error 型であるかをチェックし、その値をポインタ経由で呼び出し元のエラー変数に代入する必要があります。元のコードでは、引数名と型アサーションで宣言される変数名が同じ err であり、これがシャドーイング(shadowing)を引き起こし、意図しない変数を参照する可能性がありました。この変更は、このような潜在的なバグを防ぎ、コードの堅牢性を高めるためのものです。

前提知識の解説

Go言語のエラーハンドリング (error インターフェースと os.Error)

Go言語では、エラーは組み込みの error インターフェースによって表現されます。このインターフェースは、単一のメソッド Error() string を持ちます。

type error interface {
    Error() string
}

このコミットが作成された2011年当時は、os.Error という型が使われていましたが、これは後に組み込みの error インターフェースに統合されました。基本的な概念は同じで、エラーの文字列表現を提供します。

fmt.Printft.Errorf (Goのテストフレームワーク testing パッケージのメソッド) のような関数は、error 型の引数を受け取ると、その Error() メソッドを自動的に呼び出してエラーメッセージを取得します。そのため、err.Error() を明示的に呼び出す必要はありません。

panicrecover

Go言語には、例外処理に似た panicrecover というメカニズムがあります。

  • panic: プログラムの実行を停止し、現在のゴルーチンをスタックアンワインド(関数の呼び出しスタックを遡る)させます。通常、回復不可能なエラーやプログラミング上のバグを示すために使用されます。
  • recover: defer 関数内で呼び出された場合、panic からの回復を試み、panic された値を取得します。recovernil 以外の値を返した場合、それは panic が発生したことを意味します。

型アサーション (Type Assertion)

Go言語では、インターフェース型の変数が基となる具体的な型を持っているかどうかをチェックし、その具体的な型の値を取得するために型アサーションを使用します。

value, ok := interfaceValue.(ConcreteType)

ここで ok は、アサーションが成功したかどうかを示すブール値です。

ポインタとシャドーイング

  • ポインタ: Goでは、変数のメモリアドレスを指すポインタを使用できます。関数にポインタを渡すことで、関数内でそのポインタが指す元の変数の値を変更できます。
  • シャドーイング: 内部スコープで外部スコープの変数と同じ名前の新しい変数を宣言すると、内部スコープでは外部スコープの変数が「隠される(shadowed)」状態になります。これは意図しないバグの原因となることがあります。

技術的詳細

このコミットの技術的詳細は、Go言語の型システム、エラーハンドリング、および panic/recover メカニズムの相互作用に深く関連しています。

src/pkg/archive/zip/struct.go の変更

recoverError 関数は、panic から os.Error 型の値を捕捉し、それを呼び出し元のエラー変数に設定するためのものです。

元のコード:

func recoverError(err *os.Error) {
    if e := recover(); e != nil {
        if osErr, ok := e.(os.Error); ok {
            *err = osErr
            return
        }
        panic(e)
    }
}

変更後のコード:

func recoverError(errp *os.Error) { // 引数名を err から errp に変更
    if e := recover(); e != nil {
        if err, ok := e.(os.Error); ok { // 型アサーションの結果を err という変数名で受ける
            *errp = err // ポインタ errp が指す値に、型アサーションで得た err を代入
            return
        }
        panic(e)
    }
}

この変更のポイントは、recoverError 関数の引数名が err から errp (error pointer の略) に変更されたことです。そして、型アサーション e.(os.Error) の結果を受け取る変数が osErr から err に変更されました。

なぜこの変更が必要だったのでしょうか? 元のコードでは、recoverError の引数 err と、型アサーションの結果を受け取る osErr が異なる名前でした。しかし、もし型アサーションの結果を受け取る変数を err と命名した場合、それは関数の引数 err をシャドーイングしてしまいます。

例えば、もし元のコードで osErr の代わりに err を使っていたら:

func recoverError(err *os.Error) { // (A) 関数の引数 err
    if e := recover(); e != nil {
        if err, ok := e.(os.Error); ok { // (B) 新しい変数 err が宣言され、(A) をシャドーイング
            *err = err // !!! ここで (B) の err を (B) の err に代入しようとする
            return
        }
        panic(e)
    }
}

このように、*err = err という行は、recoverError 関数の引数であるポインタ err が指すメモリ位置に、型アサーションで得られた err (つまり panic された os.Error の値) を代入するのではなく、新しい変数 err (型アサーションの結果) の値を、その新しい変数 err 自身に代入しようとするという、意味のない操作になってしまいます。

このコミットでは、関数の引数名を errp に変更することで、このシャドーイングの問題を回避し、*errp = err が正しく「errp が指すメモリ位置に、panic された os.Error の値 err を代入する」という意図通りの動作をするように修正しています。これは、Go言語におけるポインタとスコープの理解の重要性を示す良い例です。

src/pkg/big/int_test.go および src/pkg/big/rat_test.go の変更

これらのファイルでは、t.Errorf の呼び出しにおいて、err.String()err に変更されています。

元のコード:

t.Errorf("#%d error: %s", i, err.String())

変更後のコード:

t.Errorf("#%d error: %s", i, err)

前述の通り、Goの error インターフェースは Error() string メソッドを持ち、fmt.Printf (そして t.Errorf も内部でこれを利用) は error 型の引数を受け取ると、自動的にその Error() メソッドを呼び出します。したがって、err.String() と明示的に呼び出すことは冗長であり、errerror インターフェースを実装している限り、err を直接渡すだけで十分です。これは、Goのフォーマット動詞 %s がインターフェースの String() または Error() メソッドを自動的に呼び出すというGoの慣習に沿った変更です。

コアとなるコードの変更箇所

src/pkg/archive/zip/struct.go

--- a/src/pkg/archive/zip/struct.go
+++ b/src/pkg/archive/zip/struct.go
@@ -60,10 +60,10 @@ type directoryEnd struct {
 	comment            string
 }
 
-func recoverError(err *os.Error) {
+func recoverError(errp *os.Error) {
 	if e := recover(); e != nil {
-\t\tif osErr, ok := e.(os.Error); ok {\n-\t\t\t*err = osErr
+\t\tif err, ok := e.(os.Error); ok {\n+\t\t\t*errp = err
 	\t\treturn
 	\t}
 	\tpanic(e)

src/pkg/big/int_test.go

--- a/src/pkg/big/int_test.go
+++ b/src/pkg/big/int_test.go
@@ -536,7 +536,7 @@ func TestScan(t *testing.T) {
 		buf.Reset()
 		buf.WriteString(test.input)
 		if _, err := fmt.Fscanf(&buf, test.format, x); err != nil {
-\t\t\tt.Errorf("#%d error: %s", i, err.String())\n+\t\t\tt.Errorf("#%d error: %s", i, err)\n 		}
 		if x.String() != test.output {
 			t.Errorf("#%d got %s; want %s", i, x.String(), test.output)

src/pkg/big/rat_test.go

--- a/src/pkg/big/rat_test.go
+++ b/src/pkg/big/rat_test.go
@@ -112,7 +112,7 @@ func TestRatScan(t *testing.T) {
 		_, err := fmt.Fscanf(&buf, "%v", x)
 		if err == nil != test.ok {
 			if test.ok {
-\t\t\t\tt.Errorf("#%d error: %s", i, err.String())\n+\t\t\t\tt.Errorf("#%d error: %s", i, err)\n 			} else {
 				t.Errorf("#%d expected error", i)
 			}

コアとなるコードの解説

src/pkg/archive/zip/struct.gorecoverError 関数

  • 変更前: func recoverError(err *os.Error)
    • 引数名 err は、関数内で panic から回復した os.Error 型の値を格納する変数 osErr とは異なる名前でした。
    • *err = osErr は、引数 err が指すポインタの先に osErr の値を代入していました。
  • 変更後: func recoverError(errp *os.Error)
    • 引数名が errp (error pointer) に変更されました。これにより、関数内で panic から回復した os.Error 型の値を格納する変数 err とのシャドーイングが回避されます。
    • if err, ok := e.(os.Error); ok { ... } の行で、panic された値 eos.Error 型である場合、その値が新しいローカル変数 err に代入されます。
    • *errp = err は、引数 errp が指すポインタの先に、新しく宣言されたローカル変数 err (つまり panic された os.Error の値) を正しく代入します。
    • この変更は、Go言語におけるポインタの扱いと、変数スコープにおけるシャドーイングの潜在的な問題を回避するための堅牢化です。

src/pkg/big/int_test.go および src/pkg/big/rat_test.go のテストコード

  • 変更前: t.Errorf("#%d error: %s", i, err.String())
    • errerror インターフェース(または os.Error)を実装しているにもかかわらず、明示的に String() メソッドを呼び出して文字列を取得していました。
  • 変更後: t.Errorf("#%d error: %s", i, err)
    • err を直接 t.Errorf に渡しています。Goのフォーマット関数は、error 型の引数に対して自動的に Error() メソッド(または String() メソッド)を呼び出して文字列表現を取得するため、String() を明示的に呼び出す必要はありません。
    • この変更は、Go言語の慣用的なエラー出力方法に準拠し、コードの簡潔性と可読性を向上させます。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の error インターフェースに関する公式ドキュメントやブログ記事 (一般的な知識のため特定のURLは記載しませんが、Goのエラーハンドリングに関する基本的な情報源を参照しました。)
  • Go言語の panicrecover に関する公式ドキュメントやブログ記事 (一般的な知識のため特定のURLは記載しませんが、Goの例外処理に関する基本的な情報源を参照しました。)
  • Go言語の変数スコープとシャドーイングに関する情報 (一般的な知識のため特定のURLは記載しませんが、Goの変数スコープに関する基本的な情報源を参照しました。)The user has provided the commit information and requested a detailed technical explanation in Japanese, following a specific chapter structure. I have already extracted the commit details and analyzed the diff. Now I will generate the explanation based on the provided structure and my understanding of the changes.

I will go through each section and populate it with the relevant information and explanations. I will ensure to cover the background, prerequisite knowledge, technical details, and core code changes as requested.

Since I have already read the file and analyzed the content, I don't need to use any further tools for this request. I will now output the explanation.

# [インデックス 10160] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリ内のいくつかのマイナーなクリーンアップと改善を目的としています。具体的には、冗長な `.String()` メソッド呼び出しの削除と、`os.Error` (現在の `error` インターフェース) の扱いをより堅牢にするための変数名の変更が含まれています。

## コミット

- **コミットハッシュ**: `92926f54722ce3e67765e440d0d6e5ef6da7474b`
- **Author**: Russ Cox <rsc@golang.org>
- **Date**: Mon Oct 31 17:53:39 2011 -0400
- **コミットメッセージ**:
    ```
    pkg: minor cleanup

    remove some redundant .String()
    change variable name to make it os.Error-proof

    R=golang-dev, iant
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5302075
    ```

## GitHub上でのコミットページへのリンク

[https://github.com/golang/go/commit/92926f54722ce3e67765e440d0d6e5ef6da7474b](https://github.com/golang/go/commit/92926f54722ce3e67765e440d0d6e5ef6da7474b)

## 元コミット内容

pkg: minor cleanup

remove some redundant .String() change variable name to make it os.Error-proof

R=golang-dev, iant CC=golang-dev https://golang.org/cl/5302075


## 変更の背景

このコミットは、Go言語の初期段階におけるエラーハンドリングとインターフェースの設計思想の成熟を反映しています。

1.  **冗長な `.String()` の削除**: Go言語の `error` インターフェース(当時は `os.Error`)は、`Error() string` メソッドを定義しています。`fmt.Printf` や `t.Errorf` のようなフォーマット関数は、`error` 型の値を引数に取ると、自動的にその `Error()` メソッドを呼び出して文字列表現を取得します。したがって、`err.String()` のように明示的に `String()` を呼び出すことは、`err` が既に `error` インターフェースを満たしている場合、冗長であるか、あるいは意図しない動作を引き起こす可能性がありました。この変更は、よりGoらしい(idiomatic Go)エラーの扱い方に準拠するためのものです。

2.  **`os.Error`-proofな変数名への変更**: `recoverError` 関数は `panic` から `os.Error` 型の値を捕捉し、それを呼び出し元に返すことを目的としています。Goの `recover()` 関数は `interface{}` 型の値を返します。`panic` された値が `os.Error` 型であるかをチェックし、その値をポインタ経由で呼び出し元のエラー変数に代入する必要があります。元のコードでは、引数名と型アサーションで宣言される変数名が同じ `err` であり、これがシャドーイング(shadowing)を引き起こし、意図しない変数を参照する可能性がありました。この変更は、このような潜在的なバグを防ぎ、コードの堅牢性を高めるためのものです。

## 前提知識の解説

### Go言語のエラーハンドリング (`error` インターフェースと `os.Error`)

Go言語では、エラーは組み込みの `error` インターフェースによって表現されます。このインターフェースは、単一のメソッド `Error() string` を持ちます。
```go
type error interface {
    Error() string
}

このコミットが作成された2011年当時は、os.Error という型が使われていましたが、これは後に組み込みの error インターフェースに統合されました。基本的な概念は同じで、エラーの文字列表現を提供します。

fmt.Printft.Errorf (Goのテストフレームワーク testing パッケージのメソッド) のような関数は、error 型の引数を受け取ると、その Error() メソッドを自動的に呼び出してエラーメッセージを取得します。そのため、err.Error() を明示的に呼び出す必要はありません。

panicrecover

Go言語には、例外処理に似た panicrecover というメカニズムがあります。

  • panic: プログラムの実行を停止し、現在のゴルーチンをスタックアンワインド(関数の呼び出しスタックを遡る)させます。通常、回復不可能なエラーやプログラミング上のバグを示すために使用されます。
  • recover: defer 関数内で呼び出された場合、panic からの回復を試み、panic された値を取得します。recovernil 以外の値を返した場合、それは panic が発生したことを意味します。

型アサーション (Type Assertion)

Go言語では、インターフェース型の変数が基となる具体的な型を持っているかどうかをチェックし、その具体的な型の値を取得するために型アサーションを使用します。

value, ok := interfaceValue.(ConcreteType)

ここで ok は、アサーションが成功したかどうかを示すブール値です。

ポインタとシャドーイング

  • ポインタ: Goでは、変数のメモリアドレスを指すポインタを使用できます。関数にポインタを渡すことで、関数内でそのポインタが指す元の変数の値を変更できます。
  • シャドーイング: 内部スコープで外部スコープの変数と同じ名前の新しい変数を宣言すると、内部スコープでは外部スコープの変数が「隠される(shadowed)」状態になります。これは意図しないバグの原因となることがあります。

技術的詳細

このコミットの技術的詳細は、Go言語の型システム、エラーハンドリング、および panic/recover メカニズムの相互作用に深く関連しています。

src/pkg/archive/zip/struct.go の変更

recoverError 関数は、panic から os.Error 型の値を捕捉し、それを呼び出し元のエラー変数に設定するためのものです。

元のコード:

func recoverError(err *os.Error) {
    if e := recover(); e != nil {
        if osErr, ok := e.(os.Error); ok {
            *err = osErr
            return
        }
        panic(e)
    }
}

変更後のコード:

func recoverError(errp *os.Error) { // 引数名を err から errp に変更
    if e := recover(); e != nil {
        if err, ok := e.(os.Error); ok { // 型アサーションの結果を err という変数名で受ける
            *errp = err // ポインタ errp が指す値に、型アサーションで得た err を代入
            return
        }
        panic(e)
    }
}

この変更のポイントは、recoverError 関数の引数名が err から errp (error pointer の略) に変更されたことです。そして、型アサーション e.(os.Error) の結果を受け取る変数が osErr から err に変更されました。

なぜこの変更が必要だったのでしょうか? 元のコードでは、recoverError の引数 err と、型アサーションの結果を受け取る osErr が異なる名前でした。しかし、もし型アサーションの結果を受け取る変数を err と命名した場合、それは関数の引数 err をシャドーイングしてしまいます。

例えば、もし元のコードで osErr の代わりに err を使っていたら:

func recoverError(err *os.Error) { // (A) 関数の引数 err
    if e := recover(); e != nil {
        if err, ok := e.(os.Error); ok { // (B) 新しい変数 err が宣言され、(A) をシャドーイング
            *err = err // !!! ここで (B) の err を (B) の err に代入しようとする
            return
        }
        panic(e)
    }
}

このように、*err = err という行は、recoverError 関数の引数であるポインタ err が指すメモリ位置に、型アサーションで得られた err (つまり panic された os.Error の値) を代入するのではなく、新しい変数 err (型アサーションの結果) の値を、その新しい変数 err 自身に代入しようとするという、意味のない操作になってしまいます。

このコミットでは、関数の引数名を errp に変更することで、このシャドーイングの問題を回避し、*errp = err が正しく「errp が指すメモリ位置に、panic された os.Error の値 err を代入する」という意図通りの動作をするように修正しています。これは、Go言語におけるポインタとスコープの理解の重要性を示す良い例です。

src/pkg/big/int_test.go および src/pkg/big/rat_test.go のテストコード

これらのファイルでは、t.Errorf の呼び出しにおいて、err.String()err に変更されています。

元のコード:

t.Errorf("#%d error: %s", i, err.String())

変更後のコード:

t.Errorf("#%d error: %s", i, err)

前述の通り、Goの error インターフェースは Error() string メソッドを持ち、fmt.Printf (そして t.Errorf も内部でこれを利用) は error 型の引数に対して自動的に Error() メソッド(または String() メソッド)を呼び出します。したがって、err.String() と明示的に呼び出すことは冗長であり、errerror インターフェースを実装している限り、err を直接渡すだけで十分です。これは、Goのフォーマット動詞 %s がインターフェースの String() または Error() メソッドを自動的に呼び出すというGoの慣習に沿った変更です。

コアとなるコードの変更箇所

src/pkg/archive/zip/struct.go

--- a/src/pkg/archive/zip/struct.go
+++ b/src/pkg/archive/zip/struct.go
@@ -60,10 +60,10 @@ type directoryEnd struct {
 	comment            string
 }
 
-func recoverError(err *os.Error) {
+func recoverError(errp *os.Error) {
 	if e := recover(); e != nil {
-\t\tif osErr, ok := e.(os.Error); ok {\n-\t\t\t*err = osErr
+\t\tif err, ok := e.(os.Error); ok {\n+\t\t\t*errp = err
 	\t\treturn
 	\t}
 	\tpanic(e)

src/pkg/big/int_test.go

--- a/src/pkg/big/int_test.go
+++ b/src/pkg/big/int_test.go
@@ -536,7 +536,7 @@ func TestScan(t *testing.T) {
 		buf.Reset()
 		buf.WriteString(test.input)
 		if _, err := fmt.Fscanf(&buf, test.format, x); err != nil {
-\t\t\tt.Errorf("#%d error: %s", i, err.String())\n+\t\t\tt.Errorf("#%d error: %s", i, err)\n 		}
 		if x.String() != test.output {
 			t.Errorf("#%d got %s; want %s", i, x.String(), test.output)

src/pkg/big/rat_test.go

--- a/src/pkg/big/rat_test.go
+++ b/src/pkg/big/rat_test.go
@@ -112,7 +112,7 @@ func TestRatScan(t *testing.T) {
 		_, err := fmt.Fscanf(&buf, "%v", x)
 		if err == nil != test.ok {
 			if test.ok {
-\t\t\t\tt.Errorf("#%d error: %s", i, err.String())\n+\t\t\t\tt.Errorf("#%d error: %s", i, err)\n 			} else {
 				t.Errorf("#%d expected error", i)
 			}

コアとなるコードの解説

src/pkg/archive/zip/struct.gorecoverError 関数

  • 変更前: func recoverError(err *os.Error)
    • 引数名 err は、関数内で panic から回復した os.Error 型の値を格納する変数 osErr とは異なる名前でした。
    • *err = osErr は、引数 err が指すポインタの先に osErr の値を代入していました。
  • 変更後: func recoverError(errp *os.Error)
    • 引数名が errp (error pointer) に変更されました。これにより、関数内で panic から回復した os.Error 型の値を格納する変数 err とのシャドーイングが回避されます。
    • if err, ok := e.(os.Error); ok { ... } の行で、panic された値 eos.Error 型である場合、その値が新しいローカル変数 err に代入されます。
    • *errp = err は、引数 errp が指すポインタの先に、新しく宣言されたローカル変数 err (つまり panic された os.Error の値) を正しく代入します。
    • この変更は、Go言語におけるポインタの扱いと、変数スコープにおけるシャドーイングの潜在的な問題を回避するための堅牢化です。

src/pkg/big/int_test.go および src/pkg/big/rat_test.go のテストコード

  • 変更前: t.Errorf("#%d error: %s", i, err.String())
    • errerror インターフェース(または os.Error)を実装しているにもかかわらず、明示的に String() メソッドを呼び出して文字列を取得していました。
  • 変更後: t.Errorf("#%d error: %s", i, err)
    • err を直接 t.Errorf に渡しています。Goのフォーマット関数は、error 型の引数に対して自動的に Error() メソッド(または String() メソッド)を呼び出して文字列表現を取得するため、String() を明示的に呼び出す必要はありません。
    • この変更は、Go言語の慣用的なエラー出力方法に準拠し、コードの簡潔性と可読性を向上させます。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の error インターフェースに関する公式ドキュメントやブログ記事 (一般的な知識のため特定のURLは記載しませんが、Goのエラーハンドリングに関する基本的な情報源を参照しました。)
  • Go言語の panicrecover に関する公式ドキュメントやブログ記事 (一般的な知識のため特定のURLは記載しませんが、Goの例外処理に関する基本的な情報源を参照しました。)
  • Go言語の変数スコープとシャドーイングに関する情報 (一般的な知識のため特定のURLは記載しませんが、Goの変数スコープに関する基本的な情報源を参照しました。)