[インデックス 10840] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ライブラリである net パッケージの Makefile における変更です。具体的には、src/pkg/net/Makefile ファイル内のオペレーティングシステム(OS)固有のソースファイルリストの順序を整理し、freebsd と darwin (macOS) 向けの定義が正しく配置されるように修正しています。
コミット
commit ecc317647b831c44af46af5ecee29f62ff815e7c
Author: Mikio Hara <mikioh.mikioh@gmail.com>
Date: Fri Dec 16 19:50:55 2011 +0900
net: sort Makefile entries
R=golang-dev, jsing
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5493058
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/ecc317647b831c44af46af5ecee29f62ff815e7c
元コミット内容
net: sort Makefile entries
変更の背景
このコミットは、Go言語の net パッケージのビルドプロセスで使用される Makefile の可読性と保守性を向上させることを目的としています。当時のGo言語のビルドシステムでは、OS固有のファイル(例: freebsd や darwin 向けのネットワーク関連実装)を Makefile 内で管理していました。
変更前は、GOFILES_freebsd と GOFILES_darwin の定義ブロックの順序が論理的でなかったか、あるいは単にアルファベット順などの一貫したソート規則に従っていなかった可能性があります。このような不整合は、将来のメンテナンスや新しいOSサポートの追加時に混乱を招く可能性があります。このコミットは、これらのエントリを「ソート」することで、Makefile の構造をより明確にし、エラーの可能性を減らすことを意図しています。
前提知識の解説
- Go言語のビルドシステムと
GOOS: Go言語は、GOOS(Go Operating System) 環境変数を使用して、ターゲットとするOSを指定してクロスコンパイルを行うことができます。例えば、GOOS=linuxやGOOS=darwinなどと設定します。Goのソースコード内では、ファイル名に_$(GOOS).goの形式でOS固有のコードを記述することができ、ビルド時に適切なファイルが選択されます。 - Makefile:
Makefileは、ソフトウェアのビルドプロセスを自動化するためのツールであるmakeコマンドが使用する設定ファイルです。Go言語の初期のバージョンでは、標準ライブラリのビルドやテストにMakefileが広く利用されていました。Makefile内では、変数定義(例:GOFILES_freebsd)や条件分岐(例:ifeq ($(CGO_ENABLED),1))を用いて、ビルドの挙動を制御します。 netパッケージ:netパッケージは、Go言語におけるネットワークI/Oの基本的な機能を提供する標準ライブラリです。TCP/IP、UDP、Unixドメインソケット、DNSルックアップなど、様々なネットワークプロトコルとインターフェースを扱います。OSによってネットワーク関連のシステムコールやAPIが異なるため、netパッケージには多くのOS固有の実装が含まれています。- CGO: CGOは、GoプログラムからC言語のコードを呼び出すためのGoの機能です。
CGO_ENABLED環境変数が1に設定されている場合、CGOが有効になり、C言語のコードを含むファイル(通常は.cや.hファイル、またはGoのソースコード内でimport "C"を使用している部分)がビルドプロセスに含まれます。cgo_stub.goは、CGOが無効な場合にCGOに依存する機能のスタブ(空の実装)を提供するファイルとして使用されることがあります。 fd.goとfd_$(GOOS).go:fdはファイルディスクリプタ(File Descriptor)の略です。fd.goは一般的なファイルディスクリプタ関連のコードを含み、fd_$(GOOS).goは特定のOS($(GOOS)で指定されるOS)に特化したファイルディスクリプタの操作を実装しています。interface_bsd.goとinterface_darwin.go/interface_freebsd.go:interfaceはネットワークインターフェースを指します。interface_bsd.goはBSD系のOSに共通のインターフェース関連のコードを含み、interface_darwin.goやinterface_freebsd.goはそれぞれmacOS (Darwin) やFreeBSDに特化した実装を提供します。iprawsock_posix.go/ipsock_posix.go: これらはPOSIX互換システム(Unix系OS)におけるIP生ソケット(Raw IP Socket)やIPソケットの実装に関連するファイルです。lookup_unix.go/dnsclient_unix.go/dnsconfig.go: これらはUnix系OSにおけるDNSルックアップやDNSクライアント、DNS設定の読み込みに関連するファイルです。
技術的詳細
このコミットの技術的な核心は、Makefile 内でのOS固有のソースファイルリストの管理方法にあります。
Makefile では、以下のような変数が定義されています。
GOFILES_freebsd: FreeBSD向けのGoソースファイルのリスト。GOFILES_darwin: Darwin (macOS) 向けのGoソースファイルのリスト。CGOFILES_freebsd: FreeBSD向けのCGOソースファイルのリスト。CGOFILES_darwin: Darwin (macOS) 向けのCGOソースファイルのリスト。
コミットの変更内容は、これらの変数定義ブロックの順序を入れ替えることです。具体的には、変更前は GOFILES_freebsd の定義が GOFILES_darwin の定義よりも前にありましたが、変更後は GOFILES_darwin の定義が先に、その後に GOFILES_freebsd の定義が来るように修正されています。
さらに、各ブロック内で参照されるOS固有のファイル名も、対応するOSのブロックに移動されています。例えば、interface_freebsd.go は GOFILES_freebsd のリストに、interface_darwin.go は GOFILES_darwin のリストに、それぞれ正しく配置されるように修正されています。
また、CGOが有効かどうかに応じて cgo_stub.go を追加する条件分岐も、対応するOSのブロック内で適切に移動されています。
ifeq ($(CGO_ENABLED),1)
CGOFILES_freebsd=\
cgo_bsd.go\
cgo_unix.go
else
GOFILES_freebsd+=cgo_stub.go
endif
この ifeq ブロックは、CGO_ENABLED が 1 の場合に CGOFILES_freebsd にCGO関連のファイルを追加し、そうでない場合は GOFILES_freebsd に cgo_stub.go を追加するというロジックを示しています。このロジック自体は変更されておらず、単に freebsd と darwin のブロックが入れ替えられただけです。
この変更は、ビルドの動作に直接的な影響を与えるものではなく、Makefile の論理的な構造を改善し、将来のメンテナンスを容易にすることを目的とした「ソート」または「整理」のコミットです。
コアとなるコードの変更箇所
変更は src/pkg/net/Makefile の1ファイルのみです。
--- a/src/pkg/net/Makefile
+++ b/src/pkg/net/Makefile
@@ -21,14 +21,14 @@ GOFILES=\
udpsock.go\
unixsock.go\
-GOFILES_freebsd=\
+GOFILES_darwin=\
dnsclient_unix.go\
dnsconfig.go\
fd.go\
fd_$(GOOS).go\
file.go\
interface_bsd.go\
-\tinterface_freebsd.go\\\
+\tinterface_darwin.go\\\
iprawsock_posix.go\
ipsock_posix.go\
lookup_unix.go\
@@ -42,21 +42,21 @@ GOFILES_freebsd=\
unixsock_posix.go\
ifeq ($(CGO_ENABLED),1)\
-CGOFILES_freebsd=\
+CGOFILES_darwin=\
cgo_bsd.go\
cgo_unix.go
else\
-GOFILES_freebsd+=cgo_stub.go
+GOFILES_darwin+=cgo_stub.go
endif\
\
-GOFILES_darwin=\
+GOFILES_freebsd=\
dnsclient_unix.go\
dnsconfig.go\
fd.go\
fd_$(GOOS).go\
file.go\
interface_bsd.go\
-\tinterface_darwin.go\\\
+\tinterface_freebsd.go\\\
iprawsock_posix.go\
ipsock_posix.go\
lookup_unix.go\
@@ -70,11 +70,11 @@ GOFILES_darwin=\
unixsock_posix.go\
ifeq ($(CGO_ENABLED),1)\
-CGOFILES_darwin=\
+CGOFILES_freebsd=\
cgo_bsd.go\
cgo_unix.go
else\
-GOFILES_darwin+=cgo_stub.go
+GOFILES_freebsd+=cgo_stub.go
endif\
GOFILES_linux=\
コアとなるコードの解説
この差分は、Makefile 内の GOFILES_freebsd と GOFILES_darwin の定義ブロック全体が入れ替わっていることを示しています。
- 変更前:
GOFILES_freebsdの定義が先にあり、その後にGOFILES_darwinの定義が続いていました。 - 変更後:
GOFILES_darwinの定義が先に、その後にGOFILES_freebsdの定義が続くように順序が変更されました。
この入れ替えに伴い、各ブロック内のOS固有のファイル名も修正されています。例えば、変更前の GOFILES_freebsd のリストには誤って interface_freebsd.go が含まれていましたが、変更後の GOFILES_darwin のリストには interface_darwin.go が、そして変更後の GOFILES_freebsd のリストには interface_freebsd.go が正しく含まれるようになっています。
同様に、CGO_ENABLED の条件分岐内の CGOFILES_ 変数や GOFILES_ 変数への cgo_stub.go の追加も、対応するOSのブロック内で正しく入れ替えられています。
この変更は、Makefile のエントリを論理的にソートし、各OS向けのファイルリストがそのOSの定義ブロック内に正しく配置されるようにすることで、コードの整合性と保守性を高めるためのものです。機能的な変更は一切なく、純粋にコードの整理とクリーンアップを目的としています。
関連リンク
- Go言語の公式ドキュメント: https://go.dev/doc/
- Go言語の
netパッケージ: https://pkg.go.dev/net - Go言語のビルドコマンド (
go build): https://go.dev/cmd/go/#hdr-Compile_packages_and_dependencies - Go言語のCGOに関するドキュメント: https://go.dev/blog/cgo
参考にした情報源リンク
- 特になし(コミット内容とGo言語の一般的な知識に基づいています)