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[インデックス 10842] ファイルの概要

このコミットは、lib/codereview/codereview.py スクリプトにおけるバグ修正を目的としています。具体的には、変更リスト (CL) が見つからない場合に hg undo コマンドがクラッシュする問題を解決します。この問題は、found 変数が適切に初期化されていないことが原因で発生していました。

コミット

commit a3008e235e7445ddf581739a165861e15489785d
Author: Miki Tebeka <miki.tebeka@gmail.com>
Date:   Fri Dec 16 10:39:20 2011 -0500

    codereview: Initialize "found" in codereview.py.
    
    Fixes #2569 (hg undo crashes when CL not found).
    
    R=golang-dev, rsc
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5489052
---
 lib/codereview/codereview.py | 1 +
 1 file changed, 1 insertion(+)

diff --git a/lib/codereview/codereview.py b/lib/codereview/codereview.py
index 7ab7b7e0f3..3dbbb72606 100644
--- a/lib/codereview/codereview.py
+++ b/lib/codereview/codereview.py
@@ -1490,6 +1490,7 @@ def clpatch_or_undo(ui, repo, clname, opts, mode):\n 	\t# Mercurial will fall over long before the change log\n 	\t# sequence numbers get to be 7 digits long.\n 	\tif re.match('^[0-9]{7,}$', clname):\n+\t\t\tfound = False\n \t\t\tfor r in hg_log(ui, repo, keyword=\"codereview.appspot.com/\"+clname, limit=100, template=\"{node}\\n\").split():\n \t\t\t\trev = repo[r]\n \t\t\t\t# Last line with a code review URL is the actual review URL.\n```

## GitHub上でのコミットページへのリンク

[https://github.com/golang/go/commit/a3008e235e7445ddf581739a165861e15489785d](https://github.com/golang/go/commit/a3008e235e7445ddf581739a165861e15489785d)

## 元コミット内容

このコミットの目的は、「`codereview.py` 内の `found` 変数を初期化する」ことです。これにより、「CL (変更リスト) が見つからない場合に `hg undo` がクラッシュする」という問題(Issue #2569)が修正されます。

## 変更の背景

Go言語の開発プロセスでは、当時、Googleの内部コードレビューシステムと連携するために、`codereview.py` のようなスクリプトが使用されていました。このスクリプトは、Mercurial (hg) リポジトリと連携し、コードレビューの変更リスト (CL) を管理する役割を担っていました。

報告されたバグは、特定の条件下で `hg undo` コマンドを実行した際に、`codereview.py` スクリプトがクラッシュするというものでした。具体的には、`clpatch_or_undo` 関数内で、特定の変更リスト (CL) を検索するロジックにおいて、`found` というフラグ変数が、検索対象のCLが見つからなかった場合に適切に初期化されないまま使用される可能性がありました。Pythonでは、未初期化のローカル変数を参照しようとすると `UnboundLocalError` が発生し、これがスクリプトのクラッシュに繋がっていました。

このコミットは、この `UnboundLocalError` を回避し、スクリプトの堅牢性を向上させるために行われました。

## 前提知識の解説

### Mercurial (hg)

Mercurial (通称 hg) は、分散型バージョン管理システム (DVCS) の一つです。Gitと同様に、各開発者がコードベースの完全な履歴を持つローカルリポジトリを持ち、変更を共有リポジトリにプッシュしたり、他の開発者の変更をプルしたりできます。Go言語プロジェクトは、初期にはMercurialを使用していましたが、後にGitに移行しました。

*   **`hg undo`**: Mercurialのコマンドの一つで、直前のトランザクション(例えば、コミットやマージなど)を取り消すために使用されます。このコマンドは、作業ディレクトリとリポジトリの状態を元に戻すことができます。
*   **変更リスト (CL)**: コードレビューシステムにおける変更の単位です。通常、一連のコミットやパッチとして表現され、レビューのために提出されます。Go言語のコードレビューシステムでは、`golang.org/cl/` のようなURLで識別されることがありました。

### コードレビューシステム

ソフトウェア開発において、コードレビューは品質保証と知識共有のために不可欠なプロセスです。開発者が書いたコードは、他の開発者によってレビューされ、バグの発見、設計の改善、コーディング規約の遵守などが確認されます。Googleでは、独自のコードレビューシステムが使用されており、Goプロジェクトもこれを利用していました。`codereview.appspot.com` は、Goプロジェクトが使用していたコードレビューシステムのURLの一部を示しています。

### Pythonの正規表現 (`re` モジュール)

Pythonの `re` モジュールは、正規表現操作を提供します。正規表現は、文字列のパターンマッチングや検索、置換を行うための強力なツールです。

*   **`re.match(pattern, string)`**: 文字列の先頭からパターンにマッチするかどうかを調べます。マッチした場合、マッチオブジェクトを返し、マッチしない場合は `None` を返します。
*   **`^[0-9]{7,}$`**: この正規表現は、文字列が7桁以上の数字で構成されているかどうかをチェックします。
    *   `^`: 文字列の先頭にマッチします。
    *   `[0-9]`: 任意の数字(0から9)にマッチします。
    *   `{7,}`: 直前の要素(この場合は `[0-9]`)が7回以上繰り返されることにマッチします。
    *   `$`: 文字列の末尾にマッチします。

## 技術的詳細

`clpatch_or_undo` 関数は、Mercurialリポジトリ内で特定の変更リスト (CL) を検索し、そのCLに関連する操作(パッチ適用またはアンドゥ)を実行する役割を担っています。

問題の箇所は、CL名が7桁以上の数字である場合に、それがコードレビューシステムのCL番号であると判断し、`hg_log` コマンドを使用して関連するコミットログを検索する部分です。

```python
if re.match('^[0-9]{7,}$', clname):
    # ...
    for r in hg_log(ui, repo, keyword="codereview.appspot.com/"+clname, limit=100, template="{node}\\n").split():
        # ...

この for ループ内で、found という変数が、目的のCLが見つかったかどうかを示すフラグとして使用されることが想定されていました。しかし、もし hg_log の結果が空であったり、ループ内の条件が一度も満たされなかった場合、found 変数は一度も代入されずに、その後のコードで参照される可能性がありました。

Pythonでは、関数内でローカル変数が代入される前に参照されると UnboundLocalError が発生します。このバグは、まさにこのシナリオで発生していました。CLが見つからない場合に found が初期化されず、その後の処理で found を参照しようとしてクラッシュしていたと考えられます。

このコミットでは、if re.match(...) のブロックに入った直後に found = False と明示的に初期化することで、この問題を解決しています。これにより、CLが見つからなかった場合でも found 変数が常に定義された状態になり、UnboundLocalError の発生を防ぎます。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/lib/codereview/codereview.py
+++ b/lib/codereview/codereview.py
@@ -1490,6 +1490,7 @@ def clpatch_or_undo(ui, repo, clname, opts, mode):\n 	\t# Mercurial will fall over long before the change log\n 	\t# sequence numbers get to be 7 digits long.\n 	\tif re.match('^[0-9]{7,}$', clname):\n+\t\t\tfound = False\n \t\t\tfor r in hg_log(ui, repo, keyword="codereview.appspot.com/"+clname, limit=100, template=\"{node}\\n\").split():\n \t\t\t\trev = repo[r]\n \t\t\t\t# Last line with a code review URL is the actual review URL.\n```

## コアとなるコードの解説

追加された行は以下の1行のみです。

```python
found = False

この行は、clpatch_or_undo 関数内の特定の条件分岐 (if re.match('^[0-9]{7,}$', clname):) の直下に追加されています。この条件分岐は、clname (変更リスト名) が7桁以上の数字である場合に、それがコードレビューシステムのCL番号であると判断し、関連するログを検索する処理を開始します。

found = False をこの位置に挿入することで、clname がCL番号のパターンにマッチし、かつ hg_log の検索結果が空であったり、ループ内で foundTrue に設定される条件が満たされなかった場合でも、found 変数が確実に False で初期化されるようになります。これにより、後続のコードで found 変数を参照する際に UnboundLocalError が発生するのを防ぎ、スクリプトのクラッシュを回避します。これは、Pythonにおけるローカル変数のスコープと初期化に関する典型的なバグパターンとその修正例です。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • コミットメッセージ自体
  • Mercurial ドキュメント (一般的な hg undo の動作について)
  • Python ドキュメント (正規表現 re モジュール、UnboundLocalError について)