[インデックス 10315] ファイルの概要
このコミットは、Go言語プロジェクトのドキュメントファイル doc/devel/weekly.html
に対する修正です。具体的には、HTMLドキュメント内で特殊文字(>
や &
)が正しくHTMLエスケープされていなかった問題を修正し、ブラウザでの表示が意図通りになるように変更を加えています。
コミット
- コミットハッシュ:
98321731f2e09d71ea153e8c6ae8abdf6fa881bd
- 作者: Russ Cox rsc@golang.org
- 日付: 2011年11月9日 水曜日 13:52:02 -0500
- コミットメッセージ:
doc: htmlescape weekly notes R=golang-dev, r CC=golang-dev https://golang.org/cl/5370046
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/98321731f2e09d71ea153e8c6ae8abdf6fa881bd
元コミット内容
doc: htmlescape weekly notes
R=golang-dev, r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5370046
変更の背景
doc/devel/weekly.html
は、Go言語の週次開発ノート(weekly notes)をまとめたHTMLドキュメントです。このドキュメントには、Go言語のパッケージ名の変更、言語仕様の更新、新機能の追加など、開発に関する重要な情報が記述されていました。
しかし、このHTMLファイル内に直接記述された一部の特殊文字(例えば、->
の >
や、&
記号)が、HTMLエンティティ(例: >
や &
)に適切にエスケープされていませんでした。このため、ウェブブラウザでこのドキュメントを表示した際に、これらの文字がHTMLの構文の一部として誤って解釈され、正しくレンダリングされない問題が発生していました。具体的には、->
が単なる >
として表示されたり、&
が正しく表示されなかったりするなど、情報の可読性や正確性が損なわれていました。
このコミットは、これらの表示問題を修正し、ドキュメントが意図した通りにブラウザで表示されるようにするために行われました。これにより、Go言語の開発に関する重要な情報が、正確かつ明瞭に読者に伝わるようになります。
前提知識の解説
HTMLエスケープ
HTML(HyperText Markup Language)は、ウェブページを記述するためのマークアップ言語です。HTMLドキュメント内では、特定の文字が特別な意味を持ちます。例えば、<
はHTMLタグの開始、>
はタグの終了、&
は文字実体参照の開始を示します。これらの特殊文字を、HTMLの構文の一部としてではなく、単なるテキストとして表示したい場合、そのまま記述するとブラウザがHTMLの構文として解釈してしまい、意図しない表示になる可能性があります。この問題を避けるために、特殊文字を「HTMLエンティティ」と呼ばれる形式に変換する処理が必要です。これをHTMLエスケープと呼びます。
主要なHTMLエンティティの例:
>
(大なり記号) は>
にエスケープされます。<
(小なり記号) は<
にエスケープされます。&
(アンパサンド) は&
にエスケープされます。"
(二重引用符) は"
にエスケープされます。'
(単一引用符) は'
または'
にエスケープされます。
Go言語の週次開発ノート (Weekly Notes)
Go言語の開発初期段階では、毎週の進捗や重要な変更点が「Weekly Notes」として公開されていました。これらは開発者コミュニティにとって、Go言語の進化を追跡し、最新の変更に適応するための重要な情報源でした。doc/devel/weekly.html
は、これらのノートをまとめた公式ドキュメントの一つであり、Go言語の設計思想や開発の方向性を理解する上で貴重な資料でした。
Go 1 Plan
Go言語は、バージョン1.0の正式リリースに向けて、言語仕様、標準ライブラリ、ツールチェインの安定化と整理を積極的に進めていました。このコミットで修正された weekly.html
の内容には、Go 1に向けた大規模なパッケージ名の変更(例: asn1
パッケージが encoding/asn1
へ移動するなど)や、APIの変更に関する情報が含まれており、当時のGo言語開発の重要なフェーズを反映しています。Go 1は、Go言語が実用的なプログラミング言語として広く普及するための重要なマイルストーンでした。
gofix
ツール
gofix
は、Go言語のソースコードを、新しいAPIや言語仕様の変更に合わせて自動的に書き換えるためのコマンドラインツールです。Go言語の進化の過程で、後方互換性を維持しつつ、より良い設計や命名規則を導入するために、このような自動変換ツールが非常に重要でした。weekly.html
内でも gofix
が言及されており、当時の開発者が既存のコードベースを新しいGoのバージョンに容易に移行できるようにするための配慮が伺えます。
技術的詳細
このコミットの技術的詳細は、HTMLドキュメントにおける文字エンコーディングとレンダリングの正確性に集約されます。
doc/devel/weekly.html
ファイルは、Go言語の週次開発ノートを記述するために使用されていました。このファイルは、HTMLの <pre>
タグ(整形済みテキストを表示するためのタグ)内で、Go言語のパッケージ名の変更を示す ->
や、その他の技術的な記述に &
などの特殊文字を多用していました。
しかし、これらの文字がHTMLエンティティに変換されずに直接記述されていたため、ウェブブラウザはこれらをHTMLの構文の一部として解釈しようとしました。
->
の場合、>
がHTMLタグの終了記号として解釈され、その後のテキストが正しく表示されない可能性がありました。&
の場合、ブラウザはその後ろに続く文字をHTMLエンティティの一部として解釈しようとし、もし有効なエンティティでなければ、表示が崩れたり、予期しない文字が表示されたりする可能性がありました。
このコミットでは、これらの問題を解決するために、影響を受けるすべての >
を >
に、&
を &
に置換しています。これにより、ブラウザはこれらの文字列をHTMLエンティティとして認識し、正しく「>」や「&」としてレンダリングするようになります。これは、ウェブコンテンツのアクセシビリティと正確性を保証するための基本的なウェブ開発のプラクティスであり、特に技術ドキュメントにおいては、情報の正確な伝達のために不可欠です。
コアとなるコードの変更箇所
変更は doc/devel/weekly.html
ファイルのみです。
具体的には、ファイル内の複数の箇所で以下の置換が行われています。
->
が>
に変更されました。&
が&
に変更されました。
変更例:
--- a/doc/devel/weekly.html
+++ b/doc/devel/weekly.html
@@ -21,33 +21,33 @@ This weekly snapshot renames various Go packages as described in the Go 1 plan.
Import statements in client code can be updated automatically with gofix.
The changes are:
- asn1 -> encoding/asn1
+ asn1 -> encoding/asn1
big -> math/big
cmath -> math/cmplx
csv -> encoding/csv
exec -> os/exec
exp/template/html -> html/template
gob -> encoding/gob
http -> net/http
http/cgi -> net/http/cgi
http/fcgi -> net/http/fcgi
http/httptest -> net/http/httptest
http/pprof -> net/http/pprof
json -> encoding/json
mail -> net/mail
rpc -> net/rpc
rpc/jsonrpc -> net/rpc/jsonrpc
scanner -> text/scanner
smtp -> net/smtp
syslog -> log/syslog
tabwriter -> text/tabwriter
template -> text/template
template/parse -> text/template/parse
rand -> math/rand
url -> net/url
utf16 -> unicode/utf16
utf8 -> unicode/utf8
xml -> encoding/xml
</pre>
<h2 id=\"2011-11-08\">2011-11-08</h2>
@@ -252,7 +252,7 @@ The Go compiler will reject a return statement without arguments when any of
the result variables has been shadowed. Code rejected as a result of this
change is likely to be buggy.\n \n-Receive-only channels (<-chan T) cannot be closed.\n+Receive-only channels (<-chan T) cannot be closed.\n The compiler will diagnose such attempts.\n \n The first element of a map iteration is chosen at random. Code that depends on
@@ -991,7 +991,7 @@ Other changes:\n * exp/regexp/syntax: add Prog.NumCap.\n * exp/template: API changes, bug fixes, and tweaks.\n * flag: make -help nicer.\n-* fmt: Scan(&int) was mishandling a lone digit.\n+* fmt: Scan(&int) was mishandling a lone digit.\n * gc: fix closure bug,\n fix to build with clang (thanks Dave Cheney),\n make size of struct{} and [0]byte 0 bytes (thanks Robert Hencke),\n```
## コアとなるコードの解説
このコミットは、Go言語のコンパイラ、ランタイム、または標準ライブラリの動作に直接的な影響を与えるものではありません。これは、Goプロジェクトの公式ドキュメントである `doc/devel/weekly.html` ファイルに対する修正です。
変更内容は、HTMLファイル内の特定の文字列をHTMLエンティティに置換するという、比較的単純なテキスト置換操作です。これは、テキストエディタの検索・置換機能や、簡単なスクリプトによって容易に実行できる種類の修正です。
この修正の重要性は、Go言語の公式ドキュメントの品質と正確性を維持することにあります。開発者が参照する情報が正しく表示されることは、Go言語の学習と利用を促進する上で不可欠です。誤った表示は、読者の混乱を招き、情報の誤解につながる可能性があります。この変更は、Goコミュニティへの情報提供の質を向上させるという点で、間接的ではありますが重要な意味を持っています。
## 関連リンク
* Go言語の公式ウェブサイト: [https://golang.org/](https://golang.org/)
* Go言語のドキュメント: [https://golang.org/doc/](https://golang.org/doc/)
* Go 1 Release Notes (このコミットが作成された後に公開されたものですが、当時の開発状況を理解する上で参考になります): [https://golang.org/doc/go1](https://golang.org/doc/go1)
## 参考にした情報源リンク
* HTML Entities (W3C): [https://www.w3.org/TR/html4/sgml/entities.html](https://www.w3.org/TR/html4/sgml/entities.html) (HTMLエンティティに関する一般的な情報源)
* Go言語の歴史と開発プロセスに関する一般的な情報源(書籍、記事など)