[インデックス 11211] ファイルの概要
このコミットは、Go言語のコマンドラインツールgo
のテスト関連ドキュメントから、存在しないgotest
コマンドへの言及を削除するものです。具体的には、src/cmd/go/test.go
ファイル内のドキュメント文字列において、「gotest」という記述を「go test」に修正しています。これにより、ユーザーがgo test
コマンドの動作について誤解する可能性を排除し、ドキュメントの正確性を向上させています。
コミット
commit 3495f39fc49ff7608d52d05a6a15d6d7d183fc56
Author: Rob Pike <r@golang.org>
Date: Tue Jan 17 13:13:50 2012 -0800
cmd/go: remove mentions of 'gotest' from the documentation
go test runs the tests itself; it does not run the gotest command,
so these mentions are confusing.
R=golang-dev, n13m3y3r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5551043
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/3495f39fc49ff7608d52d05a6a15d6d7d183fc56
元コミット内容
このコミットは、go test
コマンドのドキュメントにおいて、誤ってgotest
というコマンドが存在するかのように記述されていた箇所を修正するものです。go test
は、Goのテストフレームワークを直接実行するものであり、内部的にgotest
という独立したコマンドを呼び出すわけではありません。この誤解を招く表現を削除することで、ドキュメントの正確性を高め、ユーザーの混乱を防ぐことを目的としています。
変更の背景
Go言語の初期の段階では、テストの実行方法に関するドキュメントが進化の途上にありました。go test
コマンドは、Goのビルドシステムと統合されたテスト実行ツールとして設計されており、ユーザーが個別のテストランナーを意識する必要がないように作られています。しかし、ドキュメントの一部に、あたかもgotest
という別の実行ファイルが存在し、それがgo test
によって呼び出されるかのような記述が残っていました。
この記述は、特にGo言語を学び始めたばかりのユーザーにとって混乱の原因となっていました。なぜなら、gotest
というコマンドはGoの標準ツールチェインには存在せず、ユーザーがそれを探しても見つからないためです。このコミットは、このような誤解を解消し、go test
の実際の動作を正確に反映させるために行われました。Rob Pike氏によるこの修正は、Goのドキュメントの品質とユーザーエクスペリエンスを向上させるための継続的な取り組みの一環です。
前提知識の解説
Go言語のテストフレームワーク
Go言語には、標準ライブラリとしてtesting
パッケージが提供されており、これを用いてユニットテスト、ベンチマークテスト、サンプルコード(Example)を記述できます。テストファイルは通常、テスト対象のソースファイルと同じディレクトリに配置され、ファイル名が_test.go
で終わる必要があります。
go test
コマンド
go test
コマンドは、Goのビルドシステムに組み込まれたテスト実行ツールです。このコマンドは以下の主要な機能を提供します。
- テストファイルの検出: カレントディレクトリまたは指定されたパッケージ内の
_test.go
ファイルを自動的に検出します。 - テストバイナリのコンパイル: 検出されたテストファイルと、それらが依存するパッケージのソースコードをコンパイルし、テスト実行用のバイナリ(通常は一時ディレクトリに作成される)を生成します。
- テストの実行: 生成されたテストバイナリを実行し、テスト関数(
TestXxx
)、ベンチマーク関数(BenchmarkXxx
)、サンプル関数(ExampleXxx
)を実行します。 - 結果の表示: テストの成功/失敗、ベンチマークの結果、カバレッジ情報などを標準出力に表示します。
重要な点は、go test
がこれらのプロセスをすべて内部的に処理し、ユーザーが明示的にgotest
のような別のコマンドを呼び出す必要がないことです。
gotest
という名称の歴史的背景(推測)
Go言語の初期開発段階や、他のプログラミング言語におけるテストツールの命名慣習(例: Pythonのpytest
、Rubyのrspec
など)から、go
コマンドのサブコマンドとしてではなく、独立したテスト実行ツールとしてgotest
という名称が検討された時期があったのかもしれません。あるいは、単にドキュメント作成時の誤記や、概念的な表現として一時的に使用されたものが残存していた可能性も考えられます。しかし、最終的にはgo test
というサブコマンド形式が採用され、gotest
という独立したコマンドはGoの標準ツールチェインには存在しません。
技術的詳細
このコミットは、go test
コマンドのヘルプメッセージとドキュメントを定義しているsrc/cmd/go/test.go
ファイル内の文字列リテラルを修正しています。具体的には、以下の2箇所で「gotest」という文字列を「go test」に置き換えています。
-
デフォルトの引数なし実行に関する説明: 変更前:
By default, gotest needs no arguments.
変更後:By default, go test needs no arguments.
これは、go test
を引数なしで実行した場合の動作(カレントディレクトリのパッケージをコンパイルしてテストを実行する)を説明する部分です。 -
-x
フラグの説明: 変更前:-x Print each subcommand gotest executes.
変更後:-x Print each subcommand go test executes.
-x
フラグは、go test
が内部的に実行するコマンド(コンパイル、リンク、テストバイナリの実行など)を表示するためのデバッグフラグです。ここでも、gotest
という誤ったコマンド名が使われていました。
これらの変更は、単なる文字列の置換であり、go test
コマンドの実際の動作や内部ロジックには影響を与えません。しかし、ユーザーが参照するドキュメントの正確性を高めるという点で、非常に重要な修正です。
コアとなるコードの変更箇所
変更はsrc/cmd/go/test.go
ファイルに集中しています。
--- a/src/cmd/go/test.go
+++ b/src/cmd/go/test.go
@@ -45,7 +45,7 @@ followed by detailed output for each failed package.
the file pattern "_test.go". These additional files can contain test functions,
benchmark functions, and example functions. See 'go help testfunc' for more.
-By default, gotest needs no arguments. It compiles and tests the package
+By default, go test needs no arguments. It compiles and tests the package
with source in the current directory, including tests, and runs the tests.
If file names are given (with flag -file=test.go, one per extra test source file),
only those test files are added to the package. (The non-test files are always
@@ -82,7 +82,7 @@ The flags handled by 'go test' are:
Compile and test up to n packages in parallel.
The default value is the number of CPUs available.
- -x Print each subcommand gotest executes.
+ -x Print each subcommand go test executes.
The resulting test binary, called test.out, has its own flags:
コアとなるコードの解説
src/cmd/go/test.go
ファイルは、go test
コマンドの動作を定義するGoのソースコードの一部です。このファイルには、go test
コマンドがどのように引数を解析し、テストをコンパイル・実行し、結果を表示するかといったロジックが含まれています。
変更された行は、Goのソースコード内のコメントや文字列リテラルとして埋め込まれたドキュメントの一部です。Goのコマンドラインツールは、go help <command>
を実行した際に表示されるヘルプメッセージを、対応するGoファイルのコメントや文字列から自動生成することがよくあります。
このコミットでは、具体的に以下の2つの文字列が修正されました。
-
行45:
By default, gotest needs no arguments.
からBy default, go test needs no arguments.
への変更。 この行は、go test
コマンドの基本的な使い方を説明する部分です。引数なしで実行した場合に、カレントディレクトリのテストが実行されることを示しています。 -
行82:
-x Print each subcommand gotest executes.
から-x Print each subcommand go test executes.
への変更。 この行は、go test -x
フラグの動作を説明する部分です。-x
フラグを使用すると、go test
がテストのコンパイルや実行のために内部的に呼び出すすべてのコマンドが表示されます。これはデバッグに非常に役立つ機能です。
これらの修正は、ユーザーがgo help test
を実行した際に表示されるヘルプメッセージに直接反映され、go test
コマンドの正確な使用方法を伝えることに貢献します。
関連リンク
- Go言語の公式ドキュメント: https://go.dev/doc/
go test
コマンドのドキュメント: https://go.dev/cmd/go/#hdr-Test_packages- Go言語の
testing
パッケージ: https://pkg.go.dev/testing
参考にした情報源リンク
- GitHubのコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/3495f39fc49ff7608d52d05a6a15d6d7d183fc56
- Goのコードレビューシステム (Gerrit) の変更リスト: https://golang.org/cl/5551043 (コミットメッセージに記載されているリンク)
- Go言語の公式ブログやメーリングリストのアーカイブ(
gotest
に関する議論の歴史的背景を調べる際に参照する可能性のある情報源)