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[インデックス 11325] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリである encoding/xml パッケージ内のドキュメントの軽微な修正に関するものです。encoding/xml パッケージは、GoのプログラムとXMLデータの間でエンコード（Goの構造体をXMLに変換）およびデコード（XMLをGoの構造体に変換）を行う機能を提供します。このパッケージは、XMLベースのプロトコルやデータ形式を扱うアプリケーションで広く利用されています。

コミット

このコミットは、encoding/xml パッケージ内の marshal.go と read.go の2つのファイルにおけるドキュメントの記述を修正し、より正確で分かりやすい情報を提供するように改善しています。特に、MarshalIndent の言及の削除、MarshalXMLError の説明の簡素化、そして Unmarshal におけるXML要素名と構造体フィールド名のマッチングに関するケースセンシティブ性の記述の修正が含まれます。

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/fd9c99511e9ed3b86c7df4d4dfe95e31db6f52e0

元コミット内容

commit fd9c99511e9ed3b86c7df4d4dfe95e31db6f52e0
Author: Gustavo Niemeyer <gustavo@niemeyer.net>
Date:   Mon Jan 23 01:32:07 2012 -0200

    encoding/xml: minor doc fixup
    
    R=golang-dev, adg
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5564046

変更の背景

ドキュメントの修正は、ユーザーが encoding/xml パッケージをより正確に理解し、適切に使用できるようにするために行われました。特に、以下の点が背景にあると考えられます。

  • MarshalIndent の誤解の解消: Header 定数の説明において、MarshalIndent が自動的にヘッダーを追加しないという誤解を招く可能性があったため、その言及を削除し、Marshal の出力にのみ関連することを明確にしました。
  • MarshalXMLError の適用範囲の明確化: MarshalXMLError が Marshal と MarshalIndent の両方で返されるという記述が、実際には Marshal のみに関連する場合があるため、より正確な記述に修正されました。
  • Unmarshal のケースセンシティブ性の正確な記述: Unmarshal がXML要素名と構造体フィールド名をマッチングする際のケースセンシティブ性に関する記述が不正確であったため、これを修正し、タグ値とフィールド名に対してケースセンシティブな比較が行われることを明確にしました。これは、XMLの仕様とGoの reflect パッケージの動作に合致させるための重要な修正です。

これらの修正は、APIの動作に関するユーザーの混乱を避け、ドキュメントの正確性を高めることを目的としています。

前提知識の解説

このコミットの変更内容を理解するためには、以下の前提知識が必要です。

  • Go言語の encoding/xml パッケージ:

    • Marshal と Unmarshal: encoding/xml パッケージの主要な関数で、それぞれGoの構造体をXMLにエンコード（変換）し、XMLをGoの構造体にデコード（変換）します。
    • MarshalIndent: Marshal と同様にGoの構造体をXMLにエンコードしますが、XML出力にインデントを追加して可読性を高めます。
    • Header 定数: XML宣言 (<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>) を含む文字列定数で、XMLドキュメントの先頭に追加するために提供されますが、Marshal や MarshalIndent によって自動的に追加されるわけではありません。
    • Marshaler インターフェース: 構造体がXMLへのカスタムエンコード動作を提供するために実装できるインターフェースです。
    • Unmarshal のフィールドマッチング: Unmarshal は、XML要素名とGoの構造体のフィールド名を対応付けてデコードを行います。この際、Goの reflect パッケージを使用して構造体のフィールド情報を取得します。
    • エクスポートされたフィールド (Exported fields): Goでは、フィールド名が大文字で始まるフィールドのみがエクスポートされ、パッケージ外からアクセス可能です。encoding/xml の Unmarshal は、Goの reflect パッケージの制約により、エクスポートされたフィールドにのみ値を割り当てることができます。
    • XMLタグ (XML tags): Goの構造体フィールドには、xml:"element_name" のような構造体タグを付与することで、XML要素名とのマッピングを明示的に指定できます。

  • XML (Extensible Markup Language):

    • XML宣言: XMLドキュメントの先頭に記述される <?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?> のような行で、XMLのバージョンやエンコーディングを指定します。
    • 要素名 (Element names): XMLドキュメントの構造を定義するタグの名前です。

  • Go言語の reflect パッケージ:

    • Goの reflect パッケージは、実行時にプログラムの型情報を検査したり、値を操作したりするための機能を提供します。encoding/xml パッケージは、この reflect パッケージを利用して、Goの構造体のフィールドを動的に読み取り、XMLデータとマッピングします。

技術的詳細

このコミットで行われた具体的なドキュメント修正は以下の通りです。

  1. src/pkg/encoding/xml/marshal.go の変更点:

    • Header 定数のコメントから、MarshalIndent への言及が削除されました。
      • 変更前: // A generic XML header suitable for use with the output of Marshal and // MarshalIndent.
      • 変更後: // A generic XML header suitable for use with the output of Marshal.
      • これにより、Header が Marshal の出力にのみ関連し、MarshalIndent が自動的にヘッダーを追加しないという事実がより明確になりました。
    • MarshalXMLError のコメントから、MarshalIndent への言及が削除されました。
      • 変更前: // A MarshalXMLError is returned when Marshal or MarshalIndent encounter a type
      • 変更後: // A MarshalXMLError is returned when Marshal encounters a type
      • これは、MarshalXMLError が主に Marshal 関数によって返されるエラーであることを明確にするための修正です。

  2. src/pkg/encoding/xml/read.go の変更点:

    • Unmarshal 関数のドキュメントにおいて、XML要素名と構造体フィールド名のマッチングに関するケースセンシティブ性の記述が修正されました。
      • 変更前: // Unmarshal uses a case-insensitive // comparison to match XML element names to struct field names.
      • 変更後: // Unmarshal uses a case-sensitive // comparison to match XML element names to tag values and struct // field names.
      • この修正は非常に重要です。以前の記述では「ケースインセンシティブ」とされていましたが、実際には Unmarshal はXML要素名と構造体タグの値、そして構造体フィールド名をマッチングする際にケースセンシティブな比較を行います。これはXMLの仕様とGoの reflect パッケージの動作に合致するものであり、ユーザーがXMLデータをGoの構造体に正確にデコードするために不可欠な情報です。

これらの変更は、コードの動作自体を変更するものではなく、既存の動作に関するドキュメントの正確性を向上させることを目的としています。

コアとなるコードの変更箇所

diff --git a/src/pkg/encoding/xml/marshal.go b/src/pkg/encoding/xml/marshal.go
index 1cb6b5b146..7724e93f89 100644
--- a/src/pkg/encoding/xml/marshal.go
+++ b/src/pkg/encoding/xml/marshal.go
@@ -15,14 +15,13 @@ import (
 )
 
 const (
-	// A generic XML header suitable for use with the output of Marshal and
-	// MarshalIndent.  This is not automatically added to any output of this
-	// package, it is provided as a convenience.
+	// A generic XML header suitable for use with the output of Marshal.
+	// This is not automatically added to any output of this package,
+	// it is provided as a convenience.
 	Header = `<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>` + "\n"
 )
 
 // A Marshaler can produce well-formatted XML representing its internal state.
-// It is used by both Marshal and MarshalIndent.
 type Marshaler interface {
 	MarshalXML() ([]byte, error)
 }
@@ -368,7 +367,7 @@ func (s *parentStack) push(parents []string) {
 	s.stack = append(s.stack, parents...)
 }
 
-// A MarshalXMLError is returned when Marshal or MarshalIndent encounter a type
+// A MarshalXMLError is returned when Marshal encounters a type
 // that cannot be converted into XML.
 type UnsupportedTypeError struct {
 	Type reflect.Type
diff --git a/src/pkg/encoding/xml/read.go b/src/pkg/encoding/xml/read.go
index a795fdec79..78e02018cf 100644
--- a/src/pkg/encoding/xml/read.go
+++ b/src/pkg/encoding/xml/read.go
@@ -78,8 +78,9 @@ import (
 // field tag.
 //
 // Because Unmarshal uses the reflect package, it can only assign
-// to exported (upper case) fields.  Unmarshal uses a case-insensitive
-// comparison to match XML element names to struct field names.
+// to exported (upper case) fields.  Unmarshal uses a case-sensitive
+// comparison to match XML element names to tag values and struct
+// field names.
 //
 // Unmarshal maps an XML element to a struct using the following rules.
 // In the rules, the tag of a field refers to the value associated with the

コアとなるコードの解説

このコミットは、Goの encoding/xml パッケージのドキュメントコメントを修正しています。

  • src/pkg/encoding/xml/marshal.go:

    • Header 定数のコメントから MarshalIndent の言及が削除されました。これは、Header が Marshal の出力にのみ関連し、MarshalIndent が自動的にXML宣言を追加しないという事実を明確にするためです。MarshalIndent は、Marshal と同様にXMLを生成しますが、その出力にインデントを追加するだけで、XML宣言の追加はユーザーの責任となります。
    • Marshaler インターフェースのコメントから It is used by both Marshal and MarshalIndent. の行が削除されました。これは、Marshaler インターフェースが Marshal 関数によって利用されることを強調し、MarshalIndent との直接的な関連性を曖昧にしないためと考えられます。
    • MarshalXMLError のコメントから or MarshalIndent が削除されました。これにより、このエラーが主に Marshal 関数によって返されることを明確にしています。

  • src/pkg/encoding/xml/read.go:

    • Unmarshal 関数のドキュメントにおいて、XML要素名と構造体フィールド名のマッチングに関する記述が「ケースインセンシティブ」から「ケースセンシティブ」に修正されました。これは非常に重要な変更です。Unmarshal は、XML要素名とGoの構造体フィールドのタグ値（例: xml:"my_element"）またはフィールド名自体を比較する際に、大文字・小文字を区別します。例えば、XMLに <MyElement> があり、Goの構造体に MyElement というフィールドがある場合、これらはマッチしますが、<myelement> と MyElement はマッチしません。この修正により、ユーザーはXMLデータのデコード時に正確なケースマッチングを考慮する必要があることが明確になります。

これらの変更は、encoding/xml パッケージのAPIの動作に関する誤解を解消し、ドキュメントの正確性を向上させることで、開発者がより効率的かつ正確にXMLデータを扱えるようにすることを目的としています。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント (pkg.go.dev)
  • Go言語のソースコード (GitHub)
  • XMLの仕様に関する一般的な知識
  • Go言語の reflect パッケージに関する一般的な知識