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[インデックス 10841] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のsyscallパッケージ内のビルド関連スクリプトおよびMakefileのエントリの順序を整理することを目的としています。具体的には、src/pkg/syscall/Makefilesrc/pkg/syscall/mkall.shsrc/pkg/syscall/mkerrors.shの3つのファイルにおいて、オペレーティングシステム(OS)やアーキテクチャ(ARCH)ごとの定義やインクルードの記述順序が変更されています。これは機能的な変更ではなく、コードの可読性、保守性、そして一貫性を向上させるためのクリーンアップ作業です。

コミット

commit 055b4f7ea018ce64e560915d4dab0afb3f54d234
Author: Mikio Hara <mikioh.mikioh@gmail.com>
Date:   Fri Dec 16 19:51:25 2011 +0900

    syscall: sort Makefile, mkall.sh and mkerrors.sh entries
    
    R=golang-dev, jsing
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5495062

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/055b4f7ea018ce64e560915d4dab0afb3f54d234

元コミット内容

syscall: sort Makefile, mkall.sh and mkerrors.sh entries

このコミットは、Makefilemkall.shmkerrors.shの各ファイル内のエントリをソート(並べ替え)したものです。

変更の背景

この変更の背景には、Go言語の標準ライブラリ、特にsyscallパッケージのビルドシステムにおけるコードの整理と保守性の向上が挙げられます。syscallパッケージは、Goプログラムが基盤となるオペレーティングシステムのシステムコールにアクセスするための重要なインターフェースを提供します。このパッケージは、様々なOS(Linux, Darwin/macOS, FreeBSD, OpenBSD, Windows, Plan 9など)とアーキテクチャ(386, amd64, armなど)に対応するために、多くの条件分岐やOS固有のファイルを含んでいます。

Makefilemkall.shmkerrors.shといったビルド関連のスクリプトは、これらのOS/ARCH固有のコードを適切にコンパイルし、必要な定数や型定義を生成するために不可欠です。時間が経つにつれて、これらのファイルに新しいOS/ARCHのサポートが追加されたり、既存のエントリが修正されたりする中で、記述順序が不規則になることがあります。

不規則な順序は、以下のような問題を引き起こす可能性があります。

  1. 可読性の低下: 特定のOS/ARCHに関する設定を探す際に、ファイル全体をスキャンする必要があり、時間がかかります。
  2. 保守性の低下: 新しいエントリを追加する際に、どこに配置すべきか迷いが生じ、さらに順序が乱れる可能性があります。また、既存のエントリの重複や矛盾を見落としやすくなります。
  3. レビューの複雑化: コードレビュー時に、機能的な変更と順序の変更が混在していると、レビューアが変更内容を正確に把握するのが難しくなります。
  4. 差分(diff)の肥大化: 順序が不規則な状態で変更が加えられると、Gitの差分が大きくなり、実際の変更点が埋もれてしまうことがあります。

このコミットは、これらの問題を解決するために、関連するエントリをアルファベット順や論理的な順序で並べ替えることで、コードベースの一貫性を高め、将来的なメンテナンスを容易にすることを目的としています。機能的な影響は一切なく、純粋にコード品質の改善に焦点を当てたものです。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下のGo言語のビルドシステムと関連技術に関する基本的な知識が必要です。

  1. Go言語のsyscallパッケージ:

    • Goプログラムがオペレーティングシステム(OS)のシステムコールを直接呼び出すための低レベルなインターフェースを提供する標準ライブラリパッケージです。
    • ファイルI/O、ネットワーク通信、プロセス管理など、OSが提供する基本的な機能の多くはシステムコールを通じて実現されます。
    • Goはクロスプラットフォーム言語であるため、syscallパッケージは各OS(Linux, Windows, macOS, FreeBSDなど)およびCPUアーキテクチャ(amd64, 386, armなど)に特化した実装を含んでいます。これにより、Goプログラムは異なる環境でネイティブなシステムコールを利用できます。
    • OS固有の定数、構造体、関数などが定義されており、これらは通常、C言語のヘッダファイルから自動生成されるか、手動でGoのコードにマッピングされます。
  2. Makefile:

    • makeユーティリティが使用するビルド自動化スクリプトです。ソフトウェアプロジェクトのコンパイル、リンク、テストなどのタスクを自動化するために広く使われます。
    • Goプロジェクトにおいても、複雑なビルドプロセス(特にCgoを使用する場合や、OS固有のファイルを扱う場合)を管理するためにMakefileが利用されることがあります。
    • このコミットでは、src/pkg/syscall/MakefileがGoのソースファイル(GOFILES)をOS/ARCHごとに定義しています。例えば、GOFILES_darwinはmacOS(Darwin)環境でビルドされるファイル群をリストアップしています。
  3. シェルスクリプト (.shファイル):

    • mkall.shmkerrors.shは、Goのsyscallパッケージのビルドプロセスで使用されるシェルスクリプトです。
    • mkall.sh: syscallパッケージのビルドに必要な様々なファイルを生成するためのメインスクリプトです。これには、システムコール番号の定義、エラー定数、OS固有の型定義などが含まれます。このスクリプトは、mksyscall.plmksysnum_*.plmkerrors.shなどの他のスクリプトやツールを呼び出して、Goのソースコードを生成します。
    • mkerrors.sh: OS固有のエラー定数やその他の定数をC言語のヘッダファイルから抽出し、Goのコードとして生成するためのスクリプトです。Cコンパイラ(GCC)を使用して、特定のCヘッダファイルをインクルードし、その中から必要な定数をGoの形式に変換します。includes_Linuxincludes_Darwinといった変数で、各OSでインクルードすべきCヘッダファイルが定義されています。
  4. Goのクロスコンパイル環境変数 (GOOS, GOARCH):

    • GOOSはターゲットオペレーティングシステム(例: linux, darwin, windows, freebsd)を指定します。
    • GOARCHはターゲットCPUアーキテクチャ(例: amd64, 386, arm)を指定します。
    • Goのビルドシステムはこれらの環境変数に基づいて、適切なOS/ARCH固有のソースファイルを選択し、コンパイルします。例えば、ファイル名が_darwin.goで終わるファイルはGOOS=darwinの場合にのみコンパイルされます。
  5. Cgo:

    • GoプログラムからC言語のコードを呼び出したり、C言語のコードからGoの関数を呼び出したりするためのGoの機能です。
    • syscallパッケージでは、OSのシステムコールがC言語で実装されているため、Cgoが内部的に利用されることがあります。
    • mkall.sh内でcgo -godefsが使われているのは、C言語の構造体や定数をGoの型定義に変換するためです。
  6. Perlスクリプト (.plファイル):

    • mksyscall.plmksysnum_*.plは、システムコール関連のGoコードを生成するためのPerlスクリプトです。これらは、OSのシステムコール定義ファイル(例: FreeBSDのsyscalls.master、Darwinのsys/syscall.h)を解析し、Goのシステムコールラッパー関数やシステムコール番号を生成します。

これらのツールと概念は、Goのsyscallパッケージがどのように異なるプラットフォームで動作するように構築されているかを理解する上で重要です。このコミットは、これらのビルドスクリプト内のエントリの順序を整理するものであり、機能的な変更は伴いません。

技術的詳細

このコミットは、Go言語のsyscallパッケージのビルド関連ファイルにおけるエントリの順序を整理するものです。機能的な変更は一切なく、純粋にコードの可読性と保守性を向上させるためのリファクタリングです。変更は主に以下の3つのファイルにわたります。

  1. src/pkg/syscall/Makefile:

    • このファイルは、Goのビルドシステムがsyscallパッケージをコンパイルする際に使用するGoソースファイルのリストを定義しています。
    • 変更前は、GOFILES_freebsdGOFILES_darwinの定義順序が、アルファベット順(darwinfreebsdより前)とは異なっていました。このコミットでは、GOFILES_darwinGOFILES_freebsdの前に来るように順序が入れ替えられました。これにより、OS名のアルファベット順に並ぶことになります。
    • 同様に、GOFILES_plan9の定義が、GOFILES_windowsの後に移動されました。これもアルファベット順(plan9windowsより前)に合わせるための変更です。
    • これらの変更は、新しいOS固有のファイルリストを追加する際に、どこに配置すべきかを明確にし、一貫性を保つ上で役立ちます。
  2. src/pkg/syscall/mkall.sh:

    • このシェルスクリプトは、syscallパッケージのビルドに必要な様々なGoソースファイルを自動生成するためのものです。OSとアーキテクチャの組み合わせ(例: darwin_386, freebsd_amd64)に基づいて、適切なツール(mksyscall.pl, mksysnum_*.pl, mkerrors.sh, cgo -godefsなど)を呼び出します。
    • 変更前は、freebsd_386darwin_386のケースが、アルファベット順とは逆になっていました。このコミットでは、darwin_386freebsd_386の前に来るように順序が入れ替えられました。darwin_amd64freebsd_amd64についても同様です。
    • さらに、windows_386, windows_amd64, plan9_386の各ケースが、ファイルの末尾近くに移動されました。これは、これらのエントリが他の主要なUnix系OS(Linux, Darwin, FreeBSD, OpenBSD)の後に続くように、論理的なグループ化とアルファベット順を組み合わせた整理と考えられます。
    • このスクリプト内の順序の整理は、特定のOS/ARCHのビルド設定を探しやすくし、将来的に新しいターゲットを追加する際の混乱を避けるのに役立ちます。
  3. src/pkg/syscall/mkerrors.sh:

    • このシェルスクリプトは、C言語のヘッダファイルからOS固有のエラー定数やその他の定数を抽出し、Goのコードとして生成するためのものです。
    • このスクリプト内には、各OSでインクルードすべきCヘッダファイルのリストを定義するincludes_変数が存在します(例: includes_Linux, includes_Darwin, includes_FreeBSD, includes_OpenBSD)。
    • 変更前は、includes_Linuxの定義が、includes_Darwinincludes_FreeBSDの前にありました。このコミットでは、includes_Linuxのブロック全体が、includes_FreeBSDの後に移動されました。これにより、includes_Darwin, includes_FreeBSD, includes_Linux, includes_OpenBSDというアルファベット順に並ぶことになります。
    • この変更も、特定のOSのインクルード設定を素早く見つけられるようにし、スクリプト全体の可読性を向上させるためのものです。

これらの変更は、コードの機能には一切影響を与えませんが、Goのビルドシステムを扱う開発者にとって、関連する設定や定義を見つけやすくし、コードベース全体の一貫性を高める上で重要な役割を果たします。これは、大規模なオープンソースプロジェクトにおいて、コード品質を維持し、新しい貢献者がプロジェクトに参加しやすくするための一般的なプラクティスです。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットにおけるコアとなるコードの変更箇所は、以下の3つのファイルにおける行の移動と順序の変更です。

  1. src/pkg/syscall/Makefile

    • GOFILES_freebsdGOFILES_darwinのブロックが入れ替わりました。
      • 変更前: GOFILES_freebsd -> GOFILES_darwin
      • 変更後: GOFILES_darwin -> GOFILES_freebsd
    • GOFILES_plan9のブロックが、GOFILES_windowsの後に移動しました。
      • 変更前: GOFILES_windowsの直後
      • 変更後: GOFILES_windowsの直前
  2. src/pkg/syscall/mkall.sh

    • freebsd_386)darwin_386)のケースが入れ替わりました。
      • 変更前: freebsd_386) -> darwin_386)
      • 変更後: darwin_386) -> freebsd_386)
    • freebsd_amd64)darwin_amd64)のケースが入れ替わりました。
      • 変更前: freebsd_amd64) -> darwin_amd64)
      • 変更後: darwin_amd64) -> freebsd_amd64)
    • windows_386), windows_amd64), plan9_386)の各ケースが、ファイルの末尾近くに移動しました。
  3. src/pkg/syscall/mkerrors.sh

    • includes_Linuxの定義ブロック全体が、includes_FreeBSDの定義ブロックの後に移動しました。
      • 変更前: includes_Linux -> includes_Darwin -> includes_FreeBSD
      • 変更後: includes_Darwin -> includes_FreeBSD -> includes_Linux

これらの変更は、行の追加や削除ではなく、既存のコードブロックの移動と順序の変更のみであり、機能的な意味合いは持ちません。

コアとなるコードの解説

このコミットで行われたコードの変更は、主に各ファイル内のエントリの「順序」を整理することにあります。それぞれの変更がなぜ行われたのかを以下に解説します。

  1. src/pkg/syscall/Makefile の変更:

    • GOFILES_freebsdGOFILES_darwin の入れ替え:
      • 変更前はGOFILES_freebsdが先に定義され、その後にGOFILES_darwinが定義されていました。
      • 変更後はGOFILES_darwinが先に定義され、その後にGOFILES_freebsdが定義されています。
      • これは、OS名のアルファベット順(Darwin -> FreeBSD)に合わせるための変更です。これにより、ファイルリストの定義が一貫した順序で並び、特定のOSのファイル群を探しやすくなります。
    • GOFILES_plan9 の移動:
      • 変更前はGOFILES_windowsの直後にGOFILES_plan9が定義されていました。
      • 変更後はGOFILES_plan9GOFILES_windowsの直前に移動しています。
      • これもアルファベット順(Plan 9 -> Windows)に合わせるための変更です。
  2. src/pkg/syscall/mkall.sh の変更:

    • freebsd_386)darwin_386) の入れ替え、および freebsd_amd64)darwin_amd64) の入れ替え:
      • mkall.shcase文を使ってGOOS_GOARCHの組み合わせに応じた処理を分岐しています。
      • 変更前はfreebsd_386)が先に、darwin_386)が後に定義されていました。amd64についても同様です。
      • 変更後はdarwin_386)が先に、freebsd_386)が後に定義されています。amd64についても同様です。
      • これは、OS名のアルファベット順(Darwin -> FreeBSD)に合わせるための変更です。これにより、スクリプト内のOS/ARCHごとの設定ブロックが一貫した順序で並び、特定のターゲットの設定を探しやすくなります。
    • windows_386), windows_amd64), plan9_386) の移動:
      • これらのブロックは、変更前は他のUnix系OS(Linux, OpenBSD)の定義の間に散らばっていました。
      • 変更後は、openbsd_amd64)の後にまとめて移動されています。
      • これは、主要なUnix系OSの定義を先にまとめ、その後でWindowsやPlan 9といった異なる系統のOSの定義を配置するという、論理的なグループ化とアルファベット順を組み合わせた整理です。これにより、スクリプト全体の構造がより明確になります。
  3. src/pkg/syscall/mkerrors.sh の変更:

    • includes_Linux の移動:
      • mkerrors.shは、各OSでインクルードすべきCヘッダファイルをincludes_変数で定義しています。
      • 変更前はincludes_Linuxincludes_Darwinincludes_FreeBSDよりも前に定義されていました。
      • 変更後はincludes_Linuxincludes_FreeBSDの後に移動しています。
      • これにより、includes_Darwin, includes_FreeBSD, includes_Linux, includes_OpenBSDというアルファベット順に並ぶことになります。これは、スクリプト内のインクルード定義の順序を一貫させるための変更であり、特定のOSのインクルード設定を素早く見つけられるようにします。

これらの変更は、コードの機能に影響を与えるものではなく、純粋にコードの「見た目」と「整理」に関するものです。しかし、このような整理は、大規模なコードベースにおいて非常に重要です。一貫した順序付けは、新しい開発者がコードベースを理解するのを助け、既存の開発者が特定の情報を見つける時間を短縮し、将来の変更による意図しないバグの導入リスクを低減します。これは、ソフトウェア開発における「コードの衛生(code hygiene)」の好例と言えます。

関連リンク

  • Go言語のsyscallパッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/syscall
  • Go言語のクロスコンパイルに関する公式ドキュメント(GoのバージョンによってURLが異なる場合がありますが、GOOSGOARCHについて解説されています): Goの公式ドキュメントやブログ記事で「Go cross compilation」や「GOOS GOARCH」で検索すると見つかります。
  • Goのソースコードリポジトリ: https://github.com/golang/go

参考にした情報源リンク

  • コミット情報: /home/orange/Project/comemo/commit_data/10841.txt
  • Go言語の公式ドキュメント (pkg.go.dev)
  • Go言語のソースコード (github.com/golang/go)
  • 一般的なMakefileの概念
  • シェルスクリプトの基本的な構文と用途
  • Cgoの基本的な概念
  • Perlスクリプトの基本的な概念 (mksyscall.pl, mksysnum_*.plの役割理解のため)
  • Gitのdiffコマンドの出力形式