[インデックス 10700] ファイルの概要
このコミットは、Go言語プロジェクトにおけるクリーンアッププロセス(ビルド生成物や一時ファイルの削除)の改善を目的としています。具体的には、doc/codelab/wiki/Makefile
において index.html
が make clean
コマンドで削除されないように変更し、src/clean.bash
スクリプトにこれまで見落とされていたディレクトリ(../misc/dashboard/builder
, ../misc/goplay
, ../doc/codelab/wiki
)のクリーンアップを追加しています。これにより、クリーンアップの範囲が拡張され、同時に不要なファイルの削除が防止されることで、ビルド環境の整合性が向上します。
コミット
Housekeeping: Cleaning up the clean-up process.
src/clean.bash: Add clean-ups for previously overlooked directories. doc/codelab/wiki/Makefile: Dropped "index.html" from CLEANFILES so it will not be deleted on cleaning.
R=golang-dev, r CC=golang-dev https://golang.org/cl/5476050
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/90913cf17042af06ea783c9568dc4af892677589
元コミット内容
commit 90913cf17042af06ea783c9568dc4af892677589
Author: Lucio De Re <lucio.dere@gmail.com>
Date: Sun Dec 11 09:23:17 2011 -0800
Housekeeping: Cleaning up the clean-up process.
src/clean.bash:
Add clean-ups for previously overlooked directories.
doc/codelab/wiki/Makefile:
Dropped "index.html" from CLEANFILES so it will not be
deleted on cleaning.
R=golang-dev, r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5476050
変更の背景
このコミットの背景には、Go言語プロジェクトのビルドシステムにおける「クリーンアップ」の不完全性がありました。プロジェクトの規模が拡大し、様々なツールやドキュメントが追加されるにつれて、ビルドプロセス中に生成される一時ファイルやキャッシュ、あるいは古いビルド成果物が蓄積される問題が発生していました。
既存のクリーンアップスクリプトやMakefileの clean
ターゲットは、これらの新しいディレクトリや特定の生成ファイルを適切に処理できていませんでした。特に、doc/codelab/wiki/Makefile
において index.html
が CLEANFILES
に含まれていたことは、このファイルが生成物であるにもかかわらず、クリーンアップ時に削除されるべきではないという判断があったことを示唆しています。これは、index.html
が他のドキュメント生成の基盤となる重要なファイルであるか、あるいは再生成に時間がかかるため、開発効率を考慮して削除対象から外す必要があったためと考えられます。
また、src/clean.bash
スクリプトが特定のディレクトリ(../misc/dashboard/builder
, ../misc/goplay
, ../doc/codelab/wiki
)をクリーンアップ対象としていなかったため、これらのディレクトリに不要なファイルが残り続け、ディスクスペースの消費や、潜在的なビルドの不整合を引き起こす可能性がありました。
このコミットは、これらの問題を解決し、プロジェクト全体のクリーンアッププロセスをより包括的かつ正確にすることで、開発者が常にクリーンな状態で作業を開始できるようにすることを目的としています。
前提知識の解説
このコミットを理解するためには、以下の技術的な前提知識が役立ちます。
-
Makefile:
Makefile
は、主にUnix系システムでプログラムのコンパイルやビルドプロセスを自動化するために使用されるファイルです。make
コマンドによって解釈され、依存関係に基づいてタスクを実行します。- ターゲット (Target):
all
,clean
など、実行したい操作の名前です。 - 依存関係 (Dependencies): ターゲットを生成するために必要なファイルや他のターゲットです。
- レシピ (Recipe): ターゲットを生成するために実行されるコマンドのリストです。
clean
ターゲット: 慣習的に、ビルドプロセスで生成された一時ファイルや実行可能ファイルなどを削除するためのターゲットです。開発者がプロジェクトをクリーンな状態に戻す際に使用します。CLEANFILES
変数: 多くのMakefileで慣習的に使用される変数で、clean
ターゲットによって削除されるべきファイルやディレクトリのリストを保持します。
-
Bashスクリプト:
clean.bash
はBashシェルスクリプトであり、Unix/Linux環境でコマンドラインから実行される一連のコマンドを記述したファイルです。rm -rf
:rm
はファイルを削除するコマンド、-r
はディレクトリを再帰的に削除するオプション、-f
は確認なしで強制的に削除するオプションです。この組み合わせは、指定されたファイルやディレクトリをその内容ごと完全に削除する際に使用されます。for
ループ: スクリプト内でリストの各要素に対して一連のコマンドを繰り返すために使用されます。$GOROOT
: Go言語のインストールディレクトリを示す環境変数です。Goプロジェクトのビルドシステムでは、この変数を使ってGoのソースコードやツールが配置されている場所を参照します。
-
Go言語プロジェクトの構造 (2011年頃):
- Go言語の初期のプロジェクト構造では、
src
ディレクトリにGoのソースコード、doc
ディレクトリにドキュメント、misc
ディレクトリに様々なユーティリティや実験的なコードが配置されていました。 codelab
: Goのチュートリアルやハンズオン資料を指すことが多いです。wiki
: ドキュメントや情報共有のためのWiki形式のコンテンツを指します。dashboard/builder
: GoプロジェクトのビルドシステムやCI/CDに関連するツールやスクリプトが含まれる可能性があります。goplay
: Go Playgroundのような、Goコードをオンラインで実行・共有するためのツールや関連コードを指す可能性があります。
- Go言語の初期のプロジェクト構造では、
-
Gerrit (Change-ID):
https://golang.org/cl/5476050
は、Goプロジェクトが当時使用していたコードレビューシステムであるGerritのChange-IDへのリンクです。GerritはGitの上に構築されたWebベースのコードレビューツールで、変更セット(Change List, CL)ごとにレビューと承認のプロセスを管理します。
技術的詳細
このコミットは、Goプロジェクトのビルドおよびクリーンアッププロセスにおける2つの異なる側面を改善しています。
1. doc/codelab/wiki/Makefile
の変更
- 変更前:
CLEANFILES+=index.html srcextract.bin htmlify.bin get.bin
- 変更後:
CLEANFILES+=srcextract.bin htmlify.bin get.bin
- 詳細: この変更は、
CLEANFILES
変数からindex.html
を削除しています。index.html
は、同じMakefile内のindex.html: wiki.html srcextract.bin htmlify.bin
というルールによってwiki.html
から生成されるファイルです。通常、CLEANFILES
にはビルドプロセスで生成される一時ファイルや成果物が含まれ、make clean
コマンドによって削除されます。index.html
をCLEANFILES
から除外するということは、このファイルがクリーンアップ時に削除されるべきではないと判断されたことを意味します。考えられる理由はいくつかあります。- 重要な生成物:
index.html
が、他のドキュメントやウェブサイトの基盤となる重要な出力であり、開発者が頻繁に再生成する必要がない、あるいは削除されると困るような性質のファイルである可能性。 - 再生成コスト:
index.html
の再生成に時間がかかるため、開発効率を考慮して、不必要に削除しないようにした可能性。 - 静的コンテンツとしての扱い: 生成物ではあるものの、実質的に静的なコンテンツとして扱われ、頻繁なクリーンアップの対象から外された可能性。
この変更により、
make clean
を実行してもdoc/codelab/wiki/index.html
は削除されなくなり、開発者はこのファイルをより安定して利用できるようになります。
- 重要な生成物:
2. src/clean.bash
の変更
- 変更前 (関連部分):
for i in lib9 libbio libmach cmd pkg \ ../misc/cgo/gmp ../misc/cgo/stdio \ ../misc/cgo/life ../misc/cgo/test do # Do not use gomake here. It may not be available. rm -rf "$GOROOT"/$i done
- 変更後 (関連部分):
for i in lib9 libbio libmach cmd pkg \ ../misc/cgo/gmp ../misc/cgo/stdio \ ../misc/cgo/life ../misc/cgo/test \ ../misc/dashboard/builder ../misc/goplay \ ../doc/codelab/wiki do # Do not use gomake here. It may not be available. rm -rf "$GOROOT"/$i done
- 詳細: この変更は、
src/clean.bash
スクリプト内のfor
ループに、新たに3つのディレクトリパスを追加しています。../misc/dashboard/builder
../misc/goplay
../doc/codelab/wiki
このスクリプトは、$GOROOT
(Goのインストールルートディレクトリ)を基準として、指定されたディレクトリをrm -rf
コマンドで再帰的に削除します。これは、これらのディレクトリがビルド成果物、一時ファイル、キャッシュ、あるいは古いバージョンのツールなどを蓄積する可能性があり、定期的なクリーンアップが必要であると判断されたためです。 特に、../misc/dashboard/builder
はビルドシステム関連、../misc/goplay
はGo Playground関連、../doc/codelab/wiki
はドキュメント関連のディレクトリであり、それぞれが独自のビルドプロセスや生成物を持ち得ます。これらのディレクトリをクリーンアップ対象に加えることで、Goプロジェクト全体のクリーンアップがより網羅的になり、開発環境の健全性が保たれます。
コアとなるコードの変更箇所
doc/codelab/wiki/Makefile
--- a/doc/codelab/wiki/Makefile
+++ b/doc/codelab/wiki/Makefile
@@ -8,7 +8,7 @@ all: index.html
include ../../../src/Make.common
-CLEANFILES+=index.html srcextract.bin htmlify.bin get.bin
+CLEANFILES+=srcextract.bin htmlify.bin get.bin
index.html: wiki.html srcextract.bin htmlify.bin
PATH=.:$$PATH awk '/^!/{system(substr($$0,2)); next} {print}' < wiki.html | tr -d '\r' > index.html
src/clean.bash
--- a/src/clean.bash
+++ b/src/clean.bash
@@ -22,6 +22,8 @@ rm -f "$GOROOT"/lib/*.a
for i in lib9 libbio libmach cmd pkg \
../misc/cgo/gmp ../misc/cgo/stdio \
../misc/cgo/life ../misc/cgo/test \
+ ../misc/dashboard/builder ../misc/goplay\
+ ../doc/codelab/wiki\
../test/bench ../test/garbage
do
# Do not use gomake here. It may not be available.
コアとなるコードの解説
doc/codelab/wiki/Makefile
の変更点
この変更は、CLEANFILES
という変数から index.html
を削除しています。CLEANFILES
は、make clean
コマンドが実行された際に削除されるべきファイルやディレクトリのリストを定義するために使用されるのが一般的です。
- 変更前:
CLEANFILES
にindex.html
が含まれていたため、make clean
を実行するとindex.html
も削除されていました。 - 変更後:
index.html
がCLEANFILES
から除外されたため、make clean
を実行してもindex.html
は削除されなくなります。
この変更の意図は、index.html
が wiki.html
から生成されるファイルであるにもかかわらず、クリーンアップ時に削除されるべきではないという判断に基づいています。これは、index.html
が頻繁に再生成する必要のない重要なドキュメントの成果物であるか、あるいは再生成に時間がかかるため、開発者が手動で削除しない限り保持しておきたいという意図があると考えられます。これにより、開発者は make clean
を実行しても、このドキュメントのトップページが失われることを心配する必要がなくなります。
src/clean.bash
の変更点
この変更は、src/clean.bash
スクリプト内の for
ループのリストに、新たに3つのディレクトリパスを追加しています。このスクリプトは、Goプロジェクトの様々なディレクトリをクリーンアップするために使用されます。
- 追加されたディレクトリ:
../misc/dashboard/builder
: GoプロジェクトのビルドダッシュボードやCI/CDシステムに関連する一時ファイルやビルド成果物が生成される可能性のあるディレクトリ。../misc/goplay
: Go Playground(Goコードをオンラインで実行できるサービス)に関連する一時ファイルやキャッシュが生成される可能性のあるディレクトリ。../doc/codelab/wiki
: GoのコードラボやWikiドキュメントに関連する生成物や一時ファイルが生成される可能性のあるディレクトリ。
この for
ループは、リスト内の各ディレクトリに対して rm -rf "$GOROOT"/$i
コマンドを実行します。これは、$GOROOT
(Goのインストールルートディレクトリ)を基準として、指定されたディレクトリとその内容を再帰的に強制削除することを意味します。
この変更の目的は、Goプロジェクト全体のクリーンアップ範囲を拡大し、これまで見落とされていたこれらのディレクトリに蓄積される可能性のある不要なファイルやビルド成果物を確実に削除することです。これにより、開発環境のディスクスペースが節約され、潜在的なビルドの不整合が解消され、常にクリーンなビルド状態を保つことができます。
関連リンク
- Gerrit Change-ID: https://golang.org/cl/5476050
- Goプロジェクトが当時使用していたコードレビューシステムであるGerritにおけるこのコミットの変更セット(Change List, CL)です。詳細なレビューコメントや議論が記録されている可能性があります。
参考にした情報源リンク
- Go言語の公式ドキュメント (当時のプロジェクト構造に関する情報)
- Makefileの一般的な使用法と
CLEANFILES
変数に関する情報 - Bashスクリプトの
for
ループとrm -rf
コマンドに関する情報 - Gerritコードレビューシステムに関する一般的な情報